いつもは冬になると上昇する「インフルエンザ」。2023年は異例にも9月にインフルエンザが増加し、さらに新型コロナとの流行も相まって、非常に多くの方が感染症にかかる事態となっています。
医療者側も悩むインフルエンザと新型コロナの同時流行。私たちはどのようにして対処していけばよいのでしょうか。
今回はインフルエンザの特徴について
- インフルエンザの潜伏期間
- インフルエンザの感染力
- インフルエンザになった時の隔離期間
について、わかりやすく解説していきます。
インフルエンザの具体的な症状については、インフルエンザの症状の特徴について【最新版】を参照してください。
Table of Contents
インフルエンザとは?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症のこと。一般的な風邪よりは重くなりやすい疾患であるため、区別して考えられています。英語名「Influenza」からわかる通り、流行や影響をあらわす「Influence」が語源です。
通常、北半球では1月~2月ごろ、南半球では7~8月ごろにピークが起きます。日本でも毎年11月下旬から12月上旬ごろから始まり、翌年の1月~3月頃まで患者数が増加し、4月ごろから減少するのが一般的です。
ただし、年度によっても流行入りする時期は格差があります。流行入りが一番早くて9月、一番遅くて1月から流行した年もありました。
2024年は11月下旬から流行の兆しがみられていましたが、12月からは爆発的に増加してきており、急激な伸びを示しています。東京都では、ほぼ70%が20代以下の感染であり、これから高齢者への波及が予想されますね。
インフルエンザにもA型・B型・C型の2つの型がありますが、主に流行するのはA型とB型。突然変異をきたして大流行することもあり、1918年の「スペインかぜ」や1957年の「アジアかぜ」など特別に呼称されることもあります。(それぞれ39年間・11年間つづきました)
(参照:国立感染症研究所「インフルエンザとは」)
(参照:厚生労働省「インフルエンザの発生状況」)
インフルエンザの潜伏期間は?
では、インフルエンザの潜伏期間はどれくらいでしょうか。
アメリカCDCからの報告では「インフルエンザの潜伏期間や感染性」について下記のように言及しています。
- インフルエンザにかかった人は、病気が始まってから最初の 3~4 日間が最も感染力が強くなります。
- 症状が出る 1 日前から 発病後5~7 日以内に他の人に感染させる可能性があります 。
- インフルエンザに感染してから症状が現れるまでの時間は約 2 日ですが、約 1 ~ 4 日の範囲である場合もあります。
- 一部の人々、特に幼い子供や免疫力が低下している人々は、さらに長期間にわたって他の人に感染する可能性があります。
厚生労働省の資料では「数日」と記載されていたり「1~3日」と記載されていたり、「2~5日」と記載されていたりと一定としていません。カナダで行われた316例によるインフルエンザの潜伏期間を調べた報告によると、感染してから症状が出るまでの期間の中央値は4日(2.6~6.6日)となっています。
また、インフルエンザもサブタイプによって潜伏期間が異なることがわかっています。2018年の韓国の論文ではインフルエンザAの潜伏期間は1.4日に対して、インフルエンザBでの潜伏期間は0.6日となっていますね。
このように、報告によって幅がありますが、少なくともインフルエンザに感染された方と長期間接触された場合は4日間は発病する可能性があると考えて行動した方がよいでしょう。
また、新型コロナの潜伏期間はオミクロン株で平均3.61 日 (3.55–3.68日)となっているので、もはや潜伏期間で鑑別することはほとんど困難になっていますね。
インフルエンザの検査をどれくらいで行った方がよいかについてはインフルエンザの検査は何時間後からいつまで?インフルエンザ検査の最適なタイミングについて解説を参考にしてください。
(参照:Estimated epidemiologic parameters and morbidity associated with pandemic H1N1 influenza)
(参照:CDC「Key Facts About Influenza (Flu)」)
(参照:厚生労働省「インフルエンザQ&A」)
(参照:Transmissibility and severity of influenza virus by subtype)
インフルエンザの隔離期間は?
インフルエンザ陽性になった場合の隔離期間は、原則「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで(幼児では3日)自宅待機」と学校保健安全法施行規則で定められており、勤務もそれに準じて出勤停止としている会社が多いと思います。
具体的には、インフルエンザ感染症での自宅待機期間は
- 発症後1日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
- 発症後2日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
- 発症後3日目に解熱した場合:発症後6日目に登校可能
- 発症後4日目に解熱した場合:発症後7日目に登校可能
- 発症後5日目に解熱した場合:発症後8日目に登校可能
となります。新型コロナは2022年現在「発症日を0日として、7日間は自宅待機」であり、「無症状で陽性の方は発症後7日後か5日目に陰性確認で解除」になっています。したがって、濃厚接触の規定を除けば、現在の新型コロナの自宅待機期間はかなりインフルエンザに近い形になっているといえるでしょう。
(参照:学校保健安全法施行規則第 19 条第 2 項)
インフルエンザの感染力を強くしないようにできること
新型コロナの感染力の高さも脅威ですが、インフルエンザの感染力も非常に高いものになっています。特に、飛沫感染は非常に強く、マスクをしていない状況で長期間接触すると多くの場合は感染が成立してしまいます。
したがって、インフルエンザの感染力を強くしないようにするためにも、以下のことから始めましょう。
① インフルエンザワクチンを接種する
インフルエンザワクチンはインフルエンザの感染力を抑えるのにももちろん有効です。
本人の感染や重症化のリスクを減らす効果だけではなく、家族や周囲の人が予防接種を受けることで、集団免疫を高め、感染の広がりを防ぐことができます。
ただし、インフルエンザワクチンの効果が発揮されるまでには2週間くらいはかかるので前もっての接種がおすすめですね。(当院では12月もインフルエンザワクチンの接種を行っています)
インフルエンザワクチンの効果についてはインフルエンザワクチンの効果と持続期間や最適な接種間隔について解説を参照してください。
② 手洗い・うがいをよくする
インフルエンザウイルスは、くしゃみなどの飛沫でも移りますが、当然、接触感染でも移ります。したがって、手洗いは感染予防にもとても大切です。
石鹸と水を使って、少なくとも20秒間手を洗ってください。そして、外出後や咳・くしゃみの後、食事の前後に手を洗うことを習慣化するようにしましょう。どうしても手が洗えない場合は、アルコール消毒剤を使用するようにします。
家に帰ったら、付着しているかもしれないウイルスをしっかり洗い流しましょう。うがいは水で基本的には構いません。抗ウイルス効果を期待するのなら緑茶もよいですし、炎症がありそうだなと思ったら、抗炎症効果のあるアズノールうがい液もよいでしょう。
なによりもうがいは量と回数が大切です。少なくとも10秒はうがいをし、4-5回は喉の奥までしっかりうがいするようにするとよいですね。トータル量は小さいコップ1杯分がおすすめです。
あと、消毒で手が荒れる方はこまめな保湿を忘れずに。手荒れについては手湿疹(手荒れ)の原因と治し方について解説【ストレス・内臓疾患】も参考にしてください。
③ マスクをする
最近、コロナの5類化の反動でマスクをしない人が増えてきましたが、やはりマスクを外した年代からインフルエンザ感染症が急上昇してきた可能性は高いと思います。
マスクは大きい飛沫を外に出さない意味で非常に有効です。大きい飛沫(唾液)にはもちろんインフルエンザウイルスが大量に付着しているので、普段からマスクをすることで、大きい飛沫を防ぎ、インフルエンザが気道に入るのを直接防ぐことができます。
さらに、冬場はどうしても寒くなり、入ってくる空気も冷たくなります。気道の粘膜は寒さに弱く、マスクにより加湿・加温されるので、局所免疫を高めるのにもよいでしょう。
マスクの効果については【新型コロナ】感染対策でのマスクの効果とデメリットについて解説を参照してください。
④ 換気をする
もちろん換気も家庭内感染を防ぐ意味でもとても大切です。室内の空気を定期的に入れ替えることで、ウイルス濃度を低下させます。
窓を少し開けたり、換気扇を使用して空気を循環させるようにしましょう。空気清浄機もよいですね。
⑤ 免疫力を高める生活習慣を
そして大切なのが、普段の免疫力を高めるケアです。といっても、何も特別なことではありません。
- 十分な睡眠をしっかりとること
- バランスのよい食事をとること
- 定期的な運動をしっかり行うこと(寒さ対策はしっかりして)
- 多忙におわれずストレス管理を行うこと
これらにつきます。どんなビタミンや食べ物をとった方がいいかについては、新型コロナや風邪の予防とビタミンの関係について【ビタミンC・ビタミンD・ビタミンE】を参照してください。
インフルエンザの潜伏期間や隔離期間についてのまとめ
インフルエンザの潜伏期間や隔離期間についてまとめると次のようになります。
- インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、通常の風邪よりも重い疾患
- インフルエンザは潜伏期間の中央値は4日で、高い発熱や咳、筋肉痛、鼻水などを中心とした症状。7日の経過でゆっくり軽快する
- インフルエンザの隔離期間は「発症後5日間かつ解熱した後2日を経過するまで(幼児では3日)自宅待機」である
といえます。よく「インフルエンザは軽い疾患」のように扱われがちですが、インフルエンザも死亡する可能性のある疾患の1つであり、新型コロナ含めて侮ることはできません。冬の感染対策をしっかりしていただきますよう、お願いします。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
この記事へのコメントはありません。