PCR検査と同じ位置づけ。IDNOWによる新型コロナ感染症核酸増幅検査について

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院です。

  • 新型コロナ感染症かすぐ知りたい
  • 新型コロナ感染症かどうかなるべく正確に判断してほしい

などの要望にお応えして、当院では、IDNOWによる新型コロナ感染症核酸増幅検査を導入しました。今回は核酸増幅検査の特徴と精度・海外での位置づけについて解説していきます。

IDNOWによる新型コロナ感染症核酸増幅検査とは

Abbot社HPより転載)

IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査とは「新型コロナの遺伝子(RNA)を抽出・増幅することで、新型コロナかどうかを判定する」検査です。

従来、新型コロナかどうかを判定する検査方法として広く知られているものに「PCR検査」や「抗原検査」がありますが、今回の遺伝子検査は等温核酸増幅法の1つである NEAR法 (Nicking Enzyme Amplification Reaction)となります。

NEAR法の特徴としては、以下の通りです。

  • PCRと同じ「核酸検出検査」に該当する:10日以降の症状がある方の陰性証明にも使用することができ、ガイドライン上でもPCRと同等の信頼性を持っているのが特徴です。(参照:COVID-19病原体検査の指針による)(※ただし、簡便である分、後述するリアルタイムPCR法と比較すると精度として幾分劣ります
  • 非常に判定までがスピーディー: 検査自体は陽性に最短5分、陰性でも13分で判定することができます。(操作に追加で時間がかかりますので、複数人される場合は結果を電話連絡させていただく場合があります)
  • 海外渡航の陰性証明にも使用:検査の信頼性から、アメリカ(ハワイ含む)や韓国などの渡航の際にIDNOW™を用いた検査でも陰性証明として使用されています(流動性を伴いますので、事前に各大使館の情報を確認してください)。

では、なぜこれほど短時間でありながら、高い精度の検査ができるのでしょうか。

PCR検査の原理

PCR検査とNEAR法による検査を理解するには、遺伝子について理解しないといけませんね。(わかりやすくするためにかなり簡潔にしますのでご容赦を)

全ての生物の遺伝子はDNAとして保存されます(ウイルスはRNAですが)。DNAはよく下図を見ると思いますが、2つの鎖がつながるように記録されています。

遺伝子とは、DNAの中の特定の機能をもった一部分のことです。例えば「ウイルス特有の遺伝子があるか」を見るには、遺伝子を目で見るわけにいかないので「ウイルス特有の遺伝子」を増やして人間の目にもわかるようにしてあげる必要があります。そこで、PCR検査では、

  1. 温度を上げると、DNAが1本ずつに分かれるのを利用して、温度を上げて1本ずつにします。長いDNAであるほど、高い温度が必要になります。
  2. 「ウイルス特有の遺伝子」がわかる標識(プライマー)をつけます。標識をつけられると、プライマーの部分から先の部分だけ、DNAが増幅されるようになります。
  3. 特殊な酵素を用いて、もう片方のDNAを伸ばしていきます。両端を認識する必要があるので、プライマーは2種類必要ということになります。
  4. 急速に冷凍します。急速に冷凍するほど、長いDNAは結合しにくいですが、短いDNAは結合しやすくなります。両端にプライマーが付けられ短くなった「ウイルス特有の遺伝子」だけは、短いDNAになっているので、増幅しやすい環境になります。

このように、温度を上げ下げすることで目的となる遺伝情報を増やしていくのが「PCR法」です。(本当はウイルスはRNAなので、最初特殊な酵素を使ってDNAに変換しています)

非常に簡便であり、機械が自動でやってくれるので、人の手は最小限になります。また、各設定温度や時間を変えることで、様々な長さの「遺伝情報」にも対応できるのが特徴です。

しかし、温度を上げ下げしないといけない分、(ずいぶん短縮しましたが)時間がかかります。それを解決する方法がNEAR法でも見られる「等温核酸増幅法」。温度を上げ下げしないでも遺伝情報を増幅できる方法になります。

IDNOW™による「NEAR法」と「PCR法」の違いは?

上記を踏まえると、NEAR法とPCR法の違いは次の通りです。

  • NEAR法の方が素早くできる: NEAR法は等温核酸増幅法の1つで、温度を上げ下げせずに遺伝情報を増幅するので、時間が短縮されるのが特徴です。
  • NEAR法は短い遺伝情報をターゲットにするのに向いている:NEAR法の原理上、ターゲットとなる遺伝情報のサイズが(<100nt)と短くなります。

NEAR法を一言でいうと「短い遺伝情報をPCRよりも大量に作る」のが特徴です。IDNOW™の遺伝子検査では「ウイルスに特有の遺伝情報」を、短い領域に絞って増幅することで、さらに短時間に人間の目にも見えるようにしたものといえますね。そのため行っていることは「遺伝情報の増幅」であり、PCR法とおおまかな原理は同じです。(もちろん細かい部分では異なります)

ただし、短い領域に絞ってある分、リアルタイムPCR法と比較すると精度として幾分劣ります。

そのため実際に公費として「PCR検査」として使用する場合、症例によって使い分けています。

IDNOWによる新型コロナ感染症遺伝子検査の精度は?

では IDNOWによる新型コロナ感染症遺伝子検査 の精度はどれくらいでしょうか。

米国応急診療所(アージェント・ケア)5カ所で行われた計256例の検査結果では、PCR検査と比較して陽性一致率94.7%、陰性一致率98.6%でした。お互い手技上のエラーなども考えると、非常に高い精度だといえます。(Abott社HPによる)

また、臨床性能試験成績では、新型コロナ患者からの議事陽性検体30検体と陰性検体30検体で、すべて陽性陰性を正確に判別できています(IDNOW™添付文書による)。

また、英国型変異株や南アフリカ変異株などの変異株に対しても、検査の精度に影響がないことが確認されています。(詳細はこちら

実際それを受けてアメリカ(ハワイ含む)や韓国などでは、「IDNOW™の陰性結果で海外渡航における陰性証明としてよい」としており、非常に高い信頼性であることがうかがえるでしょう。(2021年11月現在)

IDNOWによる新型コロナ感染症遺伝子検査の費用

IDNOWによる新型コロナ感染 遺伝子検査の費用は次の通りです。

症状のある場合・濃厚接触者無料(公費でうけることが
できます)
症状のない場合15000円(診察料・税込)

* 症状のある場合は、事前連絡の上、発熱外来の受診をお願いします。(詳細はこちら

* 症状のない場合、お電話の上で検査を受けつけます
* 陰性証明書は別途「日本語3000円・英語5000円」かかります。(いずれも税込み)

自費の場合のIDNOW™検査の流れ

「旅行でIDNOWによる遺伝子検査を行いたい」という場合の流れとしては以下の通りとなります。

  1. 当院電話連絡にて日時を決定します。(検査時間は午前中9時30分~11時・午後15時~17時です)
  2. 来院後、遺伝子検査に関する同意書に記載していただきます。
  3. 遺伝子検査を行います: 鼻の奥から検体を採取します。
  4. 「証明書のお渡し」か「結果報告」:検査結果のお渡し時間は下記の通りです。
検査時間証明書のお渡し時間
午前中:9時30分~11時当日16時以降
午後:15時~16時30分翌日10時以降

*火曜日・土曜日・祝日前日は翌日が休診日のため、午前中のみ受け付けております。
*証明書が必要でない場合、「証明書のお渡し時間」を目安にお電話で通知いたします。
*原則高校生以上が対象となります。

海外渡航でIDNOW™の「新型コロナウイルス感染症遺伝子検査」を利用する場合

  • 遺伝子検査陰性証明は、一般的には検査実施から72時間有効となります。
  • アメリカやハワイ・韓国など、一部の地域の海外渡航の際、陰性証明書として使用することができます。
  • ただし、特定書類の用意や診断書の記載内容、各国の政府が指定する医療機関の有無ついては必ずご自身でご確認ください。
  • 検査当日、当院でも細心の注意を払って対応いたしますが、後日、書類不備等で渡航不可が生じた場合、当院では責任を負いかねますのでご了承ください。(証明書は厚生労働省で統一された当院書式のものになります)

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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