円形脱毛症は繰り返す?円形脱毛症のストレス以外の原因や再発率・治療についても解説

自分の頭をさわったり見たときに、円形脱毛が見つかったらショックが大きいですよね。(お気持ちお察しします)特にヘアスタイルやおしゃれを気にする女性にとってはなおさらです。

  • 円形脱毛が広がる前に早めに治したい
  • 円形脱毛がまた他の場所にできたらどうしよう
  • また円形脱毛が繰り返してしまうか心配

など、数多くの心配があるでしょう。今回は、さまざまな不安の声の中から「円形脱毛症は繰り返すのか」と「円形脱毛症の再発率」「円形脱毛症の治療法」を中心に説明していきます。

円形脱毛症とは

多発型の円形脱毛症
(多発型の円形脱毛症)

円形脱毛症とは、文字通り頭の一部が円形や楕円形に近い形で突然脱毛する疾患です。円形脱毛症というと10円玉のような脱毛をイメージされる方が多いのですが、実際には以下のように様々な形があります。

  • 通常型円形脱毛症: 類円形の脱毛が単発の「単発型」と脱毛班が複数の「多発型」があります。
  • 全頭型円形脱毛症: 脱毛が全ての頭に広がっているタイプ
  • 汎発型円形脱毛症: 脱毛が頭だけでなくて全身に及ぶタイプ
  • 蛇行型円形脱毛症: 頭の生え際が帯状に脱毛されるタイプ

また、重症度は脱毛部の面積の割合と、頭以外の脱毛があるかどうかで判断します。

円形脱毛症は急性期と固定期があり、牽引試験(プルテスト)や皮膚を見る拡大鏡(ダーモスコピー)で毛の状態を見ながら「どの状態の円形脱毛症なのか」を判断していきます。

(参照:円形脱毛症治療の考え方―毛周期の変調からみた病態と治療理論―

円形脱毛症の原因はストレスだけではなく、繰り返す可能性も

自己免疫性疾患による円形脱毛症のしくみ

「円形脱毛症はストレスからくる」と思われがちですが、実は原因は様々です。一番大きな原因は毛を包む組織に対する自己免疫性疾患と考えられています。

免疫とは、体内に入ってきた異物を認識して排除するシステムのこと。これがなんらかの異常をきたすと、全く無害な自分の細胞や組織を攻撃するようになります。つまり円形脱毛症の原因を大ざっぽにいうと「毛を支える組織になぜか自分から攻撃するようになってしまった」と考えられています。

具体的には、Tリンパ球をはじめ免疫細胞が毛根、特に毛の細胞分裂を促す「毛母細胞」を直接攻撃し、細胞分裂ができなくなるようにします。細胞分裂が十分できなくなった毛根はダメージを受けて毛根から脱毛していくと考えられています。ただし、正確な病態生理はまだ解明されていません。

そこに、円形脱毛症になりやすい方や円形脱毛症の「きっかけ」として考えられているのが下記の疾患です

  • アトピー素因や遺伝子型:円形脱毛症の方800例中187例(23%)の方が、アトピー性皮膚炎を合併していたと報告されています。
  • 基礎疾患:甲状腺機能低下症・尋常性白斑・全身性エリテマトーデス・関節リウマチ・I型糖尿病などの基礎疾患で円形脱毛症になることがあります。甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の患者が、円形脱毛症を併発していると言われています。
  • 栄養不良:貧血や亜鉛不足、ビタミンD欠乏症などの栄養不良により円形脱毛症を発症することがあります
  • インフルエンザや新型コロナ、ピロリ菌感染などの感染症
  • 出産などを契機にした女性ホルモンバランスの変化:一般的に産後3~4か月後に女性ホルモンの低下から抜け毛が多くなるとされています。この時に円形脱毛症として発症することがあります。
  • 精神的、肉体的ストレス:確かにさまざまな精神疾患との関連性を示唆する報告もあります(詳細はこちら)。強いストレスは交感神経に異常をきたし、頭部の血流が悪くなることで、悪化させると考えられています。また、うつ病や不安症と円形脱毛症の関連も認められています。

このようにストレスがきっかけになることもありますが、ストレスが原因でない場合も多く「円形脱毛症=ストレス」とは一概にはいえません。

そのため、円形脱毛症の原因が1つでない以上、繰り返す可能性も十分あるのです。

(参考文献:Alopecia Areata: Review of Epidemiology, Clinical Features, Pathogenesis, and New Treatment Options.Int J Trichology. 2018 Mar-Apr; 10(2): 51–60.)

(参考文献:Shellow WV, Edwards JE, Koo JY: Profile of alopeciaareata: a questionnaire analysis of patient and family, Int J Dermatol, 1992; 31: 186-189)

(参考文献:Muller SA, Winkelmann RK: Alopecia areata, an evaluation of 736 patients, Arch Dermatol, 1963; 88: 290-297)

円形脱毛症はどれくらいの確率で繰り返す?

このように、円形脱毛症はさまざまな原因で発症しますので、もちろん繰り返すこともあります。

では、どれくらいの確率で円形脱毛症は繰り返してしまうのでしょうか。

実は海外の報告では、円形脱毛症の再発率は4~85%とかなり幅があります。それは、重症度や基礎疾患によっても異なるからです。

例えば、アトピー性疾患や内分泌疾患などの背景がない場合、1年以内に80%くらいの方が回復するといわれています。特に単発性であまり大きくない場合、再発率も高くありません。

一方、欧米の複数の報告からは、円形脱毛症がある程度進行していると「34~50%の方は1年以内に毛髪が回復するが、14~25%は全頭型や汎発型に移行し、その場合は回復率は10%以下である」とする報告もあります。このようなケースだと再発率もだんだん高くなっていきます。

そして「円形脱毛症が進行されている方での治療による再発率は38%であった」とする報告もあるので、進行すればするほど高い再発率になっていくのです。

また、重度の小児円形脱毛症の場合、早期にステロイドの点滴という非常に強い治療を行い良好な反応をを示したのにも関わらず、8か月で7割が再発してしまったというデータもあります。

このように、状態によって再発しやすいのも円形脱毛症の特徴でしょう。特に

  • 円形脱毛症の遺伝的な体質がある場合
  • もともと重度のアレルギー疾患がある方(アトピー性皮膚炎など)
  • 汎発性に近い、多発型の円形脱毛症の方
  • 自己免疫性疾患など、基礎疾患がある方
  • 精神的なストレスや精神疾患を抱えている方

などの場合は再発率が高いので、それぞれの状態に合わせて検査や治療を追加してコントロールしています。

(参照:Messenger AG, McKillop J, Farrant P, et al: British Association of Dermatologists’ guidelines for the managementof alopecia areata 2012, Br J Dermatol, 2012; 166:916-926)

(参照:Bin Saif GA, Al-Khawajah MM, Al-Otaibi HM, et al: Efficacy and safety of oral mega pulse methylprednisolone for severe therapy resistant alopecia areata, Saudi Med
J, 2012; 33: 284―291.(レベル III))

(参照:High Relapse Rates Despite Early Intervention with Intravenous Methylprednisolone Pulse Therapy for Severe Childhood Alopecia Areata

円形脱毛症の治療は?

薬

では、繰り返しやすい円形脱毛症に対して、どのような治療法があるのでしょうか?

円形脱毛症の治療ガイドラインで比較的推奨される治療法を中心にご紹介していきます。

① 局所のステロイド治療薬

ステロイドとは、もともと体内の副腎(ふくじん)という臓器でつくられているホルモンです。このホルモンがもつ作用を薬として応用したものがステロイドで、炎症や免疫を抑える働きがあります。

ステロイドの使い方として、塗り薬の方法や局所注射・内服・ステロイドパルスといって点滴で大量に投与する方法など様々ありますが、患者さんの脱毛状態や希望をご相談しながら使い分けていきます。(ステロイドパルスの場合は入院が必要なので、適切な連携施設に紹介します)

② 塩化カルプロニウム外用薬

外用薬とは「塗り薬」のことです。塩化カルプニウムは血行を促進するはたらきがあり、髪を形成する毛細胞が活性化し、発毛が促進される効果が期待できます。1日2~3回頭皮全体に振りかけてマッサージしながら行います。

③ グリチルリチン・グリシン内服療法

グリチルリチンは主要成分は甘草(カンゾウ)という植物に由来する天然成分です。炎症やアレルギーを抑える作用や肝臓の働きを改善する作用などがあり、円形脱毛症の治療に用いられます。副作用も少ないですが、カリウムが下がることが指摘されているので、長期にわたる場合は採血することもあります。

④ 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

円形脱毛症は、アトピーをはじめとしたアレルギー疾患との関連が指摘されているので、抗ヒスタミン薬の内服は理に適っているといえます。ガイドライン上も併用療法として推奨されています。ただし、円形脱毛症に対する保険適応はないので、アトピー素因があると判断された場合になります。

他には、エキシマライトによる紫外線療法液体窒素による冷凍療法ミノキシジル外用療法局所免疫療法JAK阻害薬などの免疫を抑える治療などが有効性が示唆されております。上記で保険適応でない治療方法もあり、患者さんの状態を見ながら適切にアドバイスしていきます。(詳細はこちら

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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