新しい変異株が生まれては流行の波を作り出してきた新型コロナ。
その主なコロナ変異株の変遷をたどると、武漢株・アルファ株・デルタ株・オミクロン株(BA.1株)・ステルスオミクロン株(BA.2株)・BA.5株・XBB株・XBB.1.5株、XBB.1.16株、EG株(エリス株)など多くの変異により人々の生活に多大な影響を与えてきました。
そして、今年度の夏、新しい変異株「KP.3株」が海外だけでなく日本でも主流株になっています。新しいコロナの変異株「KP.3株」とはどんな特徴があるのでしょうか?
国内外のさまざまなデータから、JN.1株の子孫株である新型コロナ「KP.3株」の主な特徴や症状などについて、一緒に見ていきましょう。
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コロナ変異株「KP.3株」とは?
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2024年夏から流行している最新株が「KP.3株」であり、冬に流行していた「JN.1株」の子孫の株です。
JN.1株は「突然変異株」として世界を騒がせていたBA.2.86株からの派生株となります。
BA.2.86株は去年5月にBA.2株(ステルスオミクロン)として日本に流行した株の派生株。BA.2株が収束したのちは、新型コロナはBA.5株、XBB系統への進化を進めていました。
しかし、2023年の8月に突然『過去の遺物』となっていたBA.2株から直接派生した新しい株がでてきました。それが「BA.2.86株(ピロラ株)」です。BA.2株系統と比較して30以上、今まで流行していたXBB系統と比較しても35個以上の変異をしており、世界に大流行を起こすのではないかと多くの科学者が懸念しました。
幸いBA.2.86株自体が日本に流行することは夏~秋にかけてありませんでしたが、冬になり子株の1つが日本に流行しています。それが「JN.1株」というわけです。(本来はBA.2.86.1.1株なのですが、点の数が多くなると新しい名称「JN.1株」として呼称されます)実際、JN.1株は日本でも2023年12月~2024年1月にかけて大流行をしました。
そして、そのJN.1株の流れを受け継いで2024年夏に流行しているのが「KP.3株」となります。
去年夏に流行したEG.5株とは、祖先がかなり大きく異なるため、「去年コロナにかかったから、今年はかからない」というわけにもいかなそうです。実際、東京大学医科学研究所の発表によると「オミクロンKP.3株は親系統株であるオミクロンJN.1変異株と比較しても、より高い免疫逃避能を保持し、高い免疫逃避能を保持する」としています。
このような現状から、今後JN.1株系統である「KP.3株」を中心に対策していくことになると考えられます。
(参照:WHO「Initial Risk Evaluation of JN.1, 19 December 2023」)
(参照:東京大学医科学研究所「SARS-CoV-2オミクロンKP.3株、LB.1株、 KP.2.3株のウイルス学的特性の解明」)
(参照:SARS-CoV-2 genome sequence prevalence and growth rate update: 6 December 2023)
(参照:SARS-CoV-2 genome sequence prevalence and growth rate update: 1 May 2024)
新型コロナ「KP.3株」は2024年夏の主要変異株
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日本での今の主流株はJN.1株の子株である「KP.3株」です。東京都の新型コロナウイルス感染症情報によると、2024年5月からすでにKP.3株が70.4%となっており、6月中旬には、KP.3株の割合は81.1%となっています。
KP.3株はJN.1系統の1種であり、他のJN.1株も加えると、JN.1系統の割合は現在97.3%にも及びます。
したがって、現在コロナに感染したとすれば、ほとんどの場合「JN.1株」特に「KP.3株」に感染した可能性が高いといえるでしょう。
(参照:)
コロナ変異株「KP.3株」の主な症状は?
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アメリカCDCではKP.3株について以下のように言及しています。
- KP.3株により他の亜種と異なる症状を引き起こすかどうかは、現時点では不明
- 一般に、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の症状は、どの変異種でも類似する傾向がある
- 症状の種類とその重症度は、通常、どの変異株が感染を引き起こすかよりも、その人の免疫力と全体的な健康状態によって決まる
そして、CDCではKP.3株を含む新型コロナの主な症状として以下をあげていますね。
- 発熱または悪寒
- 咳
- 息切れまたは呼吸困難
- 倦怠感
- 筋肉痛や体の痛み
- 頭痛
- 新たな味覚障害、嗅覚障害
- 喉の痛み
- 鼻づまりや鼻水
- 吐き気またはおう吐
- 下痢
オミクロン系統であることはこれまでの変異株と同じなので、KP.3株の潜伏期間は約3日(2日~5日)程度と考えられます。(JN.1株の子孫株なので、JN.1株の時と同様と考えられます)
![](http://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/wp-content/uploads/2024/07/コロナの症状-1.webp)
当院でのコロナの主な症状の内訳は以下の通りとなっており、主な症状の割合は以下の通りです。
- のどの痛み:75%
- 発熱:74%
- 鼻水:67%
- 咳・痰:53%
- 頭痛:41%
- 体の痛み:25%
- 息苦しさ:19%
- 倦怠感:11%
- 消化器症状:6%
- 味覚嗅覚障害:3%
よりコロナの症状について知りたい方は新型コロナの症状について【2024年最新版・期間や経過も紹介】もご参照ください。
一医療機関としての雑感で言えば、昨今、溶連菌感染症・アデノウイルス・インフルエンザも蔓延し、さらに新型コロナも拡大しつつある中で、より正しい診断・治療に結び付けるのが難しくなってきているのを感じます。
特に新型コロナは数あるウイルス感染の中でも症状が多彩になりやすいのは変わりませんね。逆にいうと、「喉だけ痛い」とか「咳だけ」などでコロナ陽性になる率はかなり減ってきているように感じます。(たまに上記の症状でも陽性になることがあるので断言できないのが、コロナの怖いところです)
いずれにせよ、各抗原検査を用いながら、本人の臨床症状や重症度、周りの環境や患者さんの背景など、総合的に考えながら、どこまで検査すべきなのかも考えて診療するようにしています。
当院での最新の症状の内訳は新型コロナの症状について【最新・喉の痛み・鼻水】を参照してください。
(参照:CDC「Update on SARS-CoV-2 Variant JN.1 Being Tracked by CDC」)
コロナ変異株「KP.3株」の重症化は?
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数多くの変異がある「JN.1株」から派生した「KP.3株」。重症化率に関してはどうなのでしょうか。
結論からいうと「KP.3株はこれまでの従来株よりも重症化しやすいウイルスである証拠は今のところありません」。
上図は、アメリカでの過去6か月の新型コロナによる死亡者数(青棒)と新型コロナの陽性率(オレンジの折れ線)を見たものですが、KP.3株が主流株の割合を増やしているのにも関わらず死亡者数の増加に至っているわけではありません。
アメリカCDCの発表でも「亜種と比べてKP.3株による深刻度(severity)が上昇する所見はない」としていますね。
一方、日本ではどうでしょうか。
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アメリカの現状とはうって変わって、KP.3株が台頭してきたのに伴って、感染者数も増加していますが、入院患者数も増加しています。
もちろんアメリカと日本で比べている指標が異なるとはいえ、日本では、入院患者数の増加に直結している点は注意が必要ですね。
去年EG.5株が台頭した時には、夏の感染者数は8月下旬がもっとも多い患者数をむかえ、9月から10月にかけておちついてきたので、今年もその傾向を踏襲するものと考えられます。
(参照:Trends in United States COVID-19 Hospitalizations, Deaths, Emergency Department (ED) Visits, and Test Positivity by Geographic Area)
(参照:Monitoring Variant Proportions)
(参照:東京都新型コロナウイルス感染症情報第15号【令和6年7月12日発行】)
コロナ変異株「KP.3株」についてのまとめ
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KP.3株についてまとめると次のようになります。
- KP.3株はBA.2.86株という今までの系統とは違った部分から突然派生し、変異数も多いJN.1株からの子株。
- したがって、非常に警戒されてきたウイルス群であるが、幸い現在のところ症状や重症化率に大きな影響を与えたというデータはない。ただし、東京都では感染者数と同時に入院患者数も増加しており、今後の増加に注意は必要。
- ただし、今後はKP.3株を中心としたJN.1株系統が主流になると考えられ、今後のデータの蓄積により変化する可能性がある
といえます。
もともと新型コロナは後遺症率が高く、高齢者にとっての重症化率が高いウイルスですが、幸い早期発見することで抗ウイルス薬が投与できたり、重症化させないためのプロトコルも確立されてきました。
昔は「何も治療がないから2週間自宅待機」だったのが、きちんと治療し自宅待機日数も短くコントロールできるようになったのは大きな進歩だと思います。
ただし、コロナ罹患後に記憶力が低下したり、立ちくらみが長期間続いたりなどの後遺症の方を見ている限り、コロナをただの風邪(≒ライノウイルス感染症)と同じとも思いません。
なるべくかからないに越したことはないウイルスであることには変わりありません。それぞれができる範囲内で流行期には感染拡大予防に努めた方がよいでしょう。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
はじめまして
Instagram(ユーザーネーム: @asagikouga24)です。
めちゃくちゃわかりやすいコラムありがとうございます。
画像をお借りいたしました。
よろしくお願いいたします。
朝霧様
承知いたしました。一応転載元(ひまわり医院)の名前だけつけていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
非常に分かりやすい説明をありがとうございます。
最近、ニュースでも新型コロナの話題を耳にする
ことが多くなってきていて心配です。
正確な情報をすこしでもしっておきたかったので
非常に助かりました。
そういっていただけると嬉しいです!ありがとうございます!