日本人には最もなじみの深い飲み物といって過言でないのが「緑茶」。夏や冷たくして熱中症予防に、冬は温かくして心も温めて。まさに「お茶の間」で大活躍しますよね。
実は、緑茶は数多くある飲み物の中でも、特に多くの健康効果が検証されている飲み物の1つでもあります。ダイエットや血圧だけでなく、認知症、抗がん作用、感染予防効果、果ては二日酔いに対する効果に至るまで幅広く検証されています。
もちろん、それぞれに対する緑茶の効果はさまざまで「万能薬」ではありません。しかし、多くの点で緑茶は有用な健康効果が認められており、正しく意識して活用すれば、きっと健康面であなたの生活を支えてくれることでしょう。
今回は、そんな緑茶の健康効果や飲みすぎなどによる緑茶のデメリットについて解説していきます。
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緑茶とは?
緑茶は、その名前の通り「緑色のお茶」のことですが、正確には「発酵していないお茶(不発酵茶)」を指します。この発酵とは、一般的にいう「微生物の働きによって生じる反応」を指すわけではありません。お茶の世界では、「酸化酵素の働きによって茶葉が酸化すること」を指します。
緑茶ではこの酸化を防ぐ工程が、緑茶の健康効果に重要な役割を果たすと考えられています。十分酸化していないからこそ、茶葉の中に含まれる有益な成分が保たれ、それが緑茶の健康効果に直結するといわれているのですね。
緑茶の中でもよく健康面で検証されている成分として、
- 抗酸化作用を持つ「カテキン」
- リラクゼーション効果をもたらすアミノ酸の一種である「L-テアニン」
- 覚醒効果をもつ「カフェイン」
の3つがあげられます。
カテキンは、体内の活性酸素を除去する抗酸化物質、ポリフェノールの1種の1つ。実際はカテキンといっても総称で、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの4種類が含まれます。最も多いのがエピガロカテキンガレート(EGCG)であり、多くの医学論文もこのカテキンに着目して健康効果を実証していることが多いですね。
L-テアニンは、脳内でセロトニンやドーパミンといった幸福感を感じさせる神経伝達物質の生成を助け、リラクゼーション効果をもたらす物質です。
そして、みなさんおなじみのカフェイン。中枢神経を刺激し、集中力を高め、疲労感を軽減します。しかし、過剰摂取は睡眠障害や心拍数の増加などの副作用を引き起こす可能性があるので、頼りすぎは要注意です。
このようにさまざまな身体への影響が考えられる緑茶ですが、具体的にどんな効果があるのでしょうか。医学論文と一緒にみていきましょう。
緑茶の効果①:ダイエット
「緑茶はダイエットにいい」と言われていますが、本当でしょうか。
緑茶抽出カプセルや緑茶飲料などの形で緑茶とダイエット効果を検証した15個の論文を分析した論文では「ダイエットに対してはマイルドであるが効果がある」としています。
本論文では8~24週間(中央値:12週間)、合計1,243例の方が緑茶を摂取して試験を行いました。(カテキンの中央値:588mg/日)
一部は緑茶と合わせてカフェインも投与されています(カフェイン摂取量の中央値:474mg)。対象年齢は多くは60歳未満の成人ですが、一部肥満の子供も含まれていますね。
試験の結果としては以下の通りとなりました。
- カテキン摂取のみで-0.44㎏減量した。
- カフェインを足すと-1.38kg減量し、ウエストも約2㎝減らすことができた。
実はカテキンとカフェインはダイエットに対しては相性がよく、別の研究でカフェイン単独と比較してエネルギー消費量が 4% 増加することもわかっています。
なぜカテキンがダイエットによいのか。現時点では便中の脂質排泄をうながしたり、血糖値を下げるインスリンの効きをよくしたり、コレステロールの減少を介して肥満作用に働くのではないかと考えられています。
しかし、3か月で-0.5㎏くらいのダイエット効果なので「緑茶だけでやせる」ということはなかなか難しいです。他のダイエット方法と組み合わせていきたいところですね。例えば下記も参照してください。
緑茶の効果②: 血圧
緑茶は血圧や循環器についても有用な効果がいくつかの複数の論文を検証した「メタ分析」でも示されています。
例えば、質の高い5件の試験を検証した408人を対象とした論文では、定期的なお茶の摂取により、収縮期血圧が-3.53mmHg、拡張期血圧が-0.99mmHg低くなったといわれています。
特にお茶の摂取期間が長いほど(3か月以上)血圧によい効果をもたらし、紅茶よりも緑茶の方が降圧効果が強く作用したとされていますね。
別の2014年に行われた13件のランダム化比較試験でも似たような結果となっています。本分析では1,367人が対象とされており、緑茶の摂取により収縮期血圧が-1.98mmHg、拡張期血圧が-1.92mmHg低下したとしていますね。
本試験では、カフェインの交絡因子は除外されているので、純粋に緑茶のポリフェノールだけの効果として血圧低下作用が認められています。
緑茶ポリフェノールは動物実験から、アンジオテンシンIIをはじめとした血管収縮物質を調節したり、血管の内皮機能を強化することで、血圧が下がることがいわれています。
「緑茶の定期摂取が血圧にもある程度よい効果が得られる」とはいえそうですね。
もちろん、一番多い「本態性高血圧」はさまざまな生活習慣が重なって起こっている場合も多くあります。ご自身の生活習慣を見直しながら、その間は薬の補助を使って、上手に血圧をコントロールしましょう。詳しくは下記も参照してください。
血圧が高いとどうなる?高血圧の原因・治療や対処法について【食べ物の塩分量も】
(参照:Effect of green tea consumption on blood pressure: A meta-analysis of 13 randomized controlled trials)
(参照:The effects of regular consumption of green or black tea beverage on blood pressure in those with elevated blood pressure or hypertension: A systematic review and meta-analysis)
緑茶の効果③: 感染予防効果
実は、よく緑茶の効果として検証されているものとして「感染予防効果」があります。
いくつかの疫学研究では、緑茶を定期的に摂取するとインフルエンザ感染率と一部の風邪の症状が軽減され、茶カテキンによるうがいがインフルエンザ感染の発症を防ぐ可能性があることが示唆されています。
例えば、静岡県に行われた6~13歳の2,050人を対象にした試験では、緑茶を3~5カップ(1カップ200ml)を飲んでいたグループは飲んでいないグループと比較すると46%もインフルエンザに感染するリスクが減ったと言われています。
毎日1-3カップでも、飲んでいないグループと比較すると38%減少したといわれてますので、感染予防効果はそれなりに強いものにみえますね。
関連して、茶カテキンを活用したうがいの有効性もいわれています。
子供の2-6歳での19595人を対象とした試験でも緑茶うがいの有用性はわかっていますが、高齢者でも実証されています。
例えば、特別養護老人ホームの入居者124名(平均年齢83歳)を対象に、緑茶うがいの効果を調査したところ、緑茶でうがいをするグループは水でうがいをするグループよりもインフルエンザ感染率が有意に低いという結果が得られています。(うがいを1日3回、3か月間実施)
実際の報告では「インフルエンザ感染の発生率は、カテキン群 (1.3%、居住者 1 人) の方が対照群 (10%、居住者 5 人) よりも有意に低かった」としていますね。
京都府立大学の研究によると、「カテキン類が(変異型で検証されていないものの)新型コロナのスパイクタンパクに結合し、唾液中に加えたウイルスに対しても迅速かつ効果的な不活化が認められた」としています。
このように、さまざまな観点からカテキン類の感染予防効果は言われているので、普段感染症にかかりたくないという方は緑茶を活用してみてもよいかもしれませんね。
(参照:Effect of Tea Catechins on Influenza Infection and the Common Cold with a Focus on Epidemiological/Clinical Studies)
(参照:Gargling with tea catechin extracts for the prevention of influenza infection in elderly nursing home residents: a prospective clinical study)
(参照:【論文掲載】茶カテキン類による新型コロナウイルス不活化効果を試験管内の実験で確認(京都府立医科大学と伊藤園の共同研究)
緑茶の効果④: 二日酔い対策になる可能性
夏や忘年会などで飲み会になると、よくなりやすいのが「二日酔い」ですよね。
二日酔いは、アルコールが分解されてできた「アセトアルデヒド」という物質が、肝臓で十分に処理されないことで起こります。そのため、アセトアルデヒドをいかに早く分解しやすくなるかが大切です。
緑茶は以下のメカニズムを介して、二日酔い対策になりうることが言われています。
- 抗酸化作用: お茶に含まれるカテキンという抗酸化物質は、アルコール摂取によって体内で生成される反応性酸素種(ROS)を中和する可能性が示唆されています。そのため、アルコールによる肝臓へのダメージを軽減することが期待されます。
- 解毒作用: また、お茶に含まれる成分は肝臓のアルコール脱水素酵素 (ADH)というアルコールの代謝に関わる因子を活性化し、体内からのアルコールの排出を助けることが示唆されています。
- 抗炎症作用: お茶に含まれる抗炎症成分は、アルコール摂取によって引き起こされる炎症反応を抑制することができます。これにより、二日酔いによる不快な症状を軽減することができます。
ただし、「緑茶を飲むからアルコールを飲んでも大丈夫」とはいえません。あくまで適量のアルコール摂取と適切な水分補給を心掛けることが、二日酔い対策には最も重要です。
もし二日酔いになりそう…と思ったときに緑茶を飲んでおくと、多少症状を和らげてくれるかもしれませんね。
(参照:Effects of Beverages on Alcohol Metabolism: Potential Health Benefits and Harmful Impacts)
(参照:Influence of food commodities on hangover based on alcohol dehydrogenase and aldehyde dehydrogenase activities)
緑茶の効果⑤: 全死亡のリスク減少
以上のように、さまざまな理由で健康効果が確かめられている緑茶ですが、日本の多く施設共同研究では、緑茶を習慣的に摂取するグループでに「男女の全死亡リスクが減る」ことが言われています。
1日3~4杯の緑茶摂取で「男性12%、女性13%の全死亡リスクの減少」とされていますね。
死因別に見てみると、特に男性では「脳血管疾患と呼吸器疾患」女性では「心疾患と外因死」の低下と緑茶摂取の量との関連性が認められています。
緑茶摂取による死亡リスクの低下として、本研究では
- 緑茶に含まれるカテキンには血圧や体脂肪、脂質を調節し、血糖値改善効果があること
- 緑茶に含まれるカフェインが血管内皮の修復を促し、血管を健康に保つため
- カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないか
という3つを理由にあげていますね。
(参照:国立がん研究センター「緑茶摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について」)
緑茶の肌やガンに対する効果は?
そのほかにも緑茶のもつ抗酸化作用の効果から「緑茶は肌にいい」「緑茶はガンに効く」などがいわれることもありますが、これらは十分に科学的な裏付けがとられているわけではありません。
例えば、緑茶の抗ガン作用については、動物実験ではチロシンキナーゼ阻害などのがんの増殖を抑制する可能性が多数みつかっているものの、今のところヒトでの実験では明らかな証拠はみつかっていません。
あえて言うならば、複数の論文を解析したメタ分析では、「リンパ系新生物(緑茶)、神経膠腫(お茶の合計、1 カップあたり)、膀胱がん(お茶の合計、1 カップあたり)、および胃癌、食道がんについて弱い関連性がある」としていますが、「緑茶はガンに効く」とはなかなか言えないところです。
緑茶を含むスキンケアについては、中国で探索的研究がされていますが、使用している化粧品が緑茶の単一成分のものではなく、「どの成分が効果がある」とは言えません。
これらについては、まだ検証の余地があるといえますね。今後の研究に期待です。
(参照:Green tea (Camellia sinensis) for the prevention of cancer.Cochrane Database Syst Rev. 2020; 2020(3): CD005004.)
(参照:A Green Tea Containing Skincare System Improves Skin Health and Beauty in Adults: An Exploratory Controlled Clinical Study)
緑茶のデメリットは?
ここまで見ると「最強の飲み物」みたいに見える緑茶。実際緑茶にデメリットなどあるのでしょうか。例えば、以下の点には気を付けた方がよいかもしれません。
① 肝毒性が生じる可能性
非常にまれですが、緑茶と肝毒性の報告があります(19件)。7件は緑茶のみの製剤ですが、残り12件は他の製剤も一緒に組み合わせによる肝毒性でした。
緑茶だけのケースでは肝毒性は平均64.6日で回復しましたが、他製剤との組み合わせによる肝損傷では肝移植を必要とした例も4例あったとのことです。
緑茶を含むどんな健康食品もサプリメントも一定以上を過ぎれば肝臓に対してダメージを与える可能性があります。同論文では「場合によっては医療専門家の監督の下でハーブや栄養補助食品を使用するよう奨励されるべきです」としていますね。
健康食品に限った話ではありませんが、定期的に肝臓や腎臓などを採血などでチェックし、過剰投与になっていないか意識する必要があるでしょう。
(参照:Hepatotoxicity of green tea: an update)
② カフェインの摂りすぎ
紅茶にせよ緑茶にせよ、「カテキンだけ」ということはなかなかなく結構「カフェインとセット」になることが多いです。そして水がわりにお茶をたくさんとっていたり、コーヒーと組み合わせて取っていると、カフェイン量の上限量を超えてしまうことがあります。
米国食品医薬品局(FDA)の基準では「カフェインの上限量は400mgくらい」とされており、欧州食品安全機関(EFSA)では「妊婦及び授乳婦については、習慣的なカフェイン摂取に関し、1日当たり200 mgまでであれば、胎児や乳児の健康リスクは増加しない」としています。
つまり、1日200~400mgが1つの基準なわけですが、一般的な緑茶やコーヒーのカフェイン量は次の通りです。
- 玉露(浸出液): 100mlあたり160mg
- 緑茶(浸出液): 100mlあたり20mg
- コーヒー(浸出液):100mlあたり60mg
例えば、「お水がわりにお茶」を飲むとすると、2Lで400mg摂取することになります。コーヒーなどを組み合わせると上限量を超えてしまうことがわかるでしょう。ましてや玉露の場合は300mlだけで上限量を超えてしまいます。
特に午後2時以降はカフェインが就寝時に残りやすく、睡眠にも影響を及ぼす可能性が高くなります。カフェインにも注意しながら、上手にお茶の摂取をお願いします。
(参照:農林水産省「カフェインの過剰摂取について」)
(参照:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」)
③ 鉄分の吸収を妨げる可能性
お茶やコーヒーなどは「タンニン」という成分が入っており、これが鉄分の吸収を妨げるとされています。なので、もともと貧血が強い方は食事中は非常に濃いお茶を控えた方が無難です。
特に鉄剤を内服する際は、念のため1~2時間程度、お茶との摂取時間はずらすようにするとよいですね。鉄剤自体もお茶ではなく水で内服するようにしましょう。
(基本、どんな内服薬もお茶ではなく水でのみましょう)
緑茶の健康効果とデメリットについてのまとめ
今回は緑茶の健康効果とデメリットについて詳しく解説していきました。まとめると
- 緑茶にはカテキンやカフェイン、Lーテアニンなどの成分により多くの面での健康効果が研究されている。
- その中では、ダイエット効果、血圧に対する効果、感染予防に関する効果、二日酔いに対する効果、全死亡リスクの低下についてはそれなりにデータが集まってきている。
- 一方、抗がん効果や肌への効果については一定とした見解は得られていない。
- 過剰な摂取やサプリメントの組み合わせによっては、肝毒性の影響やカフェインの摂りすぎなどの可能性も考えられるため、適量での摂取が必要。
といえます。上手に緑茶の健康効果を引き出して、ぜひあなたの普段の健康にお役立てください。当院でも生活習慣の見直しから、一人ひとりに合わせたアドバイスを心がけております。気になることがありましたら、ぜひご相談ください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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