紅麹とは?紅麹の効果と危険性について【自主回収】

最近、小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」の成分を含む健康食品を摂取した人が、急性腎不全などを含む健康被害が生じ、複数の死者がでていることで問題になっています。これに対して、小林製薬は紅麹サプリメントの自主回収をすすめていますね。

当院でも「紅麹の問題があったけど、薬やサプリメントは大丈夫か」などの声を頂戴したりします。そこで今回は、こうした声を受けて

  • 紅麹とは何か?
  • 実際、紅麹にはどんな効果があったのか。
  • また紅麹サプリメントにはどんな危険性や問題点があったのか。

を含めて解説していきます。

小林製薬の紅麹問題についてはプベルル酸とは?プベルル酸と紅麹との関係について【作用・毒性】も合わせてご参照ください。

紅麹とは?

紅麹を一言でいうと「米や麦など穀物に、カビの一種である『紅麹菌』を混ぜて発酵させたもの」です。色合いが美しいですね!

紅麹は台湾や中国などで「紅酒」や「紅乳腐」の原料や飲食物の着色料として広く利用されてきました。日本でも沖縄県の「豆腐よう」にも使われています。

紅麹の作り方は非常にデリケート。「種麹」と「製麹」の2段階を経て紅麹米は作られます。

【種麹の作成】

  • うるち米を18時間水に浸す。
  • 胞子を無菌的に接種し32度7日培養して、十分に胞子を着生させる。
  • 炊飯米と水を無菌的に添加して、32度、7日間培養して無菌的に「種麹」を作る。

【製麹の作成】

  • うるち米を18時間水に浸して、60分蒸し煮する。
  • 蒸米(24~37度)を麹窯にいれ、種麹(6%)を接種混和したのち、32度で製麹する。
  • 途中発酵による温度上昇があるため、「手入れ」を行い38度以下に下げる必要があることや、発酵の過程で水分量もへるため、水分を適宜補給するようにする
  • 以上の工程を6~7日間かけて行う。

想像するだけで紅麹の作成には驚くべきほどの手間ひまがかかっていることがわかります。特に温度と水分の厳密な管理が必要なのです。そして、食品もシンプルで安全性も高いことがうかがえます。

このようにして作られる紅麹ですが、紅麹がもつ健康効果からサプリメントとして売り出されるようにもなりました。

(参照:紅麹の製造

紅麹の効果とは?

紅麹の健康効果で最も注目されたのが「コレステロール」に対する効果です。

脂質異常症で最も使われる製剤で「スタチン系製剤」という肝臓のコレステロール合成を抑える薬があるのですが、紅麹に含まれる「モナコリンA」が全く同じ作用を持つことがあることがわかりました。(特に処方薬の「ロバスタチン」に含まれている有効成分と同一)

実際、1日2.4gの紅麹米には総容量の0.2%のロバスタチンと同様の成分が含まれている可能性があるとされています。

そのため、「天然のスタチン製剤」という意味で注目を浴びたわけですね。

もちろん医薬品と同じ作用機序を持つことから、臨床試験でも好成績をあげました。

例えば、4年半にわたって4,870人の中国人被験者を対象とした紅麹サプリメントのランダム化比較試験では、4年半あたりに心臓疾患にかかる頻度が5.7~10.4%減少したことが言われています。コレステロールも8週以内に総コレステロールが-10.9%、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールも17.6%低下しました。

他、23~65歳の高脂血症患者79名を対象としたランダム化比較試験でも、8週後にはLDLコレステロールが27.7%、総コレステロールが21.5%、中性脂肪も15.8%減少するという、非常に優れた成績だったのです。

しかし、これらはある意味、医師の下で管理されるべき「コレステロールの薬」を飲んでいるのと同じ効果なわけですから、理論上から言っても納得です。

問題点の1つとして「紅麹サプリメントが誰でも気軽に飲めてしまうところ」はあげられるでしょう。

(参照:Safety and Efficacy of Red Yeast Rice (Monascus purpureus) as an Alternative Therapy for Hyperlipidemia

紅麹サプリメントの危険性は?

コレステロールに対して処方薬と同じ成分が含まれていることから効果が高い「紅麹サプリメント」ですが、当然問題はかねてから言われていました。紅麹の主な危険性は以下の通りです。

  • 紅麹にも副作用があるが、サプリメントのために「薬」という意識を考えずに飲めてしまう点
  • 紅麹特有のカビ毒「シトリニン」が含まれる恐れがある点

順に説明しましょう。

① 紅麹の副作用に気づきにくい点

「食品としてたしなむ」くらいでしたら問題はありませんが、サプリメントの場合は「薬」と同様の成分なわけですから、問題が生じる可能性があります。しかし、どうしても薬と思わないので手軽に使いすぎてしまう可能性はありますね。

例えば、2024年にまとめられた紅麹による肝障害・筋障害をまとめた論文では、紅麹による有害事象28件(うち重篤な事象が25件)をまとめています。その中で筋肉障害・肝臓障害としては以下の通りですね。

  • 筋骨格系疾患及び結合組織疾患(8例:0.002%)
    • ミオパチー:5例
    • 横紋筋融解症:4例
    • 四肢の痛み:1例
    • 筋力低下:1例
    • 筋肉痛:1例
    • 仙骨の痛み:1例
  • 肝胆道障害(4例:0.014%)
    • 肝細胞融解症:3例
    • 肝損傷:1例

どんな薬でもリスクはありますが、かといって「サプリメントだから100%安心」というわけではないのです。

また、紅麹にはロバスタチンと同等の成分が含まれているといいましたが、ロバスタチンと相互作用する薬剤や一緒に内服してはいけない薬剤があります。例えば、ロバスタチンと相互作用する薬剤は、

  • コレステロールの薬である「フェブラート系製剤」
  • ニコチン酸
  • 水虫などで使われるイトラコナゾール
  • 抗凝固薬であるワルファリン
  • マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシン

などです。特に免疫抑制剤である「シクロスポリン」とロバスタチンは一緒に内服することは禁忌とされています。したがって、紅麹サプリメントの場合もシクロスポリンと一緒にとってはいけません

事実、「腎移植をした患者さんでシクロスポリンを内服をしていた患者さんが、紅麹サプリメントを飲んだところ、重篤な横紋筋融解症を来した」という症例報告もされています。

またロバスタチンの添付文書には、頭痛、めまい、発疹、胃のむかつき、肝機能障害、腎機能障害などの記載があります。しかし、紅麹サプリメントではあまり意識しないところです。

しかもサプリメントだと医師も薬剤師もチェックしにくいですよね。それがサプリメントの怖いところでもあります。

(参照:Rhabdomyolysis due to red yeast rice (Monascus purpureus) in a renal transplant recipient
(参照:The Impact of Red Yeast Rice Extract Use on the Occurrence of Muscle Symptoms and Liver Dysfunction: An Update from the Adverse Event Reporting Systems and Available Meta-Analyses

② 紅麹のカビ毒「シトリニン」の危険性があること

もう1つ、昔から紅麹でいわれていた問題に「カビ毒」があります。

特に言われているのが「シトリニン」という成分です。もともとは有望な抗生物質として言われていましたが、後に動物の腎臓を中心とした毒性から、カビ毒の1種として知られています。

シトリニンは腎臓や肝臓、骨髄などにも影響を及ぼし、胎児毒性があり生殖にも影響を及ぼします。

そのため、安全な紅麹発酵製品を作るために様々な工夫がなされているのものの、現在でもシトリニン濃度を制御して健康に悪影響を及ぼさない範囲に調節することが求められています。

他の製品にも実は「カビ毒」は存在します。詳しくは小麦などに潜む「カビ毒」の症状と対策について【アフラトキシン・発がん性】も参照してください。

(参照:Science Direct「Citrinin」

紅麹についてのまとめ

紅麹問題を紅麹の効果とともにまとめると次の通りとなります。

  • 紅麹は中国や台湾・沖縄の伝統料理などで作られていた食品の1種。
  • 食品の作り方からも基本的に安全性は高い
  • またコレステロールに対する効果が着目されて、サプリメントとして売り出されるようになった
  • 主要な成分は医薬品と同じ部分に対して作用しており、臨床試験でも高い効果を上げている
  • しかし、サプリメントであるため管理が不十分になりやすく、肝障害や筋障害、腎障害などの報告がされている。
  • また、かねてからカビ毒である「シトリニン」の問題も言われており、シトリニンの発生に注意を払う必要がある。

しかし、今回小林製薬の紅麹サプリメントでは「プベルル酸」という意外な物質が同定されました。果たして、プベルル酸とは何か?紅麹の製造と何か関係があるのか?

これらについては、次回まとめたいと思います。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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