こんにちは、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介です。突然ですが、
- 健康診断の結果、尿酸値が高かった方
- 痛風発作を起こしたことがある方
- 尿酸値が高いと指摘された生活習慣病の方
という方はいませんか?今回は、高尿酸血症や痛風の原因や基準値、尿酸値を下げる食べ物に至るまで、わかりやすく解説していきます。
最後に解説動画もありますので、あわせてご参照ください。
Table of Contents
尿酸とは?
尿酸とは、私たちの体内で常に生成される物質である「プリン体」が肝臓で分解される過程で作られたもの。このプリン体は、私たちの体がエネルギーを作るために必要なものなので、尿酸はそのエネルギーの「燃えカス」のようなものとも言えますね。
プリン体は、私たちが食べる食事からも取り入れることができますが、その大部分、約70-80%は体内で自然に作られています。残りの20%前後は食事から摂取されるのです。
そして、肝臓でプリン体が分解されると尿酸になります。尿酸は一時的に体内に溜め込まれた後、尿や便として排泄されるので、健康な状態では問題になりません。
プリン体が「悪者」のイメージがあるかもしれませんが、実際には体を動かすのに必要な代謝物質で、一概に悪者とは言えません。さらに尿酸自体にも、さまざまな疾患を引き起こす酸化ストレスから体を守る作用もあることが分かっています。
しかし、血中の尿酸値が高すぎると、痛風をはじめ、様々な疾患を引き起こすリスクが出てくるため、治療する必要が出てきます。
尿酸値が高い原因は?
尿酸値が高くなる原因を一言でいうと「体内で尿酸が作られすぎたり、不要となった尿酸がうまく体の外に排泄されなくなったりするから」です。
高尿酸血症の原因は、遺伝的な要素もあるかもしれませんが、主に生活習慣によるもの。プリン体は体内で合成されますが、肥満や無酸素運動によって合成量は上がります。さらに肥満の方は尿酸の排泄機能が低下します。
さらにアルコール、果糖の過剰摂取・偏った食生活もプリン体の合成を高め、尿自体を酸性に傾かせやすく、尿酸の排泄を遅らせます。
もちろん、肉類や魚介類などの高プリン食自体にもプリン体は含まれているので、尿酸値が高くなる原因になります。
血液中の尿酸値が7.0 mg/dlを超えると「高尿酸血症」と呼ばれ、さらに産生過剰型と排泄低下型の2つのタイプに分けられます。産生過剰型は、食べ物からの尿酸の生成が多い状態で、排泄低下型は、尿酸の排泄がうまくいかない状態です。どちらのタイプでも、食生活の見直しや適切な生活習慣の管理が重要です。
(参照:e-ヘルスネット「高尿酸血症」)
高尿酸血症になると何が問題?
では、こうした高尿酸血症は何が問題になるのでしょう。大きく分けると以下の2つのポイントが問題になります。
① 高尿酸血症は痛風や腎臓病のもと
血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた「高尿酸血症」が長く続くと、体内の尿酸が結晶化し、いろいろな問題を引き起こします。例えば以下の通りです。
- 痛風: 関節に尿酸が溜まると、痛風という病気になります。関節が赤く腫れて非常に痛みます。
- 痛風腎: 腎臓に尿酸が溜まると、痛風腎という病気になります。腎臓の機能が低下し、最悪の場合、透析が必要になることもあります。
- 尿管結石: 尿の中で尿酸が結晶化すると、尿管結石になります。非常に痛い状態で、尿が酸性に傾くと特に注意が必要です。
- 痛風結節: 皮膚に尿酸が沈着すると、痛風結節というコブのようなものができます。特に肘や手の甲、耳たぶなど体温の低い場所にできることが多いです。
このように、結晶化された尿酸が沈着することで、さまざまな合併症が出てくるのです。
② 高尿酸血症は、生活習慣病や慢性腎臓病と合併しやすい
高尿酸血症は他の病気とも関連しています。最近の研究では以下の病気と非常に関連が深いことがわかってきました。
- 生活習慣病: 高尿酸血症は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と関連しています。これらの病気は、食生活や運動不足などの生活習慣が原因で起こります。
- 動脈硬化: 尿酸が過剰に生産されたり、うまく排泄されなかったりすると、動脈硬化を進行させることがあります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすリスクを高めます。
なぜ、尿酸が動脈硬化と関連するのか。これも尿酸の結晶化にあります。尿酸が過剰に蓄積すると、結晶化して体内の異物として認識されることがあります。これにより、特に血管に炎症反応が引き起こされることがあるのです。
炎症は動脈壁にダメージを与え、動脈硬化の進行を促進します。そして、血管壁が硬くなり様々な病気とつながるというわけですね。
また、尿酸が高い食事をしているということは、その他の生活習慣病になりやすい生活をしている1つのバロメーターになります。その意味で「尿酸値が高い」と言われた方は普段の生活を見直してみるきっかけにするとよいでしょう。
(参照: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版)
高尿酸血症の治療を開始する「基準値」は?
では、どれくらいの尿酸の基準値から治療を検討すべきでしょうか。高尿酸血症・痛風のガイドラインでは下記が提唱されています。
- 痛風発作を起こしたことがある、痛風結節のある方: 痛風発作とは、突然の激しい痛みが起きることで、痛風結節とは関節にできるしこりのこと。
- 尿酸値が8.0mg/dl以上で腎臓病、尿路結石など合併症のある方: 腎臓病や尿路結石は、尿酸値が高いことで起こることがある病気です。
- 尿酸値が9.0mg/dl以上の方: この数値を超えると痛風の発症率が急に上がるため、痛風発作に関わらず治療開始になることが多いです。
自分の健康診断で尿酸値が基準値よりも高い場合、すぐに医者に相談することが大切です。高尿酸血症と痛風治療の目標は、尿酸値を6.0mg/dl以下にすることです。これは、痛風発作が起きた後の治療とは別の話で、尿酸値を下げることで、再発を防ぐためです。
逆に痛風発作が起きている間は、尿酸を下げるお薬は使わない方がいいです。なぜなら、そのお薬を使うと、状態が悪化することがあるからです。詳しくは、痛風を早く治すには?痛風の原因や治療・食事についてを参照してください。
(参照:Campion EW et al: Am J Med 82(3): 421-426, 1987)
(参照: 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版)
尿酸値を下げる生活上のポイントは?
尿酸を下げるのは「薬物治療」と「生活上のアドバイス」の2本立てです。どちらも大切であり、きちんと生活習慣がコントロールされれば、自然と薬を使わないでもよくなる場合もあります。
では、尿酸値を下げるにはどのようなポイントが重要なのでしょうか。一緒にみていきましょう
(尿酸値を下げる薬については【医師が解説】尿酸値を下げる薬の効果や内服期間・副反応についてを参照してください)
① 食事の量をおさえて、体重をおとす
数ある尿酸値対策の中で一番大切なのが「減量」です。
実際、尿酸と脂肪には深い関連があります。
例えば、脂肪組織は尿酸を作る働きがあることもわかっています。脂肪細胞にはキサンチン酸化還元酵素という特別な酵素があり、尿酸の生成に関わっているといわれていますね。
尿酸が過剰な脂肪をためこみやすいように誘導するという研究があります。細胞内の尿酸はアデノシン一リン酸プロテインキナーゼ という酵素の働きを抑えることで、尿酸が過剰を脂肪を蓄積しやすくするといわれているのです。
また、別の研究で尿酸値が高い人の内臓脂肪、肝臓脂肪は通常の人よりも明らかに多かったことも報告されています。
尿酸と脂肪。頭の中でつながらない方も多いでしょうが、実は非常に深い関係を持っているのです。
実際、中国の研究によると、「他の危険因子に関わらず、1kg体重が減るごとに尿酸値低下を達成する確率が11%増加する」といわれているほどですね。
また、減量しようと思ったら、自然と野菜中心にしたり過剰な糖質を減らす生活になっていきます。食事面からも尿酸を作らせない生活に自然となっていくでしょう。
尿酸値を下げたいと思ったらまずは減量にチャレンジしてほしいと思います。
② プリン体の摂りすぎに注意する
色々なものを少しずつ食べるのが原則ですが、プリン体が多く含むものを多量に食べると、尿酸値は上がります。魚卵や内臓などの多い食事は「たまに」「少し」楽しむように食べるとよいでしょう。
【プリン体の多い食事の例】
食品名と1人前の分量 | プリン体(㎎) |
鶏レバー 80㌘ | 249.8 |
マイワシ干物 2尾 | 244.5 |
豚レバー 80㌘ | 227.8 |
大正エビ 2尾 | 136.6 |
カツオ 刺身5切 | 169.1 |
ビール 500㎖ | 50 |
またプリン体は水に溶ける性質があるので、プリン体を多く含む食材を使ったスープの飲み過ぎにも気をつけましょう。
ただし、前述の通りプリン体を食事から摂取するのは全体の2割程度。まずは体から産生される
③ アルカリ性食品を積極性にとり、ビタミンCを活用する
尿酸値が高いと、尿が酸性になります。すると尿酸が溶けにくくなり、尿管結成の原因にも。野菜や海藻などのアルカリ性食品を積極的にとり水分を十分にとると、尿管結石ができにくくなります。
<尿をアルカリにする食品>
- 藻類: ひじき・わかめ・こんぶ
- キノコ類: 干ししいたけ
- 豆類: 大豆
- 野菜類: ほうれんそう・ゴボウ・にんじん・キャベツ・大根
- イモ類: サツマイモ・里いも・じゃがいも
<尿を酸性にする食品>
- 卵・肉類・魚介類・白米など
ビタミンC自体も尿酸値を下げるのにとても有用です。例えば論文によると1日あたり200~2,000 mg (中央値500 mg/日)摂取することで血中の尿酸値が減少したという報告もありますね。
尿酸が高い方はビタミンCを意識しながら、野菜を中心にした食生活を心がけてみましょう。
④ アルコールを減らし、牛乳やコーヒーを飲む
「尿酸=プリン体=ビール」と考える方も多いですが、ビールに限らずアルコールそのものが尿酸値を上げる原因になります。尿酸値の高い方はなるべくお酒を控えましょう。
2023年の日本の研究によると、お酒の種類も影響を与える可能性があるとしています。特に本論文では「ビール」や「ワイン」は尿酸値を上げやすいとされていますね。
一方、尿酸値や痛風発作を抑えるのに有用な飲み物としてコーヒーや牛乳があげられます。
2016年に発表された複数の論文をもとにした解析によると、コーヒーの消費量が多いと、痛風の発生率が43%に減少することがわかっていますし、2004年の論文によると、「最も乳製品を摂取しているグループは摂取していないグループよりも34%高尿酸血症になりにくい」ということがわかっています。
詳しくは
を参照してください。
⑤ 水分を十分に十分にとる
尿酸は尿から排泄されるため、水. 分が多くなるほど尿酸がでやすくなります。心臓や腎臓が悪く水分制限をされている場合を除き、1日2Lを目安に積極的に水分を取りましょう。(食べ物に含まれている水分を除く)
その際、果糖を多く含む甘いソフトドリンクは肥満や痛風のリスクも上がるのでなるべく飲まないほうがよいでしょう。
⑤ 激しい運動ではなく、適度な有酸素運動をする
肥満の解消のために、激しい運動をすると、かえってエネルギーの燃えカスである尿酸が増えて痛風発作の原因になります。
ウォーキングのような軽い有酸素運動を継続して行うのがおすすめです。他の生活習慣病を予防する意味でも、最低1日週3回、30分以上の散歩をすることからはじめてみてください。
普段の生活に軽い運動を取り入れるくらいでも効果があがりますよ。
⑥ ストレスを上手に発散する
痛風になるタイプの人は精力的で行動的な人が多いとされています。
暴飲暴食や激しいスポーツは身体へのストレスになり尿酸値を上げる結果にもなります。十分な睡眠や適度な運動など、身体に優しい自分なりのストレス発散法を見つけるとよいでしょう。
痛風発作になったら?
痛風発作が起きたら、激痛を抑えるために速やかに関節の炎症を抑える治療を行いますので、当院にご来院ください。診断・治療プランについてもくわしく説明させていただきます。
その間、患部を心臓より高くして冷やしてください。
温めたりもんだりすると逆効果です。無理に歩き回らないようお願いします。詳しくは痛風を早く治すには?痛風の原因や治療・食事についてを参照してください。
尿酸値を下げる方法、解説動画
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【この記事を書いた人】
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