日差しが強くなると多くなるのが「日光アレルギー」。実際、当院にも
- 日差しがあたる箇所がかゆくなって困っている
- 日差しが強くなると、毎回赤くかゆくなってしまう
などの相談で来院される方も多くいらっしゃいます。実際、日光アレルギーはどうして起こるのでしょうか?
今回、日光アレルギーの具体的な症状や原因・日光アレルギーの薬に至るまで、わかりやすく解説していきます。日光アレルギーかどうかのチェックリストをつけますので、ぜひ参考にしてみてください。
Table of Contents
日光アレルギー(光線過敏症)の症状は?
日光アレルギーとは「健康の方では問題ない程度の日光に過敏に反応して皮膚に炎症が起きる状態」です。光線過敏症ともいわれますね。
日光アレルギーと一言でいっても実はいろいろな分類をすることができ、症状の出方も異なります。例えば次の通りです。
① 光接触皮膚炎
光接触皮膚炎とは、おもに塗り薬や貼り薬が原因で起こるタイプで、光と原因物質が接触した部分が主に赤く、かゆくなるタイプの日光アレルギーです。皮膚が赤くなるだけではなく、腫れ、強いかゆみ、水疱などひどい日焼けのような症状が現れ、時には全身に広がることがあります。
一番有名なものとしては、光過敏になりやすい湿布(ケトプロフェン)を張った後に、光を浴びるとその部分がかぶれたような状態になること。まれに貼っていない場所にも赤みが出ることがあるので要注意です。
(参照:日本皮膚科学会「光線の関与した接触皮膚炎(かぶれ)はどのようなものですか?」)
② 薬剤性光線過敏症
薬剤性光線過敏症とは全身投与された薬剤が皮膚に分布し、光に全身が反応して皮疹を誘発するタイプの日光アレルギーのこと。光接触皮膚炎は、塗り薬や貼り薬でしたが、こちらは「光過敏になりやすくなる薬」を飲んだことによる日光アレルギーですね。
もちろん、このタイプの日光アレルギーは薬剤を中止することで徐々によくなっていきます。
しかし後述しますが、実は「光過敏になりやすくなる薬」は非常に多岐にわたります。そして、薬の中では簡単に中止することができない薬もたくさん含まれているのです。
ですので、これらを疑う場合には内科の先生とよく相談しながら今後の治療プランを決めることになります。
③ 日光じんましん
日光じんましんとは日差しをあびている最中や日陰に入ったあとに、日差しにされされた部分に「膨疹」という虫刺されのような皮疹がでて数時間で消える日光アレルギーのこと。
数時間で消えるから軽いように思うかもしれませんが、日光に当たると猛烈にかゆくなるので非常につらいのも特徴です。長時間あるいは広範囲にわたって日光じんましんができていると、頭痛、めまい、吐き気、脱力や息苦しさなどの「アナフィラキシーショック」がでてくる場合もあります。
④ 多形日光疹
多形日光疹とは日光(主に紫外線A波)に対する皮膚の過敏反応として生じる発疹です。その原因はまだ完全に解明されていません。多形日光疹は、日光に関連する皮膚の問題の中で最も一般的なものの1つであり、女性や北方の気候の出身で日光にあまり晒されない人によく見られます。
この発疹は、日光にさらされた部分の皮膚に複数の赤い隆起や不規則な形の赤く盛り上がった病変(局面といいます)として現れ、まれに水ぶくれも見られます。
局面はかゆみを伴い、通常は日光にあたってから30分から数時間で出現します。ただし、何時間も後や数日後に新たな発疹が現れることもあります
これら以外の日光アレルギーもあります。このように、日光に対して様々な反応を示すのが日光アレルギー。以外と多くの方が光線過敏症をもっていて、「非てんかん患者の光線過敏症の有病率は、人口の0.5~8.9%くらいにのぼる」ともいわれています。
(参照:Photosensitivity:epidemiology, genetics, clinical manifestations, assessment, and management)
日光アレルギーのチェックリスト
さまざまなタイプがある日光アレルギーですが、共通した性質があります。それをもとに簡単にチェックリストを作成いたしました。ご自身がどれくらい当てはまっているかチェックしてみるとよいでしょう。
【日光アレルギーのチェックリスト】
- 日光にさらされると、皮膚が赤くなり、かゆみや腫れが生じる。
- 日光にさらされた部位に限定して、発疹や水疱が現れる。
- 日光にさらされた後、30分から数時間で皮膚の症状が現れる。
- 症状が現れる部位は、顔、首や胸のV領域、前腕、手の甲など、日光に直接さらされる部分である。
- 発疹や症状は数日から数週間以内に自然に消える。
- 繰り返し日光にさらされると、日光に対する皮膚の過敏性が徐々に弱まる(ハードニング現象)。
- 症状が春や夏、晴れた日に特に強く出る。
- 室内や日陰では症状が軽減される。
- 皮膚に塗布した化粧品や薬剤などが、日光にさらされることで症状が悪化することがある。
- 全身性エリテマトーデスや他の光線過敏症があるか、家族歴がある。
診断基準(あくまで参考程度にお使いください。正確な診断は医師に相談してください。):
- 日光アレルギーを弱く疑う:2~3個以下の項目が当てはまる
- 日光アレルギーをかなり疑う:4~6個の項目が当てはまる
- 日光アレルギーを非常に強く疑う:7個以上の項目が当てはまる
(参照:Photosensitivity:epidemiology, genetics, clinical manifestations, assessment, and management)
日光アレルギーの原因は?
日光アレルギーの原因は「日光に対する過敏反応の総称なので、非常に多岐にわたります。共通している原因の1つは、数ある光の波長のうち主にUVA(長波長紫外線:320~400nm)によって起こされている可能性が高いということ。
ただし、疾患によってはUVBや可視光線に起因するものもありますし、赤外線も時には誘発する原因となります。
① 薬剤によるもの(外因性)
前述したとおり、日光アレルギーの原因の多くが薬剤と関わります。薬剤による光線過敏症の頻度は薬疹全体の約14%を占めるとも言われており、薬剤を取り除かない限り繰り返すので、必ず薬剤をチェックするようにしています。例えば、次のような薬があります。(まだ他にもあります)
- 抗生物質:テトラサイクリン系、キノロン系、スルホンアミド系
- 抗精神病薬:クロルプロマジン、チオリダジン
- 高血圧薬:サイアザイド系、フロセミド、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):スプロフェン、ケトプロフェン(湿布も含む)
- ニキビ治療薬:イソトレチノイン
- 抗不整脈薬:アミオダロン、キニジン
- 糖尿病治療薬:SU薬
- 化学療法薬・リウマチ薬:フルオロウラシル、メトトレキサート
- サンスクリーン剤:PABA、オキシベンゾン(紫外線吸収剤)、チロメサール(殺菌防腐剤)
上記をみるだけで分かる通り、「それなりに使わないといけないシーンが多い薬」ばかりです。
ですので、日光アレルギーの重症度を考えながら、治療方針を立てないといけません。また、薬剤性ではありませんが、EBウイルスによっておこる「種痘様水疱症」というのもあります。
② 内因性の日光アレルギーの原因
薬剤以外にも、内因性の日光アレルギーといって、体内の要因や遺伝的要因が原因で日光に対する過敏性が引き起こされるタイプのアレルギーがあります。
例えば、内因性の日光アレルギーの原因として考えられるものは以下の通りです。
- 遺伝的要因:家族歴があり、親や兄弟姉妹にも日光アレルギーの症状がある場合、遺伝的要因が関与している可能性があります。例えば、色素性乾皮症,Cockayne症候群などですね。
- 自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚筋炎などの自己免疫疾患がある場合、日光に対する過敏性が引き起こされることがあります。
- 代謝異常:代謝異常によって日光アレルギーの原因となることがあります。有名なのが、ポルフィリン症やフェニルケトン尿症ですね。またペラグラ(ビタミンB3不足)などの栄養不足でも日光アレルギーにあることがあります。
このように、原因がわからない場合もありますが、薬剤を中心に原因がわかるケースもあります。
当院では、日光アレルギーになりやすい薬剤をスクリーニングしながら、重症化しやすい日光アレルギーの有無を調べる上で採血検査を必要に応じて行っております。
光パッチテストや光線テスト(MED測定)などに関しては行っておりませんので、適宜専門施設に紹介いたします。
(参照:徳島県薬剤師会「お薬と光線過敏症」)
(参照:薬物性光線過敏症と紫外線可視吸収スペクトルと構造の関連)
(参照:MSDマニュアル家庭版「光線過敏反応」)
日光アレルギーの薬や治療は?
日光アレルギーも原因となる疾患や症状の程度によって異なりますが、例えば以下の薬や治療をします。
① 日光を避ける
当然ですが、日光アレルギーの予防や症状の軽減には、過度な日光を避けることが大切です。例えば、
- 日焼け止めをこまめに塗る
- 帽子やサングラス、長袖の服を着用する
- 紫外線の強い時間帯(例えば、午前10時から午後4時)に外出を控える
が大切になってきます。人によって異なりますが、UVAが原因になっていることが多いので、PA値の高いものを選ぶとよいでしょう。
② 原因となっている薬剤を中止する
日光アレルギーが薬剤によって引き起こされている場合、医師と相談し、可能であればその薬剤を中止するか、別の薬に変更することが望ましいです。ですが、前述の通り「この薬でないと他疾患の治療が難しくなる」ということも往々にしてあります。
したがって、その場合は原因薬剤の中止を念頭に置きながらも、日光アレルギーを他の対処でコントロールしていくことになります。
③ 抗ヒスタミン薬を内服する
かゆみや腫れの症状がある場合、抗ヒスタミン薬が処方されることがあります。これらの薬は、アレルギー反応に関与するヒスタミンという物質の働きを抑制し、症状を軽減します。特に日光アレルギーの中の「日光じんましん」のタイプで有効です。
④ ステロイド薬(塗り薬・飲み薬)
日光アレルギーの症状のタイプに応じて、短期間のステロイド薬(コルチコステロイド)が処方されることがあります。外用ステロイド薬は皮膚に塗る形で使用され、その場所での炎症やかゆみを抑えます。重症の場合には、経口ステロイド薬が処方されることがあります。
日光アレルギーについてのまとめ
いかがでしたか?日光アレルギーについて概説していきました。まとめると
- 定義: 日光アレルギーは、日光によって引き起こされる皮膚の炎症や症状を示す一般的な用語です。多形日光疹や日光蕁麻疹など、いくつかの種類があります。
- 症状: 日光アレルギーの主な症状は、赤み、かゆみ、腫れ、水ぶくれ、皮膚の刺激感など、日光にさらされた部位に限定されることが多いです。
- 原因: 内因性日光アレルギーの原因には、遺伝的要因や自己免疫反応、薬物反応があります。外因性日光アレルギーの原因には、日焼け止めや香水、特定の薬物などが挙げられます。
- 予防: 日光アレルギーを予防するためには、紫外線の強い時間帯に外出を控える、帽子やサングラスを着用する、日焼け止めを塗るなど、日光を避ける対策が効果的です。
- 治療: 日光アレルギーの治療法には、原因薬剤の中止、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイドなどがあります。症状や原因によって適切な治療法が選択されます。
といえます。特に日光アレルギーと思ったら、治療可能な薬剤の関与はとても大切。薬剤での治療ももちろん行っておりますので、当院にもぜひご相談ください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
この記事へのコメントはありません。