- 突然子供のほっぺたが真っ赤になった
- 子供の足やうでにもモヤのように赤くなっている
- 子供がのどが痛くなった後に、かゆがるようになった
このような場合は「リンゴ病(伝染性紅斑)」の可能性が強くなります。そして、リンゴ病もウイルス感染症ですのでもちろん大人にも感染します。
大人のリンゴ病の場合は子供と違って、容易ではありません。特に妊婦さんや特定の疾患では将来に大きく関わるかもしれないのです。
今回は、大人のリンゴ病の特徴や妊婦さんに移った場合の経過なども含めて紹介していきます。
最後に3分で解説した動画もありますので、あわせてご参照ください。
Table of Contents
リンゴ病(伝染性紅斑)とは?リンゴ病の原因は?
リンゴ病の名称でよく知られていますが、正式名称は「伝染性紅斑」といいます。「伝染性」とは「人にうつる」という意味であり、紅斑とは「赤い発疹」のという意味。なのでつなげると「人にうつす赤い発疹」という意味になります。
リンゴ病の原因は「ヒトパルボウイルスB19」による感染症です。主な感染経路は
- 飛まつ感染:感染者が咳やくしゃみ、話す際に放出される飛沫が直接、他の人の目や鼻、口に入ることで感染が広がる方法
- 接触感染:感染者の体液や分泌物が付着した物体や表面(ドアノブ、手すりなど)を他の人が触れ、その後、自らの目や鼻、口を触ることで感染が広がる方法
となっています。
主に小児や学童期に好発し、感染力は強いのが特徴の1つ。そのためリンゴ病(伝染性紅斑)は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週ごとに保健所に報告しています。
しかし、大人が感染すると子供とは全く違う経過をとります。しかも、妊婦さんや特定の基礎疾患を持っている人が感染すると重篤な経過をとることもあり、流産する可能性もあります。
たまに大きな流行を起こすことがあり、最近の大きな流行は最近の大きな流行な2001年、2007年、2011年、2015年となっています。実は、2024年は過去5年に類を見ないほどの感染状況であり、東京都での定点観測では、2.0人と急上昇しています。
インフルエンザやコロナなどと同じくらい気を付けなければいけないウイルス感染症の1つです。
子供のリンゴ病(伝染性紅斑)の典型的な症状や登園は?
約10日(4~20日)の長い潜伏期間を経たのち、両頬に境界がはっきりとした赤い発疹が出てきます。
まるで平手で打ったような赤い発疹(紅斑)のため、その様が非常に特徴的なことから「リンゴ病」と名付けられました。
その後、体や手足に網目状の発疹がでるようになります。「レース状皮疹」といって、これも非常に特徴的な発疹です。しかしこちらはなかなか見慣れないとわからないかもしれません。
通常これらの発疹は通常1週間程度で消えてしまいます。
頬に紅斑が出る1週間くらい前に微熱やのどの痛み・風邪のような症状が現れていることがあります。この時期の風邪症状は、他のウイルス感染症と見分けはつけきません。実はこの風邪の時期に人に感染させる可能性があります。皮フ症状がでる頃には感染力がないのが特徴です。
通常は合併症もなく、抗ウイルス薬もありません。症状に合わせた治療をしていくことで、自然と軽快していきます。また一度感染すると終生免疫が得られるため、一般的に再感染はしないといわれています。
こうしたことから「発熱もなく全身状態が落ち着いていれば登園してもよい」とされています。このように、子供のリンゴ病は軽症の経過をたどりやすいものの、大人になると話は別です。
また妊婦さんや特定の基礎疾患を持っていると、流産や重篤化しやすいため特に注意が必要になります。
大人のリンゴ病の症状は?
リンゴ病も「ヒトパルボウイルス」の感染症であり、当然大人にもうつる可能性があるのですが、どんな症状になるのでしょうか?
成人のリンゴ病49例を対象に分析した結果、以下の通りとなっています。
- 皮膚病変:55%
- 関節痛:53%
- 発熱:41%
- 筋力低下:6%
- 血管炎:18%
- リンパ節の腫大:6%
- 貧血(溶血性貧血):12%
- 白血球の異常:31%
- 血栓:6%
49例の平均年齢は37.5歳、その82%が女性となっています。
もっとも一般的な症状は皮膚病変です。ただし子供のような皮膚の症状ではありません。
大人のリンゴ病でよく出やすい皮疹は「紫斑」とよばれ、アザのような形になります。左右対称で体幹や獅子にでてきますね。「Gloves and socks syndrome(手袋靴下症候群)」といって、まるで手袋や靴下をはいたような紫斑がでたりすることもありますね。(10%)
私が経験した大人のリンゴ病の人は手足がパンパンにむくんで痛くて曲げられない人までいました。
次に大人のリンゴ病で出やすい症状は「関節痛」です。関節痛では指節骨、手首、足首、肘、膝に対称的に複数の関節痛を訴えることが一般的です。しかし、何人かは頸部痛や腰痛などを訴える例もあったとしていますね。
発熱は大人のリンゴ病の41%の方で出るとされていますが、多くは38.5度未満であったということです。
このように見てみると、大人のリンゴ病は子供のリンゴ病とは全く異なる疾患であることがわかるでしょう。
特に関節痛や紫斑はなかなか治りにくく、筋力低下や溶血性貧血などを呈した場合は入院も必要になります。同論文でも75.5%の方が痛みなどで行動を制限するようになり、20.4%が全身ステロイド投与という強い治療が必要になったとしています。
そのため、周りのお子さんがリンゴ病になった場合、むしろ感染対策すべきなのは「大人」なのです。
(参照:Clinical management of an adult with erythema infectiosum: a retrospective case report)
(参照:Acute Parvovirus B19 Infection in Adults: A Retrospective Study of 49 Cases)
妊娠中にリンゴ病に感染すると?
子供がかかると軽症になりやすいリンゴ病も大人になると、それなりに重い症状や合併症が生じることはわかりました。
しかし、通常の大人以上に気をつけないといけないのは「妊娠中の方」です。妊娠中にリンゴ病にかかるとどのような経過をたどるのでしょうか。
一言でいうと「胎児の死亡」につながる可能性があるのです。
リンゴ病の原因ウイルスであるパルボウイルスB19にかかった妊娠中の方72名を追跡調査したところ以下のようなことがわかっています。
- 72人の妊婦さんのうち症状があったのは29人(40.3%)
- 23名は発熱と複数の関節痛があり、3名は発熱、2名は全身倦怠感、1名が複数の関節痛だった。
- 超音波検査で臨床評価された 72 人の胎児のうち、22 人 (30.6%) に異常が見られた。
- 母親の症状の発症から胎児の症状の発症までの経過時間が計算され、その範囲は 3 ~ 15 週間。
- 主な胎児異常は「胎児水腫」(8人、11.9%)や「腸の異常」「脳室拡大」など。
- 胎児のうち、全体の10.2%が死亡にいたった。
ということがわかっています。このように、リンゴ病に妊婦さんがかかると「胎児を志望させてしまう可能性」があるわけなのです。
そのため例えば「リンゴ病の可能性がある」とお子さんがいわれたら、
- 発熱などの症状がある間は、人ごみの中にいかないようにする
- 子供がリンゴ病にかかっている場合、マスクや手指などの感染対策を徹底させる
- 近くに妊婦さんがいたら早めに子供がリンゴ病にかかったことを教えてあげる
などをして、感染拡大の防止や早期発見に努める必要があります。これが、リンゴ病を蔓延させない最大の理由ですね。
(参照:Gestational and Fetal Outcomes in B19 Maternal Infection: a Problem of Diagnosis)
他にリンゴ病に注意すべき人は?
では、他に「リンゴ病」に注意すべき人はいるのでしょうか。例えば以下の方は、リンゴ病に感染することによって重篤な転帰をとる可能性があります。
❶ 免疫が抑制されている方
ステロイドや免疫抑制剤を内服している方・臓器移植している方・HIV感染や白血病の方などがリンゴ病にかかると、重篤になりやすいことが知られています。
免疫抑制とは、体の自然な防御機構である免疫反応を抑えること。そして疾患や投薬によって免疫が低下すると、ウイルスに対する免疫もよわくなるため、リンゴ病などの病原体が繁殖しやすくなります。
そして、骨髄や血液の疾患を中心に、重篤な合併症になりやすくなります。
❷ 溶血性疾患を持っている方
リンゴ病の原因である「ヒトパルボウイルスB19」はヒトの赤血球に感染し、貧血になることがいわれています。しかし、もともと血液の寿命が短くなっている「溶血性貧血」を持っている方は、さらに赤血球に寿命が短くなり、貧血が重篤になることがあるのです。
このように、妊婦さん以外でも「感染してはいけない人たち」がいます。症状が軽いから周りにうつしてよいものではないことは、重ねて注意しなければいけませんね。
大人のリンゴ病についての「まとめ」
リンゴ病についてまとめると
- 子供は発熱した後に「リンゴのような」ほほの赤みと手足のレース状皮疹がでる(発熱期に周りに感染させる)
- 大人は発熱、関節症状や紫斑などとして出る。時に重篤になりやすい
- 妊婦さんや免疫が抑えられている方・溶血性貧血の方は重篤になるため、お子さんがリンゴ病にかかったら周囲への感染防止が大切。
ということになります。「リンゴ病は自然におさまるから(クリニックに行かなくても)大丈夫」などと過信せず、クリニックや病院に受診してきちんと診断をうけるようにしましょう。
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【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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