突然ですが、
- 「右足だけ靴下の跡が深い」
- 「左のふくらはぎだけ太くなった気がする」
と感じたことはありませんか?
左右差のあるむくみに気づくと、何が起きたのか不安になりますよね。
実際、片足だけむくみが出る疾患は多種多様です。
慢性静脈不全やリンパ浮腫など、数週間から数か月かけて徐々に現れる病気もありますし、深部静脈血栓症のように早めの診断が必要な病気もあります。
では、どうやったら「危ない片足のむくみ」を見分けることができるでしょうか?
今回は、片足だけむくむ原因、右・左や痛みの有無による違い、受診すべき診療科、病院で行う検査まで、わかりやすく解説します。
片足だけむくむ場合、どんな原因が考えられる?

そもそもむくみとは、「皮膚の下に余分な水分がたまった状態」です。
そして、大きくわけて「全身が原因の場合」と「局所が原因の場合」に分かれます。
そして、心不全、腎臓病、肝臓病、薬剤など全身に影響する原因では両足がむくむことが多いです。一方、片足だけの場合は、その脚の静脈、リンパ管、皮膚、関節などに原因があることが多くなりますね。
ただし、片足か両足かだけで病気を断定することはできません。もともとの左右差があると、全身性の病気でも片足が目立つ場合があります。
では、片足だけがむくむ主な原因をみていきましょう。
① 深部静脈血栓症(DVT)
深部静脈血栓症は、脚の深いところを走る静脈に血のかたまりである血栓ができる病気です。
血液が心臓に戻りにくくなり、片足のむくみ、ふくらはぎの痛みや圧痛、熱感、赤色や紫色への変化などが現れます。
注意したいのは、すべての症状がそろうとは限らないことです。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、深部静脈血栓症の約半数には症状がないとしています。
したがって、「痛くないから血栓ではない」「赤くないから大丈夫」とは判断できません。
特に、手術、入院、骨折やギプス、長期間の安静、がん、妊娠・産後、女性ホルモンを含む薬の使用、過去の血栓症などがある方は注意が必要です。
WHOの調査では、飛行機・車・バス・電車などで4時間以上移動すると、静脈血栓塞栓症のリスクはおよそ2倍になりました。ただし、絶対的な発症頻度は平均して約6,000回の移動に1回とされ、移動時間だけで発症が決まるわけではありません。
② 慢性静脈不全・下肢静脈瘤・血栓後症候群
脚の静脈には、重力に逆らって血液を心臓へ戻す弁があります。この弁がうまく閉じなくなると、血液が脚にたまり、むくみ、だるさ、こむら返り、皮膚の色素沈着、かゆみなどが現れます。
下肢静脈瘤が見えることもありますね。
朝は軽く、立ち仕事や座り仕事の後に悪化し、脚を上げると楽になるのが典型です。
深部静脈血栓症の後には血管や弁が傷つき、血栓後症候群として慢性的なむくみが残る場合があります。
CDCによると、深部静脈血栓症を発症した方の約3分の1から2分の1に、長期的な血栓後症候群が起こります。
③ リンパ浮腫
リンパ浮腫は、組織にたまった水分やたんぱく質を回収するリンパの流れが滞る病気です。
がんの手術でリンパ節を切除した後、放射線治療後、感染後などに起こる続発性リンパ浮腫と、リンパ管の発達に関係する原発性リンパ浮腫があります。
初期には押すとへこむ柔らかいむくみでも、進行すると皮膚や皮下組織が硬くなります。
足の甲や足趾まで腫れやすいのも特徴です。足の第2趾の付け根の皮膚をつまみにくい「Stemmer徴候」が特徴といわれてます。
しかし110人を対象にした研究では感度92%、特異度57%でした。陽性ならリンパ浮腫を疑う材料になりますが、陰性でも否定できませんので、注意してください。
④ 蜂窩織炎
蜂窩織炎は、皮膚の傷などから細菌が入り、皮膚とその下に炎症を起こす病気です。
片足の赤み、熱感、腫れ、痛みが急に広がり、発熱や悪寒を伴うことがあります。
深部静脈血栓症と症状が似ているため、見た目だけで区別できないことがあります。赤い範囲が広がる、強く痛む、発熱がある場合は、当日中に受診するようにしましょう。入院するくらい重症になっているケースも経験します。
⑤ ケガ・関節炎・ベーカー嚢腫
打撲、捻挫、骨折、筋肉の損傷、痛風などでも、炎症がある側だけが腫れます。膝の裏に関節液がたまるベーカー嚢腫が破れると、ふくらはぎまで急に腫れて痛み、深部静脈血栓症によく似た状態になることもあります。
ケガの心当たりがあっても、手術後や安静期間が長い場合には血栓を併発する可能性があります。「捻挫だと思う」と決めつけず、腫れが強い、体重をかけられない、息苦しさがある場合は医療機関に相談しましょう。
⑥ 骨盤内や腹部での静脈・リンパ管の圧迫
骨盤内の静脈が周囲の動脈や腫瘤に圧迫されると、血液が戻りにくくなり、片足だけがむくむことがあります。左総腸骨静脈が右総腸骨動脈などに圧迫されるMay-Thurner症候群は、その代表です。
原因不明の片足のむくみが続く、脚全体が腫れる、体重減少や腹部症状を伴う場合は、脚だけでなく骨盤や腹部まで画像検査が必要になることがあります。
(参照:Diagnostic approach to lower limb edema)
片足のむくみは右だけ・左だけで原因が違う?

結論からいうと、右か左かだけで危険度を判断することはできません。
深部静脈血栓症、蜂窩織炎、ケガ、慢性静脈不全、リンパ浮腫はいずれの脚にも起こります。
ただし、解剖学的には左側に特徴があります。
左の骨盤内では静脈が圧迫されやすく、これをMay-Thurner症候群といいます。
左総腸骨静脈が右総腸骨動脈と背骨の間にはさまれるように圧迫され、左足から心臓へ血液が戻りにくくなるのが特徴です。
そのため、左足ではむくみや深部静脈血栓症が起こりやすくなるんですね。
また、妊娠中の深部静脈血栓症を集めた研究では、左右が判明していた96例のうち84例、88%が左脚でした。
これは「左だけが危険」「右なら安心」という意味ではありません。片足のむくみでは左右よりも、発症の速さ、痛み・赤み・熱感、手術や安静などの背景、息苦しさの有無を優先して考えます。
(参照:Iliac vein compression syndrome: Clinical, imaging and pathologic findings、Anatomic distribution of deep vein thrombosis in pregnancy)
片足のむくみが痛い場合・痛くない場合の違いは?

片足のむくみで痛みがある場合
急な痛みを伴うときは、深部静脈血栓症、蜂窩織炎、ケガ、関節炎、ベーカー嚢腫の破裂などを考えます。特に、ふくらはぎを中心に片足が急に腫れ、熱感や色の変化がある場合は、当日中に医療機関へ相談してください。
一方、痛風では足の親指の付け根や足首など、関節を中心に激痛と赤みが出やすく、蜂窩織炎では皮膚の赤みが面として広がりやすい傾向があります。ただし、症状だけで安全に見分けられないことがあります。
片足のむくみで痛くない場合
痛みのない片足のむくみでは、慢性静脈不全、リンパ浮腫、薬剤や全身性の病気に左右差が加わった状態などを考えます。しかし、痛くないから深部静脈血栓症を除外できるわけではありません。
「今朝から急に腫れた」「手術や長期安静の後」「以前より靴下の跡が片方だけ深い」といった変化があれば、痛みがなくても早めに相談してください。反対に、数か月続き、夕方だけ悪化して朝に軽くなり、赤み・熱感・呼吸器症状がない場合は、緊急性は比較的低いことが多いものの、一度は外来で原因を確認すると安心です。
高齢者や妊婦の片足のむくみで注意すること

高齢者の場合
年齢とともに静脈の弁やふくらはぎの筋力が低下し、慢性静脈不全によるむくみが起こりやすくなります。心臓、腎臓、肝臓の病気や薬剤の影響も重なりやすいため、原因が1つとも限りませんね。
また、高齢者では入院、手術、骨折、活動量の低下、がんなど、深部静脈血栓症の危険因子が増えますので、若年者と比べても重症となる疾患が隠れている可能性は高くなりやすいといえるでしょう。
CDCは、医療に関連して起こる静脈血栓塞栓症の3分の1超が、入院後に発生していると報告しています。退院後に片足が急にむくんだ場合も、単なる運動不足と思い込まないでください。
妊婦・産後の場合
妊娠中は子宮が静脈を圧迫しやすく、血液が固まりやすい状態にもなるため、両足がむくむことは珍しくありません。しかし、片足だけが急に腫れる、痛む、赤くなる場合は、深部静脈血栓症を考えます。
いずれにせよ足がむくんできた場合は、産婦人科に一度相談いただいた方が無難ですね。
CDCによると、妊娠中、出産時、産後3か月までの静脈血栓塞栓症リスクは、妊娠していない女性の約5倍です。片足の症状に息苦しさや胸の痛みが加わった場合は、救急要請を検討してください。
(参照:Pregnancy-associated thrombosis)
片足のむくみですぐ受診すべき症状は?

片足のむくみを見たときは、腫れの大きさよりも、次の3点を確認しましょう。
- 急に出た症状か
- 手術、入院、安静、がん、妊娠・産後、過去の血栓などの背景があるか
- 息苦しさ、胸の痛み、血痰、めまい・失神があるか
です。
すぐに119番を検討する症状
- 突然の息苦しさ
- 息を吸うと強くなる胸の痛み
- 血痰
- 冷や汗、強い動悸、失神または失神しそうなめまい
脚の血栓が肺へ流れると、肺血栓塞栓症を起こすことがあります。むくみが軽くても、これらの症状があれば緊急です。自分で車を運転しないでください。
当日中の受診を考える症状
- 片足が数時間から数日で急に腫れた
- 片足の痛み、熱感、赤色・紫色への変化がある
- 手術、入院、骨折、ギプス、長期安静、長時間移動の後に腫れた
- がん治療中、妊娠中・産後、過去に血栓症がある
- 発熱や悪寒を伴い、皮膚の赤みが広がる
近日中に外来で相談したい症状
- 片足だけのむくみが数週間以上続く
- 夕方に悪化し、皮膚の色や硬さが変わってきた
- 足の甲や足趾まで腫れる
- 原因がわからず、徐々に悪化している
症状だけでは深部静脈血栓症を確実に除外できません。自己チェックで様子を見る期間を決めるより、発症時期と危険因子を医療機関へ伝えることが大切です。
(参照:JCS/JPCPHS 2025 Guideline on Pulmonary Hypertension and Pulmonary Embolism/Deep Vein Thrombosis)
片足だけむくむときは何科を受診する?

受診先は、緊急度と一緒に考えます。
- 息苦しさ、胸の痛み、失神ある場合:119番または救急科
- 急な片足のむくみで血栓が心配な時:内科、循環器内科、血管外科、救急科
- 赤み、熱感、発熱が目立つ時:内科、皮膚科、救急科
- 明らかなケガや関節痛がある場合:整形外科
- 数週間以上続くむくみや下肢静脈瘤がある場合:血管外科、循環器内科、一般内科
- どこに行くか迷う時には:まずはかかりつけ医または一般内科
医療機関を選ぶときは、せめて下肢静脈エコーやDダイマーなどの血液検査に対応しているかを確認すると診断が進みやすくなりますね。
ただし、呼吸器症状がある場合は検査設備を探して予約するより、救急要請を優先してください。
(参照:JCS/JPCPHS 2025 Guideline on Pulmonary Hypertension and Pulmonary Embolism/Deep Vein Thrombosis)
片足のむくみではどんな検査をする?

① 問診と診察
発症した時期、急に悪化したか、痛み・赤み・熱感の有無、手術や入院、がん、妊娠、薬、過去の血栓症などを確認します。左右の太さ、皮膚の状態、静脈瘤、脈拍なども診察します。
医療現場では、症状と危険因子を点数化するWellsスコアなどで、深部静脈血栓症の可能性を事前に評価します。ただし、これは検査と組み合わせて使う医療者向けの判断材料であり、自己採点だけで受診不要と判断するものではありません。
② Dダイマー検査
Dダイマーは、体内で血栓が作られ、分解されたときに増える物質です。深部静脈血栓症の可能性が低い方で陰性なら、血栓の可能性を下げるのに役立ちます。一方、感染、がん、妊娠、手術後、加齢などでも高くなるため、陽性だけで血栓とは診断できません。
43研究をまとめたメタ解析では、Dダイマーの感度は96.1%、特異度は35.7%でした(Bhattら, 2020)。つまり、見逃しを減らす検査として有用ですが、陽性の方すべてに血栓があるわけではありません。
③ 下肢静脈エコー
超音波を使って静脈を押しつぶせるか、血流が保たれているかを確認します。放射線被ばくがなく、深部静脈血栓症を調べる標準的な画像検査です。
同じメタ解析では、近位静脈を調べる圧迫超音波検査の感度は90.1%、特異度は98.5%、脚全体を調べる全下肢超音波検査では感度94.0%、特異度97.3%でした。ただし、検査範囲、発症時期、血栓の位置によっては、最初の検査で判断できず再検査が必要になることがあります。
英国NICEの診療指針では、臨床的に深部静脈血栓症が疑わしく、最初の超音波検査が陰性でもDダイマーが陽性の場合、6~8日後の再検査を勧めています。実際の検査手順は医療機関や患者さんの状態によって異なります。
④ CT・MRIなど
肺血栓塞栓症が疑われる場合は造影CT、骨盤内での静脈圧迫や腫瘤が疑われる場合は腹部・骨盤のCTやMRIなどを行うことがあります。心不全、腎臓病、肝臓病などが疑われる場合は、血液検査、尿検査、心電図、胸部画像、心エコーなどを追加します。
(参照:Diagnostic approach to lower limb edema、JCS/JPCPHS 2025 Guideline on Pulmonary Hypertension and Pulmonary Embolism/Deep Vein Thrombosis)
片足のむくみを自宅で対処してよい?

受診前に記録しておくと役立つこと
- いつから始まったか、急に出たか
- 朝と夕方で変化するか
- 痛み、赤み、熱感、息苦しさの有無
- 左右のふくらはぎの太さや靴下の跡
- 最近の手術、入院、ケガ、長時間移動
- 妊娠・産後、がん治療、服用中の薬、過去の血栓症
同じ位置を同じ条件で撮った写真は、変化を医師へ伝えるのに役立ちます。左右の太さを測る場合も、数値だけで血栓の有無を自己判断しないでください。
原因がわかるまで避けたいこと
- 強いマッサージや強く揉むこと
- 自己判断でアスピリンや抗凝固薬を飲むこと
- 血栓が疑われる状態で、受診を遅らせて運動や長距離移動を続けること
- 適応を確認せず、きつい弾性ストッキングを使うこと
慢性静脈不全などと診断された後は、脚を上げる、ふくらはぎを動かす、医療者の指示に合った弾性ストッキングを使うことが治療に役立ちます。ただし、動脈の血流が悪い方などには圧迫療法が適さない場合があります。まず原因を確認しましょう。
片足のむくみについてのよくある質問
足の甲・足首・ふくらはぎだけがむくむ場合も受診が必要ですか?
むくむ場所だけでは、原因や緊急度は決まりません。ふくらはぎ中心の急な腫れは深部静脈血栓症、足首周囲の夕方のむくみは慢性静脈不全、足の甲や足趾まで広がるむくみはリンパ浮腫を考える手がかりになります。ただし、典型例ばかりではないため、急に出た、痛い、赤い、熱い、息苦しいといった変化を優先してください。
片足のむくみは心臓が原因ですか?
心不全によるむくみは通常、両足に出やすいものの、左右差が目立つ場合もあります。息切れ、横になると苦しい、短期間の体重増加などを伴う場合は、循環器内科や一般内科へ相談してください。片足だけだから心臓病ではない、と完全に除外することはできません。
右だけ・左だけなら、どちらが危険ですか?
左右だけで危険度は決まりません。左脚では骨盤内で静脈が圧迫されやすいという特徴がありますが、右脚にも深部静脈血栓症や蜂窩織炎などは起こります。新しく出た症状か、危険因子があるか、呼吸器症状を伴うかで判断します。
片足がむくんでいても痛くなければ様子を見てよいですか?
痛みがなくても深部静脈血栓症は否定できません。特に、手術・入院・長期安静の後、妊娠中・産後、がん治療中、過去に血栓症がある方で急に片足がむくんだ場合は、当日中に医療機関へ相談してください。数か月単位で安定していても、原因不明なら外来で一度確認しましょう。
高齢者で夕方だけ片足がむくむ場合は問題ありませんか?
立位や座位の後に悪化し、朝に軽くなる場合は慢性静脈不全が考えられます。ただし、高齢者では病気や薬の影響が重なりやすく、左右差のあるむくみが徐々に悪化する場合は診察が必要です。急な変化、赤み・熱感、息苦しさがあれば、夕方だけでも早めに受診してください。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
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