みなさん、ヨーグルト食べてますか?
発酵食品といえば必ず頭に思い描くのが「ヨーグルト」。実際、ヨーグルトを腸活の一環に取り入れている方も多いのではないでしょうか。
実は、ヨーグルトの効果は便秘解消や腸活に役立つだけではない、様々な健康効果があることが知られています。特に最近では「花粉症に対してヨーグルトが効果的ではないか」
今回は、様々な医学論文に基づいたヨーグルトの健康効果(花粉症・ダイエット・免疫力向上など)と注意点について、一緒にみていきましょう。
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ヨーグルトとは?ヨーグルトの種類は?
ヨーグルトは牛乳などの原料乳に乳酸菌を加え、発酵させて作る発酵食品の1つ。実際にプレーンヨーグルトの場合、以下の手順で作られます。
- 加熱殺菌: 牛乳などの原料乳を90~95℃で5分間殺菌し、40~45℃に冷却します。
- 乳酸菌を加える:純粋培養した乳酸菌を2~3%量加えます。
- 充填・発酵:乳酸菌を加えた乳を容器にうつし、温度を一定に保った発酵室に入れ、発酵させます。プレーンヨーグルトの場合、40℃前後の温度で4~6時間発酵させると、酸度が0.7~0.8%になります。
ヨーグルトは酸味が特徴のあるクリーミーな食感となるのは、発酵過程で、乳糖が分解されて乳酸が作られるからです。そして、発酵過程や原材料・その後の加工過程でさまざまな種類のヨーグルトが作られます。例えば以下の通りです。
- プレーンヨーグルト: 砂糖や果物などのフレーバーが加えられていない、シンプルなヨーグルトです。素材の風味が生きており、料理やデザートのベースとしても使用されます。
- ハードヨーグルト:ヨーグルトに甘味料や寒天・ゼラチンを加えてプリン上にしたヨーグルト。食べやすく、誤嚥しにくくなります。
- フルーツヨーグルト: ベリーやマンゴーなどのフルーツが加えられた、フレーバー豊かなヨーグルトです。子供から大人まで幅広い世代に人気ですね。
- ギリシャヨーグルト: 水分を除いた濃厚なヨーグルトで、プロテインが豊富であり、ダイエットや筋トレ中の方にも人気があります。
- ドリンクヨーグルト: 飲むタイプのヨーグルトで、手軽に摂取できるため、忙しい方や外出時に便利です。
- プロバイオティクスヨーグルト: プロバイオティクス(善玉菌)を増やす効果がある特定の乳酸菌が含まれており、腸内環境の改善に役立ちます。
このようにヨーグルトといっても様々な種類があるのですね。実際、特定のヨーグルトの健康効果を探索した研究もよく報告されています。
では、次にヨーグルトの具体的な健康効果について見ていきましょう。
ヨーグルトは花粉症に効果的
スギやヒノキをはじめとした花粉症で悩まれている方、多いですよね。意外なことにヨーグルトをはじめとしたプロバイオティクス(善玉菌)の摂取はアレルギー性鼻炎の症状を改善するというデータがあるんです。
2022年に発表された28件の研究をまとめた論文によると、プロバイオティクスを摂取することで
- アレルギー性鼻炎の症状を抑える
- 鼻粘膜の炎症の度合を抑える
- アレルギー症状による生活の質の低下を改善させる
ことが言われています。
実は、腸内細菌叢の異常がアレルギー性疾患の免疫の異常につながっているのではないかと言われており、プロバイオティクスは全身の炎症を抑え、免疫状態を改善することが報告されていました。
もともとアレルギー性鼻炎はI型アレルギーというIgEを介したアレルギー反応が主ですが、本研究ではヨーグルトによりIgE抗体を下げることはありませんでした。
代わりにヨーグルトはヘルパーT細胞という免疫の中枢になる細胞の数を調節していたことから、ヨーグルトは主な花粉症薬の「抗ヒスタミンをブロックする経路」とは少し違う作用機序で働いていると思われます。
プロバイオティクスの種類も、単一のものよりは混合されているものの方がアレルギーに対する効果が高いことも報告されているので、ヨーグルトだけでなく色んな種類の菌を摂取するようにするとよいかもしれませんね。
しかし、別の11,284人ものデータを使った観察研究では「花粉症の人とそうでない人ではヨーグルトの摂取量は変わらなかった」としていますので、「少しヨーグルトで花粉症を緩和できる可能性がある」くらいに考えておくとよいでしょう。
ヨーグルトの整腸作用(便秘解消・下痢の抑制)
ヨーグルトでもっとも有名な効果はこの「整腸作用」でしょう。実際、ヨーグルトには、以下のメカニズムを通して腸内環境を整える効果があります。
- 善玉菌の増加: ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内で善玉菌として働きます。善玉菌が増えることで、悪玉菌の増殖が抑制され、腸内環境が整います。
- 有害物質の排出: 乳酸菌は、腸内で乳酸を生成します。この乳酸は、悪玉菌の活動を抑え、有害物質の排出を促進します。
- 便通の改善: ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸の蠕動運動を活性化し、便通を改善する効果があります。
これらの効果は実際の医学論文でもいくつか報告例があります。
例えば、日本の明治乳業と昭和女子大学の生命環境科学部が共同で行った研究では、20代の女性を対象にLB81乳酸菌から作られたヨーグルトを食べることで便通頻度や便の量・形状がどう変わるかをみています。その結果以下のことがわかりました。
- 2週間ヨーグルトを毎日100g食べることで、排便回数が週平均3.2±0.8回から4.5±1.3回まで上昇し、も3.7±1.4回まで微増していた。
- 便の形状も2週間毎日100g食べることで、正常な便の割合が摂取中そして摂取後も増加した。
- 毎日250gに量を増やしても便通に対する効果に大きな違いはなかった。
以上から、ヨーグルトの量は1日100gを目安にすることが推奨されています。
急性胃腸炎に対する下痢症状でもプロバイオティクスヨーグルトが有用であるというデータがあります。
例えば、ヨーグルトを含めたプロバイオティクス(腸内細菌をとること)を検証した63件の論文をまとめた論文では、
- 平均下痢期間の効果をヨーグルトにより24.8時間短縮した(95% 信頼区間 15.9 to 33.6 時間)。
- 下痢持続期間が4日以上続く割合も59%低下した
- 2日目の排便頻度も0.8回/日減少させた。
としています。急性下痢症の時に腸内細菌をとることは有用といえますね。
また、ヨーグルトだけを検証したパキスタンの論文でも「プロバイオティクスヨーグルトをとることで、3日後に下痢になっている確率を48%から8%に減少させた」としています。
ただし、ヨーグルトには乳糖(ラクトース)が多く含まれているため、例えば乳糖不耐症の方は通常のヨーグルトで下痢をおこすことがあります。(牛乳よりはヨーグルトの方が乳糖を分解する酵素がはいっている分、ずっと下痢になる頻度は少ないです)
この場合、乳糖が多くないヨーグルトやプロバイオティクスが豊富なヨーグルトを食べることでその頻度を抑えることができるでしょう。
(参照:NIH「Lactose Intolerance」)
(参照:Probiotics for treating acute infectious diarrhoea)
(参照:Consumption of yogurt made from LB81 lactic acid bacteria* improved the subjects’ gut health as measured by the number of times stools occurred, as well as their volume and shape.)
ヨーグルトはカルシウムだけではない豊富な栄養源
カルシウムといえば牛乳と考えられがちですが、ヨーグルトもカルシウムが豊富な食材の1つ。さらに、他にも豊富な栄養源が含まれています。例えば、
- カルシウム:ヨーグルト100gあたり120~140mgのカルシウムが含まれています。18~29歳男性で800㎎、女性で650mg必要なので、普段の食事に「ちょい足し」することで、手軽にカルシウムを補給できますね。
- タンパク質:プレーンヨーグルト100gで3.6gのタンパク質が含まれています。さらに、ヨーグルトは乳のタンパク質のアミノ酸組成と似ていて、体内で合成できない必須アミノ酸がバランスよく含まれいるのも特徴の1つです。
- ミネラル:カルシウムだけでなく、他のミネラルも含まれています。特に高血圧に有用なカリウム(100g中170mg)やマグネシウム(100g中12mg)なども含まれるのが、うれしいですね。
- ビタミン:意外ですが、ヨーグルトはビタミン類も豊富です。ビタミンCは少ないですが、ビタミンA(100gで72μg)、ビタミンB2、葉酸、パントテン酸、ビタミンDなどを中心に各ビタミンが含まれています。
このように、ヨーグルトは栄養的にも優れた食品の1つです。しかもプレーンヨーグルトの場合、カロリーは100g中62kcalしかなく、後述するダイエットとしても活用されやすい食材になります。
(参照:「日本人の食事摂取基準」「五訂増補日本食事標準成分表」)
ヨーグルトは免疫力もあげる
腸内にはたくさん細菌がいます。そのため、人体で最も免疫システムが活性化している場所の1つが腸管です。そのため、腸内環境と免疫力には密接な関係があるとされています。
実際、乳酸菌は免疫細胞の働きを活発にすることが報告されており、病気の感染を防御する効果があることがわかりました。
例えば、乳酸菌自体が他の有害な菌(ピロリ菌や淋菌やサルモネラ菌など)に対して抗菌作用をもたらす「抗菌ペプチド」を産生します。
さらに、乳酸菌は免疫細胞や様々なサイトカイン(免疫細胞からでるタンパク質)を介して、免疫を調節する機能も担っていることもわかっているのです。
実際、免疫力と乳酸菌摂取が関連しているとする臨床論文もあります。
例えば、ラグビー選手を対象に善玉菌を4週間摂取したグループとしないグループに30人ずつふりわけて感染症(風邪や胃腸炎など)の発現率をみた試験があります。結果、善玉菌を摂取することで、
- 1度も感染症にかからない確率が上昇(16/30 vs 6/30)
- 感染症になっても期間が短縮しやすい(3.4日 vs. 5.8日、p=0.054)
ということがわかりました。
小規模な臨床試験なので、エビデンスとしては不十分ですが、ヨーグルトは適量であれば特にリスクはありません。なので「普段の免疫力をあげたい」という方は、腸内環境から見直すのも1つの手ですね。
(参照:Probiotic supplementation reduces the duration and incidence of infections but not severity in elite rugby union players)
(参照:Modulatory Effects of Probiotics During Pathogenic Infections With Emphasis on Immune Regulation)
ヨーグルトはダイエットにも効果的な可能性がある
前述の通り、ヨーグルトはタンパク質が豊富ですが、比較的低カロリーの食材です。
さらに、カルシウムと結びついてペプチドYYやGLP-1などの食欲抑制ホルモンのレベルを増加させることがわかっています。
ヨーグルトはダイエットにも理論上効果的な食材なのですね。特にギリシャヨーグルトとダイエットの関係性が指摘されています。
実際、ヨーグルトと体重に関して、22の研究をまとめた論文によると、
- 疫学研究では、ヨーグルトの摂取は、BMIの低下、体重/体重増加の低下、腹囲の減少、体脂肪の低下と関連していた。
- ランダム化比較試験でも体重減少効果を示唆していますが、因果関係を決定できるレベルではなかった
としています。以上から、「ヨーグルト摂取による微弱ではあるがダイエットに有益な効果があるだろう」と結論づけていますね。
もちろん「ヨーグルト」と1言でいっても、加糖や加工が激しいものはダイエットの天敵です。
「ダイエットに有効活用したい」という方は、糖質量も考えること、タンパク質含有量の高い「ギリシャヨーグルト」をとるのがオススメですね。
ヨーグルトはうつ病やメンタルヘルスにも有用
あまり知られていませんが、腸内細菌そうは神経伝達物質である「セロトニン」の合成に大きな関わりがあることがわかっています。セロトニンとは俗にいう「幸せホルモン」。幸福度が高い場合に出現するホルモンで、うつ病にもセロトニンレベルを上げる作用の薬が主に使われます。
韓国の研究によると、特にヨーグルトと運動を組み合わせるとセロトニンレベルが大幅に増加し、心血管疾患の指標である中性脂肪や高感度C反応性タンパク質レベルが低下したと報告しています。
そして、ヨーグルトを含めたプロバイオティクスがうつ病の発症に関連しており、うつ病のリスクを軽減する上で重要な役割を果たす可能性があることが報告されているのです。
整腸作用ほど十分な研究はされていませんが、メンタルヘルスが弱くなりやすい方は、運動と一緒にヨーグルトをとるとよいかもしれませんね。
ヨーグルトを摂取するときの注意点は?
このように、ヨーグルトは多くの健康効果が期待できる食品ですが、いくつかの注意点があります。例えば次の通りです。
- 乳製品アレルギー: 乳製品にアレルギーのある方は、ヨーグルトに含まれる乳成分に反応してしまう可能性があるため、摂取に注意が必要です。アレルギー症状が出る場合は、かかりつけ医に相談し、代替品を検討しましょう。
- 乳糖不耐症: 乳糖不耐症のある方は、ヨーグルトに含まれる乳糖を分解する能力が低いため、摂取すると消化不良や下痢などの症状が出ることがあります。無糖や低乳糖のヨーグルトを選ぶか、乳糖分解酵素のサプリメントを併用する、プロバイオティクスの豊富なヨーグルトを検討しましょう。
- 砂糖や添加物: 市販のヨーグルトには、砂糖や添加物が多く含まれていることがあります。カロリー過多や過剰な糖摂取を避けるため、無糖や低糖質のヨーグルトを選ぶことが推奨されます。また、添加物に対するアレルギーや感受性がある方は、成分表をチェックして選びましょう。
- 過剰摂取: ヨーグルトは健康に良いとされていますが、過剰摂取は避けるべきです。摂取量が多すぎると、カロリーや糖質の過剰摂取につながり、太りやすくなることがあります。特に、飲むヨーグルトのように気軽に取れるタイプや加工されているヨーグルトは過剰摂取に気をつけましょう。先の明治乳業との研究などから、ヨーグルトの量は1日100g〜200gくらいを目安にすることが言われています。
ヨーグルトの効果のまとめ
いかがでしたか?今回はヨーグルトの健康効果について解説していきました。まとめるとヨーグルトの健康効果として
- 整腸作用:下痢や便秘のどちらにも有効な可能性が高い
- 栄養源が豊富:低カロリーで高タンパク質。カルシウムをはじめとしたミネラルやビタミン類も豊富であり、補助食品に優れる
- 免疫力アップ:腸内細菌は免疫力とも大きな関係があります。実際、風邪や胃腸炎になりにくくなるという報告もあります。
- ダイエットに有用な可能性:若干弱いエビデンスですが、体重減少につながる可能性あります。ただし、加糖されていないギリシャヨーグルトがオススメです。
- うつ病やメンタルヘルスにも効果的?:腸内細菌は神経伝達物質である「セロトニン」の合成に関わっていることがわかっています。特に運動と組み合わせることによりセロトニン合成が促されるといわれています。
があげられます。もちろん「乳糖不耐症」「乳製品アレルギー」などヨーグルトが合わない方もいるので、ご自身のおなかの調子に合わせて日常生活に取り入れるとよいでしょう。
また繰り返しますが、ヨーグルトと一概にいっても様々です。中にはデザートに近いものもあります。健康にいいからと取りすぎると肥満や糖尿病などのリスクがかえって上昇してしまいます。
あくまで「適量」をまもることが大切ですね。食べ物に関しての個別相談も受け付けておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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