10月より新型コロナワクチン接種が開始になりますね。日本では以下の5種類が新型コロナワクチンとして認可されています。
- ファイザー社のmRNAワクチンである「コミナティ」
- モデルナ社のmRNAワクチン「スパイクバックス」
- 第一三共のmRNAワクチン「ダイチロナ」
- 武田薬品の組み換えタンパクワクチン「ヌバキソビッド」
- Meiji Seika ファルマのレプリコンワクチン「コスタイベ」
これらのうち最も世間を騒がせているワクチンが、次世代mRNAワクチンとも呼ばれる「レプリコンワクチン」です。
- mRNAワクチンをさらに改良したワクチンである
- 日本だけしか認可がされていない
いった理由から多数のメディアで取り上げられ、SNSでは多くの非難が浴びせられています。中には「レプリコンワクチンを打った人は入店をお断りします」というお店も出てきました。しかし、それを実証された論文から科学的に紐解いた情報はなかなか少ないと感じます。
そこで今回はなるべく客観的な立場から
- レプリコンワクチンとはどんなワクチンなのか
- レプリコンワクチンの安全性は本当はどうなのか
- レプリコンワクチンで噂されている「シェディング」は起こるのか
などについて、治験や論文のデータなどをもとにわかりやすく解説していきます。
動画でもレプリコンワクチンについてわかりやすく解説しましたので、併せてご参照ください。
Table of Contents
レプリコンワクチンの仕組みは?
レプリコンワクチンとは、少ない有効成分量で効果が長く続くことを目的とした「次世代mRNAワクチン」と呼ばれるワクチンです。その最大の特徴はmRNAが自分自身で複製されることにあります。
レプリコンワクチンは投与されると細胞内に取り込まれ、大量に複製するためのレプリカーゼという酵素を作れるたんぱく質の設計図(mRNA)を送り込みます。
そして、レプリカーゼがmRNAを増幅することで、効率的にウイルスのスパイクタンパク質が生成されるのです。
コピー機で例えてみましょう。
従来のmRNAワクチンは、一枚一枚手書きでチラシを作るようなものです。一枚一枚丁寧に作るので、効果はありますが、作るのに時間がかかりますし、たくさんのチラシを作るのは大変です。
一方、レプリコンワクチンは、コピー機を使ってチラシを大量に作るようなものです。コピー機には、チラシの元となる原稿と、それをコピーするための機能が備わっています。原稿にあたるのがウイルスのスパイクタンパク質を作る設計図(mRNA)で、コピー機能にあたるのがレプリカーゼという酵素です。
レプリコンワクチンを接種すると、細胞の中にコピー機(レプリカーゼ)とチラシの原稿(mRNA)が送り込まれます。
すると、コピー機が原稿をどんどんコピーし始め、大量のチラシ(スパイクタンパク質)が作られる・・・というわけですね。
このスパイクタンパク質は、本来ウイルスが細胞に侵入する際に使うものですが、ワクチンではそれが単独で存在するため、単体で重篤な病気を引き起こすことはないとされています。また、スパイクタンパク自身も経過とともになくなるので「ずっと残り続ける」というものではありません。
実際、臨床試験を行う前段階の実験で、マウスを用いたやヒトの皮膚細胞からの非臨床試験より、産生されたスパイクタンパク質は、筋肉内でおおむね7~ 8日目まで増加し、その後時間の経過とともに減少し、21日目に消失することが確認されています。
また21日目くらいに消失することを人の皮膚組織に入れた場合でも確認していますね。
レプリコンワクチンによって複製されたスパイクタンパク質を、体内の免疫系は「異物」と認識して、それに対する抗体や細胞性免疫を活性化します。そして、実際にウイルスに感染した際に、免疫系が迅速に反応し、ウイルスを排除できるようになるわけです。
まとめると、レプリコンワクチンは、ウイルスの「コピー能力」を応用し、効率的に免疫システムを訓練することで、ウイルスに対する防御効果を高めるワクチンといえるでしょう。
(参照:Expression Kinetics and Innate Immune Response after Electroporation and LNP-Mediated Delivery of a Self-Amplifying mRNA in the Skin)
(参照:Safety and immunogenicity of a self-amplifying RNA vaccine against COVID-19: COVAC1, a phase I, dose-ranging trial)
レプリコンワクチンをうつメリットは?
レプリコンワクチンのメリットをまとめるなら、
- 効果の持続期間が長い
- 少ない投与量で済む
の2つに集約することができますね。
日本人成人828名に対して、今回のコスタイベ(ARCT-154)とファイザー社ワクチン(コミナティ)をランダム化比較試験を行った論文によると、オミクロンBA.4/5株に対しての中和抗体価は
- 投与後30日:コスタイベ2125、コミナティ1624(1.31倍)
- 投与後90日:コスタイベ1892、コミナティ888(2.13倍)
- 投与後180日:コスタイベ1119、コミナティ495(2.26倍)
とコスタイベの方が増加し、かつ中和抗体価が6カ月にわたって長く続くことが言われています。
コスタイベは5μgのmRNAを含むのに対し、コミナティは30μgと、コスタイベはコミナティの約6分の1mRNA量であるにも関わらずです。
これは、レプリコンワクチン独特の「自己増殖型」の性質により、21日まで消失するまでの間にスパイクタンパク質が増殖され、より多くの免疫応答が起こったためだと考えられます。
他にもベトナムの16,000人にも及ぶ第3相臨床試験では、レプリコンワクチンによる重症化予防効果は95.3%、発症予防効果は56.6%であると報告されています。(デルタ株流行期が主)
このように、従来のmRNAワクチンよりも少量で予防効果が長く続くポテンシャルを持つのが、レプリコンワクチンの最大の強みと言えるでしょう。
(参照:Persistence of immune responses of a self-amplifying RNA COVID-19 vaccine (ARCT-154) versus BNT162b2)
(参照:Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials)
レプリコンワクチンの安全性や副作用は?
実はレプリコンワクチンを開発するにあたっては、かなり慎重に行ってきたことがうかがえます。
例えばベトナムでは2021年から現在進行中で二重盲検ランダム化比較試験が行われており、後期フェーズである第3相臨床試験ではコスタイベとプラセボ(偽薬)をそれぞれ約8,000人ずつ投与し、合計16,000人という非常に大規模な臨床試験を展開しています。
さらに国内でも第3相臨床試験を日本の外来臨床施設11施設共同で行われ、2022年12月から安全性が追及されてきています。
したがって、国内外で考えると、2~3年の年月を経て安全性を確認していますね。
では、実際、レプリコンワクチンでどのような副作用が出たのか。ベトナムの16,000例に及ぶ臨床試験によると、頻度別に以下の副作用を報告しています。(1回接種)
- 20%~40%:疼痛、圧痛、頭痛、疲労感、筋肉痛
- 20%以下:局所の腫れ、発熱、関節痛、悪寒、下痢、めまい、吐き気
ちなみに「局所反応のほとんどはワクチン接種後3日以内に発生し、どちらかの投与後2~4日以内に解消された。また全身の副作用は主に軽度または中等度で、1回目または2回目の投与後1~3日以内に発生し、追跡期間内に解消した」と報告していますね。
また、よくベトナムの治験による死亡例が言及されていますが、本試験ではワクチン接種者の5例、プラセボ(偽薬)接種者の16例、計21例が死亡に至っています。このうち、ワクチン接種に関連するものはなく、10例は新型コロナ感染に関連していると考えられ、うち1件はワクチン接種者、9件はプラセボ投与者とされています。
したがって、今のところは「レプリコンワクチンが大きく死亡につながっている」ということはないと思います。
また、日本の国内第3相臨床試験では今回のレプリコンワクチンである「コスタイベ」とファイザー社の「コミナティ」と比較しているわけですが、(追加接種時)
- 局所の紅斑:コスタイベ12.4%、コミナティ20.8%
- 局所の硬結:コスタイベ12.4%、コミナティ19.9%
- 局所の圧痛:コスタイベ92.4%、コミナティ95.8%
- 局所の疼痛:コスタイベ83.8%、コミナティ87.7%
- 発熱:コスタイベ20.0%、コミナティ18.6%
- 関節痛:コスタイベ26.7%、コミナティ27.7%
- 悪寒:コスタイベ30.0%、コミナティ25.2%
- 下痢:コスタイベ6.7%、コミナティ4.2%
- めまい:コスタイベ6.0%、コミナティ3.2%
- 頭痛:コスタイベ39.3%、コミナティ30.6%
- 倦怠感:コスタイベ44.8%、コミナティ43.1%
- 悪心:コスタイベ5.0%、コミナティ3.9%
- 筋肉痛:コスタイベ29.3%、コミナティ24.5%
とファイザー社ワクチンと比較しても、ほぼ変わらない副作用発現率となっています。また、有害事象の発現までの日数と持続期間はコスタイベとコミナティで大きな差はないとしているので、レプリコンワクチンが従来のmRNAワクチンと同じくらいの副作用といえますね。
(参照:Persistence of immune responses of a self-amplifying RNA COVID-19 vaccine (ARCT-154) versus BNT162b2)
(参照:Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials)
レプリコンワクチンを打つと入店お断り、は正しいのか?
さて、SNSなどを中心にレプリコンワクチンが非常に避難の的になっており、中には「レプリコンワクチンを打った方は入店お断り」という店まで現れる自体となっています。
日本看護倫理学会がレプリコンワクチンへの懸念として「シェディングの問題」を引き合いに出したことから拍車がかかりました。
シェディングとは一言でいうと「ワクチン接種によりワクチンの成分が他に伝播して病気になる」という理論。
2021年での仮説段階の論文(論文の質はインパクトファクターがつかないくらい低いとされています)が発端です。同論文では「ワクチン接種によって体内で生成されたスパイクタンパク質が、誤って折り畳まれ、プリオンと呼ばれる異常なタンパク質に変化する可能性」が示唆されています。そして、「プリオンが体内のあらゆる場所に運ばれ、呼吸や皮膚接触などにで他の人にうつるのではないか」としています。
本論文でも「これは可能性でありさらなる研究が必要である」と結論づけていますが、この理論が実証されたものはありません。
したがって、同理論はmRNAワクチンからの理論であり、仮に同理論が正しいとしても、ほとんどの人がmRNAワクチンを打っているわけですから、「レプリコンワクチン接種者だけ入店お断り」というのはあまり理論的な裏付けに乏しいと感じます。
またそこだけ入店拒否しても満員電車に乗ってみなさん仕事に行くわけですし、2~3年前からベトナムで8,000名、日本で400名以上は治験で接種されています(しかも二重盲検でどちらを打っているかわからない)ので、これからレプリコンワクチン接種者をお断りすることによる予防効果はないと思われます。
さらに他の論文(今度はきちんと論文の質が担保された論文です)でワクチン接種者と未接種者がそれぞれコロナ感染したとき、どれくらいウイルスが排出されたか(=シェディングされたか)を見た論文ではむしろワクチン接種により、発症から5日以降にウイルスを排出する確率が低下した(=シェディングされなかった)としています。
おそらく免疫がきちんと誘導され、体内のウイルス量自体が減ったためと考えられますね。むしろワクチン接種によってコロナ自体のシェディングは起こりにくくなるわけです。
みんな色々な想いがあり、ワクチンの種類を選んで接種します。レプリコンワクチンを接種された方への「お断り」が広がらないことを切に願います。
もちろん当院ではわざわざ「レプリコンワクチンを打っていますか?」と聞いて、打っていた場合診療を拒否するなどということはしません。シェディングについて、エビデンスレベルが高いデータがあると判断した場合は追記いたします。
(参照:日本看護倫理学会「レプリコンワクチンに対する緊急声明を発表しました」)
(参照:Worse Than the Disease? Reviewing Some Possible Unintended Consequences of the mRNA Vaccines Against COVID-19)
(参照:Infectious viral shedding of SARS-CoV-2 Delta following vaccination: A longitudinal cohort study)
当院では「ファイザー社製ワクチン」を採用しています
ここまでレプリコンワクチンについて解説していきましたが、当院ではファイザー社製ワクチンを採用しています。
レプリコンワクチンを採用していない最も大きな理由は「1バイアル16人分で非常に取り回しが扱いにくい」点です。
新型コロナワクチンはどれも非常に原価が高いワクチンであり、16人分となると相当の金額になります。それを余らせてしまうと、そのままクリニック側の損失になるので非常にリスクが高いのです。(16人集めて接種するのも大変ですしね)
また、治験でかなりデータを集めているとは言え、ファイザーやモデルナのワクチンと比べると接種している母数も全く異なります。そのためデータの蓄積に関しては従来打たれているワクチンに軍配があがるでしょう。
このような理由でレプリコンワクチンを採用するクリニックは現実問題多くはないと考えられます。
したがって、どのクリニックでもレプリコンワクチンが接種できるわけではありません。レプリコンワクチンを接種希望される方はクリニックのホームページを確認したり、電話で問い合わせることをおすすめいたします。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
レプリコンワクチンについて、動画でもわかりやすく解説しています
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※コメントについては「正しいメールアドレスが記載されていない」「批判的・差別的・暴力的な発言である」「礼節の伴っていない発現である」「明確な根拠がなく(明確な根拠となる部分の引用がされていない)独自の理論を展開している」などの場合、削除することがあります。
※当然ですが、私も時間は有限です。多くの質問をいただきますが、すべての質問にきちんと調べて答えるのには時間がかかりますので、大量の質問形式でコメントされている方も削除の対象としました。あくまでコメントの部分は「良識ある感想を提示する場所」とお考えください。
レプリコンワクチンについて、大変参考になりました。
ただ増殖しつづける、人に移る、ベトナムの治験で死亡例があるだけが独り歩きしていましたが、このサイトに行き着き、知りたかったこと、不思議に思っていたことが解決しました。ありがとうございます。
わかりやすい解説を載せてくださりありがとうございます。ベトナムの件など他の記事ではわからなかったので勉強になりました。
とても分かりやすく、難しい用語もなくすっと頭に入ってくる内容でした。
自分なりにいろいろなサイトを見て来ましたが、こちらを拝見して、不安も払拭されました。
ありがとうございました。
コピー機を用いた説明が良くないと思います。「原稿にあたるのがウイルスのスパイクタンパク質を作る設計図(mRNA)」でコピーしてできたものが「大量のチラシ(スパイクタンパク質)」という点が良くないところです。コピーで出てくるのはスパイクタンパク質を作る設計図(mRNA)で、従来のワクチンなら設計図が一定時間で破棄されてしまうところ、しばらくの間設計図が供給されるのでスパイクタンパク質が作り続けられるというものではないでしょうか?コピー機も細胞中にあるものだと思います。
おっしゃっている意味はよく分かりますが、あくまで「たとえ」なので、細かい部分はご容赦ください。大まかに一般の方が理解していただければと思い、たとえ話を追記しました。
双方の記事を読み、それぞれ感情移入せずに
高い視点から眺めながら自問自答していました。
結果、沢山の気付きがあり、学ぶことができて
双方に感謝しています。
今回、日本だけが承認となると
不安になったり、悪い事ばかり
頭によぎるのは当たり前です。
でも私達日本人にとって
何か深い意味があるのではないかと思ってます。
来るもの拒まずに素直に受け入れることで
新しい気付きがあるのではと今から楽しみです。
シェディングについて、真偽が分かりませんでした。記事の中に、
”本論文でも「これは可能性でありさらなる研究が必要である」と結論づけていますが、この理論が実証されたものはありません。”
とありますが、そうであるならば、「理論が間違っている」という理論も実証されていない事が分かりました。
つまり、危険が無いわけじゃないと言う事ですね。自己増殖するならなおさら何が起こるか分からないと言う事ですね。
論文に「研究の必要がある」と述べられているとおり、現段階では危険かそうでないか”まだ分からない”というのが正確な表現な気がします。
したがって、この記事を読んで「レプリコンワクチン接種者お断り」は理論的な裏付けに乏しい事は分かりましたが、
店主なりの責任者が、レプお断りと判断すること自体は間違いではないと考えが整理できました。
ありがとうございました。
すずき様
なるほど、考えをまとめられる一助になったこと、うれしく思います。
確かに、現時点ではシェディングの危険性を完全に肯定する証拠がないのと同様に、完全否定する証拠も「確認されていません」。(これは他のコメントに記載しましたが永久に難しいでしょう)
そのため「(理論上)危険がないわけではない」と考えてもよいかもしれません。
しかし「レプリコンワクチン接種者お断り」について、責任者としての判断は間違いではないという結論には、少し注意が必要です。
例えば放射性物質を大量に浴びると、遺伝子にダメージが与える可能性があります。どう遺伝子が変わるかは理論上わかりません。
そして放射線により様々な体の不具合が生じたとしましょう。では、それが「遺伝子が改変されて人にうつる」とは実証されませんし、完全にないと証明することもないでしょう。
それなのに「放射線を浴びたものはどう遺伝子が理論上改変されたかわからない、入店お断りにしましょう」といっていいものでしょうか。
放射線の例と同様に、「レプリコンワクチン接種者お断り」は、以下の問題点を含んでいます。
・科学的根拠が不十分: シェディングの危険性が証明されていない段階での差別的な対応は、不合理です。
・人権侵害の可能性: ワクチン接種は個人の自由であり、接種を理由に差別することは許されるべきではありません。
・社会的な分断: 不安や偏見に基づく差別は、社会全体の分断を招きかねません。
責任者がレプリコンワクチンについて不安を感じ、何らかの対策を講じたいと考えるのは理解できます。
しかし、科学的根拠に基づかない差別的な対応は避けるべきでしょう。重要なのは、実証された科学的根拠に基づいた冷静な判断と、すべての人々の人権と尊厳を尊重することだと思います。
はじめまして、こちらの記事を読ませていただきました。
ベトナム治験についても書いて頂いて解説ありがとうございます。
質問ですが、ベトナム治験では、
16000人のうち、第一でかなりの辞退者が出ていること、
交互治験で、1-2回までプラセボ群も3-4回目でレプリコンを打っています。
プラセボの意味がない状態での治験ですが、こちらについてはどのようにお考えですか?
わからないので教えて頂けると嬉しいです(^^)
ちあふる様
ご質問ありがとうございます。
レプリコンワクチンのベトナムの治験にについては、第1~3aフェーズいずれにおいても論文上で
Study compliance was excellent across all phases, particularly in phases 1, 2, and 3a in which 99 of 100 (99%), 300 of 301 (99.7%), and 579 of 600 (96.5%) received their second dose, respectively
と書いてある通り、96.5~99%の方が第2接種まで進んでいます。第3bフェーズについても
In phase 3b, 7869 of 8056 (97.6%) received their second dose of ARCT-154 compared with 7831 of 8044 (97.3%) placebo recipients.
と書いてある通り、97%の方が接種を第2接種まで進んでいますので、「辞退者が多い」という印象は受けません。
また、論文のFIgure2に記載がある通り、論文上では交互接種に関する記述は確認されませんでした。少なくとも接種してから92日目までは交互接種ということはしていないようです。
当然大規模臨床試験を担うのですから、試験のデザインを正しく考える責務があります。交互接種にしてしまっては、長期の副作用を正しく見れないので、あまりそんなことはする必要はないですし、行わないでしょう。
(論文:Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials)
レプリコンワクチンの全体像が把握できる情報提供に感謝いたします。
もう少し情報がほしいと思いましたのは、レプリカーゼのことです。
これは、特定のRNAには特有のレプリカーゼが対応していて、SARS-CoV-2のスパイク蛋白のmRNAの複製に関与するレプリカーゼは、それ以外のRNAには全く関与することがないと断言できるのか。そしてワクチンとして取り込まれたレプリカーゼは間違いなく消失するのか。
そのへんのことにつきご教示いただければありがたいです。
仙城真 様
ご質問ありがとうございます。私は医師であり、分子生物学者ではないので私なりの解釈でお伝えします。
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質mRNAの複製に関わるレプリカーゼは、ウイルス由来の酵素で、「原則」他のRNAの複製には関与しないと理解しています。
これは、レプリカーゼが特定のRNA配列を認識して結合し、複製を開始するためです。
そしてSARS-CoV-2のレプリカーゼは、スパイクタンパク質mRNAに含まれる特定の配列を認識するように設計されています。
一方、「全く関与することがない」と断言することは難しいです。悪魔の証明というものです。
生物学の世界では、常に例外が存在する可能性があります。
例えば、非常にまれなケースとして、宿主細胞内のRNA配列とスパイクタンパク質mRNAの配列が偶然にも非常に類似している場合、
レプリカーゼが誤って結合し、複製を開始してしまう可能性もゼロではないのでしょう。理論上は。
したがって、多くの臨床試験を行い、そこも「こみ」で実証実験を行い、有効性とともに安全性を確認していきます。
そして、今のところはヒトを含んだ大規模な実証実験においても「確認されていません」し、
当然ヒトの試験まで行っているわけですから、そうしたことによる不具合は「確認されていません」。
(レプリコンワクチン自体は他のウイルス感染症についても多くの論文があり、現在進行形で今新しいタイプのレプリコンワクチンの治験を日本で行っています)
同様に、ワクチンとして投与されたレプリカーゼは、体内でmRNAを複製した後、最終的には分解され消失します。
これは、生体内のタンパク質分解システムによって行われるためです。
細胞内には、不要になったタンパク質を分解する仕組みが備わっており、レプリカーゼもこの仕組みにより分解されていきます。
ここは、マウスやヒトの皮膚でのモデル実験でも確認されていますが、想定されうるすべてのケースで確認しているわけではないでしょう。
「ゼロの証明」はとにかく常に難しいです。
私はよく水虫の診断も行います。
実際には10個くらい皮膚をとって顕微鏡で確認しますが
「とった切片には水虫は確認できないから水虫の可能性は非常に低いですね」
とは言いますが、「絶対に水虫ではありませんね」とはいいません。もしかしたら11個目に菌体があるかもしれません。
しかし、私は「水虫ではないとして経過をみてよいですよ」といいます。証明されないわけですから。無碍に水虫扱いして治療を開始することはしません。
「絶対に水虫はいないですか??」と詰問されたら、「完全にいないと証明するのは難しいですが、今すぐに治療する必要はなさそうです」と答えます。
したがって、科学的な議論を行う際には「実臨床や治験で確認されているのか」をベースに展開すべきだと思っています。
迅速で懇切なお返事ありがとうございました。
もやもやしていた部分が解決いたしました。
レプリカーゼは特定のRNAと1対1対応の特異的な酵素である。そして時間が経てば分解される。
分子の類似性からある種の免疫反応が体内のある分子を標的と誤認した反応をしてしまい自己免疫疾患を起こすという可能性はゼロではないが、極めて稀な事象であり、既知の生体分子の情報と臨床試験からかなり高度なリスク回避は可能。という理解でよいですかね。
「リスク0」「絶対的安全」をことさらに言い立てるのは、いわゆる科学否定論のひとたちがよく使う論法で、自分もちょっとそれに繋がることを言ってしまったことを反省しております。
筋道だった情報をちゃんとゲットして自分の頭でちゃんと考えて判断する、扇情的な情報を無責任に拡散しない、そういう態度のひとが多数派になっていってほしいなと願うばかりです。
有用な情報源のご提供に改めて感謝いたします。
今回のワクチン接種で困ったのは、各病院が薬の名前で表示したことです。ここの文章にあるように、どれがファイザーでどれがモデルナか、武田なのか三共なのかということをきちんと明記してほしいのです。
私はアレルギーが起こる危険があるので、すでに売った事のあるファイザーかモデルナを希望したのですが、大きな病院では「コミナティ」と称し、副作用が出やすいと説明したので、そこでは受けなかったのですがまさにこれがファイザーでした。
逆に「うちはファイザーです」と答えた医院で摂取したのですが、接種後の書類を見たらどう見てもファイザーではない。実際には三共のダイチロナでした。
どのワクチンがいいか悪いか、を言う前に、すでに摂取して、なんともなかったワクチンを選ぶことが、患者としては安全ですが、それを探すための表示が、とても分かりにくいうえに、情報が間違っている(電話で確認したときに違う情報を流している)という、どうしようもない状況です。
コロナが流行っていたころにはファイザー、モデルナ、と会社の名前だけを言って、今回は突然ワクチン名のみを当たり前のように表示して、患者は混乱するばかりです。
ここで紹介しているレプリコンワクチンがよいか悪いかは、一般的にどうであるかと同時に、自分にとってどうであるかということが重要で、ゆっくり状況を見て、それから選ぶしかないというのが正直なところ。よいワクチンであればいいと思いますが、それが自分にとってどうであるかをもう少し検討したいというのが現実です。だから、何を打たれるのか、きちんと情報が欲しい。相当高い値段を払うのだからなおさらです。
もう一つ、レプリコンワクチンの問題は、アレルギーが起きた時、一刻も早くそのもととなるワクチンを体の外に排出してしまうことで、症状を緩和したいわけですが、ほかのワクチンに比べて、レプリコンワクチンは長く効力が続いてしまうため、アレルギーも長く続いてしまう可能性があることです。アレルギーの症状によっては、命にかかわりますから、アレルギー治療という意味で問題が生じると感じます。
一方アレルギーなどが起こらない人であれば、この心配はなく、長く効力が持続することはメリットもあります。
実際従来のワクチンは一定期間で効力が落ちるため、コロナ罹患の時軽く済ませることはできても、罹患を防ぐ力は弱くなります。
逆に効力が長いワクチンなら、罹患を防ぐ期間も長くなります。
これからは1年に一度ぐらいしかワクチン接種がないとしたら、またこれだけ高額の薬であるということも考えれば、一回で長く聞くことにはメリットがあります。
実際私もコロナは罹患しましたが、コロナ自体はワクチンのおかげか軽くすみましたが、その後持病の悪化で非常にひどいことになりました。またコロナそのものの後遺症もかなり深刻な状況が言われています。つまりコロナは罹患しないに越したことはない病気です。
私のような人間から見れば、高価が長いワクチンはありがたいのです。
が、これ自体がアレルギーを引き起こした時、アレルギーを起こしてしまう私としては、その治療が大変だということも怖いと思います。
ただ、こうした特性をよく考えて、利点があると思えば、試してみる価値はあるんじゃないのか、とは思いますけどね。
開発直後となると、ちょっと人柱的な印象が強くなるので、印象が悪いのだと思いますが。
今回のレプリコンについては京大の名誉教授や名古屋大学の名誉教授をはじめ、有志医師の会の医師など様々な医師が懸念を表明しています。
そういった状態で何も分からない店が入店拒否にするのは仕方のない事だと思います。誰でも、よくわからないものは怖いですからね。
明治製菓ファルマの現役社員が執筆したレプリコンワクチンの書籍、私たちは売りたくない でも社内内部からレプリコンワクチンの危険性を訴える内容になっています。内部の現役社員ですら非常に危ないワクチンと表現するようなワクチンを分断を煽らない為に安全として扱う…では、もし何かあった時に遅いです。
安全性を証明するのは悪魔の証明と言われますが、それにしても人体に注射する初めての仕組みのワクチンであるのにも関わらず治験などの経緯がおそまつすぎます。
今回のレプリコンワクチンに至っては世界で日本だけの接種であったりもしますし、過去の様々な薬害のように大規模なものにならないように願うばかりです。
田中様
そうですね。おそらくいち早く日本が承認された理由として、超高齢化社会へと加速していく中で、多くのワクチンを海外(主にアメリカ)に依存してしまっている状況を打破したい想いがあると思いますが、
当然ながら安全性の検証は続けていくべきでしょうね。ただし、初期のコロナウイルスの蔓延の時も感じましたが「正しく怖がる」ことも大切だと思います。
私も注視しながら、適宜アップデートしていく予定です。
データに基づいた解説で非常に勉強になりました。客観的データをまとめているサイトが中々みつからず助かりました。
実際に接種後21日目に抗原が消失しているデータとコロナウイルス感染予防のデータが示されている中で、世の中がなぜワクチン抗原が際限なく増殖するような言説に流されるのか謎で、日本全体が集団催眠にでも掛かっているのではないかと恐怖すら感じます。少量の抗原量で長く持続する点で、いわゆるモデルナアームのような接種直後の強い副反応は避けられるんじゃないかと想像します。あくまで想像ですが。
使用実績が乏しいことに対して不安を覚えるのは確かですが、飛行機に乗ったことがない人が墜落を恐れて飛行機に乗らない心理と似たようなものを感じますね。気持ちは判らないでもないですが、その心理を周囲に強要して恐怖心を煽ってくる人々に辟易とします。個人的には従来のmRNAワクチンよりも良さそうだと思っているので、素直に打たせて欲しいと思いますね。
レプリコンワクチンは実績がないので別としても、ファイザーのmRNAワクチンは接種しても安全、というのは筋が違いますよね。
ファイザー、モデルナのmRNAワクチンは、既に800名以上の死亡者に対する厚生労働省の予防接種健康被害救済制度により認定されています。
なぜ800名以上が命を落としているファイザーもしくはモデルナ製を積極的に接種できるのか、ご説明いただきたいです。接種する医師は後遺症や死亡者が出たとしても何の責任もなく、税金による救済制度にて補償金が支払われるため、医師は興味がないということですか?
はせ様
全ての薬剤もそうですが「リスク」と「ベネフィット」をはかりにかけて治療や予防が行われます。
例えば、最も多くの患者さんを治療としたと思われる抗生剤「ぺニシシン」ですが、
実は死亡報告に関する論文が2019年に出ており、実は3万7000人以上の人のぺニシリンによる死亡を報告しています。
(参照:Recorded Penicillin Allergy and Risk of Mortality: a Population-Based Matched Cohort Study. J Gen Intern Med. 2019 Apr 22;34(9):1685–1687.)
かといって、「37,000人死んでいるから使わない方がよい」ということにはならないはずです。実際、ペニシリンによってでしか治療できない人もいますし、ペニシリンによって救われた命もたくさんあります。
ワクチンは「重篤な転機にならないようにあらかじめ『予防する』ために開発された」ものであり手法です。そして、理論的には予防は治療よりも理想的なものです。症状さえ発症しないわけですから。
そして、ワクチンにコロナによる死亡を低下させる効果や重症化を予防するこうかは数々の論文で証明されています。
罹患後症状についてもワクチンを打った方がよさそうだという結論になりそうです。
感染予防効果も短期間ならば証明されていますね。
そうした効果はコロナワクチンにしかありません。
ペニシリンと同じくコロナワクチンも、コロナによる関連する効果とワクチンによる副作用を天秤にかけて接種されるべきだと思います。
さらに、例えばファイザー製ワクチンで打ってきて問題なかった人が今回だけ強い副作用を持つ可能性は非常に低いので、
今うっている人は「セレクション」がかかっています。そういう意味でも「リスク」よりも「ベネフィット」が上回ると思われる方を接種するのに抵抗感はありません。
最近はずっと従来打っていた「インフルエンザワクチン」など他のワクチンにすら抵抗感を覚える人がいます。
非常に嘆かわしいことですし、勝手に「ワクチン=悪」とレッテルを貼って、抑え込まないといけない感染症を蔓延させる事態にならなければよいと危惧しています。
ありがとうございました。
一之江駅、ひまわり医院の名前を覚えました。
この大事な発信を絶対忘れません。
一日本人として。
前回の接種でも、ひまわり医院さまにお世話になりました。
いつもありがとうございます。
現在、イギリスで猛威を振るっている新型株の致死率の異様な高さを恐ろしく感じております。
今冬はそれが日本にも波及するであろう事を考えますと、
従来タイプよりも効果が高く、国内で用意の出来るコスタイベを接種したいと考えております。
もちろん、1バイアルで16人分を6時間以内に打たなければならないという、厳しい条件も存じております。
また、国は助成を打ち切りましたので、医療機関にも国民にもリスクが大きい事も承知しております。
反ワクチン主義の議員等が主義主張を振りかざし、実害に及ぶニュースなどもありました。
こういったムーブメントも医療機関にとっては大きな損失に繋がり、大変残念な思いです。
その上であえてのお願いなのですが、
予約制などの仕組みを利用することで、
ひまわり医院さまでコスタイベの取り扱いをしていただくことは出来ませんでしょうか。
現状では、ネットを利用した有志の集まりで小規模イベントのように接種を実施する動きもあります。
ただしかなり限定的であり、無理があります。
目の前に致死率の高い感染症が迫ってきているのに、全く準備が出来ていないでおります。
日々、マスクや手洗いなど出来ることはしておりますが、コスタイベを打っておきたいです。
少しでもご検討いただけましたら幸いです。
なかむ様
コメントありがとうございます。
思うところは様々ありますが、現状レプリコンワクチンを取り扱う予定はありません。
16人をまとめて接種することへのハードルもありますが、一番行ってはいけないのが「打ち間違え」です。
多くの種類のコロナワクチンを取り扱ってしまうと、別の会社のワクチンを投薬するミスが発生する可能性があります。
また接種しに来られている患者さんの多くはファイザー製で副作用がなかった方であり、ファイザー製を希望されている現状があります。
社会的に見れば、色々なワクチンを打てる環境が一番ですが、いちクリニックでそれを叶える素地が乏しいと感じます。
ご希望に添えず申し訳ありません。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
真摯なお答えをありがとうございます。
確かに仰るとおりです。
私も日頃の業務を進める上では、事故が起こらないような仕組みを構築します。
江戸川区の方に陳情してみることにします。