花粉症の季節になりましたね。最近、花粉症の薬を希望される方も多くなりました。
花粉症と言えば、鼻水や目のかゆみが有名ですが、中には咳や頭痛で来る方もいるのをご存じですか?
咳はアトピー性咳嗽といっていわゆる花粉に対するアレルギー反応として出たり、喘息症状の一環として生じます。しかし、花粉症で頭痛が起こるのはなぜなのでしょうか?
今回、花粉症に対する頭痛について、対策や薬、何科に受診するかを含めて説明していきます。
Table of Contents
花粉症と頭痛は関係ある?
そもそも花粉症と頭痛は関係があるのでしょうか?
結論からいうと「花粉症と頭痛はある程度関係がある」といえます。上図は、2004 年 1 月から 2021 年 6 月までのGoogle トレンド プラットフォーム上の用語の調査量を表していますが、頭痛も鼻炎も季節性変動が激しいことがうかがえます。
世界中で考えると、鼻炎と頭痛はいずれも4月と5月にピークが報告され、9月に小さいピークが発生していますね。そして、11月から1月にかけて検索量が減少します。
このように、少なくとも「鼻炎が発生しやすい時期には頭痛も発生しやすい」とはいえそうです。
さらに、「鼻炎」と「全ての種類の頭痛」との相関関係を調べた結果でも相関係数0.86(1に近づくほど一致)と非常に高い数値となっています。また片頭痛と鼻炎に関しても高い相関関係(0.83)をもっています。
(参照:Headache and rhinitis: pattern search on Google Trends for 17 years)
花粉症で頭痛が起こる原因は?
では、なぜ花粉症で頭痛が起こりやすいのでしょうか。鼻炎と頭痛との関係性を調べた論文によると、以下の原因が考えられています。
① 花粉症のメカニズムが頭痛にも関係するから
まず言われているのが、「花粉症のメカニズムが頭痛に関わる神経を刺激している」という説です。
花粉症はそもそも以下のメカニズムで発症します。
- 空気中を浮いている花粉が、私たちの鼻の中に入ってくる。
- この花粉が抗体を介して鼻の中の特定の細胞(肥満細胞)に接触すると、その細胞はヒスタミンやロイコトリエン、PAF(platelet-activating factor)などのいくつかの化学物質を放出される。
- これらの化学物質が鼻の内部の神経や血管に作用し、くしゃみや鼻水、詰まりなどの鼻炎の症状を引き起こす。
- 、アトピー性片頭痛患者を対象とした最近の研究では、免疫療法 (アレルギー注射) が片頭痛の頻度の 52% の減少と、頭痛関連の障害を伴う日数の 45% の減少に関連していることが判明しました
実は、これらのアレルギー反応は脳の「三叉神経」といって、顔面の感覚を司る脳神経を刺激して過敏にすることがいわれています。
片頭痛も三叉神経が過敏になることで発作がおこるといわれているので、メカニズムの面からも関連があるのですね。
② 鼻炎になりやすい人と頭痛になりやすい人は同じ遺伝素因が関係するから
さらに、実は「頭痛が起こりやすい人」と「鼻炎になりやすい人」は同じような人がなりやすいことがわかっています。
例えば、片頭痛と鼻炎は両方とも「Toll 様受容体 4 (TLR-4) 」という部分を司る遺伝子と関連しています。この「TLR-4」 は アレルギー性鼻炎の患者さんの IgE や化学物質を上昇させる可能性があるとともに、片頭痛の悪化にも関係するといわれているのです。
さらに、片頭痛も慢性鼻炎も自律神経と関係があると言われています。
両者とも「副交感神経優位」の場合のときに起こりやすいといわれています。そのため、自律神経の面からも「花粉症の時に片頭痛が発生しやすい」のです。
③ 花粉症による症状が頭痛にも関係するから
メカニズムや神経学的な原因だけでなく、鼻炎の症状そのものが頭痛を発生させやすいともえいます。
例えば、鼻水がずっと出てたり鼻がつまったり目がかゆかったりすると非常に「不快」てすよね。
花粉症になると「集中できない」「睡眠が障害される」ということも多々生じます。実際、スマホアプ,リを用いた7,668人の研究によると、花粉症の症状により集中力や思考力が低下し、日常生活が大きく損なわれることがわかっています。
そして、片頭痛は「睡眠障害」や「ストレス」も主なきっかけになります。1,207人を対象とした片頭痛の調査によると片頭痛の誘因因子としてストレス(79.7%)、睡眠障害(49.8%)、夜更かし(32.0%)と睡眠やストレスを上げる方が多く見られていますね。
このように、「花粉症➡症状からくる睡眠障害やストレス➡片頭痛」といった負の連鎖からくる可能性も十分考えられます。
(参照:Chronic rhinitis and its association with headache frequency and disability in persons with migraine: Results of the American Migraine Prevalence and Prevention (AMPP) Study)
(参照:Individual multidisciplinary clinical phenotypes of nasal and ocular symptoms in hay fever: Crowdsourced cross-sectional study using AllerSearch)
花粉症への頭痛に対する薬は?
では、花粉症で頭痛が発症した場合は、薬についてはどのように考えればよいのでしょうか?上記のメカニズムから考えると「花粉症そのものを抑える薬」と「頭痛に対する薬」は分けて考えるべきでしょう。
① 花粉症に対する薬
花粉症と頭痛はメカニズムの面からも関連があるので、花粉症を抑えることは頭痛も抑えることにもつながります。例えば花粉症に対する薬として以下が挙げられます。
- 抗ヒスタミン剤: 花粉症の最も主要な経路である「ヒスタミン」をブロックします。
- 抗ロイコトリエン拮抗薬: ロイコトリエンも花粉症の経路に関与しており、主に鼻詰まりに効果を発揮します
- 炎症を抑える点鼻薬や点眼薬など: 局所的な炎症を抑えて症状を緩和します。
しかし、最も大切なのは「花粉症ときちんと診断してもらうこと」です。
頭痛も単純なアレルギー鼻炎よりも副鼻腔炎などの非アレルギー性の鼻炎を重複している方が重症化しやすく頻度も多いことが言われています。
また、副鼻腔炎は抗生剤をはじめとした特殊な治療が必要で難渋しやすいです。そのため、毎年花粉症でかかっていて「典型的な症状」でない場合は、病院できちんと診断してもらうようにしましょう。
詳しくは花粉症の薬について【一覧・強さ・おすすめ】にも参考にしてください。
② 頭痛に対する薬
花粉症に対する薬も大切ですが、頭痛に対する治療薬ももちろん大切です。花粉症とリンクしやすい頭痛は「片頭痛」であり、片頭痛の薬としては例えば以下が挙げられます。
- 非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン: 市販薬の「イブ」や「ロキソニン」などで知られていますね。アラキドン酸カスケードと言われる炎症に関わる経路を抑えることで痛みを緩和します。
- トリプタン製剤: 片頭痛のメカニズムである血管の拡張を抑え、痛みを伝える経路を抑えることで、片頭痛発作をおさえる薬です。
- レイボー:2022年より承認された新しいタイプの片頭痛発作治療薬で、「セロトニン1F受容体」に直接作用し、片頭痛発作を起こす物質の放出を抑えることで、片頭痛症状をやわらげます。
- エルゴタミン製剤:トリプタン同様、血管を収縮させて片頭痛発作を抑える薬です。
他にもストレスに伴いやすい「緊張型頭痛」も花粉症には合併しやすい頭痛です。その場合は漢方薬や筋肉の緊張を抑える薬を使うこともありますね。
詳しくは
も参照してください。
このように、「花粉症への頭痛」は花粉症と頭痛、一緒に対策してあげる必要があります。
花粉症の頭痛、何科に受診する?
では、花粉症の頭痛は何科に受診すればよいでしょうか?結論からいうと「明らかに花粉症の場合」と「花粉症かはっきりしない場合」にわかれます。
① 花粉症であることがはっきりしている場合
明らかに花粉症だとわかっていて、頭痛の発作が非常に強い場合は「内科」や「脳神経内科」に受診した方がよいでしょう。内科でも花粉症の薬を処方することもできますし、頭痛に関する薬もいろんなタイプの薬を処方することができます。
頭痛の程度が非常に強い場合は、本当に「花粉症で頭痛が起きているのか」をはっきりさせないといけないかもしれません。
上記の理由から「内科」「脳神経内科」をオススメします。
② 花粉症がはっきりしていない場合
花粉症がはっきりしていない場合は、まず「花粉症かどうか」をはっきりさせないといけません。そのため、「内科」だけでなく「耳鼻咽喉科」も視野に考えられます。
全例が「春先の鼻炎=花粉症」というわけではありません。鼻炎にはアレルギー性鼻炎だけでなく、非アレルギー性鼻炎、ウイルス性鼻炎、慢性副鼻腔炎など、鑑別しなければいけない疾患が色々あります。
当然ながら、アレルギー性鼻炎にアレルギーを抑える薬が非常に有効ですが、慢性副鼻腔炎などは抗生剤加療を中心とした特殊な治療を必要とすることもあり、病気によって治療も異なります。
そのため、少し手間かもしれませんが、花粉症の診断のために「耳鼻咽頭科」➡ 頭痛の治療のため「内科」「脳神経内科」という流れも十分考えられるでしょう。
花粉症の頭痛に対する対策は?
花粉症の頭痛、普段はどのように対策していけばよいでしょうか?例えば、まずは以下を意識してみましょう。
① 花粉情報に気を配っておく
日本気象協会が随時花粉の飛散情報を掲載していますので、参考にしてください。
雨がいつ降るか知るために天気予報を見るのと同じくらい、花粉症の方には重要な情報です。情報があることで対策が立てやすくなります。(もちろん自分がどのアレルギーか知っていての話です)
② 飛散が多い時に防護対策を徹底する
飛散情報を確認したら、特に飛散の多い時は以下を検討してみましょう。
- 飛散が多い時は外出をなるべく控える
- 外出する場合は、マスクやメガネ・ゴーグルを着用する
- 毛ば立ったセーターやコートなどをなるべく着ない
- 換気にも気をつき、できるだけ窓を開けないようにする
基本は「花粉から身を守ること」が大切です。「マスクをしすぎると酸素飽和度が低下して頭痛が起きやすい」という話もありますが、前述の通り、アレルゲンへの曝露そのものが頭痛を誘発させていることを考えると、マスクは必要になるでしょう。
③ 帰った時の対策も忘れずに
帰った時に花粉を家に持ち込まないようにすると、家での症状を軽減することができます。帰宅したら、衣服や髪をよく落としてから部屋に入るようにしましょう。
「帰宅したらシャワーで洗い流す」ことが理想ですが、難しい場合は、せめて衣服に付着した花粉を払いおとすようにし、洗顔やうがい・鼻をかんでから入室し、外出用の衣服と部屋着を分けるようにしましょう。空気清浄機などを玄関先においておくのも対策の1つになりますね。
④ 早めに薬を内服する
上記のような対策をしっかりしていても、どうしてもある程度のアレルギー反応は起きてしまいます。そのため、薬での対策も必要になってくることでしょう。
その時に大切なのが「早めに薬を内服する」こと。片頭痛発作も発症早期に内服した方が効果が出やすく、花粉症も初期療法といって目や鼻の症状が出る前や、軽いうちから始めた方が症状が治まりやすいことがいわれています。
そのため、薬の効果を十分発揮する意味でも、早めに薬を内服して症状をコントロールする方が望ましいですね。
(参照:アレルギー性鼻炎ガイドライン2021)
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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