朝起きたら、体に赤い腫れができていた。かゆい。でも、虫の姿は見ていない。そんなこと、よくありますよね。
- お腹や太ももの内側に、いつの間にか赤い腫れが2つ3つできている
- 夜中にかゆくて目が覚めるのに、同じ布団で寝ている家族は何ともない
- 市販のかゆみ止めを塗っているのに、1週間たっても治らない
こんな経験された方もいらっしゃるでしょう。一体なんの虫に刺されたのか、身に覚えがなくても何回も刺されてしまうという人もいます。
では、なんの虫に刺されたのか、蚊やブユ、ダニ、飲み、トコジラミ、毛虫など様々な虫の種類の刺され方の特徴を「刺された場所・跡の数と並び方・かゆくなるまでの時間」の3つの手がかりから解説していきます。
虫刺されの見分け方は「場所・並び方・時間」の3つで絞れる

虫刺されの原因を絞り込むとき、皮膚科の診察で必ずうかがうのは次の3点です。ご自身でも、この3つを思い出すだけで候補はかなり狭まります。
第1の手がかり:刺されたのは「服の下」か「出ていたところ」か
これが最初の分かれ道です。
半袖から出ていた腕、首、顔、足の甲といった露出部を刺す虫と、お腹、脇腹、太ももの内側、背中といった服の下のやわらかい部分を刺す虫は、はっきり分かれます。
服の下を刺されていたなら、その虫は服の中に入り込める虫、つまり寝具や室内にいる虫である可能性が高くなります。屋外で半袖の腕を刺されたのなら、蚊やブユなどの飛ぶ虫が候補になります。
第2の手がかり:跡はいくつあるか、並んでいるか
ぽつんと1つだけなのか。2つ3つがまとまっているのか。点線のように一直線に並んでいるのか。それとも、細かい赤いブツブツが数え切れないほど出ているのか。
数と並び方は、虫の種類によって傾向が異なります。たとえば細かい丘疹(ブツブツ)が首すじや腕に多発しているなら、刺す虫ではなく毛虫の毒針毛による皮膚炎を考えます。
第3の手がかり:かゆくなったのは「すぐ」か「翌日」か
ここがいちばん大切です。虫刺されの皮膚反応には、大きく2つのタイプがあります。
- 即時型反応:刺されて数分〜30分ほどで、直径2〜10mmほどの膨疹(もりあがるような皮疹)が出て、まわりの赤みは20〜30分でピークになります。数時間で引いていくのが典型です。
- 遅延型反応:刺されてから6時間〜2日ほど遅れて、かゆみの強い丘疹(かたい小さなもりあがり)が出ます。24〜36時間でピークになり、数日かけて引いていきます。
つまり、かゆくなった日と、刺された日は同じとは限りません。朝起きてかゆかったのなら、原因は昨夜の布団かもしれませんし、一昨日出かけた草むらかもしれません。トコジラミでは、刺されてから反応が出るまでに最大60時間かかった報告もあります。
「昨日から一昨日にかけて、どこで何をしていたか」を思い出すこと。これが決定的な手がかりになります。
【早見表】虫刺されの種類と見分け方

虫刺されの種類と見分け方の内容を先に表まとめます。ご自身の症状に近いものを探してから、該当する「虫刺されの特徴」についてお読みください。
| 虫 | 刺される場所 | 跡の数・並び方 | かゆみが出るまで | 多い季節・状況 |
|---|---|---|---|---|
| 蚊 | 露出部(腕・足・首・顔) | 1か所ずつ、散らばる | 直後(数分〜30分) | 春〜秋。屋外・網戸のすき間 |
| ブユ(ブヨ)・アブ | 露出部、とくに足首・すね | 1〜数か所。中心に点状の出血 | 半日〜翌日以降に強く腫れる | 春〜夏の渓流・キャンプ場・山間部の朝夕 |
| ツメダニ・イエダニ | 服の下のやわらかい所(脇腹・下腹・太ももの内側) | 2〜3個まとまる | 翌日以降。数日〜1週間続く | 梅雨〜初秋に多いが室内では通年 |
| ノミ | ひざから下(足首・すね) | 数個がまとまる。3つ並ぶことも | 直後〜数時間。強いかゆみ | ペットのいる家、野良猫の来る庭 |
| トコジラミ | 腕・脚・首・顔、パジャマの隙間 | 複数。一直線に並ぶことがある | 翌日以降のことが多い | 旅行・出張後、中古家具の搬入後 |
| 毛虫(チャドクガ) | 首・うなじ・腕など | 細かい赤いブツブツが多数 | 直後〜1〜2日後に増悪 | 庭木の手入れ・墓参りの後。春と初秋 |
| ハチ | どこでも(露出部が多い) | 1〜数か所 | 直後に強い痛み | 7〜10月、とくに8月 |
| マダニ | 首・わき・脚のつけ根など | 1か所。虫が皮膚についたまま | 痛みもかゆみもないことが多い | 春〜秋の草むら・山林・畑 |
| 疥癬(ヒゼンダニ) | 指の間・手首・わき・腹部・陰部 | 小さな丘疹が多発。線状の皮疹 | 初感染では2〜6週間後 | 季節を問わない。家族や施設内で広がる |
この表は目安です。同じ虫でも人によって出方が違いますし、複数の虫に同時に刺されていることもあります。
蚊による虫刺されの特徴

蚊はもっとも身近な虫刺されの1つですね。露出していた場所を1か所ずつ刺し、刺された直後に膨疹(ぼうしん)ができてかゆくなるのが典型です。
先ほど述べたとおり、即時型反応では直径2〜10mmの膨疹が生じ、まわりの赤みは20〜30分でピークを迎えます。遅延型反応が出る方では、24〜36時間後にかゆみの強い丘疹がピークになり、数日かけて引いていきます。子どもや、その地域の蚊に刺され慣れていない方では、翌日に大きく腫れるこの遅延型が目立つとされていますね。
「虫刺され」といえど、軽視はできません。意外と炎症反応は強く、耳や指などの場合は全体が赤くはれあがることも珍しくありません。また、かきこわした傷に皮膚の雑菌が入りこんだ場合は、「とびひ」になったり、蜂窩織炎といって点滴治療になったりすることもあるので、注意してください。
(参照:Insect bites and stings: antimicrobial prescribing)
ブユ(ブヨ)・アブによる虫刺されの特徴

渓流沿い、キャンプ場、山あいの朝夕に多い虫です。蚊のように針を刺すのではなく、皮膚をかみ切って吸血するため、刺し口に点状の出血が残るのが特徴です。足首やすねなど、ズボンのすそから出た部分をやられることがよくあります。
やっかいなのは反応の出方です。刺された直後はかゆみを伴う赤みだけのことが多いのですが、半日から翌日以降に急に強く腫れます。遅延型反応が主体だからです。放っておくと硬いしこり(結節)として残り、かゆみが数週間続くこともあります。
例えば、「山に行った翌日に足首がパンパンに腫れた」というときは、ブユやアブなどの虫を考えることが多いですね。腫れが強いときは早めに受診し、炎症を抑える治療を受けたほうが、しこりを残しにくくなります。
(参照:Insect bite reactions, Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology, 2013)
ツメダニ・イエダニによる虫刺されの特徴

「お腹や太ももの内側に2〜3個」「夜中にかゆくて目が覚める」「1週間治らない」という組み合わせで、まず考えるのが屋内のダニです。
家の中で人を刺すダニは、主にツメダニとイエダニの2種類です。なお、いわゆる「ハウスダストのダニ」であるヒョウヒダニ(チリダニ)は人を刺しません。 アレルギーの原因にはなりますが、刺され跡の犯人ではありません。
ツメダニ
体長0.6mm前後。畳やカーペット、布製ソファなどに生息し、ほかのダニやチャタテムシを捕らえて食べています。人を刺すのは偶発的(たまたま)ですが、刺されると強いかゆみと皮膚炎を起こします。夏や湿度の高い季節に相談が増えます。
イエダニ
体長0.7mm前後。もともとはネズミに寄生して吸血しているダニで、ネズミが死んだり巣を離れたりすると、人の生活圏へはい出してきて人を刺します。
刺される部位はわきの下、内もも、お腹など体のやわらかい部分で、赤く腫れて3〜4日かゆみが続きます。活動が活発になるのは5月ごろからで、6〜9月に被害が多くなります。天井裏の物音など、ネズミの気配に心当たりがあるときは、ダニだけを退治しても再発します。ネズミの駆除が対策の基本です。
ダニ刺されかどうかの見分けのポイント
屋内ダニによる虫刺されの特徴は3つですね。
- 服の下のやわらかいところ(脇腹・下腹・太ももの内側)を刺す。
- 単発か2〜3個がまとまってできるか、くらい。散弾銃のようにさされることはない。
- 刺された翌日以降にかゆくなり、しつこいかゆみが数日から1週間ほど続く。
そして大切なのは、室内のダニによる被害は季節を問わず起こりうるということです。「今は冬だから虫刺されではない」ということはないので注意してください。
実際の写真を含めた詳細は、当院の「ダニ刺されの特徴について解説【症状・薬・治し方やダニ対策】」もあわせてご覧ください。
ノミによる虫刺されの特徴

跳んで刺すため、跳躍で届く高さ、つまり足首やすねに被害が集まります。ズボンとシャツのすき間、ウエストのあたりを刺されることもあります。
日本の住宅で問題になる代表はネコノミです。イヌを飼っているお宅で見つかるノミも、多くはネコノミです。犬や猫を飼っている、あるいは野良猫がよく来る庭やベランダがある、といった心当たりがあれば、ノミの虫刺されを疑います。
症状は強いかゆみを伴う丘疹や小さな水ぶくれで、3個ほどがまとまって並ぶ配置をとることがあります。ノミの唾液に過敏な方では、丘疹性蕁麻疹(痒疹)といって、かゆい皮疹が長く残るタイプの反応になることがあります。
(参照:Flea bites, DermNet / Dermatitis caused by Ctenocephalides felis (cat flea) in human, 2014)
トコジラミによる虫刺されの特徴

「トコジラミは昔の虫でしょう」と思われがちですが、近年、日本でもトコジラミによる虫刺されの相談が増えています。東京都や大阪府の公的なページでも、相談件数の増加が注意喚起されています。海外・国内の旅行者の往来が戻ったことが背景にあるとみられています。
トコジラミの生態
体長5mmほどの平たい虫で、ベッドの継ぎ目、マットレスの縁、家具の裏、壁の隙間などに潜みます。幼虫・成虫とも雄雌を問わず血液だけを栄養源とし、4〜10日に1回吸血します。1日に3〜6個の卵を産み、卵から約1か月で成虫になります。夜間に活動し、衣服から出ている手足や首を刺します。
トコジラミの刺され跡の特徴(2026年の系統的レビューより)
症例報告84例をまとめた2026年の系統的レビューによると、皮疹の部位は腕が71.4%、脚が59.5%、体幹が34.5%でした。小児では顔面が60.0%と多く、まぶたの病変は小児にのみみられました。皮疹の形はぷっくり盛り上がる「丘疹」が76.2%、ぺったりとした「斑状」が53.6%、水膨れになる「水疱型」が約20%とされていますね。。
トコジラミの特徴の1つに「刺し跡が点線のように一直線に並ぶ」パターンがあります。実際に上記の論文では45.2%ありました。もちろん、並んでいないからトコジラミではないとは言えないので注意が必要ですね。
トコジラミも(かゆすぎて放置できないと思いますが)放置してはいけません。
なんと、繰り返し吸血されることによる貧血が、中年成人で14.8%、高齢者で25.0%に報告されているのです。さらに不安やストレスなどの心理的な症状が9.5%、睡眠の障害が15.0%(女性)と、生活への影響が大きいことも特徴になるので、ぜひ注意してください。
実際の写真を含めたトコジラミの詳細については、トコジラミの症状と対策についてもありますので、あわせてご参照ください。
(参照:Clinical manifestations of bed bug bites: A systematic review of case reports, PLOS One, 2026)
毛虫(チャドクガ)による虫刺されの特徴

庭木の手入れやお墓参りのあと、首やうなじ、腕に細かい赤いブツブツが多数出て、猛烈にかゆい、という場合に考えるのが毛虫皮膚炎です。代表的な原因はチャドクガで、ツバキ、サザンカ、チャノキなどにつきます。
意外に思われるのですが、毛虫に触っていなくても起こります。
チャドクガの幼虫は、長さ0.1mmほどの目に見えない毒針毛を全身にまとっており、蛹になる直前の幼虫では約50万本に達するといわれています。この毒針毛は風で飛び、干していた洗濯物に付着することもあります。さらに、卵、幼虫、脱皮した殻、蛹の表面や繭、成虫と、すべての段階に毒針毛が付いているため、成虫のいない時期でも被害が起こります。
つまり「虫を見ていない」ことは、毛虫皮膚炎を否定する根拠にはなりません。
症状は、触れた直後にかゆみを伴って赤くなり、1〜2日後にかゆみの強い赤い丘疹が多発します。かゆみと痛みが2〜3週間続くこともあります。
実際の写真を含めた詳細は、当院の「毛虫に刺されたら?毛虫皮膚炎の症状や治し方・予防法について」をご覧ください。
ハチ・ムカデによる虫刺されの特徴

ここまでは「かゆみ」が主役の虫でしたが、刺された瞬間に強い痛みが走る虫もあります。
ハチ
刺されると激しい痛みと灼熱感があり、その後赤く腫れます。日本ではハチ刺されによる死亡が年間20人前後(2023年は21人)報告されており、その多くはアナフィラキシー(急激に全身に広がるアレルギー反応)によるものです。刺傷は7〜10月の4か月で全体の88%を占め、8月が最多です。
とくに注意していただきたいのは、過去に刺されたことがある方です。刺された後に、じんましんが全身に広がる、息が苦しい、声がかすれる、めまいや吐き気がする、意識がもうろうとするといった症状が出た場合は、迷わず救急要請をしてください。以前にハチ刺されでアナフィラキシーを起こしたことがある方は、アドレナリン自己注射薬(エピペン)の適応について専門の医療機関にご相談ください。
ムカデ
強い痛みと腫れが生じます。局所の症状が中心ですが、まれに全身症状が出ることがあります。刺された(正確にはかまれた)直後は流水でよく洗い、腫れが強いときや症状が広がるときは受診してください。
マダニによる虫刺されの特徴

ここまで見てきた虫の多くは、かゆみ止めを使いながら数日から1〜2週間で落ち着いていきます。しかし、見つけたらすぐに受診していただきたいものがあります。マダニです。
ほかの虫と決定的に違う点
マダニは、刺してすぐ逃げるのではなく、皮膚に何日も食いついたまま血を吸い続けます。10日間以上吸血していることもあります。痛みもかゆみもないことが多いため、「黒いほくろが急にできた」「イボができた」と思って来院される方が少なくありません。
実際の写真を含めたマダニについては、当院の「マダニに刺されたら?マダニの大きさから症状・マダニ対策について解説」もご覧ください。
絶対にご自分で引き抜かないでください
無理に引き抜くと、マダニの口器が皮膚の中に残って化膿することがあります。皮膚科などの医療機関で、適切な除去と消毒の処置を受けてください。
また、マダニは、頻度は高くないものの、「SFTS」「日本紅斑熱」などの重い感染症を媒介することがあります。
草むら、山林、畑仕事、ペットの散歩のあとに虫が皮膚についていたら、取らずにそのまま医療機関へ。そして刺された後は数週間程度、発熱・だるさ・下痢などの体調変化に注意し、症状が出たら必ず「マダニに刺された」と伝えて受診してください。
疥癬による虫刺されの特徴

こういう方が、ときどきいらっしゃいます。
- 虫刺されだと思って市販のかゆみ止めを塗っているが、1か月以上治らない
- 夜になると、眠れないほどかゆい
- 家族や、同じ施設で暮らす方にも、同じような症状が出ている
このとき考えるのが、疥癬という皮膚の病気です。原因はヒゼンダニというごく小さなダニですが、これまでの虫とは決定的に違う点があります。
刺して逃げるのではなく、皮膚の角質層の中に棲みついて、卵を産みながら増えていくのです。だから治りません。塗り薬でその場のかゆみを抑えても、皮膚の中のダニは減っていないからです。
そんな疥癬の特徴は以下の通りとなっています。
- 潜伏期間:初めての感染では2〜6週間。すでに一度かかったことがある方の再感染では1日〜数日と短くなります。つまり症状が出たときには、すでに1〜2か月前から始まっていることになります。介護施設やご家族の中で気づかないうちに広がるのは、このためです。
- かゆみ:夜間に強くなります。就寝して体が温まると増強するのが典型です。
- 出やすい場所:指の間、手指の側面、手首の内側、肘、わきの下、へその周り、腰、殿部、太ももの内側、足の甲。女性では乳房や乳輪、男性では陰茎・陰嚢にも出ます。
- 疥癬トンネル:ヒゼンダニのメスが角質層に掘る、3〜7mmほどの白い線状・弧状の皮疹です。
- 感染のしかた:5〜10分程度の濃厚な皮膚の接触が目安とされます。通常疥癬では、体にいるダニの数は成虫10〜15匹程度です。一方、免疫が落ちた方に生じる角化型疥癬(重症型)では数百万匹に達し、感染力が格段に強くなります。
ぜひ、「全身にブツブツがある」「老人ホームで働いている」「ホームで疥癬が出た」などの場合はぜひ皮膚科に来院するようにしてください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
















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