- 風しんワクチンに関するクーポン券がとどいた
- 仕事場で麻しんや風しんの抗体価がさがっていた
- 海外渡航の関係で麻しん風しんワクチンを打つ必要がある
このような方はいませんか?また、新型コロナの流行が収束するとともに、世界で流行しだしている「麻しん」。日本でも拡大傾向になっていることもあり、治療薬がない分、しっかり予防していきたいところですよね。
今回は、麻しんと風しんのそれぞれの特徴を説明すると共に、麻しん風しん混合ワクチンの特徴や効果・接種時期などについて、特に大人の方に焦点をあてて説明していきます。
Table of Contents
麻しんとは
麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、一般的には「はしか」と呼ばれることもあります。
感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染です。その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症します。そのため小児だけではなく、大人も注意が必要な感染症です。
通常38℃程度の発熱やかぜ症状がはじまります。2~4日発熱が続いたあと、39℃以上の高熱と上記のような発疹が出てきます。また発疹が出る前に頬の粘膜に「コプリック斑」という白い斑点を認めることもあります。通常は7日~10日で回復しますが、免疫力の回復には1か月程度必要です。
そして注意したいのが合併症。肺炎や中耳炎、脳炎などを合併することもあるので十分注意する必要があります。また、麻しんにかかった人は数千人に1人の割合で死亡することがあります。
近年、新型コロナの流行がおさまるとともに麻しん報告例が増えてきています。なので、昨今麻しんに対しても予防接種が注目を集めています。
詳しくは【医師が解説】麻しん(はしか)と風疹との違いや流行状況・症状・合併症についてを参照してください。
風しんとは
風しんとは、風疹ウイルスによる感染症で、一般的に「三日はしか」と呼ばれることもあります。麻しんと同じく春先から初夏にかけて多く発生し、飛沫感染や接触感染が主な感染経路です。
2012年~2013年に20~40代の男性を中心に全国で大規模発生が見られており、予防接種を受けていない方や風しんにかかったことがない方などは流行に注意が必要になります。
風しんは、約2週間の潜伏期間の後、発熱や首の後ろのリンパ節の腫れを認めます。発熱は半分に見られる程度です。その後、顔面から始まり、2~3日で体幹・四肢に拡大するような発疹が出てきます。通常3~5日でなくなります。
基本的に予後は良好であり、感染しても明らかな症状がでることがない(不顕性感染)人が15%から30%程度います。そして一度感染し治癒すると、大部分の人は終生免疫を獲得しますね。しかし
- 特に大人で感染すると関節炎・急性脳炎などの合併症を起こす可能性がある点
- 風しん胎児症候群: 妊娠初期に母親が風しんに感染すると、胎児に風しん胎児症候群を引き起こす可能性があります。これは、聴覚障害、視覚障害、心臓の欠陥、精神遅滞などの先天的な障害を引き起こす可能性がある状態です。
に注意が必要とされており、妊婦さんとそのパートナーの予防は特に重要とされています。
(参照:東京都感染症情報センター「風疹とは」)
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)とは
麻しん風しんワクチン(MRワクチン)とは、麻しん(はしか)と風しんを両方予防するためのワクチンです。麻しんワクチン・風しんワクチン単独のワクチンもありますが、現在では、混合されたワクチンが主流になっています。
ワクチンの種類は「生ワクチン」。麻しんウイルスと風しんウイルスを無力化(弱毒化)したものを含んでいます。そして、接種することで身体がウイルスに対する抗体を作り予防効果・重症度予防効果を発揮します。
接種方法は皮下注射です。定期接種の対象(1回目:1歳~2歳・2回目:5歳~7歳未満)ですが、それ以外の方も任意接種で受けることができます。
近年、成人における麻しんと風しんの感染が増えているため、成人への接種も強く推奨されています。特に妊娠を計画している女性は、先天性風しん症候群を防ぐため予防接種が強く推奨されています。また、周囲の人々も感染を防ぐことで、無症状でもウイルスを広めてしまうリスクを下げることができます。
大人の麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の効果
麻しんワクチンも風しんワクチンも1回の接種で麻しん・風しん療法に対して、95%の確率で十分な免疫を獲得することができます。2回接種すると免疫獲得率はさらに向上し、麻しん・風しん両方に対して97%~99%以上とされています。
回数は1回接種でも十分ですが、2回接種時には通常4週間あけて接種します。しかし、接種を受けた人全体の中で接種完了(2回接種)の割合が低いと、国外からの輸入感染による集団発生のリスクが残ります。
そのため、国民全員が最低でも1回以上、できれば2回の予防接種を行い、集団免疫を高めることが大切です。特に30歳代後半から50歳代の男性は風しんに対する免疫が不足またはない場合が多く、抗体価の確認もしくはワクチン接種が勧められています。
こうした経緯から、1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日の間の方には2018年7月以降風疹クーポンという、MRワクチンの定期予防接種の対象者になっているというわけです。(2024年まで延長されました)
余談ですが、麻しんの免疫が不十分な方が麻しん患者さんと接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンを接種することで麻しんの発症を防げる可能性があります(緊急接種)
(参照:国立感染症研究所「麻疹とは」)
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の副反応
麻しん風しん混合ワクチンの副反応は、他のワクチンと比べて特別多いものではありませんが、例えば205例の臨床試験では以下のようにいわれています。
一般的なMRワクチンの副作用: 接種後30日以内
- 発熱: 205例中56例(27.3%)が発熱を経験。中等度以上(38.1℃以上)は36例(17.6%)、高度(39.1℃以上)は12例(5.9%)であった。発熱の頻度は接種後4~12日に高いとされています。
- 発疹: 205例中25例(12.2%)。接種後から数日中に過敏症によると考えられる発疹が現れ、これらの症状は1~3日で消失した。
- 鼻汁: 205例中19例(9.3%)。
- せき: 205例中16例(7.8%)。
- 注射部位発赤: 205例中15例(7.3%)
重篤な副作用(まれ)
- ショック、アナフィラキシー様症状(じんましん、喉頭浮腫など): 異常が認められた場合には適切な処置が必要。
- 急性血小板減少性紫斑病: 100万人接種あたり1人程度の確率で起こることがあります。通常、接種後数日から3週間ごろに紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等が現れます
- 脳炎: 100万人接種あたり1人以下の確率です。
- けいれん: まれに熱性けいれんを起こすことがあります。
ワクチン接種にご不安な点がありましたら、事前問診でお伝えいただけますと幸いです。ただ「MRワクチンが特別副作用が多い」という印象は受けませんのでご安心ください。
(参照:麻しん風しんワクチンの添付文書)
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を受けられない方
下記の方は麻しん風しん混合ワクチンを受けることができないのでご注意ください。
- 明らかな発熱を呈している方
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな方
- 免疫機能に異常のある方や免疫を抑える治療をしている方
- 妊娠していることが明らかな方
- 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態の方
なお接種後2か月は妊娠を避けていただく必要があるのであわせて気を付けてください。
(参照:麻しん風しんワクチンの添付文書)
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)・麻しんワクチン・風疹ワクチンの費用
当院での麻しん風しん混合ワクチンの費用は以下の通りです。(通常は1回接種)
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン) | 10,000円 |
麻しんワクチン | 6,000円 |
風しんワクチン | 6,000円 |
なお各自治体で助成制度がありますので、参考にしてみるとよいでしょう。江戸川区の助成制度については江戸川区HP(クリックで該当先につながります)を参照してください。
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の回数とスケジュール
麻しん風しん混合ワクチンは生ワクチンのため通常1回接種ですが、効果を高めるため2回接種することも可能です。その際には最低27日あけて接種をお願いいたします。なお他のワクチンとの接種間隔は下記の通りです。
- 不活化ワクチン(インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなど):接種間隔の制限はありません
- 新型コロナワクチン: 新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。 新型コロナワクチンとその他のワクチンは、お互い片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。(厚生労働省HP)
- 他の生ワクチン(BCG・水痘ワクチンなど):27日あけて接種をお願いいたします。
(参照:厚生労働省「ワクチンの接種間隔について」)
麻しん風しんワクチン(MRワクチン)についてのまとめ
今回は麻しん風しんワクチンについて、効果から副反応まで幅広く解説していきました。小児では定期接種の対象ですが、大人でも特に
- クーポン券の対象の方で抗体価が低かった方
- 就職前の検査で風しんの抗体価が下がっている方
- 妊娠している方で風しんの抗体価が低い方(測定なしでも接種可)
- 自分が麻しんや風しんワクチンを接種していないと心配されている方
などはオススメされるワクチンです。ぜひ上記に該当されている方は、かかりつけ医や当院にご相談いただき、ワクチン接種を検討してみてください。
こちらもあわせてオススメです
- 怪我で破傷風ワクチン(トキソイド)を打つ場合は?効果や保険適応・投与間隔についても解説
- 帯状疱疹や帯状疱疹ワクチン【効果・価格・持続期間】について解説
- 肺炎球菌ワクチンについて解説【効果・費用・助成】
- B型肝炎と大人(成人)のB型肝炎ワクチンについて【費用・スケジュール】
- インフルエンザ感染症とインフルエンザワクチン(予防接種)【効果や副作用・時期の目安】
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
質問をさせてください。
大人になると 麻疹や風疹の罹患歴がわからない場合が多いと思います。環境感染学会等の「罹患歴あり」とは、どのように確認するのでしょうか。罹患が不明の場合は「罹患なし」と判断し、抗体価を測定せずワクチン2回接種という流れでいいのでしょうか。それとも、抗体価を測定し基準を満たす場合は、ワクチン接種不要という流れのほうがいいのでしょうか。医療関係者のためのワクチンガイドラインでは、抗体価の測定は不要で、ワクチンの回数で判断するような流れになっています。また、抗体価を測定しない場合、罹患歴や接種歴があいまいな場合、不要なワクチンを接種する可能性もあと考えますが、先生の意見をお願いしたいです。よろしくお願いします。
明石様
そうですね。私は患者さんの希望に沿うようにしています。本来ならもちろん「抗体価を測定してからワクチン接種の可否を決める」が正しいです。クーポンを使用される場合もこの流れですね。
ただし、全て自費で行う場合、抗体価の測定にもそれなりに金額がかかります。結局お金を余計に支払うリスクがあります。
そのため、ワクチン接種を直接接種するかどうか含めて、接種する方によって対応が異なります。