いんきんたむしに関する疑問と受診の目安
股がかゆい。デリケートな場所なので受診しづらい。いんきんたむしかもしれない。ただし、市販薬で治してよいのか分からない。
このように悩んでいる方は、意外と多いのではないでしょうか。いんきんたむしは正式には「股部白癬(こぶはくせん)」といい、白癬菌というカビが股の皮膚に感染して起こる病気です。分かりやすくいえば、股にできる水虫の一種です。
ただし、ここで最初にお伝えしたいことがあります。股がかゆいからといって、すべてがいんきんたむしではありません。 陰嚢湿疹、かぶれ、皮膚カンジダ症、紅色陰癬、乾癬、疥癬などでも、よく似た症状が出ます。
薬を間違えると、かえって悪化することもあるんです。
本記事では、いんきんたむしの症状と原因を分かりやすく解説します。 女性や陰嚢に出る場合の見分け方と治療薬の選択を説明します。 湿疹との見分け方、うつる経路、治るまでの期間を詳しく解説します。
いんきんたむし(股部白癬)とは?

いんきんたむしを医学的に正確にいうと「股部白癬」といいます
白癬菌(皮膚糸状菌)が太ももの付け根や股の皮膚に感染して起こる「皮膚糸状菌症」の一つです。
同じ白癬菌が足に感染すれば足白癬、いわゆる水虫になります。股に感染したものが股部白癬、つまりいんきんたむしです。なんと水虫と同じ菌なんですね。
2021年に日本の皮膚科施設で行われた疫学調査では、皮膚糸状菌症8,151例のうち、股部白癬は399例でした。男性305例、女性94例で、男性は女性の約3.2倍となっています。
男性に多いのは、陰嚢と太ももの間に湿気がこもりやすく、摩擦も起こりやすいことが一因と考えられます。しかし、当然ながら女性でも発症します。「男性だけの病気」ではありません。
また、いんきんたむしは一般に性感染症には分類されません。ただし、皮膚の接触やタオルなどを介して白癬菌が移ることはあるため、「性病ではない=人にうつらない」という意味ではないないので注意しましょう。
(参照:Nakamura K, Fukuda T. 2021 Epidemiological Survey of Dermatomycoses in Japan. Med Mycol J. 2023)
いんきんたむしの症状は?画像でみわけられる?

典型的ないんきんたむしでは、太ももの付け根から赤い発疹が外側へ広がっていきます。ここ「輪のように広がること」が大きな手がかりです。具体的には、次の3点に注目します。
- まず、発疹の縁が赤く、少し盛り上がります。外側にブツブツや小さな水疱、皮むけがみられることもあります。
- 次に、外へ広がる一方で中心部の炎症は弱くなり、輪の内側は治ってきたように見えます。
- さらに、正常な皮膚との境界は比較的はっきりしており、円形、楕円形、半円状に広がります。
かゆみは強いことが多く、汗をかいたときや夜に気になりやすい方もいます。太ももの内側だけでなく、会陰部、お尻、下腹部まで広がることもあります。
ただ、ここで注意があります。
「輪っか」なら「いんきんたむし」、というわけでは決してありません。
輪状の発疹は大切な手がかりですが、すべての患者さんで典型的な輪になるわけではありません。反対に、湿疹や乾癬などが輪のように見えることもあります。
また、いんきんたむしにかぶれが重なってしまっているケースや後述するように「見分けにくい疾患」であることもすくなくありません。
そのときにタトバステロイドの塗り薬を使うと、赤みやかゆみだけが一時的に弱くなり、白癬菌は増えてしまうことがあります。その結果、境界がぼんやりしたり、広範囲に拡大したりして、典型的な見た目ではなくなる「異型白癬(いわゆる、いんきんたむしの隠れた状態)」になることもあって、さらに診断が難渋してしまうんです。
ネット上の画像や写真だけで、自分の発疹を確定診断することはできません。 少なくとも、皮膚の一部を顕微鏡で確認することが大切です。
(参照:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「インキンタムシ、ゼニタムシの症状はどのようなものですか?」)
いんきんたむしの原因は?どこからうつる?

いんきんたむしの原因は、白癬菌が股の角質層へ入り込むことです。股は高温多湿になりやすく、白癬菌が増えやすい環境がそろっています。
そして、感染源として特に重要なのが、自分の足や爪の水虫です。足を触った手、下着を着る動作、タオルなどを介して、白癬菌が足から股へ移ることがあります。日本皮膚科学会も、股部白癬の多くは自分の足白癬からの感染と考えられると説明しています。
ほかには、家族の水虫、共用のタオルや衣類、足ふきマット、皮膚同士の接触などが感染経路になる可能性があります。ただし、白癬菌が皮膚についた瞬間に必ず発症するわけではありません。菌が付着したことに加えて、蒸れ、摩擦、皮膚の傷などが重なると感染しやすくなります。
発症しやすいのは、汗をかきやすい方や高温多湿の環境で過ごす方です。きつい下着や衣類で股が蒸れたりこすれたりすること、肥満などで皮膚同士が密着しやすいことも影響します。
さらに、足白癬や爪白癬を治療せずにいること、糖尿病や免疫機能に影響する病気・薬があることも、発症しやすさに関係します。
(参照:第一三共ヘルスケア「いんきんたむし(股部白癬)」 / 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A Q30)
いんきんたむしと陰嚢湿疹・カンジダの見分け方

股のかゆみを起こす病気は、いんきんたむしだけではありません。見分ける手がかりを表にまとめます。
| 考えられる病気 | 見た目・症状の傾向 | うつる可能性 |
|---|---|---|
| いんきんたむし(股部白癬) | 縁が赤く盛り上がり、鱗のような皮むけを伴って輪状に拡大。中心は炎症が弱くなる。通常、陰嚢そのものは避けることが多い | あり |
| 陰嚢湿疹・接触皮膚炎 | 陰嚢を含めて赤い、カサカサ・ジュクジュクする。下着、汗、摩擦、洗浄剤などが触れる形に一致することも | なし |
| 皮膚カンジダ症 | 皮膚が接する部分が赤く湿り、ただれやすい。周囲に小さな赤いブツブツ・膿疱が飛び散るように出ることがある。陰嚢にも出やすい | 状況による |
| 紅色陰癬 | 赤褐色〜茶色の平らな斑。かゆみが弱いこともある。専用のライトでサンゴ色に光る | 強くはない |
| 乾癬 | 左右対称の赤み。股では皮むけが目立たず、つるっと見えることも。頭皮・肘・膝・爪などに別の症状がある場合も | なし |
| 疥癬 | 夜に強いかゆみ。手首、指の間、わき、腹部、陰部などにも発疹が出て、家族・施設内で同様のかゆみが広がることがある | あり |
典型例では違いがみえることもありますが、実際には重なって見えるケースが少なくありません。湿疹ならステロイド、いんきんたむしなら抗真菌薬というように、治療は正反対になります。
「見た目で当てる」より、「菌がいるか確かめる」ほうが、結局は早く治す近道です。
(参照:日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」)
いんきんたむしは病院でどう診断する?

病院では、発疹の縁にある皮むけなどを少量採り、KOH直接鏡検という顕微鏡検査で白癬菌を探します。採取するのは皮膚表面の角質です。多くの場合、結果は数分で分かります。
いんきんたむしでは、菌が増えている発疹の「外側の縁」から正しく検体を採ることが大切です。すでに市販の抗真菌薬やステロイドを塗っていると、見た目や検査結果に影響する場合があります。使った薬があれば、商品名や使用期間を診察時に伝えてください。
通常と違う菌が疑われる、治療しても改善しない、何度も繰り返すといった場合は、真菌培養などを追加することがあります。培養は菌種の確認に役立ちますが、判定まで約2週間かかります。
(参照:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬はどのようにして診断されるのですか?」)
いんきんたむしの治し方・病院の薬は?

いんきんたむしと診断された場合、治療の中心は抗真菌薬の塗り薬です。「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」でも、体部・股部白癬に抗真菌薬の外用療法を行うことが強く推奨されています。
代表的な成分には、ルリコナゾール、ラノコナゾール、テルビナフィン、ビホナゾール、ケトコナゾールなどがあります。1日1回の薬もあれば、使用回数が異なる薬もあります。皮膚の状態、範囲、かぶれやすさをみて使い分けます。
塗るときは、赤い部分だけに点々とつけるのではなく、発疹の周囲まで一回り広く塗ることが大切です。入浴後などに皮膚の水分を優しく拭き取り、処方された回数と期間を守りましょう。
いんきんたむしの薬は何日・何週間使う?
日本皮膚科学会の一般向け解説では、体部白癬・股部白癬は塗り薬を2週間程度は最低限使うとされています。一方、外用抗真菌薬の129試験・18,086人をまとめた系統的レビューでは、治療期間は1〜8週間と幅があり、多くは2〜4週間でした。
つまり、「全員が2週間で必ず完治する」という意味ではありません。
薬の種類、皮疹の広さ、ステロイド使用歴、基礎疾患などで治療期間は変わります。かゆみだけ先に消えても自己判断で中止せず、医師の指示や添付文書に従ってください。
(参照:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬の治療には何があるのですか?」 / El-Gohary M, et al. Topical antifungal treatments for tinea cruris and tinea corporis. Cochrane Database Syst Rev. 2014)
飲み薬が必要になることはある?
多くは塗り薬で治療できますが、広範囲に広がっている、何度も再発する、毛穴の奥まで炎症が及ぶ、塗り薬を十分に塗れない、通常の治療で改善しない場合などは、抗真菌薬の飲み薬を検討します。飲み合わせや肝機能への影響を確認する必要があるため、自己判断では使用できません。
(参照:皮膚真菌症診療ガイドライン2025)
いんきんたむしは市販薬で治せる?おすすめランキングは?

市販の水虫薬には、テルビナフィン、ブテナフィン、ラノコナゾール、ビホナゾールなどの抗真菌成分が含まれた製品があります。原因が白癬菌であり、使用部位や皮膚の状態が添付文書の範囲に合っていれば、効果が期待できます。
しかし、いんきんたむしの市販薬に、誰にでも当てはまる「おすすめ1位」はありません。 成分の強さだけでなく、そもそも白癬か、陰嚢や粘膜にかかっていないか、ジュクジュクしていないか、薬の基剤でかぶれないかを考える必要があるからです。
日本皮膚科学会は、市販薬には処方薬と同じ主成分の製品もある一方、かゆみ止めや局所麻酔成分などを配合した製品があり、処方薬よりかぶれる頻度が高いと説明しています。医療機関の抗真菌外用薬でも、かぶれは最大2%程度まで報告されています。
まず病院で確認したほうがよいケース
とくに、以下のケースは病院で確認した方がいいです。
- 初めてで本当にいんきんたむしか分からない場合
- 陰嚢・陰茎・外陰部など性器そのものに症状が強い場合
- ジュクジュクしたただれ、水疱、膿、強い痛みがある場合
- 広範囲に広がっている場合
- 何度も繰り返している場合
また、糖尿病や免疫機能に関わる病気がある方、妊娠・授乳中の方、市販薬を1〜2週間用法通り使っても改善しない方は、自己判断で薬を追加しないようにしましょう。薬を塗った範囲に沿って赤みやブツブツが広がった場合は、薬によるかぶれも考えます。
市販薬を使う場合も、陰部への使用可否を添付文書で確認し、薬剤師へ相談してください。粘膜への使用は避けます。塗って悪化した場合は中止し、皮膚科を受診しましょう。
(参照:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A Q30)
(参照:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「市販の水虫薬は病院でもらう薬とどこが違うのですか?」 / 同「水虫の塗り薬でかぶれることはありますか?」)
女性のいんきんたむしと、陰嚢(金玉)のかゆみ
女性でもいんきんたむしになる?
女性もいんきんたむしになります。先ほどの日本の調査では、股部白癬399例のうち女性は94例で、約24%を占めました。女性の場合も、太ももの付け根から輪状に広がる発疹は手がかりになります。
一方、外陰部の赤みやかゆみでは、カンジダ、ナプキンやおりものシートによる接触皮膚炎、蒸れによる間擦疹なども考えます。「女性のいんきんたむしの写真」と見比べるだけでは判断できません。外陰部や腟の症状が中心なら、皮膚科に加えて婦人科が適する場合もあります。
金玉(陰嚢)がかゆいと、いんきんたむし?
典型的ないんきんたむしは、太ももの付け根に広がり、陰嚢そのものは避けることが多いとされています。そのため、陰嚢だけがかゆい場合は、陰嚢湿疹や接触皮膚炎、カンジダ症なども考える必要があります。
もちろん、広範囲に進んだ場合や、ステロイドで見た目が変わった場合には陰嚢側へ及ぶこともあります。「陰嚢だから白癬ではない」と断定もできません。恥ずかしがらずに、皮膚科でご相談ください。
いんきんたむしをうつさない・繰り返さないための対策は?

薬だけでなく、白癬菌が増えにくい環境を作ることも大切です。今日から次の対策を行ってみてください。
- 1日1回を目安に、強くこすらず泡で優しく洗い、すすぎ残しを避けましょう。洗った後はタオルで押さえるように水分を取り、よく乾かしてください。蒸れた下着は交換してください。
- きつい下着やズボンを避け、通気性のよい服装を選びます。汗をかいたら早めに着替え、患部を拭いたタオルや衣類は家族と共有しないようにしてください。
- 足・爪の水虫も同時に治療することが大切です。股だけ治しても、自分の足や爪から再び菌が移ることがあります。家族の水虫も放置せず、足ふきマットやスリッパを清潔にして、感染源を減らしましょう。
必要以上に何度も洗ったり、消毒液を塗ったりすると、皮膚のバリアを傷めて逆効果になることがあります。「清潔にする」と「ゴシゴシ洗う」は別なんですね。
ぜひ、特にいんきんたむしを繰り返している方は、繰り返す生活習慣を行っている証拠だと思って、自分の普段の生活を見直しましょう。
いんきんたむしについてよくある質問
いんきんたむしは自然に治りますか?
見た目やかゆみが一時的に軽くなることはありますが、白癬菌が残って再び広がることがあります。白癬菌が確認されたら、抗真菌薬で治療することが基本です。
いんきんたむしは性病ですか?
一般には性感染症には分類されません。ただし、皮膚の接触や共用のタオルなどを介して、白癬菌が人から人へ移る可能性はあります。
お風呂で家族にうつりますか?
湯船のお湯そのものより、タオル、足ふきマット、衣類などを介した感染に注意します。タオルを共用せず、マットをこまめに洗って乾かし、本人や家族の足・爪の水虫も治療しましょう。
オロナインやワセリンで治りますか?
いずれも白癬菌を治療する抗真菌薬ではありません。ワセリンは摩擦を減らす目的で使うことはありますが、いんきんたむし自体を治す薬ではありません。
市販薬を塗る前に受診したほうがよいですか?
初めての症状なら、先に皮膚科で顕微鏡検査を受けることをおすすめします。抗真菌薬を先に塗ると、後から検査をした際に菌を見つけにくくなる場合があります。
いんきんたむしは何科へ行けばよいですか?
基本は皮膚科です。女性で腟内のおりものや痛みなどが中心の場合、男性で排尿時痛や陰茎からの分泌物がある場合は、婦人科・泌尿器科や性感染症を扱う医療機関がよいこともあります。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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