3人に1人が悩んでいると言われる便秘。薬に頼る前に、毎日の食事を見直してみませんか?
便秘は、放置すると様々な体の不調につながるだけでなく、精神的なストレスも引き起こします。便秘改善のために毎日の運動習慣や投薬加療も大切ですが、食事療法も同じくらい大切です。今回は、数ある食材の中でも、特に論文上で効果が証明されている、比較的即効性も期待できる食べ物や飲み物をご紹介いたしましょう!
食物繊維たっぷり、腸内環境を整える発酵食品、善玉菌を増やすオリゴ糖など、今日から始められる簡単で美味しい便秘解消レシピに使えるものを厳選してお伝えしていきます。
便秘に対する他の生活習慣の改善方法や、病院にいく目安などはつらい便秘症状を治すには?便秘の原因や解消法について解説をご参照ください。
Table of Contents
便秘でオススメの食べ物 その①:ミネラルウォーターや水
便秘解消には「1日1.5~2リットルの水分摂取が基本」といわれていますね。特に、マグネシウムや硫酸塩を豊富に含むミネラルウォーターは、昔から便秘に効果があると言われています。
マグネシウムは腸で吸収されにくいため、水分を引き寄せる浸透圧効果があります。また、腸の動きを活発にするホルモンの分泌を促したり、腸の筋肉に作用する物質を増やしたりする働きも期待されています。
硫酸塩は、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える役割を果たします。さらに重炭酸塩を含むアルカリ性の水は、セロトニンという神経伝達物質を介して腸の動きを促す可能性があるとされています。
ミネラルウォーターや水の便秘に対する効果は、小規模ですが複数の臨床試験でも実証されています。
例えば、2016年に報告100人のローマ基準IIIの便秘症の方を対象に、1 日 1 リットル (4 × 250 ml) のミネラルウォーターか炭酸水道水 (プラセボ) を摂取した臨床試験によると、3 週間後に統計的有意差が認められ、プラセボ群も 0.88 回増加したものの、ミネラルウォーター群では 1 週間あたりの排便回数が 2.02 回と、プラセボよりも有意に増加していました。ただし、6週間後には両者の差はなくなりました。
また、フランスで2014年に報告された18 歳から 60 歳までの 244 名の女性の便秘症患者に対して、天然ミネラルウォーターと低ミネラル水とを比較した臨床試験によると、1 日 1 L の ミネラルの摂取により、治療開始2週間後には、硬い便の数も減少し、救急薬の使用も大幅に減少したということです。
このように、まず水分やミネラルウォーターの摂取は便秘解消の第一歩といえます。
(参照:Efficacy and safety of a magnesium sulfate-rich natural mineral water for patients with functional constipation)
(参照:Effects of Sulfate-Rich Mineral Water on Functional Constipation: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Study)
便秘でオススメの食べ物 その②:良質な油(オリーブオイル・アマニ油など)
便秘の解消には、水分だけでなく良質な油の摂取も大切です。良質の油は腸内環境を整え、排便をスムーズにする効果が期待できます。実際、2015年の小規模な臨床試験では、良質な油が便秘の症状を改善したと報告されています。
では、良質な油とは何か。それは「不飽和脂肪酸」のことです。
油には大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。飽和脂肪酸は肉類や乳製品に多く含まれ、常温で固形になる性質があるアブラのこと。バターやラード、ココナッツオイルなどがこれに該当しますね。飽和脂肪酸を摂りすぎると便秘の原因になる可能性があります。
一方、不飽和脂肪酸は植物や魚に多く含まれる液体状のアブラです。オリーブオイルやアマニ油、えごま油などが代表的です。不飽和脂肪酸は腸内の善玉菌を増やし、腸の動きを活発にする作用があります。また、小腸で吸収されにくく、腸内の潤滑油として働き、便をやわらかくして排便を促します。
不飽和脂肪酸は悪玉菌を抑え、生活習慣病の予防にも役立ちます。食物繊維が豊富な食品と組み合わせると、より効果的に便秘を解消できるでしょう。1日の摂取量は15~30ml(カレースプーン 2~4杯)が目安ですが、まずは食事にスプーン1杯程度取り入れてみるとよいでしょう。
ただし、油の摂りすぎは胃腸に負担をかけ、消化不良を引き起こすことがありますのでご注意ください。
(参照:Journal of Renal Nutrition VOLUME 25, ISSUE 1, P50-56, JANUARY 01, 2015)
(参照:Johns Hopkins Medicine「Foods for Constipation」)
便秘でオススメの食べ物 その③:プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)
便秘の解消には、腸内環境を整える善玉菌であるプロバイオティクスの摂取が大切です。
プロバイオティクスとは、腸内に自然に存在する微生物のこと。代表的なものに乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などがあります。これらはヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、みそ、キムチなどの発酵食品に多く含まれていますね。
プロバイオティクスを日々の食事に取り入れることで、腸内細菌のバランスを整え、便の排出をスムーズにする効果が期待でき津ことがわかっています。
実際に、腸内細菌を整えることで高齢者の便秘症状が改善されることが、2017年の複数の論文を検証したレビューで報告されています。この研究で、プロバイオティクスを摂取したグループは、対照群と比較して便秘が10~40%も大幅に改善しました。
また、プロバイオティクスの代表格、ヨーグルトの便秘緩衝効果も確認されています。
日本の明治乳業と昭和女子大学の生命環境科学部が共同で行った研究では、20代の女性を対象にLB81乳酸菌から作られたヨーグルトを食べることで便通頻度や便の量・形状がどう変わるかをみています。その結果以下のことがわかりました。
- 2週間ヨーグルトを毎日100g食べることで、排便回数が週平均3.2±0.8回から4.5±1.3回まで上昇し、も3.7±1.4回まで微増していた。
- 便の形状も2週間毎日100g食べることで、正常な便の割合が摂取中そして摂取後も増加した。
- 毎日250gに量を増やしても便通に対する効果に大きな違いはなかった。
としていますね。ヨーグルトは1日100gを目安にするとよいでしょう。
また、便秘治療で注目を集めているプロバイオティクスが「ケフィア」です。ケフィアはロシアのカフカース地方発祥の発酵乳製品で、乳酸菌と酵母の両方で発酵させるのが特徴です。これにより、腸内の善玉菌を増やし、腸の働きを活発にします。
日本で行われた小規模な臨床試験では、心身障害を持つ慢性便秘症の方42人を対象に、12週間毎食ごとに2gの凍結乾燥ケフィアを食事と一緒に摂取してもらいました。その結果、便秘症状が大幅に軽減されました。しかし、完全に便秘が治った方もいれば、効果がなかった方もおり、相性が大切であることもわかっています。
他の食材も同様に、まずは自分で試してみることが大切ですね。
ヨーグルトの他の効果についてはヨーグルトの効果と注意点について解説【花粉症・免疫力・ダイエット】も参照してください。
(参照:Archives of Gerontology and Geriatrics Volume 71, July 2017, Pages 142-149)
(参照:Japan Journal of Nursing ScienceVolume 15, Issue 3 p. 218-225. November 2017)
便秘でオススメの食べ物 その④:食物繊維
便秘の解消には、よく知られているように食物繊維が豊富な食べ物を摂取することが大切です。
こう言うと、便秘で悩む多くの人は「そんなことわかっている。便秘解消のために食物繊維をとっている」といいます。しかし大切なのは食物繊維の量です。
厚生労働省では、1日あたりプラス3~4gの食物繊維を摂取することを推奨しています。具体的な食品としては、そば、ライ麦パン、しらたき、さつまいも、切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、糸引き納豆、いんげん豆、あずき、おから、しいたけ、ひじきなどがあります。これらの食材は1食あたり2~3gの食物繊維を含んでおり、毎日の食事に上手に取り入れることで、便秘の改善に役立ちます。
日本の食事摂取基準では、男性で21g以上、女性で18g以上の食物繊維の摂取が推奨されています。しかし、欧米の研究では、1日あたり24g以上の食物繊維の摂取で、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病、乳がん、大腸がんなどの発症リスクの低下が認められています。そのため、アメリカ・カナダの食事摂取基準では、「14g/1000kcal」を目標値としています。一般成人女性のカロリー摂取量が1400~2000kcalであることを考えると、20~28gが欧米での食物繊維の推奨量となります。
このように、日本人の食物繊維の摂取量は少ないのが現状です。特に便秘を自覚している人は、思っている以上にしっかりと食物繊維を摂取するようにしましょう。
ちなみに、食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があります(両方を含むものもあります)。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 水溶性食物繊維:水に溶けやすく、水分を保持して便をやわらかくし、排便をスムーズにします。代表的な食べ物は、青菜、あずき、きくらげ、こんにゃく、大麦、海藻類(わかめ・昆布)、納豆などです。
- 不溶性食物繊維:水に溶けにくく、便の体積を増やして大腸を刺激し、排便を促します。代表的な食べ物は、ごぼう、イモ、きのこ、大豆、穀類、ココアなどです。
このように、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は役目が異なるため、2つをバランスよく摂取することが便秘解消には重要です。特に不溶性食物繊維ばかり取るとスルッとした便になりにくいので、水溶性食物繊維をよく取りつつ、不溶性食物繊維をとって便の量をしっかりとさせるというように摂るといいですね。
実際、食物繊維の便秘症に対する効果も実証されています。Raoらによる系統的レビューでは、最近11の研究を分析していますが、「食物繊維の補給は軽度から中等度の慢性便秘症や便秘型の過敏性腸症候群Iの方に有益である」と結論付けています。
ただし、厚生労働省でも注意喚起されていますが、あくまで食品由来の食物繊維の摂取が推奨されており、サプリメントでの大量摂取の有益性はまだ分かっていません。食事から栄養素を摂ることを心がけましょう。
(参照:e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」)
(参照:日本人の食事摂取基準(2020年度版)
(参照:Systematic review: dietary fibre and FODMAP-restricted diet in the management of constipation and irritable bowel syndrome)
便秘でオススメの食べ物 その⑤:オリゴ糖
便秘の解消には、食事にオリゴ糖を取り入れることが大切です。
オリゴ糖とは、糖質の中で最小単位である単糖が2個から10個程度結びついたもので、少糖とも呼ばれます。これは腸内細菌、特にビフィズス菌や善玉菌の栄養源となり、これらを増やすことで腸内環境を整える効果があります。実際、オリゴ糖は特定保健用食品としても認められている成分です。
腸内に善玉菌を直接摂取することを「プロバイオティクス」と呼びますが、オリゴ糖や食物繊維などの善玉菌の栄養になるものは「プレバイオティクス」と呼ばれますね。
実際に、オリゴ糖には整腸作用があり、腸内細菌を増やすことで排便を促進する作用があります。2007年のレビュー論文では、1日あたり5~15gのオリゴ糖を摂取することで、成人から高齢者の便秘症状を改善する可能性があると報告されています。
また、2024年韓国からの報告では、63名の、機能性便秘の患者さんを対象に、ガラクトオリゴ糖(GOS)の効果と安全性を評価したところ、以下の効果が認められています。
- 排便回数: GOS摂取群では、1日あたりの排便回数がベースラインの0.42回から4週間後には0.78回に有意に増加した。(p=0.0480)
- 便の形状: GOS摂取群はプラセボ群よりも便がより柔らかく、排便しやすくなる形状になった。
- 腸内細菌の変化:GOS摂取群では、ビフィズス菌と乳酸菌の数が有意に増加した。
- 結腸通過時間: GOS摂取群では、結腸通過時間がベースラインから21.41時間短縮さ
ただし、オリゴ糖の過剰摂取は、逆に胃腸の症状(下痢など)を引き起こすことが一部の報告で示唆されています。しかし、1日12g以下の摂取であればその可能性は少ないとされています。ですので、普段の食生活で砂糖をオリゴ糖に切り替えるだけでも、便秘解消に役立つかもしれません。
オリゴ糖を含む食品としては、大豆、ごぼう、玉ねぎ、バナナ、はちみつなどがあります。これらの食材を毎日の食事に取り入れることで、自然にオリゴ糖を摂取することができるでしょう。
(参照:eヘルスネット「オリゴ糖」)
(参照:Efficacy and safety of galacto-oligosaccharide in the treatment of functional constipation: randomized clinical trial)
(参照:Scand J Food Nutr. 2007 Jun; 51(2): 62–66.)
便秘でオススメの食べ物 その⑥:果物
果物も食物繊維も豊富で水分を多く含むものも多くあり、便秘解消にオススメな食材の1つ。特にキウイフルーツ・リンゴ・ナシ・ぶどう・ブラックベリーやラズベリー・プルーンなどが便秘に対して有用とされています。
上記に挙げた果物はどれもオススメですが、その中でもプルーンとキウイフルーツはそれなりに臨床研究でも証明されています。
キウイフルーツの摂取と過敏性腸症候群の関係を調べた論文によると、1日あたり2個のキウイフルーツを4週間摂取した方は、対照群と比べて、毎週の排便回数が増え、腸を通過する時間も短縮することが分かっています。また、2022年の複数の論文を検証したレビュー論文でもキウイの摂取により上部消化管の症状(消化不良や腹痛など)の症状が改善することが報告されました。
また、プルーンについても60歳以上の女性の便秘症を対象とした論文で、3週間にわたり50gずつプルーンを摂取すると、介入後1週目の終わりから3週目の終わりまで、便秘の重症度が低下したと報告しています。1週目から改善したということで、プルーンは比較的即効性のある対策といえますね。
(参照:Asia Pac J Clin Nutr. 2010;19(4):451-7.)
(参照:Adv Nutr. 2022 May; 13(3): 846–856.)
(参照:Bali Medical Journal. Vol. 7 No. 1. 2018)
最近注目されている便秘解消レシピ:梅流し
便秘解消目的にSNSで話題なったのが「梅流し」という調理方法です。梅流しとは、大根の煮汁に梅干しを加えて飲む健康法で作り方も非常にシンプル。必要な材料は、大根と梅干し、そして水だけです。
① 梅流しの材料
- 大根:1/4本(約300g)
- 梅干し:1~2個(お好みで調整)
- 水:600ml
② 梅流しの作り方
- 大根は皮をむき、いちょう切りにします。
- 鍋に大根と水を入れて火にかけ、沸騰したら弱火で20~30分ほど煮ます。
- 大根が柔らかくなったら火を止め、梅干しを加えて潰します。
- 粗熱が取れたら、大根と煮汁を一緒に飲みます。
大根は葉に近い部分を使うとより効果的で、梅干しは、無添加のものを使うとよいとされています。
➂ 梅流しは便秘に効果があるのか?
梅流しが良いとされる理由は、主に梅干しと大根のそれぞれの成分にあります。
- 梅干し:
- クエン酸:腸を刺激し、ぜん動運動を活発にする可能性があります。
- 乳酸菌:腸内環境を整え、善玉菌を増やすことで便通改善が期待できます。
- マグネシウム:便に水分を引き込み、柔らかくする効果があります。
- カテキン:抗酸化作用があり、腸内環境の改善に役立つと考えられています。
- 大根:
- 水分・食物繊維:便のかさを増し、腸を刺激します。
- 消化酵素(ジアスターゼ、プロテアーゼ、リパーゼなど):消化を促進し、腸内環境を整えます。
このように考えると、シンプルながらどちらも便秘にとっては「よい食材」といえそうです。特に梅干しの便秘改善効果については、2011年の臨床試験で一定のエビデンスが示されています。
同試験では便秘の患者40名を対象に、梅干しとオオバコ(食物繊維の一種)の効果を比較しました。その結果、梅干しを摂取したグループは、オオバコを摂取したグループよりも、1週間あたりの排便回数が有意に増加しました。また、便の硬さも有意に改善されています。
④ 梅流しの注意点
便秘解消のための梅流しは、比較的安全な方法ですが、以下のような注意点があります。
- 刺激物:梅干しや大根は、人によっては刺激が強すぎる場合があります。胃腸が弱い方や、消化器系の疾患がある方は、医師に相談してから行うようにしましょう。
- 塩分の摂りすぎ:梅干しには塩分が多く含まれるため、高血圧の方は注意が必要です。減塩タイプの梅干しを使用するか、摂取量を調整しましょう。
- 糖分の摂りすぎ:甘い梅干しを使用する場合は、糖分の摂りすぎに注意が必要です。
まとめ ~まずは医療機関にご相談を~
いかがでしたか?便秘を解消する食材を中心にいくつか紹介させていただきました。これ以外にもいろいろあるのですが、患者さんの状態にも異なりますし、おってご相談いただけたらと思います。
またつらい便秘症状を治すには?便秘の原因や解消法について解説でも解説しましたが、便秘の中には「隠れ疾患」があり検査が必要なものもありますし、生活習慣だけではなかなか改善されない場合もあります。
その際には、それぞれの方にあった薬物療法を行ってまいりますので、どうぞ気軽にご相談ください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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