非常に皮膚トラブルが多い場所の1つが「手」。手は人間の活動の中心であり、手荒れが続くととても辛いですよね。
また内臓疾患や感染症の疾患で「手荒れ」になりやすく、注意していきたいところです。今回は、数ある手のトラブルの中でも「手湿疹」の原因と治し方について解説していきます。
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手湿疹(手荒れ)とは?
手湿疹とは、手の平や指・手の甲などの表面に「赤み、腫れ、水ぶくれ、かゆみ、ひびわれ」などの症状が出てくる一連の炎症反応のこと。そのため、手湿疹と一言でいっても原因や症状の出方によって多岐にわたることがわかるでしょう。
また、職業病の中で手湿疹が起こる確率は15-20%ほどとも言われており、特に美容師・看護師・調理や皿洗いなどをされる方に多く発症します。
手湿疹は男性より女性に多い傾向にあります。これは女性が業務以外に皮膚炎を使う家事などの仕事をする場合が多いことや、手湿疹を起こしやすい職業に就きやすいことが理由です。
最も頻度が高い原因は接触した刺激による「かぶれ」ですが、アトピー因子がある場合や原因がはっきりしない内側からくる原因があることもあります。
(参照:独立行政法人労働者健康安全機構「職業性皮膚障害の実態・発生機序ならびにその予防に関する研究の追跡調査」)
手湿疹(手荒れ)の主な原因は?
手湿疹(手湿疹)は皮膚科学会ガイドラインによると主に4つの原因に分けることができます。
① 接触した際の「かぶれ」(刺激性接触皮膚炎)
化学的な刺激が直接皮膚を刺激して障害するタイプの「手湿疹」のこと。手湿疹の7割を占めています。
よくあるのが、コロナ禍で急増した「アルコールによるかぶれ」です。他は洗剤や葉っぱや金属など、いろいろな刺激でかぶれることがあります。
一般的には利き手側の指先や手の平、爪の周囲などに起こりやすいとされています。あとは、「どれだけ長く刺激されていたか」によって赤みだけの場合からゴワゴワした皮膚になる場合まで様々です。
さらに手自体が乾燥して角質のバリアが崩れていると、かぶれやすくなることもあります。
② 化学物質によるアレルギー反応(アレルギー性接触皮膚炎)
かぶれではなく、アレルギー反応で「手湿疹」になることがあります。つまり、肌に触れた物質に対して、体の免疫システムが働き「これは体にとって有害だ」と考えて炎症をおこしてしまうことがあるんですね。刺激性接触皮膚炎と違って、体から排除するシステムが働いているかがポイントです。
アレルギー性接触皮膚炎では、刺激性接触皮膚炎と違って湿疹症状やかゆみが強いことが多く、よく反応がおこりやすい指先、親指、手の平などに起こりやすくなります。また、アレルゲンが長く残りやすい指の間や指の側面にみられることも多いですね。
アレルゲンと接触すればどこにでも生じる可能性があるので、手首や前腕にも皮膚症状がでてきます。
③ タンパク質抗原による接触皮膚炎(タンパク質接触皮膚炎)
アレルギー反応としては同じですが、花粉症と同じ「即時型アレルギー」の経路でかゆみが出てくる手湿疹のことです。じんましんのように皮膚に触れた箇所が内側から盛り上がり、かゆみと灼熱感がでてきます。
「アレルゲンに接触しないと数時間以内に元に戻る」というのがポイントですね。
かゆいから掻いているとだんだん慢性的な手湿疹になってしまうというわけです。
④ アトピー型手湿疹
アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が低下しているので、刺激性の手湿疹が起きやすくなっています。さらに、花粉やダニなどのアレルゲンに触れると、前述のアレルギー反応による手湿疹が加わり悪くなっていきます。
実は、これら4つだけでは終わりません。手湿疹には
- 手白癬:手の水虫のこと
- 疥癬:ヒゼンダニと呼ばれるダニによる皮膚疾患のこと。
- 尋常性乾癬:皮膚のターンオーバーの異常で、皮膚が厚く硬くなり、かゆみを伴いながら皮膚がはがれやすい特殊な疾患のこと。他に、爪の異常や関節の異常などが生じることがある。
などさまざまな特殊な疾患でも似たような「手湿疹」様の皮膚症状になることがあるので、要注意ですね。(後述します)
(参照:日本皮膚科学会「手湿疹診療ガイドライン」)
手湿疹(手荒れ)はストレスが原因でなることがある?
結論からいうと、ストレスだけが原因で手湿疹を発症することはありません。
ただし、ストレスをきっかけに手を引っかいたり汗をかいたりした結果、手湿疹を生じてしまう方がいます。
例えば、ストレスがきっかけでつい触りやすい手や手首を掻いてしまう方がいます。その場合、かいてしまった部分が炎症を起こすので、手湿疹として表れてしまう方がいます。
また、普段からストレスでこぶしを握り締めてしやすい方、手同士をこすりつけてしまう方、ストレスをきっかけに汗がでやすい方などは、普段のストレス管理も大切になってきます。
手湿疹(手荒れ)は内臓の病気が原因になることがある?
手湿疹は内臓の病気が原因でなることはあるのでしょうか。こちらも結論からいうと「一部の特殊な内臓を含む疾患で手湿疹になることがある」といえます。例えば次のような疾患の場合です。
- 手掌紅斑:肝機能低下により、皮膚の表面の毛細血管が変化して手自体が赤くなることがあります。かゆみや痛みはありません。他にも目の色が黄色くなる、胸や背中にクモ状のもやもやがあるなどの場合には要注意です。
- ゴットロン徴候:手の甲の関節部分に認められる赤い紅斑が特徴的な皮膚症状で、「皮膚筋炎」と呼ばれる膠原病の1症状です。他にはむくみを伴うまぶたの皮膚症状である「ヘリオトロープ疹」が有名。皮膚筋炎は、悪性腫瘍や間質性肺炎を合併しやすいので要注意です。
- 掌蹠膿胞症(しょうせきのうほうしょう):手の平に水ぶくれが多発する疾患です。他、足の裏にも「うみ」を伴う水ぶくれができます。タバコや金属アレルギーの他、外の環境と接する扁桃腺、歯や鼻の細菌による慢性炎症があると掌蹠膿疱症が生じることがあります。
このように、手湿疹の中でも内臓疾患と関連する疾患や上述の手湿疹と似た疾患もあるので、なかなか治らない手湿疹に対して採血や金属アレルギー検査・真菌検査などを行う場合があります。
手湿疹(手荒れ)の治し方や予防法は?
このように「手湿疹」と一言でいっても様々な原因があるので、原因に合わせた治療が必要です。ここでは、手湿疹の中でも一般的に起こりやすい「かぶれや乾燥による手湿疹」の治し方について紹介していきます。
① 手湿疹は早めに治す
手湿疹を放置していると、かきこわしなどから悪化する可能性が高くなってしまいます。手の角質は厚く、湿疹自体も強いことが多いので、手湿疹は市販薬でも難渋しやすいのが特徴です。
基本的には皮膚科で現在の手湿疹の状況を診てもらい適切な薬を処方してもらうか、市販薬でも数日間で治らない場合は早めに受診した方がよいでしょう。
② 手をこまめにハンドクリームで保護する
手湿疹は「治ったらおしまい」といったものではありません。かぶれの原因や手の保護を怠った場合、非常に繰り返しやすいのも特徴です。特に職業でかぶれやすい洗剤や塗料、化学薬品などを扱っている場合はなおさらでしょう。
その際、乾燥などで角質のバリア機能が低下している場合は炎症しやすくなります。そのため、ほとんどの手湿疹に対してハンドクリームで保護することは有効です。1日2回と言わず、手が乾燥してきた際にはワセリンやハンドクリームをこまめに塗るようにしましょう。
③ 手の「かぶれ」の原因を考える
手湿疹の7~8割くらいは「かぶれ」が原因というお話をしました。しかし、手は色々な場所で使うため、かぶれの原因がわからないことが多々あります。
手湿疹が「かぶれ」で起きている場合は、当然ですが同じものに接触するとまた「かぶれ」てしまいます。今まで使っている洗剤などでも、ある日を契機にかぶれやすくなっていることもあります。今一度、自分が普段使っているものなどを見直してみるようにしましょう。
④ 手を手袋などでしっかり保護する
かぶれの原因が見つかったら、しっかり保護しないと、同じことの繰り返しになりやすいです。かぶれる原因が見つかったら手袋などで保護するようにしましょう。手汗などでかぶれる場合は、汗をこまめにふきとったりするのも大切ですね。
手湿疹についてのまとめ
いかがでしたか?今回は手湿疹について原因から治し方や予防法まで幅広く解説していきました。
手湿疹は長期に悩みやすく、数多くの方が悩まれる疾患ですが、実は非常に奥が深い疾患だと感じています。私自身も患者さんと一緒に手湿疹の原因について、日常生活から探るようにしていますが、何回か診ないとわからないこともあります。
「薬だけ出しておけばいい」とは全く思っていませんので、ぜひ相談してくださいね。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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