ガン検診の時に時々測定されることのあるCEA。「腫瘍マーカーであるCEAが高い」と言われたら思わず「ドキッ」とするのではないでしょうか。
今回は、腫瘍マーカー「CEA」は一体どういう物質なのか、CEAの基準値、CEAが高い時に疑うガンの種類やガン以外で高くなる原因について解説していきます。
Table of Contents
腫瘍マーカー「CEA」とは?
CEA (Carcinoembryonic Antigen) は、腫瘍マーカーと呼ばれる正常な細胞では分泌しづらく、腫瘍で特異的に分泌しやすい物質の1つです。
もともとCEAは胎児の早期の受精卵細胞と共通する物質で、胎児の腸にみられるたんぱく質です。
そのためCEAは大腸がんに反応しやすい腫瘍マーカーといわれています。しかし、大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌などでも増加することがわかっており、CEAは消化器癌を中心とした、比較的多くの種類のガンに反応しやすい腫瘍マーカーといえます。
CEAは、通常の血液検査で行うことができます。しかし、注意しないといけないのは、CEAが高いと腫瘍の発生や再発を示す可能性がありますが、単独では癌の診断にはならないということ。CEAが高い場合は、放置したり焦ることもせず、医師と相談しながら他の検査(例えば画像診断や組織検査)も行うことが大切です。
(参照:ガン情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」)
腫瘍マーカー「CEA」の基準値は?
CEAの血液中の濃度は、検査法や試薬などによって異なりますが、一般的に以下のように考えられています。
年齢層 | CEA基準値 (ng/mL) |
---|---|
成人男性 | 0.0~5.0 |
成人女性 | 0.0~5.0 |
つまり、男性女性ともにCEAの基準値である「5ng/ml」より高かった場合はガンである可能性が高いかもしれない…ということになりますね。また、腫瘍マーカーの値が高ければ高いほどガンの可能性は高まってきますね。
実際、健診受信者15,671名のうち大学病院でがんと確定されたがん症例数50例を検証したところ、CEAが5ng/ml以上であった方は15例、6.72ng/ml以上であった方は8例という結果でした。
また、健康な方674名とその50例のがん患者のCEAを比較すると、有意にがん患者のCEA値が高かったということです。(ガン患者の平均CEA値は10.19ng/ml)
ただし、CEAの基準値は、後述するように妊娠中や慢性疾患、喫煙歴などで大きく左右されます。そのため、例えばがん検診などで高値になったとしても、すぐに「CEA高値=ガン」とはなりません。
腫瘍マーカー「CEA」が上昇するガンの種類は?
CEAは通常どんなガンに反応するのでしょうか。一般的には次のようなガンで反応しやすいといわれています。
- 肺がん(非小細胞肺がん):他にはSLX、CA125、CYFRA21-1なども上昇する可能性
- 乳がん:他にCA15-3なども上昇する可能性
- 膵臓がん:他にCA19-9、Span-1、DUPAN-2なども上昇する可能性
- 胆管がん:他にCA19-9なども上昇する可能性
- 胃がん:他にCA19-9なども上昇する可能性
- 食道がん:他にSCCなども上昇する可能性
- 大腸がん:他にCA19-9、p53抗体なども上昇する可能性
- 卵巣がん:他にCA125なども上昇する可能性
- 甲状腺がん
このように、数ある腫瘍マーカーでも多くのガンに反応するのが「CEA」の特徴です。そのため、CEAが上昇したからと言って「ガンが特定される」というわけではありません。
(参照:ガン情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」)
CEAが高くなるガン以外の病気は?
CEAはガン以外でも上昇することがあります。例えば以下の疾患の場合です。
- 慢性肝疾患(例えば肝硬変)
- 長期喫煙
- 感染
- 炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)
特にこの中で頻度が多いのは「長期喫煙された時」の場合です。日本での喫煙本数とCEAとの相関関係を見た論文によると、喫煙歴が0本の場合と11本以上の場合ではCEAの基準値が約1.6倍異なるとしています。つまり
- 1日喫煙量0本の場合:CEAのカットオフ値 5.2ng/ml
- 1日喫煙量1~10本の場合:CEAのカットオフ値 6.6ng/ml
- 1日喫煙量11~20本の場合:CEAのカットオフ値 8.4ng/ml
とのことでした。このように、喫煙本数だけでも変わってきてしまうので、CEAの解釈には十分注意が必要ですね。繰り返しますが「CEA高値=ガンがある」というわけではありません。CEAはあくまで1つの指標として参考にする程度にとどめておくべきでしょう。
(参照:NHS「Carcinoembryonic antigen (CEA) test」)
(参照:血清CEAの正常値に対する喫煙による影響。日健診誌 JMHTS Vol.12 No.3. 1985年)
腫瘍マーカー「CEA」についてのまとめ
いかがでしたか?今回は腫瘍マーカー「CEA」についてまとめていきました。まとめると
- CEAは本来胎児の腸由来のタンパク質であるが、腫瘍に多く発現しやすい「腫瘍マーカー」の一種である。
- CEAの基準値は一般的に「5ng/ml」であることが多いが、健康状態によって解釈は異なってくる。
- CEAは消化器がんや卵巣がん、乳がんなど多くの種類の癌と関連しており、CEA高値だけではがんを特定することはできない
- CEAはタバコや肝臓疾患、炎症性腸疾患などで上がることもあり、「CEA高値=がん」ともいえない。
といえます。当院でも自費になりますが、ご希望の方にCEAを含めた腫瘍マーカーを測定しています。ただし、CEAの解釈には十分ご注意ください。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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