脂肪肝を改善する食事について【コーヒー・バナナ】

脂肪肝の症状や原因については、脂肪肝の症状や原因・薬物治療についてわかりやすく解説でお話していきました。簡単にいうと前項では

  • 脂肪肝は症状がほとんどなく、いつのまにか肝硬変や肝がんへと発展する可能性があり、放置すべきでない状態である
  • 脂肪肝の原因は単なる「肥満」以外にも様々な原因があるが、生活習慣と密接に関係しやすい。
  • 脂肪肝にも効果のある薬物治療はいくつかあり、余病などに応じて処方される。

ことをお伝えしました。

しかし、脂肪肝を改善する上「食事」と「運動」は欠かせません。そしてそのほかの生活習慣も脂肪肝の改善には必要になります。では、どのような生活習慣が脂肪肝を改善させるのでしょうか?

今回は、脂肪肝の方への「食事」に焦点をあててわかりやすく解説していきます。

脂肪肝での食事ポイント①: 減量とカロリー制限をする

肥満が脂肪肝の原因ではないケースもあるとは言え、肥満を伴う脂肪肝の方は全例「減量」が求められます。肥満の方が減量するだけで脂肪肝が大きく改善するからです。実際、

  • 5%の体重減少で、脂肪肝による「生活の質」が改善される
  • 7%の体重減少で、顕微鏡で見た時の肝臓にある脂肪の沈着率が低下する
  • 10%の体重減少で、肝臓の線維化(肝硬変への所見の1つ)も改善する

ことが報告されています。

しかも体重減少させるなら、最初に5%以上体重を落とすかは非常に大切です。2023年の脂肪肝と体重の関係をみた研究によると、脂肪肝が発見されて1-2年間で5%の体重減少をした方は1-2年後の肝臓の炎症を表す「ALT」が大きく下がりやすく、その効果は4-5年後のALTにも表れていたことがわかっています。しかも最初に5%体重を下げた方は約60%は体重減少を維持していたとも報告されています。

だからこそ、最初に体重を減少させる意思がとても大切です。「今が人生で一番若い日」です。今から取り組んでいきましょう。

大丈夫です。同論文では脂肪肝の20~40%は5%以上の体重減少を実現できています。あなたにもきっとできるはずです。

そのため、肥満を伴う脂肪肝の方は全例「低カロリー食」です。具体的には「通常のカロリーよりも30%低下させたカロリー制限食」が多くの論文で評価されています。

日本人の食事摂取基準(2020年)から考えると、1日に必要な摂取エネルギー量として

  • 18歳~29歳:男性2650 kcal、女性2000kcal
  • 30歳~49歳:男性2700kcal、女性2050kcal
  • 50歳~64歳:男性2600kcal、女性1950kcal

とされています。(身体活動レベルが普通の場合)そのため、脂肪肝の方は多くとも1日摂取エネルギー量は30%減の

  • 18歳~29歳の脂肪肝の方:男性1855 kcal、女性1400kcal
  • 30歳~49歳の脂肪肝の方:男性1890kcal、女性1435kcal
  • 50歳~64歳の脂肪肝の方:男性1820kcal、女性1365kcal

を目指すことになりますね。また、運動量に応じて消費カロリーが増加するため、これを考慮に入れるようにしましょう。(通常の生活レベルなら上記のカロリーを上限にすればOKです)

よくカロリー制限は「脂質制限」「糖質制限」と比較されがちですが、賛否両論です。脂肪肝に関しては「カロリー制限」の方が優勢であり、2009年に発表された論文によると「低カロリーの食事は、どの主要栄養素を重視するかに関係なく、臨床的に意味のある減量をもたらす」としています。

したがって、炭水化物50%、脂質20%を目安にしていただき、ややタンパク質の量を多めに摂取するくらいの意識づけの方がよいでしょう。

(参照:Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates.N Engl J Med. 2009 Feb 26;360(9):859-73.)
(参照:日本消化器病学会・日本肝臓学会ガイドライン「NAFLD/NASH」2020年度版
(参照:Long-term weight changes are associated with initial weight changes after nonalcoholic fatty liver disease diagnosis

脂肪肝での食事ポイント② 不飽和脂肪酸を意識する

脂肪肝を改善させるなら体重減少だけでなく「脂肪」にこだわるようにしましょう。

脂肪にも大きく分けて「不飽和脂肪酸」と「飽和脂肪酸」があるのを知っていますか?脂肪肝では「飽和脂肪酸をとらないようにして、不飽和脂肪酸を積極的にとる」ことが原則です。

飽和脂肪酸とは、脂肪酸のうち炭素同士の二重結合を持たない脂肪酸のこと。牛や豚の脂肪やバター、マーガリンなどの動物の脂肪に多く含まれます。飽和脂肪酸はエネルギーの生成やコレステロール値を上げる効果があり、脂肪肝にとっても悪い影響を与えることがわかっています。

一方、不飽和脂肪酸とは炭素同士に二重結合を含む脂肪酸のこと。植物性油脂や魚介類に多く含まれます。体内で合成できず、食事で摂る必要がある「必須脂肪酸」も不飽和脂肪酸です。

実は、この「不飽和脂肪酸の摂取」は脂肪肝に大きく関わります。

例えば、ドイツで行われた258名を対象とした3年にもわたるランダム化試験によると、不飽和脂肪酸とタンパク質を積極的にとったグループはBMIの変化は対象群と同じなのにも関わらず、12か月後の肝臓の中の脂質の量が大きく42%も低下することがわかっています。(対照群22%減少)

また、不飽和脂肪酸の多い地中海食と低脂肪高炭水化物を比較した試験では、画像で見た時の脂肪肝率は、対照群39±4%に対して地中海食群7±3%と大きく改善していました。

不飽和脂肪酸にも「オメガ-3系」「オメガ-6系」「一価不飽和脂肪酸」などがありますが、以下を意識するとよいでしょう。

  1. オメガ-3脂肪酸(EPA、DHA):魚介類や亜麻仁油などに含まれるオメガ-3脂肪酸は、抗炎症作用があり、脂肪肝の改善に役立ちます。 一般的に、30~49歳の1日の摂取目安は男性2.0g、女性1.6g、50~64歳の場合、男性は2.2g、女性は1.9gです。
  2. オメガ-6脂肪酸:大豆油やとうもろこし油などに含まれるオメガ-6脂肪酸も、適量に摂取することができます。 一般的にオメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸の摂取比率は、2:1くらいが理想的とされています。2020年の日本人の食事摂取基準による30~49歳の1日の摂取目安は男性10g、女性8gです。
  3. 一価不飽和脂肪酸: オリーブ油やアボカド油、ナッツ類に多く含まれるモノ不飽和脂肪酸は、肝臓への負担を軽減する効果があります。

不飽和脂肪酸の多い、地中海食については地中海食は認知症やダイエットに効果がある?地中海食の論文によるエビデンスを紹介!もあわせてご参照ください。

ただし、不飽和脂肪酸の効果は「上乗せ効果」です。カロリー制限を意識した食事が前提であることに注意してください。

(参照:The Mediterranean diet improves hepatic steatosis and insulin sensitivity in individuals with non-alcoholic fatty liver disease.J Hepatol. 2013 Jul;59(1):138-43. doi: 10.1016/j.jhep.2013.02.012.

脂肪肝での食事ポイント③: アルコールの摂取を控える

アルコールは脂肪肝の大きな要因の1つです。アルコールをとりすぎると、脂肪酸から中性脂肪が大量に作られ肝臓の細胞に蓄積されるので、脂肪肝が起こりやすくなります。

通常過剰な飲酒量はエタノール換算で60gと言われていますが(日本酒3合)、60g未満であればよいかというとそうではありません。例えば、アルコール摂取量と脂肪肝へのリスクに関して下記のように言われています。

  • 女性では1日1杯のアルコール摂取が長期禁酒者と比較して肝硬変リスクを増加させるが、たまに飲む人には脂肪肝のリスク増加はありませんでした。
  • 1日に5~6杯飲むと、女性で12.44倍、男性で3.8倍の脂肪肝のリスクがある。
  • 1日に7杯以上飲むと女性で24.58倍、男性で6.93倍の脂肪肝のリスクがある。

また、欧米の他の研究では、「男性については1日当たり純アルコール10~19gで、女性では1日当たり9gまでで最も死亡率が低く、1日当たりアルコール量が増加するに従い死亡率が上昇」「飲酒量が増加すれば、飲酒している時点で全死亡率があがってくる」などとする論文もあり、

飲酒しないでストレス発散できるなら、他の方法で代用した方がよさそうです。脂肪肝を改善させたいと思うのなら、アルコールは控えましょう。

もっとも「お酒がどうしても人生に不可欠!」という方もいらっしゃると思うので、その際にはせめて「日本酒1合」「ビール中瓶1本まで」を目安にしてください。

(参照:Fatty Liver Disease-Alcoholic and Non-Alcoholic: Similar but Different. Int. J. Mol. Sci. 2022, 23(24), 16226; https://doi.org/10.3390/ijms232416226
(参照:Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality
(参照:厚生労働省「アルコール」

脂肪肝での食事ポイント④ コーヒーやビタミンEもおすすめ

「よく脂肪肝に効果のある栄養素は何ですか?」と聞かれますが、脂肪肝によい栄養素として真っ先にあげるのは「ビタミンE」です。

実際、2020年の脂肪肝(NAFLD)のガイドラインでも示されている通り、ビタミンE摂取は「強く推奨」されています。実際、2010年に行われた多施設大規模ランダム化試験によると、ビタミンEを400 IU/日を6か月投与することで、肝臓の脂肪化を有意に改善していることが示されています。

ビタミンEを多く含む食材として(数字は可食部100gあたりのビタミンE量)

  • 乾燥アーモンド:30mg(10粒で14g)
  • らっかせい:11mg(からつき10粒で25g)
  • ひまわり油:39mg(大さじ1杯で12g)
  • オリーブ油:7.4mg(大さじ1杯で12g)
  • うなぎ:7.4mg(1尾150~200g)
  • すけとうだら:7.1mg(1尾50g)
  • 豆乳:2.2mg(コップ1杯200g)

などがあげられますね。2020年の食事摂取基準では18~49歳で男性6.0mg、女性5.0mg、50~74歳で男性7.0mg、女性5.5~6.5mgと言われています。

しかし、ビタミンEは脂溶性ビタミンの1種でサプリメントなどで過剰に摂取する場合は過剰投与によるリスクに注意が必要です。(詳しくは脂肪肝の症状や原因・薬物治療についてわかりやすく解説を参照してください)

また、コーヒーも脂肪肝に有用であることがわかっています。

例えば、複数の論文を統合して分析した結果によると、コーヒーを飲むことによって脂肪肝になるリスクは29%減少することがわかっています。さらに、コーヒーを飲むことで肝臓の線維化のリスクも30%減少することがわかりました。

ただし、カフェインのリスクもあると思いますので、午後3時以降はデカフェのコーヒーにしていただき、カフェインの過剰摂取には注意しましょう。

(参照:Coffee consumption and risk of nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2017 Feb;29(2):e8-e12.

脂肪肝にバナナはオススメ?

脂肪肝の食事の中で注目されている食材に「バナナ」があります。しかし、バナナは本当に脂肪肝の食事としてオススメなのでしょうか?

結論からいうと「特にグリーンバナナの成分が、脂肪肝を抑える効果が注目されている」ことがわかっています。

グリーンバナナとは、まだ未成熟な青い状態のバナナのこと。その皮の部分(green banana peels)は動物実験で脂肪肝を抑制する効果があることがわかっています。

また、特にグリーンバナナや全粒粉のシリアル、納豆などの豆類に含まれている難消化性デンプンにも脂肪肝の抑制につながるのではないかという研究もあります。

しかし、グリーンバナナは日本ではまだ市場に多くなく、❶両端をカットして❷水にさらしてラップに包み❸レンジで2~3分加熱したのち❹皮をむくことで初めて食べられる、いわゆる「バナナ」とは異なるといっていい食材。

成熟したバナナも100gあたり食物繊維1.1gが含まれているほか、ビタミンCやビタミンEなども含まれており、栄養価は高いですが、糖質も100gあたり21.4g含まれています。

ですので、全体の食事の糖質量やカロリーを考えながら摂取してほしいですね。

(参照:Resistant starch from green banana (Musa sp.) attenuates non-alcoholic fat liver accumulation and increases short-chain fatty acids production in high-fat diet-induced obesity in mice
(参照:Banana green peels extract protects against nonalcoholic fatty liver disease in high-fat-fed mice through modulation of lipid metabolism and inflammation

脂肪肝の食事のポイントのまとめ

いかがでしたか?今回は脂肪肝の食事のポイントに焦点をあてて解説していきました。脂肪肝の食事ポイントをまとめると

  • カロリー制限を意識する。炭水化物や脂質の比率はあまり気にしなくてよいが、なるべくタンパク質中心にして、バランスよく。
  • 脂質の種類にも気を配る。飽和脂肪酸は少なく、不飽和脂肪酸は意識して積極的に摂取。
  • アルコールの摂取はなるべく控える。「過剰摂取にならなければよい」ではなく、他の方法でストレス発散をしながら、毎日の摂取からやめていく。
  • ビタミンEやコーヒーの摂取も脂肪肝を抑える作用として有用である。
  • 特にグリーンバナナの成分が脂肪肝に有用という研究もあるが、バナナそのものに糖質が多いので、全体のバランスを考えて摂取をする。

といえます。もちろん、脂肪肝の生活習慣の改善は食事だけでなく、運動(有酸素運動やレジスタンス運動)や日々の生活リズムを整えることも大切です。必要があれば投薬でサポートすることもできます。

ですので、肝臓の数値が高かった、脂肪肝を治したいという方もお気軽にご相談ください。実際、食事日記を見せてもらい、投薬なしで順調に10㎏程度減量できている方も通院しています。

私自身も30㎏ほど減量した経験もあり、一通りの減量でのつまずくポイントもわかるつもりです。

がんばりに応じて私もいろいろアドバイスしますので、治したい方、ぜひ一緒にがんばりましょう。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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コメント

    • やまだ
    • 2024年 11月 15日 11:33am

    マーガリンの脂質は逆に悪いでしょ

      • Daisuke Ito
      • 2024年 11月 18日 5:53am

      やまだ様

      そうですね。マーガリンは「飽和脂肪酸」に分類されるので、なるべくとらない方が望ましいです。(色んな食品に入っているので、取らざるを得ないことが多いですが)

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