ヒノキ花粉症による症状と治療薬、対策について【舌下免疫療法】

スギ花粉のピークが過ぎたはずなのに、なぜか鼻や目のムズムズが止まらない。そんな経験をされている方は多いのではないでしょうか。実は、スギ花粉症の方の約70パーセントから80パーセントは、ヒノキの花粉にも反応してしまうといわれています。

今回は、ヒノキ花粉症による特有の症状と治療薬や対策について、舌下免疫療法のお話や食べ物のお話も含めて解説していきます。

ヒノキ花粉症とは?

ヒノキ花粉症とは、文字通り「ヒノキ花粉に対して過敏に反応して様々なアレルギー症状を示す」総称ですね。

実は「ヒノキだけ強くアレルギー症状がでる」という人はあまりいません。大抵の場合、スギ花粉が出ている時期からアレルギー症状が出ているので、なかなかヒノキ花粉症が注目されにくいのが特徴です。

それはなぜかというと、スギとヒノキは植物学的に非常に近い親戚だからです。そのため、花粉に含まれるタンパク質(アレルゲン)の構造も驚くほど似ています

実際、スギの主要アレルゲンとヒノキのアレルゲンは、アミノ酸の配列において約74パーセントから80パーセントもの高い相同性(似ている度合い)を持っているといわれています。さらに、近年同定された新しい共通アレルゲンであるセルラーゼ(糖質加水分解酵素)に至っては、その類似性が約85パーセントにものぼるのです。

このように構造が似ているせいで、スギで敏感になった鼻や目の粘膜が、引き続き飛散するヒノキの花粉にも過剰に反応してしまいます。

これが、症状が長引いたり重症化したりする科学的な理由なのです。

なので「スギ花粉症が長引くなあ」と感じている方は、もしかしたらスギではなくてヒノキに反応しているのかもしれません。

ヒノキ花粉症の主な症状は?

ではヒノキ花粉症はスギ花粉症とは症状は違うのでしょうか。

結論からいうと、大まかな症状(くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど)は同じですが、様々な部分で違ってきています。

2022年に2,597名のヒノキ花粉症患者を対象に行われた実態調査では、ヒノキ期特有の症状の広がりが具体的な数値で明らかになりました。スギの時期とは少し異なる、ヒノキならではの特徴に注目してみましょう。

  • 鼻の三大症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり): 全体の88.2パーセントの方が経験しています。スギの時期から継続して、強い鼻症状に悩まされる方が大半であることがわかりますね。ここはだいたい同じです。
  • 激しい目の痒み 65.8パーセントの方が訴えています。ヒノキの飛散時期は気温が上がるため、炎症が起きやすくなると考えられています。
  • のどの違和感・痒み・咳 :43.1パーセントもの方が経験しています。実は、ヒノキの方がスギ花粉症よりものどの違和感を訴えやすいのが特徴の1つ。これはヒノキ花粉が飛散中に壊れて微細な粒子になりやすく、のどの奥の上気道まで入り込んで粘膜を直接刺激しやすいためだといわれています。
  • 皮膚の痒み・荒れ: 32.4パーセントの方に見られます。いわゆる「花粉皮膚炎」の状態です。この時期、肌のバリア機能が低下しているところに微細な粒子が付着することで、肌トラブルを引き起こしやすくなります。

このように、ヒノキの時期は鼻だけでなく、目やのど、皮膚といった全身の広範囲に症状が出やすいのが大きな特徴といえますね。

(参照:Real-world efficacy of sublingual immunotherapy with Japanese cedar pollen for cypress pollinosis

ヒノキ花粉症の主な治療薬は?

ヒノキ花粉症の主な治療薬は、スギ花粉症と大きくは変わりません。基本的には「全身的な治療法」と「局所的な治療法」に大別できます。

① 全身的な治療法(抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬)

実は「アレルギーを抑える薬」と言ってもさまざまで、一番ポピュラーな「抗ヒスタミン薬」だけでも下記のような種類があります。(黄色文字は市販薬としても売られています)

  • アレグラ(フェキソフェナジン):1日2回。眠気が少なく、車の運転も可能。6か月の小児からも使える。
  • アレジオン(エピナスチン):1日1回。喘息に対しても適応が通っているのも特徴。
  • アレロック(オロパタジン):1日2回。眠気が強いが「作用が強い薬」として使われやすい。
  • エバステル(エバスチン):1日1回。比較的眠気は少ない。
  • クラリチン(ロラタジン):1日1回。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。車の運転も可能。
  • ザイザル(レボセチリジン):1日1回。ジルテックの改良版。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。
  • ジルテック(セチリジン):1日1回。妊娠授乳中にも使われやすい。
  • タリオン(ベボタスチン):1日2回。皮膚科領域では使われやすい。
  • デザレックス(デスロラタジン):1日1回。クラリチンの改良版。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。車の運転も可能。
  • メキタジン(ゼスラン):1日2回。第2世代でありながら、抗コリン作用やロイコトリエン、PAFなどの他のケミカルメディエーターも抑える。緑内障の方は使えない。
  • ビラノア(ビラスチン):1日1回。最も眠気が少ないともいわれている。空腹時に飲む必要があることに注意が必要。車の運転も可能。
  • ルパフィン(ルパタジン):1日1回。眠気の頻度が強いが「作用が強い薬」として使われやすい。抗PAF効果も持ち合わせる。
  • アレサガテープ:1日1回。貼るタイプの花粉症の薬。剥がすと効果が切れる。飲み薬が飲めない人や効果時間を調節したいという方にはオススメ。

また、モンテルカストやアイピーディーカプセルといった違う作用機序も含めるももっとたくさんありますね。詳細は花粉症の薬について【おすすめ・強さ・眠くならない】を参考にしてください。

② 局所的な治療薬(点鼻薬、点眼薬、塗り薬など)

加えて、ヒノキはスギ花粉よりも微細に壊れやすく、局所的な症状が強くなりやすい傾向があります。そのため、局所的な治療薬は(点眼や点鼻)などもよく使われますね。

こちらも、非常に豊富にあり、点鼻薬としては、例えば以下があります。

  • アラミスト点鼻液:1日1回、各鼻腔2噴霧。全体に広がるよう設計されている。
  • ナゾネックス点鼻液:1日1回、各鼻腔2噴霧。奥側に噴射しやすいように設計されている。
  • エリザス点鼻粉末:1日1回。各鼻腔1噴霧。噴射したかわからないくらいの刺激感が特徴。パウダータイプ。
  • フルナーゼ点鼻液:1日2回。小児用もあり。1日2回である程度調節しやすいのも特徴。
  • リノコートパウダースプレー:1日2回。パウダータイプなので刺激感はすくない。
  • ベクロメタゾン点鼻液:1日4回。非常に短時間なのが特徴。

点眼薬についても例えば以下があります。

  • アレジオン点眼液:1日4回タイプと持続が長い1日2回タイプである「アレジオンLX」があります。
  • ザジテン点眼液:1日4回。1回1~2滴使用できます。
  • パタノール点眼液:1日4回。1回1~2滴使用できます。
  • リボスチン点眼液:1日4回。1回1~2滴使用できます。

他にもフルオロメトロンに代表されるステロイドの点眼薬も使用されることもありますが、長期的に使用すると眼圧をあげてしまうため、短期的に使用した方が望ましいでしょう。

このように、局所的な治療薬と全身的な治療薬を組み合わせるのが一般的です。

➂ ゾレア

舌下免疫療法(SLIT)はヒノキにも効くのか?

「スギ花粉の舌下免疫療法を受けているけれど、ヒノキには効くの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。これについては「206-2-1」という大規模な臨床試験(2015年から2019年の5シーズン、1,042名を対象)で重要な結果が出ています。

この試験の解析によると、スギの舌下錠(5000 JAU)を服用することで、ヒノキの飛散ピーク時においても鼻症状の薬物スコアが33.0パーセント減少したことが確認されました。

つまり、スギの舌下免疫療法がヒノキにも波及効果(交叉有効性)をもたらすということになりますね。これは、前述したとおり、花粉に含まれるタンパク質(アレルゲン)の構造がスギとヒノキで似ているから、ということもあるかもしれません。

しかし、2025年に行われた、実際の診療現場の調査(2,597名対象)では、スギの治療を受けていても84.5パーセントの方がヒノキ期に何らかの症状を感じており、約4割の方が「スギ期より効果が低い」と感じているという現実もあります。ヒノキ花粉症に対する特有の舌下免疫療法が待たれるところですね。

したがって、スギの舌下免疫療法を受けていれば、もしかしてヒノキ花粉症に対しても一部効果があるかもしれない…くらいに考えておくのがベストだと思います。

(参照:Same dose of Japanese cedar pollen sublingual immunotherapy tablets is optimal for allergic rhinitis caused by either Japanese cedar or Japanese cypress pollen
(参照:Real-world efficacy of sublingual immunotherapy with Japanese cedar pollen for cypress pollinosis

ヒノキ花粉症への対策は?

ヒノキ花粉はスギよりも粒子が脆く、細かくなってマスクの隙間を通り抜けやすいという性質があります 。そのため、以下のポイントを意識してみてください。

  • 治療を自己中断しない: 3月下旬にスギが終わったと思って薬をやめてしまうのが一番危険です。地域によっては5月上旬まで服薬を続けることが、重症化を防ぐ鍵となります 。
  • 物理的なガードを強める: 密閉性の高いマスクを選んだり、花粉付着防止スプレーを併用したりするのが有効です 。
  • 食事への配慮 :ヒノキの時期に粘膜の炎症がひどいときは、トマトなどのナス科の植物や特定の果物で口の中に違和感が出る「口腔アレルギー症候群」が起こりやすくなるため、注意が必要です 。

「スギの終わり」を「花粉症の終わり」と勘違いせず、ヒノキの特性を理解して4月末までしっかりケアを続けていきましょう。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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