鼻水は体のバロメーターの1つ。アレルギーから特殊な感染症に至るまで、さまざまな理由で出てきやすい症状の1つです。
もちろん直接鼻の中を見てみることが一番ですが、「鼻水がどんな鼻水なのか」もとても重要な情報です。特に
- 鼻水の色:黄色や緑色なのか、白色なのか、また赤くなってきているのか
- 鼻水の性状:サラサラしているのか、ネバネバしているのか、硬くなってきているのか
- 鼻水の流れ方:きちんと鼻をかむことができるのか、奥側に流れてしまっているのか
は非常に大切な「ヒント」になります。では、鼻水の色や性状によって、どのような原因が考えられるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。
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鼻水が黄色や緑色になるのはなぜ?
まずは、鼻水の色について。鼻水が黄色や緑色になるのでしょうか。
結論からいうと、黄色い鼻水や緑色の鼻水は一般的に感染症による可能性が高い証拠。特に風邪や副鼻腔炎が原因であることが多いです。感染に対抗するために働いた白血球や免疫細胞が死んだ後、その残骸が鼻水に混ざることで黄色く見えたりするのです。
そもそもなぜ鼻水が出るのか。実は鼻水は1日1リットル以上も出ているのですが、鼻水の役割として以下の3つがあげられます。
- 鼻の粘膜にうるおいを与えるため:鼻は呼吸をする際に、ウイルスや細菌、異物と接触する「最初の関門」になっています。そのため外部から刺激をうけやすく容易に炎症をしやすい環境にあります。そうした鼻の粘膜にうるおいを与え、炎症を起こしにくくする役割があります。
- 気道へのバリアをつくるため:気道や肺にウイルスや細菌が入り炎症が起きると「肺炎」になり、重篤になる可能性があります。そのため、気道にウイルスを侵入させないようにし、体の中を清潔に保つ作用があります。
- 局所の免疫力を高めるため:実は、鼻水は単なる液体ではありません。鼻水の成分として、ムチン、分泌型IgA、リゾチーム、ラクトフェリン等が含まれています。特にIgA抗体は重要で、局所の免疫に大きく関わっているのです。
そして、鼻への刺激の状態によって鼻水の性状も変化していきます。鼻水が外の情報をもとに、最適に対応できるように変化するのですね。
例えば、あなたが風邪をひいたとしましょう。最初は鼻水によりウイルスをたくさんだそうと、鼻水がサラサラの状態でいっぱい出てきます。まさに物量作戦ですね。
同時に、ウイルスや異物と戦おうと多くの白血球をはじめとした免疫細胞が、局所に動員されることになります。そしてウイルスや細菌と遭遇すると、侵入者を撃退するため、さまざまな酵素を生成して反応します。
これらの酵素には鉄をはじめとしたさまざま成分が入っており、これが鼻水を黄色や緑色にしているのです。また、粘液が睡眠中などでずっと鼻の中にとどまっていると、濃縮されて、ネバネバした濃い色になってきます。つまり、鼻水が黄色や緑色になったのは
- 感染も後期になり、免疫細胞がウイルスや細菌、異物と戦ってくれているから
- ある程度の時間、鼻水が体の中にとどまり濃縮されて濃くなっているから
ということになります。つまり人間が持つ自然な免疫反応の一過程ということがわかりますね。しかし鼻水を引き起こすウイルスや細菌は数多くありますが、「黄色だから○○という菌にかかっているだろう」と鼻水の色だけで予測できることは一般的にはありません。
コロナや風邪でも、ある程度時間がたつと鼻水の色が「黄色」になることがあります。
しかし、ある程度の時間、放置すべきでない反応が続いている可能性が高いので、一度医療機関に受診した方が望ましいでしょう。
(参照:Harvard Health Publishing 「Don’t judge your mucus by its color」)
鼻水の色で想定される疾患は?
ということで、ウイルスの種類まではわかりませんが、鼻水の性状や色は数多くのことを教えてくれます。鼻水の色と想定される疾患は次の通りです。
① 鼻水の色が透明な場合
基本的には鼻水の色は「透明」なので、健康かもしれません。もしくはアレルギー性鼻炎の場合は本来無害なものに対して反応しているので、透明でサラサラしていて多量な鼻水が出ることが一般的です。
また妊娠中の反応の一部として、透明な鼻水が出ることがあります。
花粉症やアレルギー性鼻炎の詳細については花粉症の原因や治療・花粉症対策・花粉症とコロナの違いについて解説を参考にしていただけますと幸いです。
② 鼻水の色が白い場合
鼻水には大量の水分が入っていますが、その水分が失っている場合は「白い鼻水」になることが多いですね。例えば、鼻づまりが生じて鼻の中にしばらくとどまっているケースや、もともと体が脱水気味になっているケースもあげられます。
また、風邪の初期も白い鼻水になっていることが多いですね。
コロナの初期でもだいたい、鼻水の色が白色であることが多いです。
③ 鼻水の色が黄色や緑色の場合
前述の通り、一般的には感染症を示唆する可能性が高くなります。
異物が白血球と反応してさまざまな酵素をだしたり、白血球自身が細菌やウイルスと反応して死んだ細胞が含まれて黄色や緑色になります。
後は「どの場所で感染したか」「どのタイミングで感染したか」によって病名が変わってきます。
例えば急性で喉や鼻の間の「上咽頭」で感染したのなら「急性上咽頭炎」ということになりますし、副鼻腔といって、鼻の空洞の中で感染したのなら「急性副鼻腔炎」ということになります。(ウイルス性は細菌性かに関わらず)
副鼻腔の中でずっと細菌がはびこっていて鼻水が黄色や緑色になっているのなら「慢性副鼻腔炎」ということになり、抗生剤を使う可能性が高くなります。
あとは全身状態や想定される疾患により抗生剤を使うかどうかは変わってきます。「黄色い鼻水だから絶対に抗生剤を使わなければいけない」というわけではありません。
しかし、ある程度の時間、放置すべきでない反応が続いている可能性が高いので、一度医療機関に受診した方が望ましいでしょう。
④ 鼻水が赤色のやピンク(血が混じった)場合
基本的には「鼻の中で出血している」ケースを想定しますね。鼻をたくさんかんでいたり、鼻をぶつけたりする場合もあります。鼻をほじって鼻の粘膜を損傷する場合もあるでしょう。
鼻が乾燥しても鼻に出血がでやすいので、加湿器で鼻に潤いを与え、鼻を優しくかんだり、ワセリンなどで鼻の粘膜を保護するというのが有効かもしれません。
鼻血がずっと出続けたり、繰り返してしまっている場合は、耳鼻科でファイバー検査を一度してもらった方がよいでしょう。
⑤ 鼻水が茶色や黒色になっている場合
茶色い鼻水や黒い鼻水の場合には、古い血液が出ていた証拠になっていることが多いです。
また、タバコを吸っている方も鼻水が黒くなるケースがありますね。また稀ではありますが、カビによる副鼻腔炎(真菌性副鼻腔炎)でもこのようなケースになることもあります。
いずれにせよ、こちらも長期に続いているようなら一度医療機関に受診した方が望ましいケースとなるでしょう。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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