新型コロナに対する市販薬について【発熱や咳などの症状別】

こんにちは、一之江駅前ひまわり医院の伊藤大介です。

デルタ株やオミクロン株「BA.5株」「BQ.1.1株」など数々の変異株が出現するたびに感染者数が広がる「新型コロナウイルス感染症」。

中にはキットで「新型コロナ陽性」であることが分かっていても受診できなかったり、医療機関で薬がもらえなかったりで、非常に苦しまれている方を拝見します。

医療機関に受診できない方が受診までの「つなぎ」として頼りになるのが「市販薬」です。しかし、どんな薬が「コロナに対する市販薬」として使えるかわからない方も多いでしょう。

そこで、新型コロナで療養されている方で、一般的に推奨される市販薬を「発熱」「喉の痛み」「咳や痰」「鼻水」の症状別に分けて解説していきます。

新型コロナ「BA.5株」「BQ.1株」の特徴については、

を参照してください。

新型コロナで発熱した時の解熱剤の種類は?

新型コロナ感染症では、しばしば38度から39度の発熱になることが珍しくありません。発熱は本来体温を上げてウイルスと戦うサインであり自然な防御機能ですが、あまりに発熱が長く続くと体力を消耗し、疲れてしまいます。

そこで使用されるのが「カロナール®」や「イブ®」「ロキソニン®」などの解熱鎮痛薬ですが、何をつかってもよいのでしょうか。

結論からいうと「カロナール®(アセトアミノフェン)でなくてもNSAIDS(イブ®・ロキソニン®など)でもよい」です。

当初は「ロキソニンなどを使用すると、サイトカインストームが発生し新型コロナの症状が悪化するかもしれない」といわれていました。しかし2021年9月に発表された複数の論文をまとめた論文(メタアナリシス)によると、「イブプロフェンなどのNSAIDSを使用しても新型コロナによる入院率や増悪率は変わらない」としています。

イブプロフェンで発熱などの症状が緩和されるのは確かなので(重症化予防として有効であるわけではありませんが)アセトアミノフェン同様に使用していただいてよいでしょう。

ちなみに、アメリカCDCでもアセトアミノフェンと並べてイブプロフェンを「新型コロナ感染症に使える解熱鎮痛薬」として記載しています。

ただし、例えば妊娠後期の方や15歳未満の小児の方、「ロキソニン喘息」をお持ちの方など、イブプロフェン・ロキソニンを使用してはいけない方がいます。そのため初めて使用されてご不安な方は、薬剤師に相談するとよいですね。

(参照:Drug Saf. 2021 Sep;44(9):929-938.NSAIDs and COVID-19: A Systematic Review and Meta-analysis
(参照:CDC「COVID-19 Treatments and Medications」

新型コロナの「喉の痛み」に対する市販薬は?

新型コロナ感染症に関わらず、喉の炎症を抑え、喉の痛みを緩和する成分として「トランサミン(トラネキサム酸)」があげられます。そのため「トラネキサム酸が配合されている市販薬は新型コロナによる『喉の痛み』に効きやすい」といえます。

ただし、トランサミン(トラネキサム酸)は粘膜の炎症を緩和し喉の痛みやわらげる効果がある一方、もともと「止血剤」であるという点に注意が必要です。

新型コロナウイルス感染症の特徴の1つとして実は「血栓などの凝固異常で悪化する」と言われています。そのため、重症化した方の治療薬としてヘパリンなどによる抗凝固療法(血液をサラサラにする治療)が行われるほどです。

そのため「トランサミン(トラネキサム酸)で血栓が誘発して悪化してしまうのではないか」という論文もあり、2022年3月にシンガポールからは「トランサミンは新型コロナの肺炎を悪化させる可能性もあるので、バランスを考えながら投薬する必要がある」としています。

上記の新型コロナの血栓誘発の性質は2020年からと言われており日本でも検討が行われていましたが、いまだに決着がついていません。

総合的に考えると「肺炎などの重症化していない軽症の新型コロナ感染症の喉の痛みの緩和にはトラネキサム酸は有用ですが、肺炎などの重症になっている方の服用は医師に相談など慎重にした方がよい」といえるでしょう。当院でもバランスを考えながら処方するよう心がけています。

新型コロナも含めた「喉の痛み」へのケアは、

もご参照ください。

(参照:Tranexamic acid in COVID-19 pneumonia
(参照:Consideration of Tranexamic Acid Administration to COVID-19 Patients. Physiol Rev. 2020 Oct 1; 100(4): 1595–1596.

新型コロナの「咳と痰」に対する市販薬は?

新型コロナでの咳と痰はどのように考えればよいのでしょうか。

まず新型コロナによる「痰」について。痰はウイルスを外に出すために作られた粘液の塊なので、なるべくスムーズに外に出す必要があります。そこで開発されたのが「去痰薬」であり、「カルボシステイン(ムコダイン®)」や「アンブロキソール(ムコソルバン®)」「ブロムヘキシン塩酸塩」などがそれに当たります。

実際、新型コロナでの去痰薬の有用性について言及している論文もあり、そこでは「カルボシステインは喀痰の粘度を低下させることが証明されており、サイトカインストームとそれに続く気道組織のダメージを抑え、気道の炎症を調節する」としていますね。

去痰薬が明らかに新型コロナの重症化を抑えるというデータはありませんが、痰のからみを押さえ、気道の炎症を調節する点も確かです。また副作用もほとんどなく安全性も高いので、オススメできる市販薬の1つとして考えてよいでしょう。

(参照:Covid-19: a puzzle with many missing pieces

新型コロナに対する「咳止め」について。鎮咳薬には、比較的安全性の高い「非麻薬性」と効果も高い「麻薬性」があり、どちらも脳からの「咳をだせ」という指令をストップさせることで咳を止めます。

「デキスルメトファン」を含んだ鎮咳薬の多くは「非麻薬性」であり、新型コロナ感染症の咳症状に安全に使用できるでしょう。ただし、「テオフィリン」「アミノフィリン」などの気管支拡張作用のあるものは、多くの薬剤と相互作用を示す場合があるので、薬剤師さんに一度確認してもらった方がよいかもしれませんね。

また咳は本来「ウイルスを外に追い出す」という目的のために自然と出るもの。止めすぎるとその分ウイルスを体内にとどめることになります。

そのため「人に接するため」「睡眠や生活の質が低下するため」「喉の炎症を守るため」などの目的があるときのみ使用し、咳を完全に止めるということはしない方がよいでしょう

市販薬ではありませんが「ハチミツは咳の重症度を押さえ、咳を中心とした症状に、通常のケアよりも優れている」ことが複数の論文を解析した結果でわかっています。ハチミツ自体、喉の炎症も抑えるので、市販薬に組み合わせるとよいですね。

ちなみに抗ウイルス薬の1つである「パキロビッド」を処方された方は、例えばリン酸コデインやフスコデ®など「一部の咳止め」を使用することができません。(飲み合わせが悪いため)

また、ゾコーバを内服されている方も一般の市販薬によく添加されている「無水カフェイン」などとの飲み合わせが悪いものが多いので、市販薬の咳止めを使わない方が無難です。

パピロキッド®・ゾコーバ®を使用される際には、処方された薬以外には飲まないようにしましょう。

咳や痰のケアについては

もあわせて参照してください。

(参照:Effectiveness of honey for symptomatic relief in upper respiratory tract infections: a systematic review and meta-analysis. BMJ Evid Based Med. 2021 Apr;26(2):57-64.

新型コロナの「鼻水」に対する市販薬は?

BA.5の特徴の1つに「鼻水の率がBA.2株よりも多くなっていること」があげられます。鼻水もウイルスを外に追い出す目的で粘液が産生されるわけですが、あまりに多いと

鼻水で鼻自体がつまり、酸素が通りづらくなり、生活の質が低下してしまうので、適度に止めたほうがよいケースがあります。そうした際、花粉症などに使われる「抗ヒスタミン薬」は、ウイルスに伴う鼻水でも有効なケースがあります。

また「抗ヒスタミン薬」と「抗ロイコトリエン拮抗薬」の組み合わせで「80%の方が症状が緩和された」というデータもありますね。(ただし、抗ロイコトリエン拮抗薬は病院でしか入手することができません)

鼻水でお困りの方は、上記の「抗ヒスタミン薬」が入った薬を市販薬をつなぎとして試すとよいでしょう。鼻水については鼻水はコロナから?風邪とコロナ・花粉症の見分け方について解説もあわせて参照してください。

(参照:Role of antihistamines in the management of COVID-19 infection

新型コロナで症状が強い方は病院に受診を

ここまで書くと、「新型コロナ感染症は市販薬で大丈夫なの?」と思う方もいるでしょう。もちろんそういうわけではありません。

あくまで新型コロナに関しては市販薬は「病院に行くまでのつなぎ」として活用したほうが無難です。

重症化しやすい方は、ウイルスの増殖を抑える治療薬があります。意外と「重症化しやすい方」にあてはまっているのにも関わらず、抗ウイルス薬が処方がされていなかったり、薬をほとんど処方されずに当院に「後遺症」として受診されるケースが診られるのが残念でなりません。

さらに、重症化リスクのない方も処方できる症状を「ゾコーバ®」も原則発症後3日以内でないと十分な効果が検証されておりません

(新型コロナの治療薬に関しては【ゾコーバ・ラゲブリオ・パキロピッド】新型コロナ感染症「軽症」の治療薬についてを参照してください)

さらに、患者さん自身も市販薬で放置して症状が悪化して受診され、抗ウイルス薬の適応外(発症5日以内でないと処方できない)になってしまうケースも見られます。罹患後症状として長引いてしまうケースも散見されます。

当院でもかかりつけの方はもちろん、かかりつけ以外の方も自分のマンパワーが許す限りは患者さんをお受けしたいと思っております。新型コロナでつらい思いをされている方はぜひご相談ください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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更新履歴

  • 2022年12月7日:ゾコーバ®について追記。他、適宜修正。

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コメント

    • ひまつぶし
    • 2023年 1月 17日 11:59pm

    すごく丁寧に分かりやすくまとまっているし、根拠も確かのように思えるし、素晴らしいと強く感じたのでコメントしてしまいました。参考になりました。ありがとうございます。

      • Daisuke Ito
      • 2023年 1月 18日 6:17am

      コメントいただきありがとうございます。他のコラムもぜひ参考にしてみてください!

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