今年もインフルエンザワクチンが開始になります。2021年、2020年は新型コロナ流行の影響や入国者の規制もあって、インフルエンザは流行しませんでした。(これらの年は南半球でも流行しませんでした)
しかし、今年の南半球のオーストラリアではインフルエンザと新型コロナの同時流行が起こっており、日本でのインフルエンザが流行する可能性が十分あります。
では、インフルエンザワクチンはどれくらい効果があるのでしょうか。また副反応についても接種前に見ていきましょう。
インフルエンザワクチンの効果は?

① インフルエンザワクチンの感染予防効果
アメリカCDCでの報告によると、「インフルエンザワクチンを接種をすることで、インフルエンザで医療機関に受診するリスクが40%から60%減少する」としています。
実際、新型コロナ流行前の最後のインフルエンザシーズンである2019年から2020年の間での解析結果でも、アメリカではインフルエンザワクチン接種により「推定750万人のインフルエンザ疾患、370万人のインフルエンザ関連の医療機関の受診、10万人のインフルエンザ関連の入院、および 6,300 人のインフルエンザ関連の死亡が防止された」とのことです。
国内の研究でも、65歳以上の高齢福祉施設に入所している高齢者については34~55%発病を予防したとのことです。人種に問わず似たような傾向が見られますね。
また、子供についての発症予防効果も検証されており、日本で行われた2015年の報告によると、「6歳未満の小児を対象とした、インフルエンザワクチンの発症予防効果は60%であった」としています。
(参照:CDC「What is a flu vaccine?」)
(参照:厚生労働省HP「インフルエンザQ&A」)
② インフルエンザワクチンの重症化予防効果
2021年の論文によると、「インフルエンザワクチンを受けた方は、インフルエンザで入院になったとしても集中治療室(ICU)への入室リスクが26%低く、インフルエンザによる死亡のリスクが31%低くなった」としています。
他の2018年のニュージーランドの報告ではインフルエンザワクチンによるICU入室が59%低下し、ICU滞在期間もインフルエンザワクチン接種により4日短縮するという結果になりました。
つまり、インフルエンザワクチンは、他のワクチンと同様に、発症予防効果も重症化予防効果もあるということですね。
厚生労働省でも特にこの重症化予防効果を重視しており「インフルエンザワクチンの最も大きな効果は『重症化』を予防すること」と記載しており、国内の高齢者を対象とした臨床研究では82%の死亡を阻止した、とのことです。(ただしこちらは平成11年度の研究のため、やや古めのデータ)
また、子供についてもインフルエンザワクチンによる重症化予防効果が示されています。2022年の調査によると、「インフルエンザワクチン接種により子供の生命を脅かす重度のインフルエンザのリスクが75%減少した」と発表されています。子供は特にインフルエンザにより重症化しやすいグループの1つなので、生後6か月以上の子供にインフルエンザワクチン接種は特にオススメされます。
(参照:Influenza vaccine effectiveness in preventing influenza-associated intensive care admissions and attenuating severe disease among adults in New Zealand 2012–2015. )
(参照:Does influenza vaccination attenuate the severity of breakthrough infections? A narrative review and recommendations for further research.)
(参照:厚生労働省HP「インフルエンザQ&A」)
インフルエンザワクチンはいつから効果を発揮する?
イギリスNHS、アメリカCDCでも「インフルエンザワクチンを受けてから最大14日の間は、有効性が発揮する前にインフルエンザにかかる可能性がある」としています。
これはインフルエンザワクチンにより誘導される免疫システムが完全に構築するのに時間がかかるためです。そのため、インフルエンザの流行期よりも少し前に接種した方が望ましいでしょう。
(参照:CDC「What is a flu vaccine?」)
(参照:NHS「Flu vaccine」)

インフルエンザワクチンの持続時間は?
一般的に「ワクチンの有効性はワクチン接種後少なくとも5~6か月は持続する」と考えられています。65歳以上の場合は2014年に行われた分析からは、「0~180日の間に54%~67%の有効性が認められたものの、181日目から365日目までの有効性ははっきりしない」と報告されました。
また、アメリカ「Influenza Vaccine Effectiveness Netwark」からは、「インフルエンザワクチン接種後、インフルエンザAに対しては1か月に約7%、インフルエンザBに対しては1か月に6-11%ずつ減少する」としています。
つまり、「去年インフルエンザワクチンを打ったから、今年は打たなくてもよいだろう」というのは成り立たない、というわけですね。
効果を最大限にしたいという目的で、わざとインフルエンザワクチン接種を遅らせる方もいますが、いつ流行しはじめるかはシーズンによって異なります。先延ばしにすると、「結局接種しないで、インフルエンザにかかってしまった」ということにもなりかねないので、接種できるときに接種するようにしましょう。
(参照:Clin Infect Dis. 2017 Mar 1;64(5):544-550. doi: 10.1093/cid/ciw816. Epub 2016 Dec 29.)
(参照:CDC「Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines-United States,2022-2023 Influenza Season」)
インフルエンザワクチンの副反応は?


厚生労働省が発行している添付文書によると、インフルエンザワクチンによる副反応には次のようなものがあげられています。
- 過敏症:まれに接種直後から数日中に、発疹、蕁麻疹、湿疹、紅斑、多形紅斑、そう痒等があらわれることがある。
- 全身症状:発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、一過性の意識消失、めまい、リンパ節腫脹、嘔吐・嘔気、腹痛、下痢、関節痛、筋肉痛等を認めることがあるが、通常、2 ~ 3 日中に消失する。
- 局所症状:発赤、腫脹、硬結、熱感、疼痛、しびれ感等を認めることがあるが、通常、2 ~ 3日中に消失する。
- 神経系障害:顔面神経麻痺等の麻痺、末梢性ニューロパチーがあらわれることがある。
- 眼障害:ぶどう膜炎があらわれることがある。
厚生労働省の発表では、インフルエンザワクチンを受けられた方で10~20%の方に局所反応、5~10%の方に全身反応が生じることがありますが、いずれも2~3日で消失されるとのことです。
また、重大な副反応として、「ショック・脳症・ギランバレー症候群・けいれん・肝機能障害・喘息発作・血小板減少性紫斑病・アレルギー性紫斑病・間質性肺炎」をあげています。ただしこれらは極めて稀ですので、過度に心配する必要はありません。
ただし、以下の方はインフルエンザワクチンを接種することができないので事前に注意しましょう。
- 明らかな発熱をしている方
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
- インフルエンザワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方
- 上記にあげた方以外で、予防接種を行うことが不適当な状態にある方
また、インフルエンザワクチンは卵の成分が使われているので、卵アレルギーを持っている方は接種の時に要注意になります。もちろん他の慢性疾患やけいれんの既往のある方、喘息や免疫不全などがある方、接種後2日以内に発熱の見られた方なども「ワクチン接種要注意者」ですので注意しましょう。
(参照:インフルエンザワクチンの添付文書)
インフルエンザワクチン接種が特にオススメされる方は?
アメリカCDC・イギリスNIH・日本厚生労働省でも「生後6か月以上のすべての方が、毎年のインフルエンザの予防接種を受けることを推奨」としています。また、日本感染症学会では、特に下記の因子を有する方は、インフルエンザに罹患した場合の合併症のリスクが高いことが知られており、特に接種がオススメです。
- 6か月以上5歳未満の方
- 65歳以上の方(50歳以上とするものもあり)
- 慢性呼吸器疾患を持っている方(気管支喘息やCOPDなど)
- 心臓・血管系疾患を持っている方(高血圧だけの方を除く)
- 糖尿病・肝臓・腎臓などの疾患を持っている方
- 神経筋疾患を持っている方
- 免疫抑制状態の方
- 妊娠している方
- 長期療養施設の入所者
- 著しい肥満を持っている方
- アスピリンの長期投与を受けている方
- がん疾患の方
妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種により、母体および新生児のインフルエンザ感染を減らすことが可能です。妊娠中のワクチン接種の安全性も確立されておりますので、妊娠中もインフルエンザワクチン接種をなるべく受けるようにしましょう。
インフルエンザワクチンと他のワクチンの接種間隔は?
インフルエンザワクチンに関して、2022年9月から規定が変わっており、新型コロナワクチン接種と同時に受けられることになりました。
他のワクチンについてもインフルエンザワクチンは不活化ワクチンなので、他のワクチンと間隔をあけて接種する必要はありません。(生ワクチンどうしの接種のみ27日以上間隔をあけて接種ということになっています)
ただし、インフルエンザワクチン2回接種の場合は「1回目と2回目は4週間以上あけての接種が望ましい」とされていますので、ご注意ください。
(参照:インフルエンザワクチンの添付文書)
(参照:日本感染症学会「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方)
インフルエンザワクチンの効果や副反応などについてのまとめ
いかがでしたか?今回、2022年度インフルエンザワクチンの効果と副反応について解説していきました。まとめると
- インフルエンザワクチンの効果は発症予防効果は40-60%、重症化予防効果は26-31%と考えられる。
- インフルエンザワクチンは効果がはっきりするのは2週間くらいから、徐々にワクチンの効果が減少するものの、6か月くらい持続する(そのため毎年接種する必要あり)
- インフルエンザワクチンの副反応は、10~20%の方に局所反応、5~10%の方に全身反応が生じることがありますが、いずれも2~3日で消失される。極めてまれにギランバレー症候群などの重篤な副反応がでることもあり
- インフルエンザワクチンは生後6か月以上経ったすべての方に推奨されるが、特に基礎疾患や高齢者の方、乳幼児の方、妊娠している方などは特に接種が推奨されている
といえます。よく新型コロナとインフルエンザはよく比較されますが、インフルエンザも死に至るこのある感染症の1つです。ワクチンで予防できるものは予防していただきながら、接種しない選択をされた場合はインフルエンザが流行している季節な十分感染に注意しながら、過ごしてほしいと思います。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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