糖尿病に起こる足や爪などの皮膚症状について【写真画像つき】

突然ですが、あなた自身や家族の方でこんな症状がある人はいませんか?

  • すねや背中、足がいつもかゆい、保湿してもカサカサが治らない
  • 足の指のあいだや足の裏の皮がむける、水虫がなかなか治らない
  • 足の爪が白〜黄色に濁って分厚くなってきた、足先がしびれる・冷える

実は、これ「糖尿病」で非常によくある皮膚症状のの1つ。逆に、健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を表す数値)が高いと言われている人はこうした皮膚症状がでていないか気を付けなければなりません。放っておいてもよくならないことが多いからです。

実は、皮膚と内臓はとてもよく関連しています。また、中には命にかかわる糖尿病特有の皮膚症状というのもあるんですよ。

今回は、糖尿病の特に足や爪にピックアップした皮膚症状、また見逃したくない糖尿病特有の皮膚病変について解説していきます。

糖尿病で皮膚に症状が出るのはなぜ?

糖尿病の方は皮膚のトラブルがとても多く、ある総説では糖尿病患者さんの79.2%に何らかの皮膚の病変がみられると報告されています。

内訳でもっとも多いのは皮膚の感染症(47.5%)、次いで乾燥(乾皮症:26.4%)、湿疹などの炎症性の皮膚疾患(20.7%)でした。皮膚の症状が、糖尿病に気づく最初のきっかけになることもあるくらいです。

ではなぜ高血糖だと皮膚に症状が出やすいのでしょう?主な理由は次のとおりです。

  • 脱水とバリア機能の低下:血糖が高いと、体は余分な糖を尿として出そうとして尿の量が増え、体が水分不足になります。その結果、皮膚の表面のうるおいまで失われ、乾燥してかゆくなり、外からの刺激に弱くなります。
  • 神経の障害(神経障害):高血糖が続くと、汗を出す指令を送る自律神経が乱れ、汗が減って皮膚が乾きやすくなります。また、痛みや熱さを感じる神経も鈍くなり、傷や水虫に気づきにくくなります。
  • 血流の低下:細い血管・太い血管がいたみ、皮膚に酸素や栄養が届きにくくなって、傷が治りにくくなります。
  • 免疫力の低下:高血糖の状態では細菌やカビ(真菌)と戦う力が落ち、感染症を起こしやすく、こじらせやすくなります。

つまり、「乾く・かゆい・治りにくい・感染しやすい」がそろってしまうのが、糖尿病の皮膚の特徴なんです。これらの皮膚症状は1型・2型のどちらでも起こりますが、患者数の多い2型糖尿病でみられることが多いとされています。また、すでに糖尿病と診断されている方だけでなく、まだ診断されていない「予備群」の段階でサインが出ることもありますね。

大切なのは、皮膚は「目に見える臓器」であり、体の内側の血糖の状態を映す鏡のような存在だということです。だからこそ、皮膚や爪・足の変化に早く気づくことが、糖尿病そのものに早く気づき、合併症を防ぐことにつながります。

(参照:Cutaneous Manifestations of Diabetes Mellitus, Clinical Diabetes, 2015

糖尿病の足の症状は?

① 足に出やすい初期のサイン

糖尿病はさまざまな皮膚症状がありますが、一番感じやすいのが「足」です。主に以下の症状から現れます。

  • 足先のしびれ・ジンジンする・冷える(左右両方、または片方のことも)
  • 足の感覚が鈍い(お風呂の熱さがわかりにくい、靴の中の小石に気づかない)
  • かかとや足裏の強い乾燥・ひび割れ
  • 足裏にタコ・うおのめができやすい
  • 小さな傷ややけど、靴ずれがなかなか治らない

これらの背景にあるのが糖尿病性の末梢神経障害です。

神経障害は糖尿病の方の生涯で約50%にみられ、罹病期間が長いほど、血糖コントロールが悪いほど起こりやすくなります。しびれは足先・足の裏から始まり、左右対称に、ゆっくりと足首・すねの方へ広がっていくのが典型的です。「靴下を一枚はいているような感じ」「足の裏に紙が貼りついている感じ」と表現される方もいます。

また、太い血管の動脈硬化が進むと、足への血流が不足し、少し歩くとふくらはぎが痛んで休むと治まる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」がみられることがあります。さらに神経障害が進むと、足の関節や骨が変形してアーチが崩れる「シャルコー足」と呼ばれる状態になることもあります。

② 糖尿病で多い「足の水虫(足白癬)」

糖尿病の足の病変で多いのは、水虫ですね。水虫は白癬菌というカビ(真菌)が皮膚や爪につくことで起こります。

糖尿病の方を調べた研究では、足白癬が29.9%、爪白癬が35.9%にみられ、両方を併せ持つ方も17.9%いました。各国の調査でも、糖尿病の方の爪白癬の頻度は28〜37%と報告されています。

足の水虫は放置すると他の皮膚病変のリスクにもつながります。絶対に足の水虫を放置しないことが大切です。

③ 糖尿病の足を放置すると「壊死(くさってしまう)」することも・・・

さて、これらの足の初期のサインを放置してしまうとどうなるのでしょうか?(そもそも放置してしまう人が非常に多い)

まず神経障害で痛みを感じにくくなると、傷ややけど、靴ずれに気づかず、悪化してから発見されます。さらに血流の低下と免疫力の低下が重なり、水虫も繁殖するようになります。すると、傷が治らずに深い潰瘍(皮膚がえぐれた状態)になり、最悪の場合は壊疽(組織が黒く死んで、くさってしまう状態)に進むことがあるのです

実際、糖尿病の方は生涯で15〜25%が足の潰瘍を経験し、潰瘍ができた方の最大28%が下肢の切断に至るという報告があります。2型糖尿病の方の切断率は、糖尿病でない方の約10倍にのぼるんです。

こうお伝えすると不安になるかもしれませんが、足のトラブルの多くは「早く気づくこと」と「日々のフットケア」で大幅に防げます!「たかが乾燥」「たかが水虫」と思わず、足を毎日見る習慣をつけることがとても大切です。

(参照:Prevalence and Risk Factors for Diabetic Peripheral Neuropathy in Type 2 Diabetic Patients (INTERPRET-DD), 2020Lower extremity amputations and long-term outcomes in diabetic foot ulcers: a systematic review, 2020Cutaneous Manifestations of Diabetes Mellitus, Clinical Diabetes, 2015
(参照:A Case of a Patient with Combined Diabetic Peripheral Neuropathyand Peripheral Vasculopathy Who Achieved Healing After Combined Multidisciplinary Outpatient Treatment of the Diabetic Foot)

糖尿病の爪に出る変化

爪も、糖尿病のサインが現れやすい場所です。次のような変化に気づいたら注意しましょう。

  • 爪が白〜黄色や茶色に濁る、白い筋が入る
  • 爪が分厚くなる(爪甲肥厚)、もろくボロボロと欠ける
  • 爪が二重に層になってはがれる(爪甲層状分裂)
  • 爪が変形する、巻き爪・陥入爪(爪が皮膚に食い込む)になる
  • 爪のまわりが赤く腫れる、痛む(爪囲炎:カンジダなどの感染)

糖尿病があると爪白癬になるリスクが約2.75倍(95%信頼区間 1.65〜4.68)高いともいわれています。爪白癬はなかなか難渋します。ぜひ早めにサインに気が付いたら皮膚科で顕微鏡検査をうけてください。

糖尿病の方は、巻き爪を無理に自分で処理して傷をつくると、そこから感染が広がることがあります。爪が厚い・巻いている・切りにくいときは、自己流で深爪をせず、皮膚科でのケアを利用してください。巻き爪については当院の巻き爪の記事もご参照ください。

巻き爪を自分で治す方法は?巻き爪を皮膚科で治す最新治療「リネイルゲル」も紹介

(参照:Cutaneous Manifestations of Diabetes Mellitus, Clinical Diabetes, 2015Onychomycosis in Diabetics: A Common Infection with Potentially Serious Complications, 2025

見逃したくない糖尿病特有の皮膚病変

糖尿病には、比較的特有の皮膚の変化がいくつかあります。中には、まだ糖尿病と診断されていない段階のサインになるものもあります。

① 黒色表皮腫(首・脇・鼠径の黒ずみ)=隠れ糖尿病・予備群のサイン

首の後ろ・脇の下・足のつけ根(鼠径部)などが、ビロードのように黒っぽく、ザラザラと厚くなる変化を黒色表皮腫といいます。これは血糖を下げるホルモン「インスリン」が効きにくくなっている状態(インスリン抵抗性)と深く関係し、糖尿病予備群や肥満の方によくみられます。

肥満のある成人では最大74%にみられ、インスリン抵抗性を見つけるための身体のサインとして感度が高いことが知られています。「日焼けでも汚れでもない黒ずみ」が首や脇に出てきたら、一度血糖を調べる価値があります。

② 糖尿病性皮膚症(すねの色素斑)

すね(脛)に、1cm未満の小さな茶色っぽいくぼんだ斑点が左右にできるもので、糖尿病の方にもっとも多い皮膚のサインの一つです。1型糖尿病の33%、2型糖尿病の39%にみられるとの報告があります。

かゆみや痛みはなく、多くは1〜2年で自然に消えますが、神経障害・腎症・網膜症など他の合併症と関連することがあり、「血糖の状態を見直す目印」になります。

③ リポイド類壊死症

すねなどに、中心が黄色く萎縮し、周囲が赤紫色をした境界のはっきりした斑(局面)ができるもので、まれな病変です(1型糖尿病の0.3〜1.6%)。糖尿病でない方にできた場合でも、その後に糖尿病を発症する方が多いと報告されています。

④ 糖尿病性水疱

下腿や足の甲に、痛みのない透明な水ぶくれが突然できることがあります。多くは2〜5週間で自然に治りますが、破れると感染の原因になるため、つぶさず清潔に保ち、医師に相談してください。

⑤ 発疹性黄色腫

お尻・ひじ・ひざなどに、黄色っぽい小さなブツブツが多数できることがあります。これは血液中の中性脂肪が非常に高いときに出やすく、血糖と脂質のコントロールが乱れているサインのことがあります。血糖・中性脂肪が改善すると、皮疹も引いていきます。

⑤ 環状肉芽腫

手の甲・指・腕などに、輪を描くように小さな盛り上がりが並ぶ「環状肉芽腫」がみられることがあります。かゆみや痛みは少なく、糖尿病との関連が指摘されることがあります。

⑤ 繰り返す皮膚の感染症

高血糖では、細菌の感染(毛包炎やおでき=皮膚の膿瘍)やカビの感染(カンジダによる陰部・口角・爪まわりの炎症)を繰り返しやすくなります。同じような「おでき」や「カンジダ」を何度も繰り返す場合も、背景に高血糖が隠れていないか確認するとよいでしょう。

(参照:Cutaneous Manifestations of Diabetes Mellitus, Clinical Diabetes, 2015Acanthosis nigricans in middle-age adults: a highly prevalent and specific clinical sign of insulin resistance, International Journal of Clinical Practice, 2020

糖尿病の足や爪、皮膚のケアは?

糖尿病の皮膚・足のトラブルは、毎日のケアでかなり防ぐことができます。実際に、足の高リスクの方を対象にした研究では、足のケアの仕方を学ぶ短時間(2時間)の教育を受けたグループでは、6か月間で足の潰瘍ができた人が0%だったのに対し、受けなかったグループでは10%に潰瘍がみられました。

「正しく知って、毎日続ける」ことには、はっきりした効果があるのです。まずは以下を心がけるようにしましょう。

毎日のスキンケア(乾燥・かゆみ対策)

  • お風呂はぬるめのお湯にし、ナイロンタオルでゴシゴシこすらず、泡でやさしく洗います。
  • 入浴後はできるだけ早く(5分以内が目安)、保湿剤を全身に塗ります。特にすね・足は念入りに。
  • かゆくても掻きむしらない。掻き壊しは感染の入り口になります。

毎日のフットケア(足を守る)

  • 1日1回、足の裏・指のあいだ・かかとまで見て、傷・赤み・水ぶくれ・タコ・色の変化がないか確認します。見えにくいときは鏡を使うか、ご家族に見てもらいましょう。
  • 足は毎日洗って、指のあいだまでしっかり乾かします(水虫予防)。
  • 爪はまっすぐ切り、深爪をしない。厚い爪・巻き爪は無理せず皮膚科へ。
  • やけどに注意。湯たんぽ・カイロ・こたつ・電気毛布の低温やけどは、感覚が鈍いと気づきにくいので避けるか十分注意します。お湯の温度は手で確かめます。
  • 素足やサンダルでのケガを避け、自分の足に合った靴を選びます。靴の中に小石などが入っていないか履く前に確認します。
  • タコ・うおのめを自分でカミソリなどで削らない(傷から感染することがあります)。

生活習慣(血糖コントロール)

皮膚や足のトラブルを根本から減らすには、血糖そのものを整えることが欠かせません。バランスのよい食事・適度な運動・禁煙・体重管理に取り組み、定期的に血糖値やHbA1cを確認しましょう。喫煙は血流をさらに悪くし、足病変のリスクを高めるため、禁煙はとても重要です。

こんなときは早めに受診を

次のようなときは、放置せず早めに医療機関を受診してください。糖尿病の方は、見た目が軽くても急に悪化することがあります。

  • 足に傷・水ぶくれ・ただれができて、数日たっても治らない、じくじくする
  • 足の一部が赤く腫れて熱をもつ、痛む、または逆にまったく痛みを感じない傷がある
  • 足の指やかかとの色が黒っぽい・紫っぽく変わってきた
  • 水虫・爪のまわりの炎症が広がってきた
  • 発熱をともなう皮膚の腫れがある

自分でケアをするにも限界があります。ひどい状態になって来院されてくる方も少なくありません。ぜひ「皮膚症状なんて大したことない」なんて思わないでください。早めに皮膚科を受診してくださいね。

(参照:Effects of a Short Educational Program for the Prevention of Foot Ulcers in High-Risk Patients: A Randomized Controlled Trial, 2015Effectiveness of educational interventions for diabetes-related foot disease: a systematic review and meta-analysis, 2023

よくある質問(Q&A)

Q. 糖尿病のかゆみは、体のどこに出やすいですか?

A. 全身に出ることもありますが、特にすね・背中・足・陰部などに多くみられます。発疹がないのに続くかゆみや、保湿しても改善しない乾燥は、血糖の状態と関係していることがあります。

Q. 皮膚がかゆいだけでも、糖尿病を疑った方がよいですか?

A. かゆみだけで糖尿病と決まるわけではありません。ただし、強い全身のかゆみが続く・水虫やおできを繰り返す・足のしびれや黒ずみ(黒色表皮腫)も一緒にある、といった場合は、一度血糖値・HbA1cを調べておくと安心です。

Q. 糖尿病だと水虫は治りにくいですか?

A. 免疫力や血流の低下のため、治りにくく再発しやすい傾向があります。ただし、正しく診断して治療を続ければ改善は十分に期待できます。市販薬で自己判断せず、まず皮膚科で顕微鏡検査を受け、水虫かどうかを確かめることが大切です。

Q. 足の爪が厚くて自分で切れません。どうすればよいですか?

A. 無理に深爪をすると傷から感染することがあるため、自己流の処理は避けてください。皮膚科で爪のケアや、爪水虫があればその治療を受けられます。

Q. 血糖値がよくなれば、皮膚の症状も改善しますか?

A. 多くの場合、血糖コントロールが整うと皮膚の乾燥・かゆみ・感染のしやすさは落ち着きやすくなります。皮膚の治療と血糖管理を両輪で進めることが、改善と再発予防の近道です。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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