熱中症の症状と対処・予防について解説【熱中症とコロナの違いも】

今年も暑い夏がや今年も暑い夏がやってきました。暑い時期に注意したいのが「熱中症」です。言葉はよく知られていますが、

  • 熱中症の症状を詳しく知らない
  • 対策は「水分をとればよい」と思っている
  • いざというときの応急処置の仕方がわからない

という方も多いのではないでしょうか。

近年は猛暑が続き、熱中症で救急搬送される方は6〜9月だけでも毎年多数にのぼります。さらに2024年からは「熱中症特別警戒アラート」、2025年6月からは「職場の熱中症対策の義務化」が始まるなど、社会全体で対策が強化されています。

この記事では、熱中症の症状・重症度・応急処置から、熱中症指数(WBGT)や警戒アラートの使い方、予防までをわかりやすく解説します。

熱中症とは?/なりやすい人

熱中症とは「暑さによって体の調節機能に異常をきたし、さまざまな症状を起こす病気」のことです。

熱中症で入院される方は7月中旬から8月下旬に多く、その多くは40代以上です。とくに60歳以降で急増します。また、自宅で発症する方が多いのも特徴で、2018年の人口動態統計では、熱中症による死亡のうち家庭内(庭を含む)が56.5%を占めました。

とくに注意が必要なのは、高齢の方・屋外で作業や運動をする方・小さなお子さんです。高齢の方は暑さやのどの渇きを感じにくく、体内の水分量も少ないため、容易に脱水になります。

(参照:厚生労働省 人口動態統計

熱中症の原因は?

熱中症の原因を一言でいうと「環境や個人差・行動によって体温上昇が生じ、さまざまな体温調節がうまくいかない」ことです。

私たちの体は、体温が上がると皮膚に血液を多く流し、汗をかいて熱を逃がし、体温を保ちます。しかし、

  • 環境:暑い場所、水分がとりにくい環境
  • 個人差:加齢や基礎疾患で脱水になりやすい
  • 行動:屋外での労働・運動など体温を上げやすい行動

が引き金となると、体温調節が追いつかず、①熱を逃がそうと血液が体表に集まる→②汗で脱水になる→③(悪化すると)臓器に血液が届かずダメージを受ける、という流れで進みます。軽いめまいの「熱失神」から、意識障害をきたす「熱射病」まで連続しており、重症化すると命に関わるため、予防と早い対応が大切です。

熱中症の症状と対処法(重症度Ⅰ〜Ⅳ度)

 熱中症は重症度によって分類されます。日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」(約10年ぶりの改訂)では、従来のⅠ〜Ⅲ度に加え、最重症の「Ⅳ度」が新たに設けられました(参照:日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024)。

Ⅰ度(軽度/現場での応急処置で対応)

めまい・立ちくらみ、大量の発汗、生あくび、気分の不快、手足のしびれ、筋肉のこむら返りなど。意識ははっきりしています。

【どんな状態?やるべきこと】

涼しい場所へ移動し、水分と塩分をとって体を冷やせば(涼しい環境での安静=パッシブクーリング)、多くは受診せずに回復します。放置するとⅡ度に進みます。

Ⅱ度(中等度/医療機関での治療が必要)

強い倦怠感・虚脱感、頭痛、吐き気・嘔吐、集中力・判断力の低下など。意識は少し低下し、「いつもと違う」と周囲が気づくことも。

【どんな状態?やるべきこと】

病院の受診が必要な状態です。点滴や冷却をしながら経過をみます。安静・涼しい環境・水分と塩分の補給(吐き気がある場合は少量ずつ頻回に)が必須です。

Ⅲ度(重度/入院・集中治療)

次のいずれかがみられる状態です。

  • 中枢神経の症状(意識障害・けいれん・ふらつきなどの小脳症状)
  • 肝臓・腎臓の機能障害
  • 血液が固まりにくくなる異常(DIC)

【どんな状態?やるべきこと】

ただちに救急車を呼んでください。入院のうえ、全身管理と冷却が必要です。

Ⅳ度(最重症/2024年に新設)

深部体温40.0℃以上かつ意識が高度に低下した状態(GCS〈意識レベルの指標〉が8以下)。命に直結する最も危険な状態です。

【どんな状態?やるべきこと】

一刻を争います。救急要請とともに、体温を下げる「積極的冷却(アクティブクーリング)」をただちに始める必要があります。ガイドラインでは、深部体温の測定を待たずに、状況からⅣ度を疑って冷却を開始する「qⅣ度(迅速Ⅳ度)」の考え方も示されています。

重症度は固定ではなく、対応が遅れると進行します。Ⅱ度以上を疑ったら、早めの受診・通報を心がけましょう。

(参照:日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024

熱中症指数(WBGT)と熱中症警戒アラート

熱中症のリスクを知る、熱中症指数ともいえる指標が「暑さ指数(WBGT)」です。気温だけでなく、湿度・日射や輻射熱を組み合わせた指標で、同じ気温でも湿度が高いと危険度が上がります。一般にWBGTが28を超えると熱中症が急増するとされます。

日本スポーツ協会の「熱中症予防運動指針」では、WBGTの値で運動時の危険度を次のように示しています。屋外での活動や運動の目安にしてください。

  • 熱中症指数(WBGT) 21未満:ほぼ安全(適宜水分補給)
  • 熱中症指数(WBGT)21〜25:注意(積極的に水分補給)
  • 熱中症指数(WBGT)25〜28:警戒(積極的に休憩)
  • 熱中症指数(WBGT)28〜31:厳重警戒(激しい運動は中止)
  • 熱中症指数(WBGT)31以上:危険(運動は原則中止)

さらに、危険な暑さを事前に知らせる仕組みがあります。

  • 熱中症警戒アラート:日最高の暑さ指数(WBGT)が33以上と予測されたときに発表。
  • 熱中症特別警戒アラート:過去に例のない危険な暑さで、人の健康に重大な被害が生じるおそれがある場合に発表(2024年運用開始)。

アラートが出た日は、外出や運動を控え、エアコンを使い、水分・塩分をこまめにとりましょう。

(参照:環境省 熱中症予防情報サイト
(参照:日本スポーツ協会 スポーツ活動中の熱中症予防
(参照:政府広報オンライン 熱中症特別警戒アラート

熱中症と新型コロナ・風邪の違い

熱中症も新型コロナ・風邪も、発熱・だるさ・吐き気・頭痛など似た症状が出ることがあります。見分けるポイントは次のとおりです。

  • きっかけ:熱中症は「暑い場所に長時間・水分不足」で起こります。新型コロナや風邪は「人混み(特に室内)や感染者との接触」がきっかけになりやすいです。
  • 気道症状の有無:新型コロナや風邪は、咳・のどの痛み・鼻水など上気道の症状を伴うことが多いです。熱中症は感染症ではないため、これらの気道症状は基本的にありません。発熱でも、感染症では「悪寒(ゾクゾク)」を伴うことが多いですね。
  • 脱水所見:熱中症では強い脱水を伴うことが多く、爪を押して色が戻る時間(毛細血管補充時間:3秒押して2秒以上戻らなければ循環不良のサイン)などで推測できます。

新型コロナの症状については新型コロナの症状について【2026年最新版】もご覧ください。

熱中症の予防のポイント

熱中症は注意することで防ぐことが可能な病気です。そのため普段から熱中症対策が非常に大切になってきます。それでは熱中症対策のポイントをみていきましょう。

① 暑さをさけて、無理をしない

熱中症対策の基本ですね。当然ですが、暑さを防げば熱中症にはなりません。そして暑さは、日々の工夫で防ぐことができます。特に以下を意識するとよいでしょう。

  • 室内では湿気・室温に気をつける: エアコン等を使用し、昼夜を問わず空気の管理に気を配りましょう。節電をしようと我慢すると、熱中症の危険性が大幅に高まってしまいます。
  • 室内への直射日光を遮断する: 日光を浴びるのは健康にとって重要ですが、適宜カーテンを使用し、室温の上昇を防ぐようにしましょう。
  • 屋外対策も万全に: 屋外では、日傘をさしたり帽子をかぶったりすることや日陰でのこまめな休憩で、日差しを避けるようにします。また、通気性が良く、吸収性・速乾性に優れた服を選んだほうがよいですね。

熱がこもったなと思ったなと思ったら、保冷剤や氷、冷たいタオルなどで、適度に体を冷やすのもよいですね。

② こまめに休み、水分補給をする

大量の汗をかいているときはもちろんですが、特に高齢者では喉のセンサーが低下しているため、喉が乾いていないときにも脱水症状が始まっていることがあります。また、スポーツをしていて興奮しているときも意外と脱水症状が進行していることもあります。

そのため、特に高齢やスポーツをしている方は喉が乾いたと思う前にも積極的に水分補給をするのが大切です。

 また、体は汗によって塩分も同時に失っているため、塩分摂取も同時にすることが重要です。 お茶や水分のみを補給していた場合、さらに体の塩分濃度が薄まり、足の痙攣などが起きやすくなってしまいます。

スポーツドリンクも熱中症の予防には十分つながりますが、糖質が多く含まれているため、できれば電解質の配分量の多い「経口補水液」か「OS-1®」を利用するようにしましょう。

ご自宅で作るなら、作り方は簡単で「500mlペットボトルの水に砂糖20g(大さじ2杯-3杯程度)塩1.5g(親指と人差し指でひとつまみ程度)を混ぜる」だけです。

③ 胃の負担を考えた食べ物選びをする

普段の食べ物はバランスのよい食事であれば問題ありませんが、いざ熱中症になったら「胃の負担」を考えた食べ物選びが大切です。

熱中症になったら、頭痛やだるさとともに食欲も自然と落ちてきます。胃腸の機能も弱ってきますので、吐き気や嘔吐をきたす方もいるでしょう。

そんな中で脂っこい食べ物を食べると吐き気を助長し食事が進まず、さらに体を弱らせてしまいます。そのため、熱中症で胃の機能が弱っているなら、消化しやすい食べ物を食べるとよいですね。例えば、

  • スイカ:スイカの90%は水分であり、カリウムも豊富。塩をかけて食べることで塩分も摂取できます。
  • バナナ:体内吸収速度の異なる糖質が含まれており、カリウムも豊富です。
  • ヨーグルト:ヨーグルトも胃腸が弱っている際には効果的。またインドの研究では「インドのヨーグルトであるバターミルクが夏の不快感を減らすのに役立つ」とする研究もあります。
  • 少量の梅干し:塩分とミネラルとクエン酸が含まれています。水分ばかりで塩分をおろそかにしてしまう方は梅干しを食事に加えるのもオススメですね。

他の胃腸の調子が悪い食べ物については胃腸の調子が悪い時の食事について【おすすめな食べ物・避けるべき食べ物】を参考にしてみてください。

④ 暑さに体を慣らす(暑熱順化)

体は暑さに少しずつ慣れることで、汗をかく機能や体温調節がうまく働くようになります。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。本格的な暑さが来る2週間ほど前から、ウォーキングや軽い運動、湯船につかるなどで「少し汗ばむ」習慣をつけると、熱中症になりにくくなります。梅雨明けなど、急に暑くなった時期はまだ体が慣れておらず危険なので、最初は無理をしないことが大切です。

⑤ 熱中症の危険な「脱水サイン」を知っておく

熱中症は早めに危険なサインを知っておけば、対処法にもつながりますよね。

そこで事前に熱中症の危険な「脱水サイン」を知っておきましょう。

脱水をみる所見として有名なサインの1つが「Capillary Refill Time(キャピラリー・リフィル・タイム:毛細血管補充時間」です。毛細血管補充時間とは、以下の方法でチェックすることができる、末梢の循環が悪いかどうかを知る方法。非常に簡単に脱水かどうかを推測することができますので、ぜひ試してみてください。

  1. 手の親指の爪を3秒以上、反対側の親指で押してみる
  2. 親指の爪を押している間は「白」くなると思いますが、離してみて爪の色が「赤」になるまでの時間を計測してみてください。
  3. 通常、1秒もたたずに爪の色が赤く戻ると思いますが、ずっと爪の色が白いままで「赤」に戻るまでに2秒以上かかった場合、脱水などに見られる「末梢の循環が悪い」サインになります。

他にも脱水の時は皮膚のシワの戻りがわるい「ツルゴールサイン」などがあります。しかし、ツルゴールサインは非常に高度の脱水症状の場合に見られ、軽度の脱水の場合には現れにくい欠点があります。「脱水なのかな?」と思ったら、ぜひ爪の色の戻りを気にしてみるとよいかもしれませんね。

⑥ 子供・高齢者の場合は特に注意を

 子供は体温調節機能が十分に発達しておらず、また大人より体重あたりの体表面積が大きいため、環境の影響を非常に受けやすくなっています。 暑い環境では大人より容易に体温が上昇してしまうため、顔色や汗のかき方を周囲の大人が注意深く見守ることが重要です。

 寒暖差で体調不良をきたしやすいので、普段から適度な暑さで遊んで暑さに慣れることも熱中症予防に効果的ですね。

 また、子供と同時に熱中症に特に注意しなければならないのが高齢者。高齢者は暑さや体温上昇に対する感覚が低下しており、熱を放散する力も低下しているため高体温になりやすいのが特徴です。また若年者に比べ体内の血液量が少ないため、容易に脱水症状になります。脳の察知能力も低下しており喉の乾きも感じにくいため、「喉がかわく前に」早めのこまめな水分補給を行うようにしましょう。

(参照:Exploring how a traditional diluted yoghurt drink may mitigate heat strain during medium-intensity intermittent work: a multidisciplinary study of occupational heat strain

よくある質問(Q&A)

Q. 水だけたくさん飲めば大丈夫ですか?
A. 水だけでは体内の塩分が薄まり、かえって足のけいれんなどが起きやすくなります。塩分も一緒に補給してください。

Q. エアコンの設定温度の目安は?
A. 室温の目安は28度程度ですが、湿度や個人差で体感は変わります。我慢せず、暑いと感じたら下げてください。

Q. どのタイミングで病院に行くべき?
A. 吐き気で水分がとれない、頭痛・強いだるさが続く、意識がおかしい場合は受診を。意識障害やけいれんは救急車を呼んでください。

Q. 運動やスポーツのときに気をつけることは?
A. WBGTが28以上では激しい運動を控え、31以上では原則中止が目安です。20〜30分おきの休憩と水分・塩分補給、こまめな体温チェックを行いましょう。

Q. ビールで水分補給してもいいですか?
A. おすすめできません。アルコールには利尿作用があり、飲んだ以上に水分が失われてしまいます。暑い日の水分補給は水や経口補水液を基本にしてください。

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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