- 花粉症を薬なしで乗り切ってみたい
- アレルギーを対症療法でなく根本から治したい
- アレルギーの数値が高く、症状も強いのをなんとかしたい
という方はいませんか?アレルギーを根本から治すなら舌下免疫療法がオススメです。時間はかかりますが、アレルギーを根本から改善することができますよ!今回は舌下免疫療法の効果や副作用、実際かかる費用についてお話していきます。
舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を毎日ゆっくり体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく治療法のこと。
100年以上前から行われているアレルゲン免疫療法(減感作療法)の1種で、主にアレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」がありましたが、近年では舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で治療できるようになりました。
舌下免疫療法の効果は?

舌下免疫療法はスギとダニアレルギーに効果がある治療方法。例えばスギ花粉症に対する効果は、
- 薬を全く使用しなくても無症状となる、根治の例: 17.4%
- 薬物療法と同等以上の効果が期待できる例:60%
- 無効な例: 8.7%
となっています。ダニアレルギーに関しても(例えばミティキュア®で1年間治療した場合)
- 約80%の方が効果があり、鼻の症状が約50%軽くなる
- そのうち、約20%の方が症状が出なくなる
ことがわかっています。
また、舌下免疫療法の効果は鼻や眼のアレルギー症状を抑えるだけではなく、他のアレルギー疾患にかかりにくくなることがわかっています。
例えば、ダニ通年性アレルギー性鼻炎の方に舌下免疫療法を3年から5年行った方は、15年後にダニ以外(花粉など)の新規アレルゲンに感作したのは5年間服用された方で11%に抑えられました(施行しなかった方は15年で100%新規アレルゲンに感作します)
つまり、「ダニアレルギーの治療薬なのに、他のアレルギーに対しても改善されてくる」というわけですね。
さらに舌下免疫療法には喘息発症の予防効果があることも知られており、今後の発展性にも期待される治療法です(日本では喘息に対する舌下免疫療法の保険適応がまだありません。また重症の気管支喘息患者さんは受けられないので注意が必要です)(喘息への有効性の詳細はこちら)
喘息の基本的な治療については成人の気管支喘息について解説【治療法や吸入の仕方・日常生活の注意点】も参照してください。
(参照:スギ花粉症舌下免疫療法の治療3年目112例の臨床効果)
(参照:Long-lasting effects of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study. J Allergy Clin Immunol. 2010 Nov;126(5):969-75.)
舌下免疫療法の副反応は?

舌下免疫療法の副反応は、一般的に次の通りです。
- 口内、口唇のかゆみ(14.5%)・口腔内や舌根部のむくみ(16.9%)
- じんましんや湿疹などの皮膚症状:1-5%未満
- 腹痛、嘔吐などの消化器症状:1%未満
- 喘息発作
- その他(耳のかゆみ・喉の炎症や違和感・くしゃみ・鼻みず・鼻詰まり・目のかゆみ)
があげられます。(カッコ内の数字はミキテュア®のもの)製剤にかぎらず副反応として口腔内トラブルが比較的多く出やすいのが特徴です。
一方、舌下免疫療法に伴う重篤な副反応は極めてまれであり、従来の注射による方法よりもかなり安全です。舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは10万回に1回程度。稀な確率ですが、ショック症状が出るときは、特に次の時に多いといわれています。
- 薬を飲んだ直後から30分の間
- 舌下免疫をはじめた時から1か月の間
- アレルギーの原因物質(スギ花粉、ダニ)が多い時
があげられます。そのため、舌下療法を開始する場合は必ず30分間は院内に待機していただきます。アナフィラキシーショックについてはアナフィラキシーについて解説【食べ物・原因・治療・薬剤】を参照してください。
他、治療の中断に至るような副反応としては大部分は喘息発作や消化器症状があげられます。
(参照:ミキテュア®の添付文書)
舌下免疫療法にかかる費用は?

例えば、シダキュア5000によるスギ花粉の舌下免疫療法の患者さんの負担は次の通りです。
診察 | 診療費用 | 薬剤費 |
アレルギー検査費用 | 4000円~5000円 | |
初回投与日(14日分) | 再診の場合 660円 | 1060円 |
2回目以降(30日分) | 660円 | 2090円 |
概ね、アシテア®やミキテュア®も薬剤費同じくらいなので、定期的な通院で30日間で2000~3000円程度、年に30000円前後と考えておけばよいでしょう。(3割負担の場合)
なお「スギ花粉症もダニアレルギーも同時に治療したい」という場合は、複数投与することができますので、その際には薬剤費が上乗せになります。
舌下免疫療法の種類は?

現在日本で認められている舌下免疫療法として
- スギ花粉症: シダキュア®
- ダニ花粉症: アシテア®・ ミティキュア®
があげられます。ハウスダストはアレルギーを引き起こすものの混合物のことで98%以上がダニです。そのため、ハウスダストのアレルギーがある方は舌下免疫療法で症状がよくなる可能性が高いと考えられます。
アシテア®はミティキュア®の5.7倍多くダニ抗原が含まれる点で異なりますが、どちらがよいかはまだわかっていません。
スギ花粉症の舌下免疫療法であるシダキュア®はスギ花粉の飛散時期に始めることができません。アレルギー物質であるスギ花粉の飛散量が増えるので、体へ予想以上に吸収されてしまうからです。ご注意ください。
一方、アシテア®・ミティキュア®はアレルギーが収まっていればいつでも開始できます。
(参照:スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き)
舌下免疫療法の治療の流れ

舌下免疫療法までの流れは以下の通りです。
① アレルギー検査・診察
まずアレルギー検査や問診・身体診察など行い、アレルギー症状がスギやダニによるものかを含め診断していきます。
他院採血データを持参していただく方法でも問題ありません。アレルギー検査については血液アレルギー検査(VIEW-39、RAST)について解説 【費用・原理・信頼性】をご参照ください。
② 舌下免疫療法初回
舌下免疫療法の初回投与は、薬によるアレルギー反応がでないか確認する目的で院内で行います。
治療薬の錠剤を舌下(舌の裏)に置きます。錠剤は舌下ですぐ溶けますが、1~2分はそのままにしておき、そのあと飲み込みます。飲み込んだ後の5分間は飲食やうがいができません。
その後、初回はショックなどの副反応がでないか確認する目的で約30分間、待機してもらいます。
③ 舌下免疫療法増量期~定期通院
初回投与から2週間は増量期です。決められた量を舌下に投与しながら、少しずつ体を慣れさせていきます。
その後は3年~5年定期的に通院していただきながら継続します。定期通院は1か月に1回のペースになります。副作用が起こらないようにするため、投与中は
- 投与後はうがいや飲食を避けること(5分ほど)
- 投与前後は激しい運動や入浴を避けること(2時間ほど)
- 自己判断で服用を中止・再開しないようにすること
などに注意が必要です。
各薬剤に対しても以下のサイトから詳しい説明がありますので、参照してください
舌下免疫療法が受けられない方・注意が必要な方

舌下免疫療法が受けられない方・注意が必要な方は以下の通りです。
① 受けられない方
- 対象のアレルギー(スギ花粉・ダニ)ではない方
- 重い気管支喘息の方
- 悪性腫瘍(がん)や自己免疫系の病気がある方
② 注意が必要な方
- アレルゲンを使った治療や検査によってアレルギー症状をおこしたことがある方
- 気管支喘息の方
- 65歳以上の方
- 妊婦の方、授乳中の方
- 抜歯後や口の中の術後、または口の中に傷や炎症などがある方
- 重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方
- 他に服用中のおくすりがある方(特に非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬<MAOIなど>)
- 全身性ステロイド薬の投与を受けている方
- 対象以外のアレルゲンに対しても反応性が高い方
なお当院では12歳以上の方が対象となります。事前にお薬手帳などで医師が確認して投与の判断を行いますので、持参をお願いいたします。他にご不安な点がありましたら、当院医師にお気軽にご相談ください。
あわせてこちらもオススメです
- 成人の気管支喘息について解説【治療法や吸入の仕方・日常生活の注意点】
- 血液アレルギー検査(VIEW-39、RAST)について解説 【費用・原理・信頼性】
- アナフィラキシーについて解説【食べ物・原因・治療・薬剤】
- ダニ刺されの特徴について解説【症状・薬・治らない時やダニ対策】
- 花粉症とコロナの違いは?花粉症の原因や治療・対策についても解説
【この記事を書いた人】
一之江ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
この記事へのコメントはありません。