冬場に一気に大流行するインフルエンザ感染症。今年もこの時期がやってきましたね。
最近はインフルエンザだけでなく、夏と冬に流行しやすい新型コロナをはじめとして、ノロウイルスやマイコプラズマ、リンゴ病、溶連菌感染症など、色んな感染症が流行するようになりました。
なので、「どんな症状がインフルエンザに特徴的なのか」よくわからないという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、実際に当院でインフルエンザ陽性の診断を受けた直近の128例を分析し、新型コロナの症状と比較することで、インフルエンザの症状の特徴について解説していきます。
インフルエンザの潜伏期間、隔離期間についてはインフルエンザの潜伏期間と隔離期間、感染に対してできることについてを参照してください。
最後にわかりやすい動画もありますので、あわせて参考にしてください!
Table of Contents
インフルエンザの症状にはどんなものがある?
当院でインフルエンザにかかった168例(平均年齢39.1歳、範囲:15-69歳、女性53%)について、症状を解析したところ、以下のようになりました。(すべてインフルエンザA型、コロナとの同時感染例は除外、複数回答可)
- 38度以上の発熱:84.7%
- 咳:76.0%
- 鼻水:68.3%
- のどの痛み:59.4%
- 頭痛:51.2%
- 関節痛/体の痛み:37.5%
- 消化器症状:20.2%
- だるさ:9.4%
- 息苦しさ:7.8%
- 味覚嗅覚:0.0%
やはり特筆すべきは発熱の確率の高さでしょう。「家族がインフルエンザだったから、症状は軽いけど念のために来院した」という方もいますので、そうした方を除外すると、発熱の確率はもっと高くなり90%近くにまで及びます。
したがって、インフルエンザはコロナよりも高率に38度以上の発熱を判断の1つにしやすいです。ただし絶対があるというわけではありません。
あとは、やはりインフルエンザも上気道感染が中心なので、咳や鼻水、のどの痛みは訴えやすくなっています。また、頭痛もきたしやすいのもインフルエンザの特徴といえるでしょうね。
また消化器症状が出た時の強さも印象的です。確率としては低めであるものの、「なかなか食べられない」「胃もたれが強い」と一番強い症状として挙げる方もしばしばでした。
一方で、味覚嗅覚障害を訴える人は直近のインフルエンザ感染者の中にはいませんでした。私が覚えている限り、インフルエンザで味覚障害を訴え方は2例くらいしか経験していませんので、味覚嗅覚障害があったら他の疾患を疑いやすいといえるでしょう。
他には、めまいなども言われる症状ですね。各症状の特徴は後述します。
大人のインフルエンザの各症状の特徴は?
では、もう少しインフルエンザと新型コロナを比較しながら、大人を中心に各症状の特徴を見ていきましょう。
① 発熱
当院では、84.7%の方が発熱をきたしていました。新型コロナの発熱の割合は74.4%でしたので、「インフルエンザの方がコロナよりも発熱をきたしやすい」といえますね。
38度~39度の発熱をきたすこともある一方、残りの18.7%の方でも37度後半まで発熱があがる例が多かったので、ほとんどの症例で熱に関する症状が出てくるといってもよいでしょう。
そういう意味では、
② 咳や痰
咳も訴えやすい症状の1つ。当院では76%の方が咳を訴えていました。しばしば「夜も寝られないくらいだった」といわれることもあります。
しかし、マイコプラズマや他の肺炎も咳症状を中心に訴えるので「咳が中心だからインフルエンザ」とは言いにくいと思います。おそらく区別する点としては「他の症状がどれだけあるか」でしょう。
「咳だけやたら出てくる」というのはインフルエンザに典型的な症状ではないです。
③ 鼻水
鼻水も意外にも言われやすい症状の1つです。当院では68.3%の人が鼻水を主な症状の1つとして挙げていました。ウイルス性なので、サラサラした鼻水から次第に粘っこい鼻水にかわることが多いですね。
しばしば後半になると黄色い鼻水に変化することがあります。
④ のどの痛み
のどの痛みは「違和感」として表現する人が多いですね。見ると「インフルエンザ濾胞」といって、赤い水膨れを呈しており、「のどの所見をみただけでインフルエンザだとわかる」という例がある一方、まったくのどの炎症がなく抗原検査が出てくる例もあるので、のどの所見がインフルエンザで必発とはいえないと思います。
実際、当院でものどの痛みを主症状に言われたのが59.4%にとどまっています。
⑤ 頭痛
頭痛は実はインフルエンザでは非常に言われやすい症状の1つです。51.2%の人が頭痛を認めています。コロナは当院では41%にとどまっていますので、「インフルエンザの方が頭痛をきたしやすい」とはいえそうですね。
こめかみの付近が痛いケースもありますし、ガンガンして「早く何とかしてほしい」と一番重い症状としてあげる人もしばしばいます。
ただし、「発熱+頭痛」といえば、髄膜炎や脳炎なども鑑別に挙げられますので、発熱と頭痛だけある場合はインフルエンザが陰性だったしても要注意になります。
⑥ 関節痛、体の痛み
逆に意外に症状がでる確率として低いのが関節痛や体の痛み。当院では37.5%の方が関節痛や体の痛みを主な症状の1つにあげていました。
私が学生のころなどは「関節痛や体の痛みがインフルエンザの特徴」といわれていただけに、非常に意外な結果でしたね。
しかし、痛みを訴える人はかなり痛いことが多く、「最も重い症状」としていわれることが多かったです。特に体の節々の色んな関節が痛くなるパターンや太もものような太い筋肉に痛みがでてくることが多いと思われます。
⑦ 消化器症状
消化器症状もインフルエンザではしばしばいわれる症状ですね。当院では20.2%の方がいわれていました。主には下痢や吐き気、胃もたれ感が多いです。
ただし、消化器症状を訴えられる方は、非常に強く言われることが多いですね。「胃もたれが強すぎて何にも食べられない」といわれることもしばしばです。点滴を言われることもあります。
しかし、発熱をしていると予想以上に水分が必要です。必ずこまめに少しずつ水分をとるようにしましょう。市販の吐き気止めも有効です。
⑧ だるさ
だるさもしばしばインフルエンザ感染症で言われるところですが、発熱とセットになっていることが多いですね。新型コロナよりもだるさが長引くことはすくない印象です。
当院ではインフルエンザ感染者のうち9.4%の方がだるさを主症状に訴えています。
⑨ 息苦しさ
息苦しさも言われる症状の1つです。当院では7.8%の方が息苦しさを主症状に訴えていました。
ただし、これは新型コロナよりもかなり少ない数字で、新型コロナでは19%にも上ります。
したがって、息苦しさが全面にある場合は、むしろ他の疾患も念頭に置かなければならないと考えていますので、注意しましょう。
子供のインフルエンザの特徴は?
では、子供はどんな症状が出るのでしょう。2021年に発表された、子供のインフルエンザの特徴をまとめた論文によると、以下の通りとなっています。
- 38度以上の発熱:60~90%
- 咳:60~90%
- 鼻水・鼻炎:60~90%
- 頭痛:30~60%
- 嘔吐・下痢:30~60%
- 筋肉痛:0~30%
このように見てみると、大まかな症状の内訳は大人と同じくらいですね。ほかの多施設臨床試験で募集された5歳~12歳の子供468人の小児を解析した症状の特徴として、以下を上げています。
- インフルエンザは発熱しやすい:通常のかぜの2.67倍で38.2度以上の熱が出る
- インフルエンザは咳がでやすい:通常のかぜの5.19倍
- インフルエンザはのどの痛みを訴えにくい:通常のかぜの0.41倍
- インフルエンザは筋肉痛を訴えにくい:通常のかぜの0.61倍
このように、インフルエンザは様々な点で他の感染症と症状が違うので、参考にするとよいでしょう。
小児のインフルエンザ感染症の場合、気を付けなければならないのは「合併症」です。実際、スウェーデンで実施された調査では、18歳未満のインフルエンザ陽性小児の41%が何らかのインフルエンザ関連合併症を経験していると報告されています。具体的には次のような合併症が報告されていますね。
- 急性中耳炎:5~20%
- 細菌性肺炎:1~5%
- 原発性ウイルス性肺炎:1~5%
- 副鼻腔炎:1~5%
- 脳炎:1%未満
特に命にかかわるものといえば、インフルエンザ脳症ですね。
インフルエンザ脳症は、発熱してから1日以内にけいれんや意識障害が現れ、その後、全身の臓器に障害が及ぶ病気です。進行するとショック状態や心肺停止を引き起こし、命を落とすこともあります。
特に5歳以下の乳幼児に多く見られ、非常に深刻な病気です。死亡率は約30%、25%の患者が後遺症を残すとされ、後遺症なく回復できるのは全体の4割ほどに限られています。極めて危険な疾患です。
極めてまれなので、過度に心配することはありませんが、例えば大人が感染したら子供にうつらないよう、十分な注意が必要でしょう。
(参照:Influenza in Children)
(参照:Clinical Infectious Diseases, Volume 43, Issue 5, 1 September 2006,Pages 564–568)
インフルエンザの症状の経過は?
インフルエンザの経過は一般的にどのようなものでしょうか。
インフルエンザの症状が出る期間は一般的に5-7日くらいといわれていますが、治療薬をつかっているかどうかでも大きく変わってきます。症状のピークは大体発症後2-3日がピークになりますね。
やはり、治療薬を使うことで、症状は1-2日くらい短縮されて「早く治った」と実感されることが多いですね。もちろんインフルエンザの治療薬を使うタイミングも大切
また、インフルエンザも新型コロナよりも稀ですが、咳やだるさなどが長引くケースがあります。そのため、あまり放置せずに医療機関に受診し、しっかり治療することをおすすめいたします。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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