突然ですが、みなさんは「超加工食品」を知っていますか?
後述しますが、超加工食品を簡単にいうと「過度に加工された食品」のこと。様々な便利な食品が超加工食品だったりします。
しかし、超加工食品による健康の危険性が最近多くの論文で指摘されています。便利さを追求して寿命を縮めてしまったら元も子もないですよね?
いったいどういった食品が「超加工食品」として危険なのでしょうか?今回は超加工食品の例をリストにして一覧にまとめつつ、超加工食品の危険性について解説していきます。
超加工食品の1種でもある「加工肉」については【医師が解説】加工肉は体に悪いのはなぜ?加工肉・赤身肉との付き合い方について解説を参照してください。
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超加工食品とは?
「超加工食品」とは、糖分、塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品のこと。主に硬化油・添加糖・香味料・乳化剤・保存料などの添加物を付与して、工業的過程によって作られる食品のことを指します。
例えば、ポテトチップス、菓子パン、カップ麺、クッキー、ビスケット、冷凍ピザなどですね。
みなさんの中に「1回も食べたことない」という方はいないのではないでしょうか?(もちろん私はあります)
実際には、「超加工食品」をより明確に定義するため、2009年にブラジルのサンパウロ大学の研究者たちが提唱した食品の分類方法である「NOVA分類」を使います。NOVA分類では、食品を加工度合いによって以下の4つのグループに分けています。
- 未加工または最小限加工された食品(グループ1):自然のままの食品や、洗浄、乾燥、冷凍など最小限の加工が施された食品です。例えば、果物、野菜、肉、魚、卵、はちみつなどです。
- 加工された食品(グループ2):グループ1の食品に塩や砂糖などが加えられ、保存性を高めたり風味を付けたりするために加工された食品です。例えば、塩漬けの野菜、果物のシロップ漬け、濃縮還元でない無糖の果物ジュースなどです。
- 加工食品(グループ3):2つ以上の種類の食品を組み合わせて作られた食品で、通常は自宅で調理するための食材として使用されます。例えば、加糖の果物ジュースや野菜ジュース、加糖ヨーグルトなどです。
- 超加工食品(グループ4):工業的な製造過程を経て作られ、多くの添加物が含まれた商品。通常、5つ以上の食材が含まれていますね。具体的な例としては、ポテトチップス、菓子パン、カップ麺、クッキー、ビスケット、冷凍ピザなどがあります。
意外とみんな食べている「超加工食品」
ここまでみて、「私は超加工食品なんてとっていない」と思っていませんか?
実は、東京大学の調査によると、1 日の総エネルギー摂取量のうち、平均して3~4 割程度を「超加工食品」から摂っていることがわかっています。私たちの体は最低30%は超加工食品からできている…と考えると恐ろしいことですよね。
しかも年代別の「超加工食品をより多く見積もるシナリオ」でみると、18~39歳は50%近くを超加工食品で構成され、40~59歳でも45%近く、60~79歳でも30%超が超加工食品で占められるのではないかと考えられています。
特に喫煙者で超加工食品の割合が高くなることが想定されていますね。
では、みなさん、どんな「超加工食品」をとっているのでしょうか?
「超加工食品をより多く見積もるシナリオ」でみると、
- 1位: 穀類およびでんぷん質の食品(パンや麺など)32.2%
- 2位: 肉・魚・卵 16.4%
- 3位: 菓子類 13.8%
- 4位: 調味料・香辛料 8.9%
- 5位: 油脂類 8.8%
となっており、アルコール飲料、加工された野菜果物が続いていきます。やはり加工された炭水化物が多いですね。
(参照:東京大学「超加工食品の摂取量は年齢や喫煙状況によって異なるか?」)
超加工食品のリストの一覧表と見抜くポイント
みなさんが「意外」と食べている「超加工食品」。具体的な超加工食品のリストがないと気を付けられないという方もいるでしょう。
今でも超加工食品のリストは更新されているわけですが、現時点での超加工食品のリストを一覧表にしてまとめると次の通りです。
- 穀類およびでんぷん質の食品:ピザ(予め調理されたパイを含む)、菓子パン、クロワッサン、朝食用シリアル、インスタントスープ、インスタントラーメン、多くの冷凍食品など
- 肉・魚・卵など:事前に調理された加工肉、サラミ、ハム、パテ、フォアグラ、ソーセージ、ミートボール、フィッシュフィンガー(魚のナゲット)など
- 菓子類・飲料:炭酸飲料、清涼飲料水、人工的に甘味をつけた飲料、フルーツドリンク、ミルクシェイク、アイスクリーム、ポテトチップス、チュロス、キャンディ、チョコレートなど
- 油脂・調味料:マーガリン、ショートニングなど
- アルコール飲料
ここまで例を挙げると、何となくどんな食材が「超加工食品」かイメージできたのではないでしょうか。
もちろんチョコレートなどは高カカオなものは健康によい場合もありますし、同じ冷凍食品でも加工度が異なるものもあり、一概には言えません。そのため、超加工食品かどうかを見抜くポイントとして、以下を意識してみるとよいでしょう。
- 素材がまるごと入っているか:なるべく素材そのものに近いものの方が当然加工されていません。調理する工程が多ければ多いほど、どんな素材を使ってどのように調理されているか見えにくくなります。
- 裏面の食品内容表示:表示名が多ければおおいほど、様々な「よくわからない食品」「よくわからない添加物」が含まれていることになります。冷凍パスタなどは4行や5行くらいにわたって細かくズラッと書いていることが多いですが、その分だけ添加物の多い「超加工食品」と考えやすくなります。
そうしてみると、同じ冷凍食品でも素材だけでこだわっているタイプのものは添加物が含まれておらず食品表示名がシンプルだったりします。
1つ1つ「超加工食品かどうか」吟味する目が大切ですね。
(参照:Ultra-processed foods The case for re-balancing the UK diet)
超加工食品の健康への危険性は?
ここまで「超加工食品」そのものについてお話してきたわけですが、仮に超加工食品ばかり食べてたらどんな健康のリスクがあるのでしょうか。
数々の医学論文からは以下の超加工食品の危険性について以下のようなことが言われています。
① 超加工食品により全死亡率が上昇する
フランスのNutriNet-Santé Studyから選ばれた45歳以上の成人44,551人を対象とした超加工食品と全死亡率を見た試験では、さまざまな交絡因子を調整しても、超加工食品の摂取割合が10%多いと、独立して全死亡率のリスクは14%上昇することがわかっています。
ちなみに同試験では、超加工食品は、食べ物の総重量の平均14.4%(標準偏差7.6%)を占め、これは総エネルギー摂取量の平均29.1%(標準偏差10.9%)に相当しました。
また、超加工食品の摂取は、
- 若年層(45-64歳、食物の重量比平均14.50%)
- 低所得者(月収€1200未満、15.58%)
- 教育水準が低い人々(無学歴または小学校、15.50%)
- 単身者(15.02%)
- BMIが高い人々(BMI≥30、15.98%)
- 身体活動レベルが低い人々(15.56%)
と関連しています。ただし、こうした因子と関係なく超加工食品をとるだけで14%も死亡率が上がるのですから、超加工食品の継続的な摂取はそれなりの健康リスクになりますよね。
② 超加工食品で認知症になりやすい
さらにブラジルの10,775人におよぶ研究結果によると、超加工食品をもっとも摂取したグループは全体的な認知機能が低下する速度が28%速く、実行機能が低下する速度も25%速くなることが言われています。
つまり、超加工食品を食べる割合が高いほど、認知症になるスピードになるのも速いというわけですね。
この研究の平均年齢は51.6歳であり、追跡期間の中央値(範囲)は8年(6-10年)。これほど短期間であるのにも関わらず認知機能のスピードに差が出てくるのは驚くべきことですよね。
「認知症に将来なりたくない」という方はなるべく超加工食品を避けた方が無難と言えるでしょう。
(参照:Association Between Consumption of Ultraprocessed Foods and Cognitive Decline)
③ 超加工食品によりがんになるリスクも増加
「超加工食品によりがんになりやすくなる」という研究結果もいくつか報告されています。
例えば、年齢中央値42.8歳の10万人参加したフランスの試験では、超加工食品の割合が 10% 増加した場合、全体的ながんのリスクは12%上昇することがわかっています。がんの種類別に検証すると、特に超加工食品の摂取量が多い人ほど閉経後の方での乳がんのリスクが高いことがわかっています。
また、イギリスの197,426人を対象とした試験でも超加工食品の消費量が10%増加するごとに全体のがん(6%増加)、卵巣がん(30%増加)、乳がん(16%増加)による死亡リスク上昇が言われています。
このように、超加工食品によりがんになるリスクやがんによる死亡リスクも上がってくるのです。
(参照:Ultra-processed food consumption, cancer risk and cancer mortality: a large-scale prospective analysis within the UK Biobank)
(参照:Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Santé prospective cohort)
④ 超加工食品は太りやすくなる
もう十分と思うかもしれませんが、まだ超加工食品の健康リスクはまだあります。「超加工食品」を食べるだけで太りやすくなるのです。
とても興味深い研究を1つ紹介します。
20名を対象としたランダム化比較試験で、片方は超加工食品が多い食事を与えられるグループに、もう片方はあまり加工されていない食品(以下、未加工食品とする)が多い食事を与えられるグループにランダムに分けました。
さらに、 1日3回そのような食事を摂取するものの、食べ足りない場合には、追加で食事してもよいことになっています。
実は、この試験では、重要なポイントとして、この2つのグループでは、超加工食品の摂取量は違うものの、摂取カロリー・たんぱく質・炭水化物・脂質などの栄養素・食物繊維の量などは同じになるように調整されているのです。
つまり、「超加工食品」と「それ以外」という違いだけで、栄養バランスは同じにそろえているのです。
しかし、わずか14日間の食生活の変化にも関わらず、超加工食品が多いグループでは、1日当たり500キロカロリーほど総摂取カロリーが多くなり、 その結果として約1kgも体重が増えていました。
逆に未加工食品が多いグループは約1㎏体重が減っていたのです。
つまり、栄養バランスの有無にかかわらず超加工食品は「太りやすい」といえるわけですね。普段から「太りやすい」と感じている方は自分の超加工食品の割合がどれくらいか気にかけてみるとよいでしょう。
超加工食品が健康に悪い理由は?
では、どうして超加工食品はこんなにも健康に悪いのでしょうか?
例えば、超加工食品が健康に悪影響を及ぼす可能性がある主な理由として上記の論文では以下があげられています。
- 栄養バランスの偏り: 超加工食品はしばしば高カロリーであり、砂糖、飽和脂肪、塩分が多く含まれています。一方で、必要なビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が不足していることが多いです。
- 添加物の使用: 超加工食品には、保存性を高めたり、風味を強化したり、見た目を良くするために、さまざまな食品添加物が使用されています。また、「添加物は単独では安全性が確認されているものの、それらが複数合わさることにより、がんを引き起こす可能性」というのも考えられていますね。
- 調理方法の問題:超加工食品の多くは油で揚げるなど高温調理されており、その時にアクリルアミドという発がん性物質が作られていたりします。
- 食事パターンの変化: 超加工食品は手軽に食べられ、美味しいため、過食を促す可能性があります。冷凍パスタを食べて「もう少し食べたいな」などと考えてしまう方も多いでしょう。特に高齢者よりも若年者で超加工食品をとる傾向があるのも、この手軽さが理由といえます。また、未加工食品では、食欲を抑えるペプチドYYというホルモンが増え、グレリンという食欲増進作用をもつホルモンが減ることがいわれていますが、超加工食品ではそうしたホルモンの調整が行われにくいということが言われています。
このように、超加工食品は偏った栄養バランスのみならず「加工するプロセスそのもの」で健康に害する可能性があります。
「安価、便利で美味しい」を追求しているのが超加工食品。ついつい食べたくなってしまいますよね。ゼロにするのはなかなか難しいと思います。あくまでバランスをとりながら「頼りすぎない」ことが大切ですね。
超加工食品についてのまとめ
いかがでしたか?超加工食品とはどんなものか、そして超加工食品の健康への危険性について、少しわかっていただけたのではないでしょうか。まとめると
- 超加工食品とは?
- 超加工食品は、食品加工の最終段階で作られる食品で、添加物や他の非食品成分を含むことが特徴です。
- これらの食品は、NOVA食品分類システムにより定義され、通常、5つ以上の成分を含みます。
- 超加工食品は、保存性を高めるため、または色、味、テクスチャを改善するために、食品工業で製造されます。
- 超加工食品のリスト
- 穀類およびでんぷん質の食品:インスタント麺、菓子パンなど
- 肉・魚・卵:加工肉(ハム、ソーセージ)、魚フィンガーなど
- 菓子類:チョコレートバー、アイスクリームなど
- 油脂類:マーガリンなど
- 超加工食品と健康への危険性
- 超加工食品の摂取は、全死因死亡リスクの増加と関連している。
- 超加工食品の摂取が認知機能の低下と関連している。
- 超加工食品はがんの発生や死亡に関わっている(特に卵巣がんや乳がん)
- 超加工食品はダイエットの天敵でもある
といえます。超加工食品を完全にやめることは、もはや現代の生活では困難と言えるものばかり。だからこそ最近加工されていない範囲で手軽に食べられるものも徐々に開発されてきていますし、私たちも「おいしくて健康によいもの」を吟味する目が必要です。
私たちも便利さと健康のバランスをとっていきながら、生活の負担にならないよう、上手に「未」加工食品を中心した食生活を送っていきましょう。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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