- 公園や水場で遊んでたら、赤いポツポツがでてきた
- 特に出かけてないのに、体に細かい赤いブツブツがでてきた
- 片方の腕だけに急に1個1個はっきりしたブツブツができて猛烈にかゆい
こうした方は毛虫皮膚炎かもしれません。実際に毛虫に刺された自覚を持っている方は少なく、診断に難渋することもあります。
今回は、そんな毛虫皮膚炎にかかった時の症状や治療や毛虫皮膚炎にならないようにするための予防法・毛虫に刺された時の対処法について解説していきます。
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毛虫皮膚炎とは?
毛虫皮膚炎とは、文字通り毛虫の毒針毛や毒棘(どくきょく)で引き起こす皮膚の疾患のことです。
毛虫の刺毛にはさまざまな刺激物質が含まれており、これが人間の皮膚に触れることでアレルギー反応や刺激反応が起こり、皮膚の炎症を引き起こします。
毛虫皮膚炎の難しいところは毛虫に直接触れていなくても体から抜けた毛が風に乗ってきて、皮膚に付いても発症するところ。洗濯物や布団に付着した毒針毛に触れても発症するから要注意です。
毛虫皮膚炎の症状は?

毛虫皮膚炎の症状は、毛虫が持つ「毒」の仕掛けによって引き起こされます。実は、毛虫の武器は大きく分けて2種類あり、どちらに接触したかによって症状が大きく変わります。
① 毒針毛(どくしんもう)タイプ:見えない毛が引き起こす激しい「痒み」
皆さんが毛虫皮膚炎と聞いてイメージする症状の多くは、この「毒針毛」が原因です。
チャドクガなどに代表される毛虫が持つ目に見えないほど細かい(0.1mm程度)トゲのことです。この毛は中が空洞になっていて、毒液が詰まっています。
この毒針毛は非常に抜けやすく、毛虫に直接触れなくても、風に乗って飛んできたり、木の下を通っただけで服に付着したりします。
そして、皮膚に付着した毒針毛が折れることで、中からヒスタミンなどを含む毒液が放出され、アレルギー反応を引き起こします。これが、遅れてやってくる猛烈な痒みや、赤いブツブツ(丘疹)の正体です。
毒針毛は非常に軽く、広範囲に飛散します。洗濯物にくっついて、知らず知らずのうちに被害が広がることもあるので注意が必要ですね。
子供で水ぶくれまで出てきている場合は、とびひになってしまうことがあり、早めに来院していただいた方がよいでしょう。(とびひについてはとびひ(伝染性膿痂疹)について解説【症状・治療】をご参照ください)
② 毒棘(どくきょく)タイプ:刺された瞬間に走る「痛み」
もう一つは、イラガの仲間に見られる「毒棘」です。
毒針毛よりも太く、しっかりとしたトゲ状の構造です。
このトゲが皮膚に刺さることで、注射のように毒液が直接注入されます。そのため、触れた瞬間に電撃が走るような激しい痛みを感じるのが特徴です。
痛みとともに、刺された場所が赤く腫れ上がります。症状は基本的に接触した部位に限られるのが、毒針毛との大きな違いです。
このように、毛虫皮膚炎は単なる化学的な刺激だけでなく、「物理的なトゲの侵入」と「毒液によるアレルギー反応」という二重の攻撃(デュアルヒット)によって引き起こされる複雑な皮膚炎です。
なので、自分になんとかしようとすると、かえって難渋するような皮膚疾患に発展することが多いので、なるべく早く皮膚科に受診するようにしましょう。
毛虫皮膚炎を起こす代表的な毛虫の種類は?

① チャドクガ
- 発生する木の種類:ツバキ・サザンカなど
- 毒の種類: 毒針毛
- 発生時期:①4月~6月(幼虫)、7月(成虫) ②8月~9月(幼虫)、10月(成虫)
チャドクガは発生時期が2つあるのが特徴です。幼虫には数十万本の毒針毛があり、刺さると赤く腫れて、激しいかゆみや痛みに襲われます。都心部で幼虫による被害が多く、問題になっています。
② ドクガ
- 発生する木の種類:サクラ・ウメ・クヌギ・バラなど
- 毒の種類: 毒針毛
- 発生時期:6月~8月
ドクガは、幼虫・卵・サナギ・脱皮殻・成虫全ての時期で、0.1ミリメートルほどの細かい毒針毛があり、皮膚に刺さるとかゆみや炎症をひきおこします。眠れないほどのかゆみになることが多いです。
③ イラガ
- 発生する木の種類:サクラ・ウメ・ケヤキ・カエデなど
- 毒の種類: 毒棘
- 発生時期:7月~11月
イラガの皮膚炎は刺されたときの痛みが強く、電気が走ったような痛みが出ます、1~2時間で一旦治まります。しかし、その翌日に同じ場所が赤く腫れてかゆみを生じることがあります。
④ マツカレハ
- 発生する木の種類:アカマツ・クロマツなどの松の木
- 毒の種類: 毒針毛
- 発生時期:4月~7月(幼虫)7月~9月(成虫)
地域によっては年2回発生するところも。別名「マツケムシ」とも呼ばれ、松に付着する毛虫はほぼマツカレハです。刺されると腫れや激痛が走ることがあります。関節の痛みを伴うこともあります。
毛虫に刺されたら?毛虫皮膚炎の治し方

毛虫に刺されたことによる炎症やかゆみが強いため、ステロイド外用薬を中心とした「炎症を抑える薬」が中心になります。さらにかゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬などの内服薬が必要になることもしばしばあります。
軽症の場合は市販のかゆみ止めの塗り薬でもよいですが、通常はかゆみや赤みが強いので、原因がわかっていても来院される方が多いです。
また帯状疱疹や水疱瘡など鑑別しないといけない疾患も多くあるので、原因がはっきりしない場合は皮膚科に来院されたほうがよいでしょう。
また毛虫に刺された時の最も重要なポイントは、なるべく掻かないようにすること。毛虫の毒針がついた状態で掻いてしまうと、別の場所に毒針が移動して広がってしまったり、掻くことで皮膚のバリアが破壊されて症状が悪化してしまいます。
毒針毛の除去はガムテープを肌にペタペタ当てて、皮膚から毒針毛を除去するとされています。ただし毒針毛は0.1mmと非常に細く目に見えないため、テープで除去ができないこともあります。シャワーで洗い流すのも効果的ですので、「毛虫に刺されたかな?」と感じたらシャワーを浴びてしまうほうが早いかもしれませんね。
ただ、これらの治療はあくまで現在の皮膚症状を抑えるのが目的。最も大切なのはどこで毛虫皮膚炎になったか。原因となるシーンが特定されない場合、繰り返してしまうので注意が必要です。
ひまわり医院では、他の皮膚疾患の鑑別はもちろんのこと、毛虫皮膚炎になった原因から一緒に考えていきます。
毛虫に刺されたらどのくらいで治るの?

では、毛虫にさされたらどのくらいで治るのでしょうか?
毛虫に刺された後の回復期間は、個人差や症状の程度によって異なりますが、毛虫皮膚炎の症例報告によると「適切に治療することで、1週間で症状が消失した」としています。
実際に当院でも多くの毛虫皮膚炎の診療を行ってきましたが、1週間くらいなのが通常ですね。逆にこれよりも長い治療期間であった場合は、
- そもそも他の原因の皮膚炎であった
- 毛虫に触りやすい要因があって繰り返している
などのさらなる原因追及が必要になりますので、必ず病院に再受診した方がよいでしょう。
毛虫皮膚炎の予防方法は?

毛虫皮膚炎は治療も大切ですが、繰り返さないように予防することも、もっと大切です。特に毛虫皮膚炎を繰り返されている方は以下に気を付けてみましょう。
① 毛虫の発生時期や場所を知って近づかない
もっとも被害が多いのは「チャドクガ」です。チャドクガは前述の通りツバキやサザンカなどの木に生息しています。発生時期が多いのは4月~6月と8月~10月。つまり、この期間は「毛虫がでる!」と思って行動すること。これが大切です。
他にも、ドクガやマツカレハもいますよね。それぞれの場所や発生時期は前述に記載していますので、今一度確認しておきましょう。
そして最も有効なのは(当然ですが)「毛虫が発生しやすい時期に、発生しやすい場所に近づかない」ことです。
公園でも木の下でシートを敷いてピクニックすることもあるかと思いますが、自然が多い場所や行楽地に行く際にはできるだけ肌を露出を少なくするとよいでしょう。
庭木の手入れをしているときに刺されることも多いので注意してくださいね。
② 木がそばにある場合は、洗濯物を室内干しにする
意外と盲点なのが、洗濯ものに毛虫の毛針がついているケースです。自分が木のそばに近づいていなくても、衣類についている毛針がきっかけで発症する場合があります。
特に家の近くにツバキやサザンカなどの木がある場合は、洗濯物や布団を室内干しに変えるとよいでしょう。
③ 古いものを整理している時にも気をつけて
古い衣類などを整理している際にも、毛虫の毒針が付着していて発症するケースもあります。古いものを整理している時は、毛虫以外でもホコリやダニなども付着していることもあり、かぶれやすいシーンの1つです。
特にかぶれやすい方は、古いものを整理するときも肌の露出を少なくしてみてくださいね。
毛虫皮膚炎のまとめ

いかがでしたか?毛虫に刺された場合の症状から予防方法まで幅広く説明してみました。まとめると
- 毛虫の発生時期に、強いかゆみを伴うブツブツが多数でた時は毛虫皮膚炎の可能性もある。
- 原因がはっきりしないときは、皮膚科に受診して治療してもらいましょう。
- 毛虫は治療だけでなく予防も大切。特に毛虫の発生時期には出現しやすいものに気かづかないことが大切です。
といえます。毛虫皮膚炎かな?と思ったら、我慢しないで皮膚科に受診するようにしましょう。もちろん当院でもきちんと丁寧に診療させていただきます。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。




















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