大人も子供もかかる手足口病の原因や症状・治療について【発疹の写真も掲載】

  • 手や足や膝・おしりなどに突然水ぶくれができた
  • 口の周りにもブツブツでてきて、さらにのども痛い
  • 手や足が異常に痛くて夜も寝られない

という経験をされたことはありますか?じつはこれはすべて「手足口病」の特徴です。

夏になると増えてくるウイルス感染症の1種が「手足口病」。突然手や足にぶつぶつができ、のどもヒリヒリ痛みが出てきたらびっくりしますよね。しかも2024年は10月なのにもかかわらず大流行しています。

実は、子供に多く感染しますが、大人にもうつすこともあるのが手足口病の特徴の1つ。しかも、大人の場合、痛みがかなり辛い症例もある感染症です。(筆者も経験しましたが「こんなに痛い感染症があるんだ」と思ったほど痛かったです)

実際、手足口病とはどんな病気なのでしょうか?手足口病の原因や大人や子供の症状の出方の違い、治療方法にいたるまでわかりやすく解説していきます。

手足口病とは?

手足口病とは、主に「手・足・および口の中や周りにに発疹や水ぶくれが現れる感染性の病気」です。手と足と口にできるから「手足口病」。ネーミングもそのままですね。

一般的には、5歳以下の子どもに多く見られ7月ごろをピークとしてに流行します。「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」の3つのことを「子供の3大夏風邪」ということもありますね。

実際、「報告数の90%前後を5歳以下の乳幼児が占めている」と言われています。

しかし大人も感染する可能性があり、さらに近年で大人の手足口病の感染例が増えているという論文もあり、特に子供を持つ大人の方も要注意な感染症の1つです。

(参照:Hand-Foot-Mouth Disease in an Adult. Cureus. 2023 Jan; 15(1): e33670.

手足口病の原因や感染経路は?

手足口病は、エンテロウイルス科に属するウイルスによって引き起こされます。主な原因となるウイルスは以下の通りです。

  1. コクサッキーウイルスA16:最も一般的な手足口病の原因とされています。
  2. コクサッキーウイルスA6:症状がより深刻になることがあるとされています。
  3. エンテロウイルス71:東アジアおよび東南アジアの手足口病の症例やアウトブレイクと関連しているといわれています。まれに脳炎(脳の腫れ)などの、より重篤な疾患と関連していることがあります。

そのほか、コクサッキーウイルスA10などが原因になることもあります。そして、これらのウイルスが以下の感染経路を経て、手足口病として発症します。

  • 飛沫感染:感染者の鼻や喉の分泌物が咳やくしゃみを通して感染
  • 接触感染:水疱やかさぶたからの液体をふれることを通して感染
  • 糞便-経口感染:ウイルスが糞便を介して他の人に感染

手足口病の人は、通常、病気になってから最初の 1 週間が最も伝染性が高くなります。さらに症状が消えてから2週間~4週間くらいは特に便中にもウイルスが存在しているといわれています。

そのため症状がまったくない場合でも、ウイルスを他の人に広めることがありますので、注意が必要です。(特に幼児のオムツや便を扱うときや食器・おもちゃなど)

実際、2024年は非常に感染者数が多く、2022年にも大流行といわれましたが、それ以上の広がりを見せています。7月~8月には定点あたり16-17人を超える患者数になり、9月ごろに一度収束しかけたものの、10月には感染爆発をおこしています。

(参照:厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
(参照:東京都感染症情報センター「手足口病の流行状況」
(参照:CDC「Hand, Foot, and Mouth Disease (HFMD) Causes & Transmission」

手足口病の子供の症状は?

手足口病は主に5歳以下の子供がかかることが多く、一般的な症状としては次のようになります。通常ウイルスに感染してから3-5日くらいに症状が現れることが多いです。

  1. 発熱:病気の初期段階で発熱が現れることが一般的です。しかし、同じウイルスによる「ヘルパンギーナ」よりも手足口病のほうが熱がなく、元気であることがしばしばです。
  2. 喉の痛み:喉が痛く、悪寒やだるさを感じることがあります。「のどの奥の方がイガイガする」といった表現をされやすいですね。
  3. 口内炎:口の中に痛みを伴う口腔内病変が出ることがあります。特に口の上の方を中心に表れやすく、しばしば強い痛みを伴うため、喉が痛くてごはんが食べられなくケースもあります。(症状にはかなり個人差があります)
  4. 皮膚の発疹最大の特徴が皮膚の発疹です。手のひらや足の裏を中心に水ぶくれを伴うような2-3mmくらいの発疹が現れます。発疹は腕、足(ひざ)、お尻、腹部、背中や頭の後ろの方にもにも広がることがあります。口の周りにも水ぶくれができることがありますね。

通常、「のどの痛み・発熱」が最初にやってきて、皮膚症状が後から出てきます。これらの症状は通常、7~10日で自然に治ります。ただし、個々の子供によって症状の程度や期間は異なることがありますのでご注意ください。

また、特にコクサッキ―ウイルスA6感染により手足口病の症状が消失してから、1か月以内に、一時的に手足の爪の脱落を伴う症例も報告されていますが、自然に治るとされていますね。

上記のような症状がみられた場合は、手足口病を疑いながら小児科や皮膚科できちんと診断を受けることが感染拡大防止の面でも大切です。

(参照:CDC「Hand, Foot, and Mouth Disease (HFMD) Symptoms & Diagnosis」

大人の手足口病の症状は?

大人も子供と基本的には同じように、3~5日の潜伏期間を経て主に次のような症状がでます。

  • 発熱
  • のどの痛み
  • 手足を中心にした発疹
  • 口内炎

では、大人の手足口病のどの点が子供と異なるのかというと、次の通りです。

① 大人の手足口病の方が、発疹による痛みが強くでやすい

私自身の経験では、手のひらや足の裏に硬い小石が入っているかのような感覚で、踏みしめると激痛が走るので、普通に歩くのも困難なほどになりました。患者さんでも同様の痛みを訴えられる方もいる一方、あまり痛みを感じない方もいるので、個人差も大きいようです。診療の実感では6割くらいが痛みが強く出ています。(おそらくウイルスの種類による影響だと思います)

指の側面や関節部分に沿って、赤いブツブツで出ることが多いですね。

発疹の数自体は子供の方が多い傾向にあります。

② 発疹が少ない代わりに、のどの痛みがつらい方も

一方で、手足の発疹が少ないケースでのどの痛みがつらいケースもしばしば経験します。こうしたケースは発熱も強い発熱を伴うことが多く、通常の食事をとるのが困難なほどです。

いつものどの奥でひっかかっている感覚に襲われ、「何とかしてほしい」と再受診することもあります。

③ 繰り返し発症する可能性がある

手足口病の原因ウイルスは1つではありません。コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなど複数のウイルスが「手足口病」として発症します。

そのため、「一度手足口病になったから免疫力があるので問題ない」と考えるのは早計です。特に周りに手足口病の方がいる場合は、1回目と同様に感染予防に努めた方がよいでしょう。

④ 手足口病に感染しやすい人がいる

実は、2014年の大人の手足口病の方を対象とした中国の研究によると、以下の人は手足口病に感染しやすいことが言われています。

  • 5歳未満の子供がいること(オッズ比9.23倍)
  • 手足口病と診断された子供がいること(オッズ比15.33倍)
  • 携帯電話を他人と共有していること(オッズ比5.87倍)

手足口病の子供の人が近くにいれば手足口病を発症しやすいのはわかりますが「携帯電話を他人と共有していること」がリスクになっているのは驚きですね。

確かに携帯電話を他人と共有している場合、多くのウイルスが付着する可能性が高くなります。普段口元に何かを近づけるというのは、それだけ感染のリスクが高まります。何気ない行動が感染の引き金になることを忘れてはいけません。

(参照:Clinical and epidemiological characteristics of adult hand, foot, and mouth disease in northern Zhejiang, China, May 2008 – November 2013

手足口病はしばしば「重い症状」になることがあります

さらに、手足口病は重症化する可能性があります。多くは7~10日程度で治っていくのですが、中には「髄膜炎」「小脳失調症」「脳炎」といった中枢神経系の合併症や、「心筋炎」「神経原性肺水腫」「急性弛緩性麻痺」などを引き起こすケースもあるのです。

重症例や死亡例をまとめた報告によると、50,651例中637例(1.26%)は重症であり、38例(0.075%)の死亡例が確認されています。特に

  • エンテロウイルス71による感染の方(これは特別な検査をしないとわかりません)
  • 年齢が3歳以上の方
  • 自律神経調節不全の方
  • CRPが高値の方
  • 肺水腫や出血がある方

に死亡リスクがあります。これを受けて厚生労働省では

  • 高熱が出る
  • 発熱が2日以上続く
  • 嘔吐する
  • 頭を痛がる
  • 視線が合わない
  • 呼びかけに答えない
  • 呼吸が速くて息苦しそう
  • 水分が取れずにおしっこがでない
  • ぐったりとしている

などの例では医療機関への受診をすすめていますね。

実際診察している限り、手足口病のほとんどの例では軽症で終わりますが、重症化の兆候が見られた場合では、提携している病院への紹介をさせていただきます。

(参照:Prevalence and Management of Severe Hand, Foot, and Mouth Disease in Xiangyang, China, From 2008 to 2013. Front Pediatr. 2020; 8: 323.

手足口病の治療や薬は?

手足口病はウイルス感染であり、現在手足口病に対する抗ウイルス薬はありません。したがって、対症療法があります。症状に合わせて例えば以下のような治療が行われます。

  • 鎮痛薬・解熱薬:発熱や痛みを緩和するために、アセトアミノフェン(例:タイレノール)やイブプロフェン・ロキソプロフェンなどの解熱鎮痛薬を使用することがあります。(ただし、子供にアスピリンを使用しないでください。アスピリンは、子供にレイ症候群という重篤な病気を引き起こす可能性があります。)
  • かゆみを抑える飲み薬:皮膚の症状が時々かゆみが出てくることがあります。一番使われる薬は抗ヒスタミン薬とよばれるアレルギー症状を抑える薬ですが、症状に合わせて処方内容は変えています。
  • 炎症を抑える塗り薬:手足の皮疹の炎症や2次感染の防止などを目的にしてしばしば塗り薬が処方されることがあります。

前述の通り、大人の手足口病は非常に重い手足の痛みであったり、のどの痛みであったりと子供より強い症状が出やすい傾向にあります。なので、かなり強く症状を抑える薬を使わないと日常生活に支障がでることもしばしばです。

また、重症化や感染予防の観点から「なるべくはやく医療機関に受診して適切な診断を受けること」は大切ですね。

手足口病の出勤停止期間は?

結論からいうと、手足口病の出勤停止期間、出席停止期間は特に定められていません。インフルエンザやコロナのように「何日間休まなければならない」というのはありません。

学校保健安全法の規則では、第三種感染症に規定されており、「本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能である」としていますね。

ここでのポイントは「手足のブツブツがあっても登園や出勤ができる」という点です。

「手足のブツブツからうつるのではないか」と考えられがちですが、感染経路やむしろのどや唾液からの飛沫感染が主であり、発疹を触ることによる感染は稀です。

また、それ以上に糞便中に何週間もウイルスを排泄していることから、感染力を完全に失うまで待っているとずっと出勤できないとすることはできません。

したがって、手足のブツブツからは感染する可能性は低く、出勤停止は明確なものはないものの、しばらくは人に移すという自覚を持った態度が大切ですね。

手足口病の予防法は?

手足口病はかからないようにするための予防も大切。手足口病の予防策や感染を広げないための対策を5つお伝えします。

① 手洗いの徹底

手洗いはウイルス感染リスクを減らす有効な方法です。外出後、トイレ使用後、食事前には必ず手を洗いましょう。

手洗いは感染症全般に対する基本的な予防策です。手洗いの際には、石鹸を使って指の間や爪の周りも念入りに洗ってください。水道水で十分にすすぎ、清潔なタオルで手を拭きましょう。

② うがいを徹底する

うがいは喉のウイルスを洗い流し感染リスクを低減します。

外出先からの帰宅や人混みにいた後は、感染リスクを軽減するためにうがいを行いましょう。うがいも手洗いと同様、感染症予防に基本的な対策ですね。

③ 個人用品の共有を避ける

個人用品は共有せず、各自で使い分けましょう。歯ブラシやタオル、食器などを分けることで、感染リスクを低減できます。

また、使用済みの食器は速やかに洗浄し、清潔に保つことが大切です。特に、小さいお子さんがいる場合は、食べ残しを食べたり大きいお皿で食事を共有したりしないようにしましょう。

④ 環境の清潔を保つ

定期的な清掃や消毒で、家や職場、学校の環境を清潔に保ちましょう。

もちろん普段から清潔にしておくと、ウイルスの感染リスクを抑えることができます。特に、お子さんが手足口病になったら便中にウイルスが2~4週間います。

かならずトイレの後の手洗いとともにドアノブなどは清潔にしておきましょう。

⑤ 病気の人との接触を避ける

もちろん登園基準で「全身状態で安定していない場合は登園できない」と記載されている通り、感染させやすいウイルスの1つ。

手足口病が流行している場合や、周囲に感染者がいる場合は、感染リスクを減らすために、病気の人との接触を避けましょう。

特に乳幼児や免疫力が低い人がいる家庭では注意が必要ですね。

【この記事を書いた人】 
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。

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