一年を通して終わりを見せることのない「新型コロナウイルス感染症」。5類感染症になったとは言え、高い感染力や後遺症へのなりやすさは依然として変わりなく、私たちの生活を脅かします。
しかし、5類感染症になって病院や医療機関への受診を躊躇してしまう1つの要因として「費用」が挙げられるでしょう。実際、検査や薬に費用がかかるのをためらい、38度以上の発熱が出ているのに受診をせず、症状が長引いている状態で受診される方も少なくありません。
そこで、今回はコロナ感染症に対する検査の費用について説明し、経済的な観点からどうした方が一番「コスパ」がよいかについて、一緒に考えていきます。
最後に1分でまとめた動画もありますので、あわせてご参照ください。
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コロナの検査の費用はどれくらい?
病院に受診してコロナの検査をする場合、PCR法と抗原検査があります。抗原検査を行う場合、インフルエンザを流行期に合わせて同時検査することもあります。それぞれの検査の費用の目安は次の通りです。
【コロナだけ抗原検査する場合】
- 3割負担:960円
- 2割負担:640円
- 1割負担:320円
【コロナのPCR検査をする場合】
- 3割負担:2,630円
- 2割負担:1,750円
- 1割負担:870円
【コロナとインフルエンザを同時に抗原検査する場合】
- 3割負担:1,180円
- 2割負担:790円
- 1割負担:390円
いずれも「検査代」だけなので、そこに「初診・再診料」や「処方料」などが別途かかります。また、江戸川区では「子ども医療費助成制度」という制度があり、高校3年生相当まで(18歳到達後の最初の3月31日まで)のお子さんの医療費を江戸川区が負担してくれる制度があるので、自己負担額はありません。
どの検査も精度を高くするために「鼻咽頭法」と呼ばれる鼻の奥の粘膜から採取する方法をとることが多いです。そのため、どの検査をするかは各医師にゆだねられていますが、1回で鑑別を進めるために
- コロナもインフルもどちらも同程度に考えなければならない場合:コロナ、インフル同時検査
- コロナの罹患者が近くにいて、コロナとしての症状が乏しい場合。時間もそれほど経過していない場合。精度を求めて本人が希望する場合:コロナPCR検査
- 非常に症状が強く出ている時間が1日以上あり、抗原検査でも十分陽性が出るだろうと判断した場合。または費用の関係で本人の希望が強い場合:コロナ抗原検査
で進められることが多いですね。「きちんと精度が高くコロナの判別を行ってほしい」場合はPCR検査の方が望ましいでしょう。、
もちろん本人がコロナを疑っていたとしても、医学的所見から明らかに違う感染症であると判断した場合は、むしろコロナ以外の感染症の検査をすすめることもありますね。
当院では迅速PCR検査(等温核酸増幅検査)を用いており、当日でも検査結果が判明します。詳しくはPCR検査と同じ位置づけ。IDNOWによる新型コロナ感染症核酸増幅検査についてを参照してください。
(参照:江戸川区「子ども医療費助成制度」)
コロナの治療薬の費用はどれくらい?
では、コロナが陽性であったとして、薬代はどれくらいになるのでしょうか。
現在、コロナの治療薬として「ゾコーバ」「ラゲブリオ」「パキロビッド」の3種類あります。非常に簡潔に言うと、それぞれ以下の特徴を持っています。
- パキロビッド:重症化を下げる薬として、エビデンスや論文も豊富に持つ薬のため、重症化リスクがある方は第一選択になる薬。妊娠中にも使用できる。しかし飲み合わせが悪い薬が多くあり、腎機能で調節する必要がある。
- ラゲブリオ:重症化リスクがある方には第二選択になる薬であるが、飲み合わせが悪い薬もなく、使いやすいのが特徴。
- ゾコーバ:重症化リスクがない方に基本的に使用する薬。薬価も他2剤と比較して約半分。しかし、飲み合わせの悪い薬があることや妊娠中に使用できない点などに注意が必要。
これらを踏まえて、各治療薬の費用は次の通りです。
【3割負担の場合】
- パキロビッド:30,000円
- ラゲブリオ:28,500円
- ゾコーバ:15,800円
【2割負担の場合】
- パキロビッド:20,000円
- ラゲブリオ:19,000円
- ゾコーバ:10,500円
【1割負担の場合】
- パキロビッド:10,000円
- ラゲブリオ:9,500円
- ゾコーバ:5,300円
なお、検査同様、江戸川区では高校3年生までは医療助成制度により治療薬も無料となっています。
インフルエンザの薬(約2,000円~5,000円)と比較しても、非常に高額なのがわかりますね。そのため、「治療薬もあるのに、高額で治療薬が使えない、選択できない」という人も出てきてしまっている現状です。
医学的には後遺症リスクを減らしたり、症状を短縮したりする観点から抗ウイルス薬を処方した方がよいでしょう。しかし、高額であることから、医師とも相談の上、処方の有無を相談した方がよいですね。
また、治療薬が高額であることから「扱っている薬局」が非常に限られています。普段からコロナに対する治療を行っていないクリニックでは、もちろん近くの薬局も治療薬を取り置きしていません。そのため、「治療薬が薬局にない」とたらい回しになっているケースも少なくありません。
そのため、治療薬も含めて相談したい場合は、普段からコロナ診療を行い、発熱外来を設けているクリニックで相談するとよいでしょう。
コロナの治療薬の詳細については、コロナで使われる薬について【一覧・種類・自己負担】もあわせて参照してください。
コロナの検査は病院でした方がよい?
こうしたことを踏まえて、結局コロナを疑った場合、病院で検査した方がよいのでしょうか。それとも自己抗原検査キットで様子を見た方がよいのでしょうか?
結論からいうと、コストパフォーマンスの面から言っても「病院で検査した方が望ましい」といえます。
まず多くの自己抗原検査キットは1,000円くらいですが、精度が高い「鼻咽頭部」から自分で採取するのは難しく、多くは「鼻腔用」「唾液用」が主です。
そのため、精度としては確実に病院の検査よりも落ちます。
また、陽性なら病院に提示すればコロナとして扱い、治療薬を処方してくれるでしょうが(研究用だったり、医師が「もう1回検査すべきだ」と判断した場合は再度採取します)、陰性でも精度の観点から「コロナかどうかわからない」で終わってしまいます。
もちろん発症早期でないと適切な治療薬は使えませんよね。
なにより(これが一番重要ですが)本人がコロナと思っていても全然違う病気ということがよくあります。
- コロナと思っていたら溶連菌だった
- コロナと思っていたら手足口病だった
- コロナと思っていたら腎盂腎炎だった
など、感染症は「コロナかインフルか」で終わりではありません。もっと多くの病気を考えながら診療しています。そしていずれも早期に対処することで合併症を最小限にすることができます。
合併症や後遺症の治療は大変です。非常に長引きやすく、定期的な検査も必要になってきます。そうなったら一気にコストパフォーマンスは落ちます。
その意味で適切な時期に適切な場所で適切な検査はすべきなのです。そして、その「適切な場所」というのが医療機関になります。
ですので、安易に様子をみないで検査は受けるようにしましょう。コロナやインフルに対する検査の「適切な時期」については
を参照してください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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