新型コロナ後遺症による倦怠感の特徴や治療法について解説

みなさんは、新型コロナに罹った後、だるさが長引いてしまっているということはありませんか?

新型コロナは重症化は下がってきたものの、かわりに増加しているのが「後遺症問題」。実際

  • コロナの症状は大したことなかったのに、だるさが続いて起きられなくなった
  • コロナに罹ってだるさも治るだろうと思い様子を見ていたが、治る気配がない
  • コロナに罹ってから生活リズムが不規則になり、寝てばかりになってしまっている

という理由で当院に受診される方は最近増えています。実際、どうしてコロナはだるさや倦怠感などの症状が起こるのでしょうか?新型コロナ後遺症によるだるさ・倦怠感について、現時点で分かっていることをお話していきます。

最後に、コロナ後遺症の倦怠感の症例も入れながら動画でわかりやすく解説しますので、あわせて参考にしてみてください。

また、合わせて、医師の立場からコロナ後遺症の「リアル」を解説しましたので、合わせてごらんください。

新型コロナ後遺症によるだるさ・倦怠感の確率は?

新型コロナ後遺症として、倦怠感やだるさはどれくらいの確率で残ってしまうものなのでしょうか?2023年に発表されたデータによると、コロナ罹患後3か月後での以下の症状がある割合は次の通りとなっています。

  • 疲労感・倦怠感:デルタ株以前 35.3%、デルタ株 34.5%、オミクロン株 36.6%
  • 筋肉痛:デルタ株以前19.3%、デルタ株 13.2%、オミクロン株 16.5%
  • 関節の痛み:デルタ株以前 14.5%、デルタ株 12.0%、オミクロン株 14.2%
  • すっきりしない睡眠:デルタ株以前 26.5%、デルタ株 24.4%、オミクロン株 26.0%
  • 睡眠障害:デルタ株以前 28.3%、デルタ株 25.8%、オミクロン株 29.7%
  • 物忘れ・記憶障害:デルタ株以前 17.3%、デルタ株 11.6%、オミクロン株 11.0%
  • 思考や集中力の低下:デルタ株以前 15.4%、デルタ株 12.1%、オミクロン株 11.0%
  • めまいや失神:デルタ株以前 7.9%、デルタ株 5.8%、オミクロン株 6.1%
  • 疲労重症度スコア ≥25:デルタ株以前 16.7%、デルタ株 11.5%、オミクロン株 12.3%

筋肉痛や記憶障害などはデルタ株以前(アルファ株・武漢株など)の方が確率は高いものの、オミクロン株になったからといって、疲労感や倦怠感が残る確率はやや低下するくらいにとどまっています。

つまり、コロナにかかる方が多くなればなるほど、コロナ後遺症で倦怠感や疲労感を実感される患者さんの絶対値は増加してしまうことになります。これが、後遺症外来の方が増えてしまう理由です。

しかも、同論文で報告されている新型コロナによる入院率やワクチン接種率は以下の通りです。

  • コロナによる入院率:デルタ株以前 13.5%、デルタ株 4.8%、オミクロン株 2.5%
  • コロナワクチン接種率:デルタ株以前 18.4%、デルタ株 74.1%、オミクロン株 98.4%

つまり、「入院していないから後遺症にならない」「コロナワクチンを打っているから絶対後遺症にならない」というわけではないので注意が必要です。

(コロナワクチン接種により後遺症の確率が下がる可能性は他論文で示唆されています。同論文でも「ワクチン接種状況により、頭痛、胸痛、下痢や3つ以上の後遺症の発現率については、オミクロンとデルタ以前の時期で軽減されている」としています。)

(参照:Severe Fatigue and Persistent Symptoms at 3 Months Following Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Infections During the Pre-Delta, Delta, and Omicron Time Periods: A Multicenter Prospective Cohort Study

日本でもコロナ後遺症での倦怠感で悩まれている方は多い

上記は海外のデータでしたが、日本でのコロナ後遺症による倦怠感の影響はどれくらいなのでしょうか?

東京都モニタリング会議資料によると「コロナ後遺症としてどのような症状がありますか?」という質問に対して、倦怠感はトップであり、51.6%にも上ります。

さらに、後遺症を疑う症状があったと回答した方のうち、85%の人が後遺症による日常生活への支障が「非常に/ややあった」と回答しており、1か月以上仕事や学業を休んでいる方も8.3%もいます。

しかも後遺症外来を行っていると、悲しいことですが職場の理解が乏しいケースも珍しくありません。「だるいなんて気のせい」「あまりに休んでいるのは本人の努力が足らないから」などと言われ、さらに病状が悪化させることもあります。

また、国立国際医療センターによる後遺症調査によると「1年半後も25.8%の方が症状があり、1年後の症状低下は記憶障害や集中力低下が主である」という報告もされています。だるさや倦怠感は最後まで尾を引き、難渋しやすい疾患であることがわかりますね。

実際コロナ後遺症を診ている立場からすると、決して「気のせい」などというものではないことがわかるだけに、コロナ後遺症に対して少しでも理解が進むことを願うばかりです。

(参照:(第116回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和5年3月30日))

新型コロナ後遺症の倦怠感・だるさの特徴は?

では、コロナ罹患後のだるさや倦怠感の特徴はどんなものがあるのでしょうか。順に見ていきましょう。

① 集中力や持続力が続きにくくなる

コロナで疲労感が続く方は、1つの仕事をしていてもなかなか集中力が持続できません。当院の外来に受診された方でも「仕事をしようとしてもなかなか取り掛かりに時間がかかってしまい、一度取り組んでもすぐ疲れてしまう」といったことが見られます。

実際、コロナ後遺症による疲労感について複数の論文を検証した論文では、最大81%の確率で上記の症状が起こるとされています。

② 睡眠障害が起きやすくなる

当院に受診する方でも「コロナ発症をきっかけに睡眠リズムがバラバラになってしまった」「疲れているのに眠れない」といった症状があることがしばしば見受けられます。

実際に検証されているデータでは、最大33%の確率で睡眠障害が起こる可能性があるといわれています。

③ 筋肉痛や痛みの症状を伴うことも

よく疲労感とともに筋肉痛や痛みも一緒に出ることがあります。受診された方ではよく体幹よりも四肢の太ももやふくらはぎ、上腕などに出ることが多いですね。関節痛を伴うこともあります。

程度がひどい場合や筋力低下を伴う場合は、自己免疫疾患やギランバレー症候群やCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)などの鑑別も必要になってくるので、適宜連携施設に紹介するようにしています。

実際に検証されている論文では、最大55%の確率でコロナ罹患後に筋肉痛が起こる可能性があるとしています。

④ 不安やうつ症状も代表的な症状の1つ

不安症やうつ症状もコロナ罹患後の「だるさ」として出やすい症状の1つです。当院でもしばしばカウンセリングや抗うつ薬が必要なケースが見られます。

必要に応じて心療内科や精神科などと連携が必要なケースもありますね。「特にうつ病や不安症がコロナ罹患前からみられていた場合に増幅して発症しやすい」という報告があります。

実際に検証されている論文では、最大47%の確率でコロナ罹患後に不安やうつ症状があるとしています。

⑤ 記憶障害もコロナ罹患後におこりやすい

記憶障害や物忘れも新型コロナ後遺症として起こりやすい症状の1つです。特に当院では若年者におこりやすい傾向にありますね。「受験や進学に勉強しないといけないのに、なかなか覚えられない」と焦ってしまっている方もいます。

実際に検証されている論文では、最大32%の確率で記憶障害が起こる可能性があるとしています。

(参照:Post-COVID-19 fatigue: A systematic review. Front Psychiatry. 2022; 13: 947973.)

コロナ後遺症の倦怠感に近い「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」

こうしたコロナ後遺症の倦怠感によく似た以前からの病態で「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」というのがあります。「IOM 2015」で定義されている診断基準は以下のようなものです。

  1. 病気になる前より仕事をする能力が大幅に落ちます
    1. 6か月以上続く
    2. 次のような疲労感を伴います。
      1. しばしば強い疲労感がある
      2. 新たな発症の期間(生涯にわたるものではない)
      3. 継続的または異常な過度の運動の結果ではない
      4. 休息しても実質的に軽減されない
  2. 労作後倦怠感 (PEM):一部の患者では、感覚過負荷(光と音)が PEM を引き起こす可能性も
  3. すっきりしない睡眠

そして、次の2つの追加の兆候のうち少なくとも 1 つが存在する必要があります。

  1. 認知障害:思考、記憶、実行機能、情報処理に問題を抱えているだけでなく、注意欠陥や精神運動機能の障害もあります。これらはすべて、運動、努力、長時間の直立姿勢、ストレス、または時間的プレッシャーによって悪化する可能性があり、患者の仕事を維持したりフルタイムで学校に通う能力に深刻な影響を与える可能性があります。
  2. 起立不耐症 :立ちくらみ、失神、疲労感の増加、認知機能の悪化、頭痛、吐き気などの起立性調節障害が出ることがあります。

こうしてみると、確かにかなりコロナ後遺症の症状に近い症状ですよね。そして、実際ME/CFSは、発熱や喉の痛みなどの「風邪症状」を契機に突然発症することが多いので、ウイルスや細菌が免疫系に作用することが発症に重要と考えられています。

2003年にはカナダや香港でSARS感染後のME/CFSによる集団発生が報告されていますので、新型コロナ後の罹患後の倦怠感もこのME/CFSの可能性が十分考えられます。

ただし、このME/CFSのメカニズムも十分にわかっていないことや診断基準も除外診断が主であること、治療方法も確立されていないことから、まだまだコロナ後遺症の倦怠感は治しにくい病態であることは間違いないでしょう。

(参照:CDC「Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome IOM 2015 Diagnostic Criteria」

コロナ後遺症によるだるさや倦怠感で検証されている治療法は?

このようにコロナ後遺症はまだ治療法が模索されている状況ではありますが、いくつか治療法が模索されています。例えば以下の通りです。

  • 抗ウイルス薬:例えば、抗ウイルス薬のパキロビッド処方で後遺症発生率が25%減少するという報告もあります。ゾコーバ®でも後遺症発現が低下するのではというデータもありますね。ただし、コロナ罹患後早期に投薬しなければならないので、「初期対応に以下に抗ウイルス薬を使うか」は重要になるでしょう。こうした経緯から当院ではコロナ感染症に対して、状態に合わせて適切な抗ウイルス薬も処方するようにしています。
  • ワクチン接種:コロナワクチンを打つことで、後遺症発現率が下がるのではという論文が見られています。例えば、2022年の発表された論文では、ワクチン接種により後遺症発現が8.8%~12.8%低下したとしていますね。
  • 漢方薬:倦怠感に対する漢方薬の研究はいくつか進められており、小規模ながら有効性が示唆されているものも認められています。当院でも症状や状態に合わせて漢方薬を選びながら処方しています。
  • ナルトレキソン(アルコール依存症の薬):ナルトレキソンは本来麻薬中毒やアルコール依存に対して使われる薬ですが、アイルランドの論文でコロナ後遺症にも効くのではないかと考えられています。ただし、非常に小規模(100人未満)の試験であり、はっきりとしたエビデンスは確立されていません。
  • 抗アレルギー薬(ファモチジン、抗ヒスタミン):新型コロナ罹患後症状の本質として「ウイルスそのものよりも体の免疫反応の暴走」とする説もあり、抗アレルギー薬による後遺症治療も試みられています。
  • EAT(Bスポット療法):咽頭に塩化亜鉛という消炎作用のある薬を直接塗布する治療法のこと。「コロナ後遺症が慢性上咽頭炎からくる」という考えから日本中心で行われています。一部有効性が認められている論文が日本から出ていますが、まだ非常に小規模であり、はっきりとしたエビデンスは確立されていません。

ほかにも水素吸入療法やrTMS治療、リハビリテーション、ヨガなど枚挙にいとまがありませんが「どれも絶対に効果がある」というのがありません。

本疾患は非常に複雑なメカニズムのもとに成り立っているので、単一の病態で説明できるものではないのかもしれませんね。

当院でも、コロナ後遺症の倦怠感に対しても治療を行っておりますが、実際処方する内容は患者さんによって大きく異なっていたりします。

(参照:Nature Reviews Microbiology volume 21, pages133–146 (2023)
(参照:Safety and efficacy of low dose naltrexone in a long covid cohort; an interventional pre-post study
(参照:Epipharyngeal Abrasive Therapy (EAT) Has Potential as a Novel Method for Long COVID Treatment

コロナ後遺症によるだるさはゆっくりよくなってきます

ここまで、かなりネガティブな話をしてしまいましたが、最後にポジティブなお話もしましょう。コロナの後遺症は非常に長くかかることもありますが、徐々に良くなっていくということです。

2023年に発表された複数の論文をまとめた論文によると、コロナに罹った人のうち、41%の方が疲労感を感じられ、12カ月以上疲労感を感じ続けた人がいたものの、疲労感の程度は1カ月ごとに6%ずつ軽減されていったとされています。

いま、疲労感が本当につらいと思われている人もいるのでしょう。しかし、永久ではありません。終わりはあるのです。

もちろん心理的な要因や呼吸器疾患、不安やうつ病、PTSDなどは疲労感が長引くリスクが高いので、きちんと医療機関で対処する必要があります。ぜひ医療機関に相談していただきながら、あせらず、ゆっくりと治していきましょう。

(参照:Fatigue outcomes following COVID-19: a systematic review and meta-analysis

コロナ後遺症によるだるさについてのまとめ

いかがでしたか?今回は新型コロナ後遺症によるだるさや倦怠感について解説していきました。まとめると

  • オミクロン株になってから、だるさや倦怠感の後遺症につながる確率は若干低下しているものの、依然として他の疾患に比べて高い。
  • 感染者数が多くなるとともに、コロナ後遺症でだるさを訴える方が増えてきている。
  • コロナ後遺症のだるさの特徴として「集中力が長続きしない」「不安感やうつ傾向を伴いやすい」「睡眠障害を伴いやすい」「記憶力障害がおこる可能性もある」などがあげられる。
  • コロナ後遺症のだるさは「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」の病態に似ているものの、どちらもメカニズムが完全に解明されておらず、治療も模索中の状態。
  • 個人個人で病態も異なる可能性もあり、1人ひとりに合わせたケアが必要である

といえます。当院でもコロナ後遺症のだるさについて治療を行っており、多くの方は(長期間かかることもありますが)改善されているものの、難渋するケースも見受けられますね。

もちろん最善を尽くして丁寧に診療させていただきますので、どうぞご遠慮なくご相談ください。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

コロナ後遺症の倦怠感について動画で解説

【動画】コロナ後遺症の「リアル」をデータと実例で解説

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