新型コロナも4月から「5類」に変更になるという発表から、SNS上では「マスク不要」とする動きがみられています。その中で
- 新型コロナで「薄いマスク」1枚で防げるとは思えない
- マスクを「お願い」しながら「半強制」されるのは耐えられない
- 海外ではマスクをしていないのに、日本だけマスク着用をするのは遅れている
といった声も聞かれ、「マスクは意味がない」という声もあるようです。しかし本当にマスクは不要なのでしょうか?現時点での海外の状況や論文から、マスク不要とする理由や本当にマスクが必要かどうかについて、改めて考えていきましょう。
マスクに関する一般的なメリット・デメリットに関しては【新型コロナ】感染対策でのマスクの効果とデメリットについて解説を参照してください。
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マスク不要とする理由は?
SNSで「マスク不要」と言われる最大の根拠は「新型コロナがインフルエンザ並みの重症化率・死亡率になった」ことがあげられるでしょう。
第7波までの解析結果では「波を繰り返すごとに新型コロナの重症化率・致死率ともに低下してきている」ことが分かっています。
さらに、解析方法は異なりますが「季節性インフルエンザと比較した場合よりも、新型コロナの方がむしろ低いのではないか」とするデータもあります。
過去に新型コロナにかかったことがある方が増えてくれば、より新型コロナでの重症化率・新型コロナによる致死率は低下してくると予測されます。そのため、「新型コロナ流行前の状態=あまりみなさんがマスクを意識していなかった状態」に戻していってもよいのでは?ということで、「マスク不要」の動きが出てきているというわけです。
また、海外でもマスクを着用していない状況などがテレビでうつされ
- 子供の表情をマスクがうばっている
- マスクで体調不良になることが多くなってきた
- 日本だけがマスクをしていて感染者数が増加している
とマスク不要の声が強くなったことも一因として考えられます。
マスクは本当に不要?
ではマスクは新型コロナ感染症予防に効果がなかったかというと、そうではありません。マスクの新型コロナへの予防効果は論文でも指摘されています。
例えば、2022年のアメリカからの報告によると「マスク着用により再生産性を19%減らすくらいの感染予防効果がある」としています。また、同論文ではマスクを全くしていない場合と公共機関などでマスクをほとんどの時間している場合とで比較したところ、マスク着用は感染の25%相当の減少にあたることがわかりました(6-43%)
一方、マスクの効果が明らかにならなかった論文もあります。例えば、Cochraneが2020年に発表した「ランダム化比較試験」ですね。
これに対して、同論文では「『マスクをしなさい』と上から言われることが、必ずしもマスク着用の上昇につながるわけではないこと」を指摘しています。
例えば、先のランダム化比較試験では「マスクをしなさい」と言っていたのに、実際にマスクを「きちんと」着用している方は少なかった、というわけですね。実際、他の研究でも命令後のマスク着用率の上昇が13%~23%くらいであったとしています。
つまり簡単にいうと、「マスクは命令されてつけるわけではない、マスクの要不要を自分で考えて自らつける傾向が高かった」ということだったのです。
日本はもともと海外に比べてマスクへの抵抗感は少なく、感染予防意識の高い方が多い傾向にありました。ですので、政府の指示以上に「自分から」つけている方が多いでしょう。
新型コロナの分類が5類に変更になり、屋内のマスクが『推奨』に変更になったとしても、ウイルスの性質などが変わるわけではありません。より1人ひとりのリテラシーが求められることになるでしょう。
また、新型コロナの重症化率がインフルエンザと同じくらいになったとして、以下の点ではインフルエンザをはるかに凌駕します。
- 感染力の高さ:インフルエンザは飛沫感染が中心ですが、新型コロナはエアロゾル感染なども含まれます。また、インフルエンザは冬のみが中心ですが、新型コロナは季節を問わず感染の波が生じてきます。
- 後遺症発現率の高さ:新型コロナではオミクロン株以降でもイギリスの調査では5%、広島県のインターネット調査では34%もの方が4週間以上の症状に悩まされています。
- 再感染による危険性:新型コロナは再感染により「あらゆる病気への死亡リスク」が2.17倍に上昇する可能性が指摘されています。詳しくは新型コロナの再感染はいつから?コロナ再感染の重症化や間隔・リスクについて解説を参照してください。
したがって、5類になったからといってマスク不要でノーガードでよいとは原則考えません。ご自身のマスク着用によるデメリットと比較して考えていただきたいと思います。
(参照:PNAS「Mask wearing in community settings reduces SARS-CoV-2 transmission」)
マスク着用に関する海外の対応は?
では、マスク着用に関する海外の対応は実際どうなのでしょうか。
例えば、アメリカでは「新型コロナの流行状況や場所・重症化リスク」に応じてマスク着用を含めて感染対策を変えるという方法をとっています。CDCでは
- 自分の地域が新型コロナが流行しているか(コミュニティレベル)を知ってもらい、「軽」「中」「高」に色分けして明示。
- 重症化リスクが高い「高齢者」「特定の病気を持っている方」「妊娠中の方」と接する方は、コミュニティレベルが中程度なら医療従事者と相談、高い場合は必ずマスク着用をする。
といったように、コミュニティレベルによって層別化され、さらに
- コミュニティレベルが「軽度」:マスクを着用することを選択できます。屋内の公共機関ではマスク着用を「推奨」します。他の場所では地方自治体、州によりマスクが必要になる場所があります。
- コミュニティレベルが「中等度」:重症化するリスクが高い方はマスクが「必要」になります。重症化する方と接触する機会がある方(同居人など)は、屋内で一緒にいるときはマスク着用を検討、接触する前に感染を検出するための自己検査を検討してください。
- コミュニティレベルが「高度」:適切なマスクを着用してください。重症化するリスクが高い方は、不要不急の屋内活動を避けるよう検討してください。
となっています。アメリカでも「新型コロナでマスクをしなくて大丈夫」などとはしていないことがわかりますね。イギリスNHSでも「イベントや集まりで感染の集まりが特に高いと評価される場合にはマスク着用が考慮されるケースがある」としています。
このように、海外の状況から見ても「マスクは全ての場面で不要である」わけではないので注意しましょう。
(参照:CDC「Use and Care of Masks」)
マスク不要論に関するまとめ
いかがでしたか?今回はマスク不要に関して、海外の状況も含めてお話していきました。まとめると
- マスク不要は新型コロナがインフルエンザと同じくらいの重症化率・致死率であることから「新型コロナ流行前にもどしてもよいのでは?」ということからがきっかけ。
- ただし、マスク自体の効果は論文上でもいわれており、「マスク不要=マスクの効果がない」わけではない。
- マスクが効果がないとする論文はマスクを遵守する率が低かったことが指摘されており、マスクは上から強制されてつけるよりも感染防御のリテラシーから自分でつけるものであることが示唆されている。
- 新型コロナは感染率の高さや後遺症・再感染でのリスクなども言われており、一概にインフルエンザ並みともいい難い。
- 海外においても野放しに「マスク不要」としているわけではなく、場面や流行状況によって対策を変えて対応している。
といえます。5類に変更になった場合は、より個々人のリテラシーが求められることになります。もちろんマスク着用で「思考力が鈍くなった」「肌あれが多くなった」「頭痛がでてくるようになった」などの方もいるでしょう。(私もたまにあります)
それぞれの場面場面によって適切にマスク着用を判断していきたいですね。
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