水分不足による症状とチェック方法・対処法について【頭痛・足がつる】

夏になると特に多い「水分不足」。ここ最近猛暑になる日が多く、水分を意識していてとっていても汗でとられてしまい、水分が足りていない方もよく見受けられます。

さらにやっかいなのが、なかなか自分では「水分不足」と気づかないこと。脱水症状はわかりやすい症状もあれば気づきにくい症状も多く、「この症状は水分不足によるものだったのか」と病院に来て初めて知るケースも珍しくありません。

水はなによりも自分の体の「根幹」ですから、ちゃんと知っておきたいですよね。

では、どんな症状が水分不足といえるのか、一緒に見ていきましょう。

水分不足(脱水)とは?

「水分不足」(脱水)とは、「体が正常に機能するために必要な水分が不足している」こと。

体の約78%は水分で構成されています。

臓器別でいうと肺は83%、脳や心臓は73%、骨は31%、筋肉と腎臓は79%、皮膚は64%が水分です。

なぜこんなに体は水分が必要なのでしょう?

簡単にいうと、それほど水分が体の多くの土台になっているからです。例えば体の水分は以下の役目があります。

  • 生体に必要なさまざまな化学物質を作る材料
  • 血液のもとである「血しょう」の材料であり、血液を循環させる役割
  • 脳や脊髄、妊娠中の胎児の衝撃吸収剤としての役割
  • 皮膚に弾力をもたせ、骨を支え、関節や筋肉・内臓を適切に動かす
  • 体温を適切な状態に保つ働き
  • 消化を助け、老廃物を排出する働き

もちろんこれだけとどまることはなく、水分への有用性だけでも本が1冊かけてしまうことでしょう。

そのため、体内の水分量は自律神経とホルモンで非常に厳密に「自動的」にコントロールされています。水分が足りなくなると、腎臓はなるべく尿から水分を出さないように尿をださないようにし、脳の視床下部というところで「水分をとったほうがいい」と指令を出して水分をとるように促します。

それでも様々な原因で体内の水分量が正常範囲内に保たれなかった時、「水分不足」がおこります。

(参照:Cleveland Clinic「Dehydration」

水分不足の原因は?

では、どんな原因で水分不足になるでしょうか?例えば以下の原因が考えられます。

① 適切な水分摂取がなされていない

忙しさや病気、旅行中の安全な飲み水の不足など、日常生活の中で十分な水分を摂取しないことが原因となることがあります。

特にお年寄りの方は視床下部の機能が衰えることで、水分不足でも口の中が乾いたと感じにくいことがあり、水分不足でも水分を十分とっていないケースもあります。

また、子供は親が水分管理している関係で、自分がのどが渇いたと感じても水分をとれないことがありますね。

② 発汗が水分摂取に追いつかない

適切な水分量はシーンによって大きく異なります。代謝水といって、何も動かなくてもある程度の水分量が必要ですが、活動レベルや周りの環境によって大きく左右されます。

特に、運動や暑い気候下での活動により、大量の汗をかいたり体温が上昇することで体から水分が失われます。その分余計に水分をとらないといけないわけですが、水分摂取が追い付かないと「脱水症状」に陥ります。

③ 下痢やおう吐で水分が失われても補わない

感染性胃腸炎などでみられるケースですね。下痢により、短時間で大量の水分と電解質を失います。しかもおう吐が伴う場合、さらに多くの液体とミネラルが失われるし、追加で水分が取れなかったりしますよね。

さらに中には「水分をとると下痢がひどくなるからなるべく水分をとらないでおこう」と考える方もいます。そうなると、さらに水分不足が加速することになります。

④ 発熱などの代謝の亢進によるもの

インフルエンザや新型コロナなどの感染症にかかった時や、夏の炎天下で高体温になり体温が上昇すると、脱水症状が悪化する可能性があります。

特に、細菌性胃腸炎でみられるように、下痢や嘔吐と併せて発熱がある時はさらに水分不足になりやすくなります。

また、疾患によって多くの水分を使いやすい場合があります。代表的な例としては、「甲状腺機能亢進症」「やけど」「喘息」などですね。これらの基礎疾患の場合は、普通の方よりも水分をより意識することになります。

⑤ 尿量の増加によるもの

今までの原因よりも稀ですが、「勝手におしっこの量が増えてしまう」ことで脱水になることがあります。例えば次のようなケースです

  • 未診断または未治療の糖尿病で尿の中に糖分があり、浸透圧利尿が起こる場合
  • 利尿剤や一部の血圧薬など、尿量を増加させる薬を使っている場合
  • 尿崩症といって、神経の関係で尿量を適切に調節できない場合
  • アルコールを常用して利尿作用が働いている

このように基礎疾患やライフスタイルによっては普通の人より水分摂取をこまめにしないと、容易に水分不足になりやすいので注意が必要です。

水分不足の主な症状は?

では、水分不足になるとどんな症状が出てくるのでしょうか。正常な大人の主な水分不足の症状は次の通りです。

  • 口や舌が乾燥する
  • 頭痛
  • 足のつり(こむら返り)
  • 極度の喉の渇きを感じる
  • 少ない尿量または尿が濃い色をしている
  • 疲労感
  • ふわふわするようなめまい
  • 体重が極端に減少する
  • 心拍数の増加(一般的には1分間あたりの心拍数が100回以上なら脱水の可能性は高くなります)
  • 呼吸が速くなる
  • 皮膚の乾燥

一般的に水分を5%失うと脱水症状や熱中症の症状が現れ、10%失うと筋肉のけいれんや機能不全などがおこり、20%失うと死に至るといわれています。水分はまさに命に直結するんですね。

乳幼児の場合は、症状を訴えられないケースがあり、親が子供の水分不足に気づいてあげる必要があります。小さい子供での水分不足の主な症状は次の通りです。

  • 口と舌の乾燥している
  • 泣いても涙は出なくなっている
  • 3時間以上、おむつが濡れていない
  • ほほがこけた感じになり、落ち込んだ目をしている
  • 頭蓋骨上部の柔らかい部分(大泉門)が陥没している
  • だるさまたはイライラしている感じがあり、不機嫌になっている

このように水分不足かどうかは1つの指標にとらわれず様々な観点から判断されます。自分が水分不足かどうか判断する意味でも「普段の血圧や脈拍、尿の色」など普段の状態を知っておくと参考になりやすいですね。

(参照:NHS「Dehydration」
(参照:厚生労働省「「健康のため水を飲もう」推進運動」

これらのうち、外来でよく訴えられる代表的な症状についてピックアップします。

水分不足と頭痛

実は、水分不足と頭痛には大きな影響があります。脱水による頭痛の正確なメカニズムは完全には理解されていませんが、水分不足になると

  • 中枢神経系の疼痛ネットワークの活性化
  • 痛みを感じやすい「髄膜」や「血管構造」が引っ張られる状態になる

などを介して、頭痛を引き起こしやすくなるといわれています。

例えば、片頭痛のある女性 256 人を対象に水分摂取と片頭痛との関連性を調べた研究によると、「より多くの水と総水分摂取量(1日あたり約2リットル)を摂取した女性は、摂取量が少なかった女性と比較して、片頭痛発作の重症度、持続期間、頻度が減少し、発作に関連した障害も減少した」と報告されているのです。

普段から片頭痛に悩まされている方は、夏の暑い間は「水分」に着目して補ってあげるとよいかもしれませんね。

頭痛については

も参照してください。

(参照:「Dehydration and Headache」Curr Pain Headache Rep. 2021; 25(8): 56.)

水分不足と足がつる症状

水分不足と足がつる症状についても大きく関連します。外来でもよく夏に「足がつった」と言われることも多いですね。

足のつりとは「筋肉の緊張と弛緩のバランスが崩れる状態」のこと。さまざまな要因でバランスが崩れるのですが、最も多い原因の1つが「水分不足」と「ミネラルの不足」です。

ある研究で体重の2%程度、脱水を起こさせたあとに水分を摂取することで筋肉のけいれんが起こりやすくなったことがいわれています。ただし、電解質を含む液体(OS-1®)を摂取することで筋肉が痙攣しなくなったとされていますね。

その理由として本論文では「体内の電解質、特にナトリウムと塩化物が薄まると筋肉のけいれんが亢進しやすいとされており、水分だけとると電解質がその分薄まってしまうから」としていますね。

普段、夏にこむら返りを起こしやすい方は、単なる水分をとるよりは、塩飴を一緒にとったり、経口補水液に切り替えるなど、適度に電解質をとるようにするとよいでしょう。

足のつりについては、【こむら返り】足がつる原因と治し方・予防について解説【漢方薬も】を参照してください。

(参照:「Water intake after dehydration makes muscles more susceptible to cramp but electrolytes reverse that effect」BMJ Open Sport Exerc Med. 2019; 5(1): e000478.

水分不足のチェック方法は?

それでもなかなか自分が水分不足(脱水)かよくわからない方もいるでしょう。そこで、水分不足かどうか自分でも判断しやすい2項目をピックアップしますので、参考にしてください。

① 尿の色と量を確認する

水分不足かどうか、一番わかりやすくある程度正確にわかるのは「尿」です。私もしばしば脱水かどうかを把握するために尿検査を行うことがあります。

一般的に尿は水分不足になると、これ以上水分がでないように腎臓で管理され、「濃く少なく」なります。

そのため、一般的に水分不足になると

  • 尿が濃い黄色や茶色に近くなる(正常は透明または淡い黄色)
  • 一回のトイレの尿量が少なくなる
  • そもそもトイレにほとんどいかなくなる

といったことになります。尿が普段よりも濃いめに感じたら、水分不足になっているかもしれないと思っておいた方がよいでしょう。

② 毛細血管再充満時間(CRT)を確認する

おしっこがすぐ出ないという方は、より簡便な「CRT」を活用するとよいでしょう。CRTとは「毛細血管再充満時間」という循環が適切であるかと判断する救急医療で行われるトリアージ法です。以下の方法で行われます。

  1. 片方の手を心臓の上に上げます。
  2. 1 本の指に5秒~10 秒間圧力を加えます。圧迫されると、指や足の指の色が青白く見えます。
  3. 圧力を解除し、皮膚が近くの組織と同じ色に戻るまでの時間を測定します。

普通の方なら、酸素が豊富な血液が空の毛細血管をすぐに満たすため、すぐに色調が変わります。通常2秒以内かどうかで判断されますが、どんなに長くても3秒以内でしょう。

これ以上長かった場合、強い脱水所見である可能性が高くなります。

似たような検査にツルゴール検査(皮膚をひっぱって、戻るまでの時間が長いほど脱水である可能性が高い)という検査がありますが、こちらはよほど強い脱水でないと陽性にならないので、CRTの方がオススメです。

(参照:日本災害医学会「毛細血管再充満時間」
(参照:Cleveland Clinic「Capillary Refill Time」

水分不足に対する適切な対処法は?

① 適切な水分補給

水分不足の症状が出ている場合、まずは適切な量の水分を摂取することが重要です。ただし、一度に大量の水を飲むのではなく、少量ずつ頻繁に水分を補給することが推奨されます。

では、どれくらい水分が必要なのでしょうか。

米国での研究によると、1 日あたりの適切な水分摂取量は次のとおりであるとしています。

  • 男性の場合、1 日約3.7 リットルの水分摂取
  • 女性の場合、1 日約2.7 リットルの水分摂取。

通常、1 日の水分摂取量の約 20% は食べ物から摂取されますので、大体男性で約2.5リットル、女性で約2リットルは飲んだほうがよいことになりますね。

ただし、心臓が悪い方などは過度な水分で体調が悪化しやすい場合もあります。基礎疾患がある方は自分はどれくらいの水分を取ったほうがよいか、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

② 経口補水液を活用する

運動や発熱などで大量の汗をかいた場合、水分だけでなく電解質も失われます。

そのため、電解質を含むスポーツドリンクを摂取することで、水分と一緒に電解質も補給することができます。

さらに電解質を一緒に入れることで、腸管から水分吸収率もあげることができますね。

水分だけよりも500ミリリットルあたり大さじ1杯くらい、レモン汁などのクエン酸と食塩をいれてあげるとよいでしょう。

市販の経口補水液でももちろん大丈夫ですが、加糖されている飲料は「ペットボトル症候群」といって、急激な血糖上昇につながることがあります。

あまり加糖されておらず電解質が適量入っているものが望ましいですね。

③ 脱水を助長する行動をとらない

当然ですが、水分不足で脱水しやすい行動をすれば症状が加速します。脱水を助長する行動はとらず、まずは水分不足を解消するのに努めましょう。

例えば脱水を助長する行動として以下のようなものがあげられます。

  • アルコールの過度な摂取:アルコールは利尿作用があり、体内の水分を排出させるため脱水を引き起こします。
  • カフェインの過度な摂取:カフェインも利尿作用があり、水分を失う原因となります。
  • 運動後の水分補給を怠る:運動による発汗で失われた水分を補給しないと、脱水状態になります。
  • 食事を抜く:食事も重要な水分源です。特に、果物も水分を補給する手段として有効です。病気
  • 高温・乾燥環境にいる:暑い場所や乾燥した場所では、汗をかきやすく、体内の水分が蒸発しやすいです。なるべく水分不足を感じたら、建物の影の涼しい場所にいるようにしましょう。なければせめて帽子や日傘をさして影を作るようにしましょう。

(参照:「Human Water Need」Nutr Rev. 2005 Jun;63(6 Pt 2):S30-9. doi: 10.1111/j.1753-4887.2005.tb00152.x.
(参照:Mayo Clinic「Water: How much should you drink every day?」

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【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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