こんにちは。一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。突然ですが、
- 最近、痛みをともなう赤いブツブツが片側に出てきた
- 急に頭がガンガンするようになり、いつもの頭痛と違う
- うでにブツブツはでていないけど、ピリピリと違和感がある
という方はいませんか?もしかしたらそれは帯状疱疹かもしれません。帯状疱疹は放置すると急速に進行し、後遺症を残しやすい疾患です。さらに、帯状疱疹病気に気が付かないと人にうつす可能性も十分あるのです。
今回は、帯状疱疹の原因から具体的な症状、他の人にどれくらい移る可能性があるのかを含めて解説していきます。
帯状疱疹ワクチンについては帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン・シングリックス®)についてで解説していますので、あわせてご参照ください。
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帯状疱疹とは?帯状疱疹の症状は?
帯状疱疹とは、その名の通り「帯状に広がる水ぶくれの皮疹(疱疹)」のことです。この疾患は
- 身体の左右どちらか一方にあらわれること
- ピリピリと刺すような痛みをともなうこと(あまり痛みを感じない方もいます)
- 続いて赤い斑点(はんてん)と小さな水ぶくれが帯状にあらわれること
と症状の出方が非常に特徴的であることから「帯状疱疹」と名付けられました。
帯状疱疹は以下のように
- 「前駆痛」の期間
- 「急性期の痛み」の期間
- 「帯状疱疹後神経痛」の期間
の3つに分かれます。それぞれの経過の特徴は以下の通りです。
① 「前駆痛」の期間
数日前から1週間前から「ピリピリしたような違和感」を感じることがあります。(中にはない方もいるので、『必ず』ではありません)頭や顔に帯状疱疹が発症した場合は、「目の痛み」や「片頭痛」として訴えられる方も多く、この時期での診断には難渋します。
帯状疱疹による痛みが疑われる場合は、1週間程度で特徴的な皮膚の所見が出てくることから、短期間でもう一度来院していただく場合があります。
② 「急性期の痛み」の期間:発赤からカサブタまで
その後、痛みとともにポツポツ赤みや水ぶくれが出てくるようになります。よくみると「水ぶくれがはっきりしている」のが帯状疱疹の特徴の1つです。ただし、ヘルペスでも似たような皮膚の所見になることが多く、1個しか皮疹がない場合はヘルペスとして治療されていることもしばしばです。
そして、ひどくなると、典型的な「片側だけの帯状の皮疹」になってきます。(まれに全身性になる「汎発性帯状疱疹」になることがあります)こうなると、「ヒリヒリいたい」「夜も寝られないほど辛い」と訴える方も少なくありません。
さらに、足や腕の場合だと非常に広範囲になりやすいほか、顔面にで出てくる場合は目に障害が出たり、顔面神経節に影響が出たり、聴力に関わることがあるので部位によって注意が必要です。
帯状疱疹の炎症が治まってくると、徐々に「痂皮化(かひか)」といってカサブタのような状態になります。ここまでになると、(他の皮疹の状態によりますが)他の方への感染力は弱くなります。
③ 「帯状疱疹後神経痛」の期間
皮膚の一連の「ただれ」などは治まっているのにも関わらず、神経痛だけ残る方がいます。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。帯状疱疹神経痛は
- 「表現しづらい違和感がずっと帯状疱疹のあったところに残っている」
- 「衣服がすれただけでも体がチクチク感じ、日常生活に支障が出てくる」
帯状疱疹後神経痛は3週間~3か月続く方が7~25%・6か月位まで続く方が5~13%いるとされています。6か月以上続くと治療にも非常に難渋しますね。治療内容については、【ビリビリする神経痛】神経障害性疼痛の原因や治療についてにまとめていますので、あわせて参考にしてください。
帯状疱疹の原因は?
帯状疱疹の原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」と呼ばれるウイルス感染症によるものです。子供のころにかかった「水ぼうそう」と同じウイルスになります
実は「水痘・帯状疱疹ウイルス」は「水ぼうそう」が治った後も、背骨に近い神経節に症状を出さない状態で潜伏するのが特徴のウイルスです。日本人では15歳以上の方の9割以上が、この「水痘・帯状疱疹ウイルス」の抗体を持っており、ウイルスが体内に入ったことがあると考えられています。
普段はウイルスは大人しくしているのですが、加齢やストレス・疲れなどによって免疫力が低下するとウイルスが再活性化・増殖するようになり、神経節から皮膚表面に帯状疱疹ウイルスが移動し、帯状疱疹として発症するといわれています。
50歳をすぎると発症率は高くなり80歳までに3人に1人がかかるとされていますが、近年「若年者でも帯状疱疹になる方が増えてきている」という報告もあり、誰もが「自分は関係ない」とはいえなくなってきています。
また、6.4%の方が繰り返し帯状疱疹にかかるため、「一度帯状疱疹になったことがあるから大丈夫」というわけでもありませんので、かかった方も注意が必要な疾患です。
(参照:Herpes Zoster and Recurrent Herpes Zoster. Open Forum Infect Dis. 2017 Jan 28;4(1):ofx007. )
(参照:病原微生物検出情報 Vol. 39 No. 8 (2018. 8))
帯状疱疹がうつる?
では、帯状疱疹は「うつる病気」なのでしょうか。結論からいうと「帯状疱疹ウイルスが再活性化している時期は十分ウイルスがうつる可能性がある」といえます。ほとんどの感染経路は「接触感染」です。ただし、帯状疱疹はウイルスがうつったことで発症する疾患ではありません。
帯状疱疹でみられる水ぶくれには、帯状疱疹のウイルス粒子が詰まっています。そのため、発疹の場所を直接触ると感染する可能性が十分あるのです。帯状疱疹の感染可能期間は、「水ぶくれがカサブタになるまで」といわれています。
もちろん曝露したウイルス量に比例して感染しやすくなるので、接触する回数が多ければ多いほどウイルスがうつりやすくなります。
さらに、帯状疱疹になりやすい人として、以下の方が言われています。
- 50歳以上の方(特に高齢者ではうつりやすくなります)
- 免疫が低下している方(乳幼児や水痘ワクチンを打っていない方、妊娠中の方)
- 精神的ストレスがある方
- 糖尿病患者さんの方
- がん患者さんの方
ただし、誤解しないでほしいのは、帯状疱疹はうつって発症する病気ではないということです。
ちなみに、帯状疱疹は胎盤を介して胎児に伝達される特定の母体抗体により、発育中の胎児にリスクをもたらすことはありません。なので、妊娠中に帯状疱疹にかかったという方は乳児の心配はしなくて大丈夫です。
また、乳幼児のような水痘・帯状疱疹ウイルスに免疫がない方がウイルスに感染した場合、帯状疱疹として発症することはなく、水痘として発症します。水痘ではおなかから全身にブツブツが出るような状態で発症します。帯状疱疹とは発症の仕方が違うことにも注意が必要ですね。
仕事は「患部をしっかり覆って感染対策をしていれば」行くことはできます。しかし、あまりに疼痛が強ければ休むのも選択肢の1つになります。
(参照:医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版~帯状疱疹ワクチン~)
(参照:Herpes zoster: A Review of Clinical Manifestations and Management)
(参照:NIH「Herpes Zoster」)
帯状疱疹がうつらないようにする対策は?
このように、帯状疱疹は別の人にも感染させる可能性があります。だからこそ対策が大切ですよね。どのようなことが必要でしょうか?以下にポイントを上げていきます。
① なるべく早く帯状疱疹の治療をする
とにもかくにもウイルス量を早期にしっかり抑えることが大切。帯状疱疹が帯状に完成するより前に、疑った時点で皮膚科に受診するようにしましょう。(帯状疱疹を見慣れていない内科だと見逃す可能性があります)
帯状疱疹の治療は「抗ウイルス薬の全身投与」と「急性期の疼痛コントロール」が大切。特に抗ウイルス薬をいかに早く投薬するかで、後遺症として残るかどうかにも関わってきます。もちろんウイルス量を早期に下げるので、周りに感染する確率を下げることもできるでしょう。
② 帯状疱疹になった部分はしっかり「覆う」
帯状疱疹はウイルスが詰まった水ぶくれを接触することでうつる可能性があります。また、水ぶくれの部分が服と擦れると痛みが強くなることも。
そのため、帯状疱疹になった部分は清潔なガーゼなどでしっかり覆い、軟膏などをたっぷりぬって保護しましょう。
特に高齢者施設などは介護従事者などが感染することがあります。介護やケアを受け持つ方は手袋をして処置を行った方無難ですね。
何を塗ればよくわからなければ、プロペトや白色ワセリンといった「表面被覆剤」の方がよいですね。「とりあえず家にあったステロイド軟膏を塗っていた」という方がいますが、ステロイドは局所の免疫を低下させるので、帯状疱疹はむしろ悪化します。注意しましょう。
③ 帯状疱疹の方のケアをしっかり行う
帯状疱疹は免疫が低下することでの「ウイルスの再活性化」が原因と言われています。そのため、以下のポイントを意識して、帯状疱疹の回復を早めていきましょう。
- よく休む:帯状疱疹が発症するということは、ウイルスが再活性化しやすくなり、免疫力が低下している証拠でもあります。痛みも強いですし、安静を保ち、よく休むようにしましょう。
- 冷やさない:神経痛の場合、冷やすとかえって痛くなることがあります。逆に「温めると気持ちよかった」などといわれることも多いです。(火傷に注意しながら)温めてあげるとよいでしょう。
- アルコールを控える: アルコールは血管を拡張させて、炎症をひどくしてしまうことがあります。 少なくとも帯状疱疹によって皮膚や神経が炎症を起こしている間は、お酒は控えたほうがよいでしょう。
適切にケアをしなければカサブタになる期間も長くなり、周囲の感染の意味でもよくありません。忙しく思う気持ちはわかりますが、まずは病気を治すのに集中しましょう。
④ 帯状疱疹ワクチンを接種する
50歳以上の方や、免疫異常をもつ18歳以上の方で「帯状疱疹にかかりたくない」という方は、「帯状疱疹ワクチンを接種する」というのも選択肢の1つになります。帯状疱疹ワクチンを打つことで帯状疱疹になる可能性を大幅に下げることができます。
ただし、免疫が確立するまでに時間がかかるので、「家族が帯状疱疹になっているから、今帯状疱疹ワクチンをうって移らないようにしたい」ということはできません。今後自分がならないようにするという意味では予防接種はよい選択肢なので、検討してみるとよいですね。
詳しくは、【シングリックス】帯状疱疹ワクチンの種類や効果・費用と助成・副反応について解説を参照してください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
帯状疱疹に、なつて4ヶ月です、背中の痒みと、腹の痛が(左側)帯状帯状疱疹と、言われました
12月27日に(令和5年) 神経痛になつてます、と言われ、残念でした、何らか治る、方法は、ないのでしよか。
私は、長崎市にすまい
年れい 78歳
コメントいただきありがとうございます。
大変お辛いことよくわかります。
痛みを完治させる・・・ということは難しいかもしれませんが、ある程度コントロールすることはできます。
当院でも帯状疱疹後の神経痛で通っている方もいますが、治療である程度コントロールできている方が多いです。
なので、あきらめずにペインクリニックもしくは疼痛管理に詳しい医師にご相談ください。
当院でも夜間オンライン医療相談(1回2500円)も行っておりますので、もしお近くになければ相談してみてください。
オンライン医療相談はこちら
あわせて神経痛について、こちらも参照してください➡ 【ビリビリする神経痛】神経障害性疼痛の原因や治療について