秋から冬にかけて寒くなるとトラブルになりやすいのが「乾燥肌によるかゆみや湿疹」。
よく冬になるとお風呂上りに肌がガサガサになってしまったり、書くとポロポロ皮膚がはがれたりすることはありませんか?
これは全て「乾燥肌」によるもの。薬を使ってかゆみを一時的に止めても、乾燥肌自体を治さないと、いつまでも繰り返す羽目になってしまうのです。
では、乾燥肌によるかゆみや湿疹はどのように対処すればよいのでしょうか?今回は乾燥肌の原因から薬・スキンケアの方法に至るまでわかりやすく解説していきます。
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乾燥肌の原因は?
そもそも、なぜ肌が乾燥してくるかご存じですか?
肌の乾燥とは、文字通り「肌から水分が抜けていく状態」。そして、肌が乾燥して炎症してしまうことを、医学的には「乾燥性湿疹」「皮脂欠乏性湿疹」といいます。
しかし、皮膚にはバリア機能があるので、肌が正常なら水分が過剰にぬけていくことはありません。
具体的には、皮膚は水分を外へ逃がさないよう、「皮脂」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子(NMF)」を使ってコントロールしています。それぞれの役割は次の通りです。
- 皮脂:皮膚の表面を覆い(皮脂膜)水分の蒸発を防ぎます。また、紫外線や皮膚の様々な刺激から保護しています。
- 角質細胞間脂質: 角質細胞と角質細胞のすき間を埋めている脂のこと。肌の内側の水分を維持して、刺激を和らげる働きがあります
- 天然保湿因子(NMF):角質層にあるアミノ酸や塩類などのこと。角質細胞の水分を維持します。
しかし皮脂や天然保湿因子などの成分量は一定ではありません。年齢や性別・環境の変化・部位によって皮脂の量は大きく異なります。またライフスタイルによって、必要な皮脂の量も異なります。
そして、水分バランスが崩れて過剰に水分が肌から失われた結果、「乾燥肌」になってしまうというわけなのです。実際、水分バランスが崩れる原因として、以下のことが考えられています。
- もともと皮脂の分泌が少ない: 皮脂の分泌量は個人差も大きいため、皮脂が過剰に出る方もいますし、乾燥肌になりやすい方もいます。体質として皮脂の分泌が少ない場合、バリア機能は低くなりやすく炎症を起こしがちです。
- 外の環境の変化: 冬に外の湿度が低下するため、乾燥が進むのは皆さん経験しますよね。夏も大量に汗をかいたり、冷暖房の影響で肌の乾燥が進みます。
- 紫外線:UVA(紫外線A波)とUVB(B波)に分けられます。UVAは肌のシワやたるみに関わり、UVBは肌の細胞障害に関係しています。紫外線を長期間浴びると乾燥がすすむ原因になります。
- 加齢:加齢とともに水分やセラミドなどの細胞間脂質・天然保湿因子(NMF)が低下していきます。水分を保つ土台が減るので、乾燥肌は進みやすくなります。
- 生活習慣の変化:ライフスタイルが変化により乾燥肌がすすみます。(後述します)
乾燥肌による湿疹の特徴は?
では、乾燥肌による湿疹(乾燥性湿疹)と他の湿疹の見分け方はあるのでしょうか?ポイントとしては次の通りです。
① 「カサカサした肌」がベースにある
当然ながら、乾燥肌による湿疹は下地のベースが「カサカサ」しています。乾燥した台地と潤っている台地を比較するとわかりますのが、乾燥した台地は触りごこちもザラッとしていて、肌のキメも荒くなり、白い粉が吹くこともありますね。さざ波や鱗のように見えることもあるでしょう。
そうなったら、相当乾燥が進んでいるサイン。今、かゆみや湿疹が出ていなくても何かのきっかけで炎症が生じやすくなっているので、この時点から保湿ケアをした方がよいでしょう。
② 乾燥が進みやすい場所にかゆみや湿疹が生じやすい
体には、乾燥によるかゆみが生じやすい場所が決まっています。特にさまざまな刺激をうけやすい以下の場所には注意が必要です。乾燥によるかゆみが生じやすい
- すね
- 膝うら
- ひじ
- 手の甲
- くちびる
- 目の周り
- ほほ
とくにご高齢の方はすねをバリバリ書いてしまって繰り返している人を良く見ます。あとは、乾燥肌でかゆくて、自分で掻き壊した結果、以下の場所も湿疹が生じていることがあります。
- おしり(臀部)
- 背中(ナイロンタオルによる)
- 腰
- 太もも
- 首
なので、冬場になってこれらの場所に湿疹やかゆみが生じているなら、気を付ける必要がありますね。
③ 搔き壊して悪化させやすく、繰り返しやすい
乾燥肌によるかゆみの厄介な特徴として「搔き壊して悪化させやすい」ことがあげられます。
ベースの地肌が乾燥して刺激に弱くなっていると、掻き壊した刺激に対しても敏感に反応して、炎症が強くでやすいのです。
また、肌が乾燥する大きな要因として「普段の生活習慣」や「体質」があげられます。
- もともと乾燥しやすい体質なのにも関わらず保湿ケアを怠っていた
- 長時間のお風呂や熱いシャワーを使用していた
- 十分に水分の摂取する習慣があまりない
乾燥させやすい生活習慣をしていると、せっかく乾燥肌によるかゆみを治療してもまた繰り返してしまいます。
そのため、乾燥肌によるかゆみを繰り返している方は、通常の保湿ケアや生活習慣の改善はもちろんのこと、「個人個人のライフスタイルのどの部分で乾燥肌が進みやすくなっているか」を考えなる必要がありますね。
そして、「乾燥肌によるかゆみがない=治った」と考えず、アフターケアをしっかり行うことが非常に大切です。
乾燥肌による湿疹(乾燥性湿疹)の薬は?
では、乾燥肌によるかゆみや湿疹はどのような薬や治療をするのでしょうか。大きくわけて3つのタイプの薬を使います。
① 炎症やかゆみを除去する「塗り薬」
まずは、乾燥肌が原因にせよ炎症を除去する必要があります。そのため、その人の肌にあった「炎症を抑える薬」を使います。
当院では、毎回肌の状態を観察しながら、その人に合わせた「炎症を抑える薬」を使用するようにしています。ただし、時期やライフスタイルの変化によって、適切な「炎症を抑える薬」のレベルや量は変わってきます。
なので、繰り返す場合は定期的な診察が必要になってきます。
② 保湿剤
どうしても、かゆいのを抑えてくれるので「炎症を抑える薬」ばかり使う傾向にありますが、当然乾燥肌によるかゆみでもっとも大切なのは「保湿剤」です。
保湿剤にはかゆみを抑える力はありませんが、乾燥肌によるバリア機能を整えてくれるほか、定期的に使うことで悪化や繰り返しを最小限に抑えてくれます。
例えば、クリニックで扱う保湿剤は「ヘパリン類似物質」「尿素入り軟膏」「ワセリン」「ユベラ®」「ザーネ®」などがあり、肌質に応じて使い分けています。
保湿剤を使いながら、乾燥する原因を除去する。これが乾燥肌によるかゆみや湿疹を繰り返さないためにも、もっとも重要なことです。
どうしても繰り返す場合には、当院でも一緒に乾燥する理由を考えますので、ぜひご相談いただけたらと思います。(ずっと生活習慣を監督しているわけではないので、一緒に悩んだりすることもしばしばです)
③ かゆみを抑える「飲み薬」
乾燥肌による炎症は「ヒスタミン」という経路を介して「かゆみ」として感じるので、しばしばヒスタミンの作用を抑える飲み薬を補助的に使用することがあります。
また、かゆみによって搔いてしまった結果「じんましん」として発症している人もいるので、じんましんを抑える意味もありますね。
ただし、乾燥肌の治療はあくまで「塗り薬」が基本になります。
乾燥による湿疹(乾燥性湿疹)へのスキンケアのポイントは?
普段から乾燥肌になりやすい方は、普段のスキンケアが一番大切。ではどのようなポイントになるのでしょうか。もっとも大切なのは「保湿」になるので、保湿を中心にスキンケアのポイントを紹介します。
① 適切な保湿剤を選ぶ
保湿剤は「油分がしっかりしているしっとりタイプ」から「化粧水のようなさっぱり」まで様々あります。
「油分が多いタイプ」のほうがべたつき感を感じる一方、肌をコーティングする力は強まります。逆に、化粧水のよなタイプのほうが塗りやすいですが、肌をコーティングする力は弱くなります。
乾燥肌が強い方は、水分が肌から逃げやすい肌質が多く「油分が多いタイプ」のほうがよいかもしれません。一方、夏場だと油分がおおくべたつくと、寝る時などに不快に感じやすくなります。
季節や肌質に合わせて適切な保湿剤を選ぶのが保湿ケアの第一歩。多くの種類があるので、ぜひ気軽にご相談ください。
② 保湿剤を適切な量つける
よく「もったいないからチビチビつけてた」といわれることがあります。
残念ながら、チビチビつけていても本来の保湿効果は得られることができません。適切な保湿剤の量を付けることが大切です。適切な量はローションや軟膏・泡状のものなど多数あり、剤型によって大きく変わります。
適切な量の目安でよく使われるのが「FTU(フィンガーチップユニット)」。軟膏の場合、1FTUは大人の人差し指に一番先から第1関節までに乗る量で、これが大人の手のひら2枚分の面積に塗る量として適切な量になります。ちなみに1FTUは0.5gに相当します。
ローションの場合は、1円玉の大きさが「1FTU」。ヒルドイドフォーム®の場合は製品のキャップ大が2FTU(=1g)にあたります。
肌としては、ちょうどテカるくらいが目安になるので、保湿剤を適切な量使うようにしましょう。
③ 保湿剤をムラにならないようにつける
意識しないで塗りやすいところだけ塗っていると、当然ですがムラになりやすくなります。すると「保湿されている場所」と「保湿されていない場所」に分かれるので、保湿されていない場所は乾燥肌がなかなか治りません。
- 1FTUを意識しながら塗る
- 保湿剤を場所別に量をおいてから塗り始める
- 保湿剤の塗り方をルーティン化する
など様々な方法があります。どうしてもムラが出来てしまう方は、ぜひご相談ください。
④ 保湿剤をすりこまない
時々皮膚科の薬は「刷り込んだ方が効果がでやすい」と考えている方もいます。しかし、すりこむ薬もありますが、原則肌に塗り薬をすり込むと肌の炎症を誘発させてしまうので、保湿剤はすりこまないことが大切です。
⑤ 保湿剤は頻度も大切
「よく保湿剤をわすれてしまう」という方もいます。保湿剤はかゆみを抑えるわけでもないので、忘れる気持ちもよくわかります。
しかし、肌の状態や場所によっては、回数を重ねることで改善するケースがあります。「なかなか乾燥肌が治らない」と感じる方は保湿剤の頻度を上げると効果的です。なかなかケアする時間が取れないのもわかりますが、ちょっとしたひと手間が肌の質を大きく上げます。
他にも数多くのポイントがありますし、個人個人でアドバイスが異なります。ぜひ保湿に関してもご相談いただけますと幸いです。(参照:2018年アトピー性皮膚炎ガイドライン)
乾燥肌の日常生活の注意点は?
ここでは乾燥肌にまつわる「一般的な」注意点を解説していきます。それぞれで乾燥の原因になっているものは異なるので、ご注意ください。(参照:2020年皮膚搔痒症診療ガイドライン 2018年アトピー性皮膚炎ガイドライン )
① 入浴や洗顔は手早くやさしく行う
入浴は肌を直接刺激するため、最も気を付けなければいけない日常生活の1つです。例えば、以下を意識するとよいでしょう。
- ナイロンタオルでゴシゴシしすぎない: 綿などの柔らかいタオルや手で洗う
- 脱脂力の強い石鹸やボディーソープを使わない: 低刺激のものを選び、泡で優しく洗うようにしましょう
- 熱すぎる湯船につからない: 体感よりもややぬるめの40℃以下のほうが望ましいです
- 長湯しすぎない: 湯船に皮脂がとられていきますので、長時間の入浴で肌の乾燥はすすみます
② 衣類に気をつける
肌着など皮膚に触れるものは、合成繊維などでなく、刺激の少ないものを選びましょう。また、特に肌が敏感な乳幼児では、衣類に使われる洗剤でも反応することがありますのでご注意ください。
③ 加湿をしっかりする
冬に乾燥肌に悩む方が多いように、空気の乾燥は乾燥肌に大きく影響します。ストーブや暖房でさらに乾燥が進みやすくなるため、部屋の空気を加湿するようにしましょう。
④ 食事内容にも気を配る
肌も体の一部なので、栄養が足らなくなると、当然肌の質も悪くなります。特にダイエットで偏った食生活をしたり、加工食品や外食が中心の場合、栄養バランスが取れていないことが多く、乾燥肌に影響します。
多くのミネラルやアミノ酸・ビタミンなどが複合的に働いて、肌を形成しています。単一の成分にこだわらず、バランスのよい食生活を心がけるようにしましょう。
⑤ 紫外線から身を守る
「紫外線=夏」のイメージが強いですが、冬にも当然紫外線はあります。紫外線にはUV-AとUV-Bの2種類が主ですが、どちらもコラーゲン線維の減少や肌の細胞障害を通じて、肌の質に大きく影響することがわかっています。
日焼け止めクリームを使用したり、帽子や長袖を着用したりして、紫外線から身を守るようにしましょう。
⑥ 生活のリズムを整える
睡眠不足やストレス・生活のリズムの乱れは、皮脂の分泌にも大きく影響します。普段から肌トラブルが多い方は、(仕事の関係上なかなか難しい部分もあると思いますが)規則正しい生活を心がけるようにしましょう。
他にも、日常生活で気を付けなければならないことは多くありますが、個人個人に合わせてアドバイスするようにしています。どうぞ乾燥肌でお悩みの方は、当ひまわり医院に気軽に相談してください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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