こんにちは、一之江駅前ひまわり医院の伊藤大介です。
新型コロナもオミクロン「BA.5株」から「BQ.1株」「XBB株」など、さまざまな株による感染拡大が日本でも見られます。そこで特にBA.2株からBA.5株に変わるにつれて、初期症状として多くなってきた症状の1つが「鼻水」です。
たしかに鼻水は致死的なものではありませんが、鼻水をきっかけに早期診断をすることで、早期に治療薬を処方し、重症化や後遺症リスクを減らせる可能性があります。
では、鼻水でどんな場合に新型コロナ検査をすべきなのでしょうか。また鼻水のコロナ以外の原因と鼻水が止まらない時の対処法についても解説していきます。
現在流行している新型コロナ感染症であるXBB株については、「オミクロン「XBB株」「XBB.1.5株」の症状や重症度などについて解説」を参照してください。
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鼻水は新型コロナで多い症状?
イギリスの「Zoe Health Study」によると、オミクロン「BA.5株」では鼻水は66%と、喉の痛みや頭痛、咳と同様、よくある症状の1つとして挙げられています。
フランス保健機関である「SantéPubliqueFrance」での調査でも、BA.4/BA.5株による代表的な症状は、倦怠感(76%)、咳(58%)、発熱(58%)、頭痛(52%)に次いで鼻水(51%)があげられており、BA.1株と比較しても2倍以上の確率で初期症状として鼻水が出やすいことが注目されています。
第9波の主要株と考えられている「XBB株」はBA.5株の派生株の1つなので、同様の傾向がみられるだろうと考えられますね。
ここでよく勘違いしてしまうのが、「鼻水が出るから軽症だろう」と思ってしまうこと。確かに、鼻水は上気道であり、肺を侵食していないため軽症になりやすいと予想できますが、症状と重症度との関係性はまだ明らかにされていません。
さらに、フランスでは「BA.4・BA.5株」になってから症状が7日くらいに長引きやすくなったという報告もあります。
新型コロナ感染症かどうかは、臨床症状やワクチン接種状況、周囲の感染リスクなどを考えながら、PCR検査や抗原検査を使って総合的に判断するようにしています。
5類になってもウイルスの性質は変わりません。強く新型コロナを疑う場合は、前もって医療機関に電話した方が望ましいでしょう。
(参照:SantéPubliqueFrance「Coronavirus : circulation des variants du SARS-CoV-2」)
(参照:SARS-CoV-2 Omicron BA.5: Evolving tropism and evasion of potent humoral responses and resistance to clinical immunotherapeutics relative to viral variants of concern.https://doi.org/10.1101/2022.07.07.22277128)
鼻水のコロナ以外の原因は?
では、「新型コロナ」以外にも鼻水が止まらないということはあるのでしょうか。
鼻水は「のどの痛み」と同様に見極めなければならない疾患が多くあります。しかし、そもそも鼻水とは「異物が鼻の粘膜に侵入したことで、異物を外に追い出そうとする結果」生じるので、「鼻水を作り出す異物が何であるか」によって分けられることができます。
① ウイルスの場合
みなさんもよくかかる「風邪」は、「ライノウイルス」や「アデノウイルス」「インフルエンザウイルス」などのウイルス疾患によるものです。ウイルスの侵入により鼻の粘膜が炎症を起こし、ウイルスを外に追い出そうと鼻水がでます。新型コロナウイルスを含めたウイルス感染による鼻水は、感染初期は粘り気の多い比較的透明な鼻水が出る一方、炎症が進んで死滅した白血球がでてくるようになると粘稠性が強くなるのが特徴です。
② 細菌・真菌の場合
黄色ブドウ球菌や連鎖球菌・緑膿菌・カンジダなどさまざまな細菌・真菌感染でも鼻水が生じることがあります。細菌・真菌感染による鼻水の多くは黄色や緑色の鼻水が出て、粘り気が非常に強いのが特徴です。
また、細菌・真菌感染の中には「副鼻腔炎(蓄膿症)」といって、鼻の穴の周りにある空洞に細菌や真菌が入り込み、細菌の巣になっていることで、鼻水や鼻づまりが止まらないといったケースがあります。(副鼻腔の解剖については上図参照)
その場合、「こもるような声」になったり、頭痛が生じたり、においの強い鼻水になったりすることがあります。さらに、副鼻腔炎を放置すると中耳炎などの合併症を生じますので、細菌性の場合もあまり放置せず病院に受診した方がよいでしょう。
③ 本来無害なものの場合(アレルギー性)、その他
花粉やハウスダストなど本来無害なものに反応して、鼻の粘膜が炎症し鼻水が出ることがあります。いわゆる「花粉症」」ですね。この場合は、ウイルス感染と異なり「IgE抗体」「ヒスタミン」「肥満細胞」などが中心となった炎症経路ため、アレルギー性による鼻水の場合は、鼻水の性状もサラサラした水っぽい鼻水になるのが特徴です。よく患者さんからは「滝のように鼻から水が出てきてとまらない」などと言われます。
特定のアレルギーで出る鼻水だけでなく、寒暖差や自律神経の乱れなどをきっかけとして鼻水が出現する「血管運動性(本態性)鼻炎」、特定のものを食べると鼻水を引き起こす「味覚性鼻炎」というものもあります。
このように「鼻水」といっても原因はさまざまなんですね。だからこそ、早めの原因特定と治療が必要というわけです。
コロナと風邪・花粉症での鼻水の違いは?
新型コロナも「BA.5株」になって、比較的出やすい症状として挙げられるわけですが、かぜや花粉症とはどのような点が異なるのでしょうか。自分でもセルフチェックしやすい項目について説明します。(一部当院における新型コロナ感染症での診療経験から考察ものも含まれています)
① 鼻水の性状が異なる
新型コロナにせよ風邪にせよ、ウイルス感染が主体であることは間違いありません。そのため、なるべくウイルスを外に追い出すように粘り気のある鼻水が中心になることが多いです。また跡から炎症が進むと粘り気も強くなり、黄色などに変化することもあります。
一方、花粉症を代表としたアレルギー性疾患ではサラサラした水っぽい鼻水が多く、外出さきだけ出るなど「きっかけ」を伴うことも多いです。
また、当院での統計では鼻水より鼻づまりの頻度の方が高くなっています。
② 他の併存疾患を伴いやすい
当院で新型コロナを感染された方の統計を取っていますが、「鼻水だけが主訴」ということは1例を除いてほぼありません。37.5度以上の発熱を伴ったり、喉や咳・息苦しさなどの他の上気道・下気道症状を訴えています。
発熱の確率はフランスのデータでもある通り58%であり、当院でもほぼ同等のデータです。つまり、「発熱がない鼻水やのどの症状でもコロナの可能性がある」ということになります。ますます初期症状として風邪と見分けはつきにくくなりましたね。
実際、やはり検査して初めて「新型コロナだったのか」と思わされるケースもあり、診断だけで絞り込むにはなかなか難しいことも。そのため感染拡大時には積極的に疑うことも大切です。
③ 周りに感染者がいると新型コロナの可能性は高くなる
当院でのデータでは、「第7波」が起こって以来、新型コロナ陽性者の中で約3割の方が、周りの方が『陽性』と診断され来院されています。そのほとんどが周囲の方が陽性になってから、「3日~4日以内」で来院されますので、特に親しい周囲の方が陽性になった場合は、少なくとも数日間は「自分もコロナにかかっているかもしれない」と考えて行動された方がよいでしょう。
④ 後から症状が変わることがある
新型コロナ陽性の方は当院ではなるべく3日目を目安に全例電話診察を行っております。ある程度出てくる症状も予測しながら薬の処方をしておりますが、それでも症状がガラッと変わり、電話診察であとから薬を配送するケースが2割くらいに認められます。
そのうち一番多いのは、咳を中心とした呼吸器症状があとから出演するケースですね。
他は「発熱と鼻水だけだったのに、逆に喉もいたくなってきた」「夜も寝られずすこし、気道が詰まるよな感じになった」などのケースもあり、注意深く問診しながら治療方針を決定しております。
⑤ 新型コロナでは「罹患後症状」として後から別の症状で来院しやすい
現時点での最大の「風邪(ライノウイルス感染症など)」と新型コロナの違いは「罹患後症状の有無」です。通常、風邪は4日~5日くらいで症状が残ることもなく軽快されますが、新型コロナは症状として残りやすいのが特徴。風邪だと思って市販薬でずっと様子を見ていたら、全く別の症状(倦怠感や集中力の低下・息切れなど)で来院されるケースがあります。
新型コロナが流行する前は「ウイルス感染がきっかけで息切れが何か月も続く」といった主訴で来院されることはありませんでした。まさに新型コロナ流行後の特有の現象だと思います。
後遺症については
も参照していただくと幸いです。
ほかにも言語化しにくい部分もありますので、「新型コロナかな?」と思ったら、前もって電話で相談の上、受診していただくと幸いです。
新型コロナ感染症は「治療薬」があります
中には「新型コロナってどうせ対症療法だから風邪と一緒でしょ?」と考えている方もいるでしょう。ある意味正しいと思います。しかし、違う点は非常に多くあります。
まず新型コロナにも治療薬がある点。日本製の「ゾコーバ」が非常に話題になりましたが、重症化リスクのない方でも使える、症状を抑える薬がでてきました。また、重症化リスクが高い方で発症早期の方は、重症化予防につながる薬が使えます。例えば
- 60歳以上の方(治療薬の適応年齢は治療薬の種類によって違います)
- がんの方
- 長期間タバコを吸っていて、息切れがある方(COPD)
- 腎臓が悪い方
- 糖尿病の方
- 高血圧の方
- 悪玉コレステロール(LDL)が高い方、中性脂肪の高い方
- 肥満(BMI30以上)の方
- 喫煙されている方
- 移植後で免疫不全の方
などは、ウイルスの増殖を抑える薬の適応になることが考えられます。(新型コロナの治療薬の詳細は【オミクロンBA.5株も】新型コロナ感染症「軽症」の治療薬の有効性についてを参照してください)
さらに、前述の通り、新型コロナでは「後から別の症状になった」「風邪をひいただけなのにそこからずっと体調が悪い」といったケースも見受けられます。特に後遺症に関しては、最初に診断がついていないと「なんで症状が長引いているのか」わからないことになりかねません。そうした意味でも、あまり放置せずに診断は確定した方がよいでしょう。
特に鼻水は非常に軽視しがちです。「いつもと感じが違う」と思ったらぜひ早めに受診してくださいね。
鼻水が止まらない時の対処法について
では鼻が止まらない時はどのようにすればよいのでしょう。例えば次のような方法があります。
① 適切に鼻をかむ
あなたは適切に鼻をかめていますか?間違った上方をすると鼻血がでたり耳が痛くなったり、菌やウイルスを奥に押し込んだりする可能性があります。例えば次のようなことを意識しましょう。
- ティッシュに鼻をあて、片方の鼻を抑える
- ゆっくり小刻みにかむ
- 鼻をかむときは口から息をすうようにする(吸い込みすぎない)
片方ずつ鼻をかむことで「鼻の開存性スコア」を上昇させるという研究結果があります。
逆に「強く力任せにかむ」「両方の鼻を一度にかんでそのまま鼻呼吸する」などはウイルスを奥に押し込んだり、鼻血や耳が痛くなる原因を作ったりします。ティッシュはなるべく柔らかい素材を使うようにしましょう。
② マスクや加湿器などで加湿する
前述の通り鼻粘膜が炎症して鼻水がでるわけですが、粘膜の乾燥は炎症を強くしてしまいます。マスクや加湿器などで普段から鼻の粘膜の湿度を保つことで、鼻の炎症をやわらげることができます。
また、もちろんマスク自体には保護効果があるので、余計なホコリなどが付着して炎症を強くするといったこともありません。鼻が詰まっていると口呼吸になりがちなので、特にマスクによる保護が重要になってきますね。
もちろんマスク自体にも弊害はありますので、適切なシーンに合わせて使うとよいでしょう。
③ 水分を適切にとる
新型コロナをはじめ風邪をひいた時は体全体がウイルスと戦うために炎症し、発熱することもしばしば。そのため、通常は脱水気味になってしまいます。また、鼻水からも水分は失われますので、鼻の乾燥も進んでしまいます。
できるだけ水分をよくとって脱水を改善した方が、鼻の粘膜の修復もスムーズになります。
④ しっかり休む(特にコロナ)
当然ですが、新型コロナであろうと風邪であろうと、体が戦っている分だるくなります。そんな時に「せっかく自宅にいるから仕事しよう」と思っても、体がついていかずはかどりません。
さらに鼻が詰まって脳に十分が酸素がいきわたらないと、仕事に対する集中力も失われます。当然仕事がはがどらないと、ストレスの原因になりますよね。
回復期(いわゆる病み上がり)の状態なら自宅ワークもできるでしょうが、急性期の場合には「今は休む時期なんだ」と頭を切り替え無理せずゆっくり休みましょう。
⑤ 鼻うがいをする
鼻うがいとは、鼻に付着しているウイルスや花粉などの異物を洗い流すことで症状を改善する方法です。専用の器具を使った方が無難ですが、もしない場合は
- 生理食塩水(0.9%)を入れた洗面器などの容器を用意する
- 顔を近づけて、片方の穴を指で押さえる
- もう片方の穴の中に食塩水を吸い込む。この時食塩水は飲み込まない
- 吸った穴から食塩水を出して何回か行ったのち、もう片方も行う
というように片方ずつ行うとよいですね。
(参照:Cochrane「アレルギー性鼻炎に対する、生理食塩水を用いた鼻うがい」)
⑥ 感染性(ウイルス性・細菌性)の場合はなるべく早く病院を受診する
「絶対に鼻カゼだろうと思って受診したら、コロナだった・細菌性副鼻腔炎だった」というケースは本当によくあります。
新型コロナであれ細菌性であれ、やはり感染して症状がつらい場合は、医療機関に受診して適切に診断され、薬をもらった方が無難です。
たとえ治療薬の適応でなくても感染拡大防止にもつながりますし、もちろん重症化にもつながります。
当院を含めて病院では「コロナかどうか」だけで患者さんを診察したりしません。上記にあげた通りさまざまな鑑別疾患を考えながら、それぞれの病気の治療を大切に治療しています。ぜひご不安な点などありましたら、自分ひとりで抱え込まずに、どうか早めに医療機関に受診してください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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