インフルエンザとマイコプラズマの同時感染について

ここ最近多いのが、マイコプラズマ肺炎です。特に2024年秋から爆発的に増加してきており、多くの方が咳や息苦しさでつらい経験をされていることでしょう。

そこに加わり、インフルエンザや新型コロナも流行の兆しを見せています。

その中で心配されているのは「同時感染」ですよね。単発でも辛いのに、マイコプラズマも併発したらどうなってしまうのかと思いますよね。

今回は、インフルエンザとマイコプラズマが同時感染した例について症状から臨床経過までご紹介していきます。

インフルエンザとマイコプラズマのそれぞれの症状の特徴については

また、インフルエンザと新型コロナの同時感染についてはインフルエンザと新型コロナの同時感染について解説【症状・薬・治療法】を参照してください。

マイコプラズマ流行に加え、インフルエンザも流行へ

マイコプラズマは2024年秋から例年にはない、爆発的な流行をみせています。

実際、東京都の報告によると、2024年11月には1定点あたり4人~5人となっており、これまでの年だと0.25人あまりでしたので、20倍近くの感染者がいることになりますね。

そこに加えて、インフルエンザも感染者数をのばしています。11月現在では1.12人程度ですが増加傾向にあります。ちょうど2019年の推移と近い様相とみせているので、12月から1月にかけてはインフルエンザにかかる方も増加するのではないかと考えられています。

もちろん新型コロナも今冬も増加する可能性は大いあるでしょう。

その中で、どちらも流行しているとどうしても発生しやすいのが「同時感染」です。

(参照:東京都「マイコプラズマ肺炎の流行状況」
(参照:東京都「インフルエンザ患者の増加に注意が必要です」

インフルエンザB型とマイコプラズマを同時感染した19歳女性の例

インフルエンザとマイコプラズマを同時感染するとどうなるのか。2例の症例報告からご紹介しましょう。

1例目は日本で2018年に報告された、生来健康の19歳女性の例です。

1週間以上続く発熱と咳で、病院に受診して「インフルエンザB」の診断を受けました。病院に来院されたときには、かなり強い肺炎を伴っていて、抗インフルエンザウイルス薬と一緒に、一般的な肺炎に使われる抗生剤を使われました。

しかし、彼女の呼吸状態が悪化して、酸素を投与するまでになりました。そこで、5日目にCTでとったところ、左肺がほとんど正常なところがないくらい、肺炎が悪化してしまいました。発熱も40度にまでおよびます。

そこで、抗生剤を変えながら、原因菌を痰の培養検査を用いて行ったところ「マイコプラズマ」と判明したのです。

幸い、この患者さんの命は助かりましたが、非常に治療に至る過程が難しく、難渋されたのがよくわかる例となっています。本論文でも「インフルエンザBに同時感染した影響で、呼吸器の粘膜がウイルスによってダメージがあったため、マイコプラズマがより拡散しやすく、重症化させやすかったのではないか」と考えられています。

(参照:A Case of Influenza B and Mycoplasma pneumoniae Coinfection in an Adult

鳥インフルエンザA型とマイコプラズマを同時感染した80歳女性の例

もう1例ご紹介しましょう。中国から報告された80歳女性の例です。

この方は、鳥インフルエンザAとマイコプラズマを同時感染されています。

もともとは生来健康。9日前に鶏肉を食べて、発熱と咳と痰の症状で病院に受診。インフルエンザAの診断で、PCR検査から「鳥インフルエンザ」と判明しました。抗インフルエンザウイルス薬が投薬されtましたが、発熱と息切れを感じるようになりました。

その後どんどん病態は悪化します。発熱は38.5度、呼吸回数も1分間に30~35回にもなり、血液の酸素濃度も58.4mmHgと非常に低い状態になりました。これは言ってしまえば、ずっと限界まで息を止め続けているのとほぼ同じような状態です。

そこで、同日ICU(集中治療室)に運ばれました。手で測る酸素飽和度は65%しかありません。CTをとると、重症肺炎と呼べる状況でしたが、同時にマイコプラズマに特徴的な「すりガラス状陰影」をきたしていました。そこで、マイコプラズマに使われる抗生剤を2種類投与したところ。徐々に症状が緩和して、ICUに入ってから、9日後のCTでやっと改善することができたのです。

彼女は本当にあと一歩のところで命を落とすところまでになったところ、一命をとりとめ、無事退院することができました。

どうしてもマイコプラズマは「学童や若い人の感染症」と頭がいきがちで、高齢者の肺炎でマイコプラズマは考えにくいですよね。そのため、マイコプラズマが流行している今は「高齢者でもマイコプラズマになりうる」ということを念頭においてほしいと思います。

(参照:Clinical characteristics from co-infection with avian influenza A H7N9 and Mycoplasma pneumoniae: a case report

当院でも、直近で「インフルエンザにかかったあとに、一度発熱がおさまってから、すぐ肺炎をきたした例」を経験しました。

もちろん症例報告で論文が出されるくらいなので、確率としてはまれでしょう。しかし、インフルエンザで診断されても症状があまりよくない場合もぜひ、来院していただきたいと思います。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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