花粉症の季節になりましたね。「ああ、今年も辛い季節が来てしまった・・・」そんな風に感じている人も多いのではないでしょうか。
かといって、花粉症にならずにこの季節に何のアレルギー症状も起こさない人もいます。不思議ですよね。もちろん遺伝や体質や周りの環境など多くの要因があるのですが、食べ物も花粉症を始めとしたアレルギー症状に大きく関係があります。
花粉症になりにくくなるにはどんな食べ物をとるのが効果的なのか、また悪化する食べ物にはどんな食べ物があるのかが、多くの論文で研究されているのです。
今回は、花粉症に効果的なおすすめされる食べ物を紹介するとともに、スギ花粉症で食べてはいけないものについても紹介していきます。
Table of Contents
花粉症におすすめな食べ物 その1:不飽和脂肪酸の多い食事
アブラというと悪い印象も多いですし、実は花粉症によいアブラと悪いアブラがあります。そのよいアブラが「不飽和脂肪酸」と呼ばれるものです。
不飽和脂肪酸は、炭素-炭素二重結合を持つ脂肪酸の総称のことで、大きく以下の2種類に分類されますね。
- オメガ3脂肪酸(n-3系):エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)などの種類があります。具体的な食べ物は青魚(サバ、イワシ、サンマ)、サーモン(鮭)、くるみ、チアシード、アマニ油などがあります。
- オメガ6脂肪酸(n-6系):リノール酸、アラキドン酸など。食べ物としては大豆油、ゴマ油、ひまわり油、アーモンド、ひまわりの種など
実は、これらの脂肪酸は、細胞膜の構成成分として免疫機能や炎症応答に重要な役割を果たします。特に花粉症をはじめとした各アレルギー症状を抑える不飽和脂肪酸が「DHA」「EPA」であり、以下のようなメカニズムでアレルギー症状を抑えることがわかっています。
- 抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増加させ、制御性T細胞(Treg)を誘導 し免疫系の過剰なアレルギー反応を抑制する。
- B細胞のIgE産生を抑え、花粉などのアレルゲンに対する過剰な抗体反応を減少させる
- EPA・DHAが皮膚のセラミド産生を増加させ、皮膚・粘膜のバリア機能を改善し、アレルゲンの侵入を防ぐ。
実際、2015年のスウェーデンで行われた研究では、8歳時点で鼻炎症状がなかった1,590人の小児を、不飽和脂肪酸の量に応じて3つのグループに分けて今後鼻炎になりやすいかどうかを比較しました。すると、もっとも定期的に不飽和脂肪酸を取っていたグループは取っていなかったグループよりも27%も鼻炎になる確率が低下していたのです。(95%信頼区間で2~45%低下)
このように、不飽和脂肪酸は普段から食べると鼻炎症状になりにくいので、花粉症にも有効な食事といえそうですね。代表的な食事メニューとして地中海食事や和食が挙げられます。あわせて
地中海食は認知症やダイエットに効果がある?地中海食の論文によるエビデンスを紹介!
も参考にしてみてください。ただし、青魚にはヒスタミンという成分も含まれているので、たまに青魚を食べるとかゆくなるという人がいます。くるみもアレルギー食品の1つとして挙げられます。そうした方は蕁麻疹をはじめとしたアレルギー症状が強くなる可能性があるので注意しましょう。
(参照:Fish and polyunsaturated fat intake and development of allergic and nonallergic rhinitis)
花粉症におすすめな食べ物 その2:食物繊維の多い食事
次に花粉症でおすすめしたいのが食物繊維の多い食事。食物繊維というと便秘というイメージが強いと思いますが、実は花粉症にも有効なのです。
なぜ食物繊維が花粉症に効果的なのか。例えば以下のようなメカニズムが考えられています。
- 食物繊維は腸内細菌によって短鎖脂肪酸(SCFAs)に変換され、特に酪酸が制御性T細胞(Treg)を増加させる。そして、Tregが増えることで、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)の分泌が減少。過剰なアレルギー反応を抑える。
- 鼻粘膜の上皮細胞が産生するTSLP(胸腺間質リンフォポエチン)は、アレルギー反応を悪化させるが、酪酸がTSLPの発現を抑制する。
- 腸内環境が改善すると、腸粘膜バリアが強化され、アレルゲンが血流に入りにくくなる。さらに鼻粘膜のバリア機能も向上し、花粉などのアレルゲンの侵入を防ぐ。
そんな花粉症にも有効な食物繊維ですが、意外と食事を選ばないと必要量を摂取できません。食物繊維の多い食事は例えば以下の通りです。
- 野菜類:切干しだいこん、しそ、モロヘイヤ、ごぼう、ブロッコリー、だんこんの葉、ホウレンソウ、サニーレタス
- 豆類:いんげんまめ、あずき、だいず
- キノコ類:きくらげ、しいたけ、えのきだけ、まいたけ
- イモ類:はるさめ、こんにゃく、さつまいも、さといも
- ナッツ類:アーモンド、クルミ、ピスタチオ
- 果物類:アボカド、レモン、ラズベリー、アサイー、干しブドウ、ブルーベリー
2022年にスウェーデンで発表された食物繊維と喘息、アレルギー性鼻炎の関連性を調べた論文によると、2,285 名に対して、8 年間の食物繊維摂取量と 24 年間までのアレルギー性鼻炎症状との関連を調べた結果、食物繊維が1日5g多くとるほど、アレルギー症状が14%低下という結果になりました。
食物繊維をとる種類については、果物が21%低下、そのほか(ジャガイモ、豆類、ナッツ類)が29%低下という結果になっており、より花粉症に効果的かもしれませんね。
まずは普段の食事から5g多く食物繊維をとるということから始めてみましょう。
花粉症におすすめな食べ物 その3:ビタミンA・D・Eが多い食事
ビタミンやミネラルも免疫を調節する作用があることは言われていますが、ビタミンの中でもアレルギー症状に有効といわれているのが「ビタミンA・D・E」です。
例えば、ビタミンAやビタミンDやアレルギーを抑えるTreg(制御系T細胞)を誘導することで、アレルゲンに対する免疫寛容を維持する上でとても大切です。
実際、マウスの実験では、ビタミンAを投与することで、アレルギーにかかわる好酸球の活性レベルやIgEレベルなどが低下していることが示されています。
さらに、ビタミンEもアレルギー反応に重要であることがマウスの実験で証明されています。実際、ビタミンEを投与したマウスでは、鼻の中の好酸球と肥満細胞が減少し、I型アレルギーの経路を抑えることが示されていますね。
また、2020年に中国で行われたアレルギー性鼻炎とビタミンEとの関係を調べた研究によると、アレルギー性鼻炎の子供の方が血中のビタミンEレベルが低下していることがわかりました。さらに、ビタミンEのレベルが血中のIgEの低下とも関係があることもわかっています。
このように、ビタミンA・ビタミンD・ビタミンEを普段から意識して取ることは、不飽和脂肪酸や食物繊維ほどの強力なエビデンスはないですが、有効であるといえそうです。
例えば、ビタミンA・ビタミンD・ビタミンEが豊富にある食べ物としては以下の通りです。
- ビタミンAが多い食べ物:レバー、あんこう、うなぎ、のり、あゆ、ほたるイカ、にんじん、モロヘイヤ、さけ、ほうれんそう
- ビタミンDが多い食べ物:きくらげ、かつお、いわし、にしん、さけ、数の子、からすみ、まいたけ、うなぎ、あゆ、しいたけ、卵
- ビタミンEが多い食べ物:煎茶、ひまわり油、アーモンド、あゆ、なたね油、まつの実、らっかせい、ひまわりの種、米ぬか、卵、マヨネーズ、モロヘイヤ
他の栄養素もそうですが、少し食べただけでは効果がありません。少なくとも1日の必要量を考えて、摂取するとよいですね。
(参照:Serum level and clinical significance of vitamin E in children with allergic rhinitis)
(参照:The Role of Diet and Nutrition in Allergic Diseases)
花粉症におすすめな食べ物 その4:ヨーグルト
花粉症におすすめな食べ物として、ヨーグルトをはじめとした「腸活」が重要であることがわかってきました。
2022年に発表された28件の研究をまとめた論文によると、プロバイオティクスを摂取することで
- アレルギー性鼻炎の症状を抑える
- 鼻粘膜の炎症の度合を抑える
- アレルギー症状による生活の質の低下を改善させる
ことが言われています。
実は、腸内細菌叢の異常がアレルギー性疾患の免疫の異常につながっているのではないかと言われており、プロバイオティクスは全身の炎症を抑え、免疫状態を改善することが報告されているのです。
もともとアレルギー性鼻炎はI型アレルギーというIgEを介したアレルギー反応が主ですが、本研究ではヨーグルトによりIgE抗体を下げることはありませんでした。
代わりにヨーグルトはヘルパーT細胞という免疫の中枢になる細胞の数を調節していたことから、ヨーグルトは主な花粉症薬の「抗ヒスタミンをブロックする経路」とは少し違う作用機序で働いていると思われます。
プロバイオティクスの種類も、単一のものよりは混合されているものの方がアレルギーに対する効果が高いことも報告されているので、ヨーグルトだけでなく色んな種類の菌を摂取するようにするとよいかもしれませんね。
しかし、別の11,284人ものデータを使った観察研究では「花粉症の人とそうでない人ではヨーグルトの摂取量は変わらなかった」としていますので、「少しヨーグルトで花粉症を緩和できる可能性がある」くらいに考えておくとよいでしょう。
他にもケルセチンや亜鉛、鉄、ケンフェロールなど、さまざまな成分が花粉症に有効ではないかといわれています。また随時アップデートしていきます。
花粉症が悪化しやすい食べ物は?
逆に花粉症をはじめとしたアレルギー症状が悪化しやすいものの代表的な食事は「飽和脂肪酸を中心とした高カロリーの食事」です。
実は、肥満とアレルギーには密接な関係があります。かねてから肥満の人が増えるとともにアレルギー患者さんが増えていましたので「関連があるのではないか」といわれていました。
分子生物学的にも肥満者に見られる慢性炎症により、アレルギーを抑える制御性T細胞の働きが弱まり、肥満がアレルギーに対して悪影響をもたらすことが言われています。
実際、2016年に発表されたアメリカの子供と成人8,165 人を対象とした研究によると、成人において、肥満や太りすぎにより鼻炎症状が1.43倍になるといわれていますね。
また、2023年にアレルギー疾患における食事についてまとめた論文によると、以下の食事はアレルギー疾患を悪化させるとしています。
- 高エネルギーの食事
- 高たんぱくの食事
- 飽和脂肪酸が多い食事
- 食物繊維が少ない食事
- 野菜や果物が少ない食事
- 単糖類や加工食品が多い食事
- 亜鉛、鉄、ビタミンA、D、Eの含有量が低い食事
様々な部分に気を付けないといけませんが、とりあえず「太りやすいジャンクフード」はアレルギー疾患の方はさけた方がよいでしょう。
(参照:Obesity and rhinitis in a nationwide study of children and adults in the United States)
(参照:The Role of Diet and Nutrition in Allergic Diseases)
スギ花粉症の人はトマトにも注意
スギ花粉症の人は「トマト」も要注意であることは知っていますか?
トマトにはスギ花粉に含まれるアレルゲンと類似構造を持つタンパク質が含まれていると報告されており、スギ花粉症の人は、トマトによりアレルギー症状を発症する可能性があるとされているのです。
実際、2022年に日本で発表された、11,284人に及ぶ研究結果によると、花粉症の重症度に関連する因子として、年齢や性別(女性の方が重くなりやすい)、呼吸器疾患の使用とともに、「トマトアレルギーであること(1.35倍)」が示されています。
多くのスギ花粉症の人がトマトに抵抗なく食べられているので、全員にあてはまる話ではありませんが、トマトを食べた時にピリピリとした違和感を感じやすかったり、口やくちびるがかゆくなりする方は、トマトにも注意した方がよいかもしれませんね。
その際は加熱処理したして加工すると、トマトのタンパク質が変性されるので、試してみるとよいでしょう。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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