突然ですが「オーバードーズ」という言葉を知っていますか?オーバードーズとは薬の過剰摂取のこと。
最近、20代~30代若者を中心にさまざまな理由でオーバードーズが行われ、さらには新宿歌舞伎町の東宝シネマズ横(通称:トー横)でオーバードーズ目的の薬の売買による逮捕がされるなど、社会的に問題になっています。今回は、そんな(悪い意味で)社会現象になりつつあるオーバードーズについて
- オーバードーズをすると具体的にどのような症状が出るのか
- オーバードーズにはどのような市販薬や薬が用いられたりするのか
などを中心に解説していきます。
目次
オーバードーズとは
オーバードーズ(OD)は、「薬の過剰摂取」を意味する言葉です。
どんな薬にも必ず「1日に定められた量」があります。これは、効果を最大限発揮しつつ、臨床試験を通して「安全性が確認されている量」が記載された量だからです。
適切な量を超えて摂取すると、薬による様々な副作用が出てきて中には命を脅かす事態になることもあります。しかし、あえてその副作用を期待して薬を過剰摂取する行為が「オーバードーズ」です。
特に市販薬の過剰摂取が青少年を中心に増えてきています。2021年の薬物使用に関する全国高校生調査によると、約60人に1人(1.57%)が「過去1年以内に市販薬の乱用したことがある」としています。
また、薬物関連疾患で精神科で入院や外来で治療を受けている方のうち「1年以内に市販薬の過剰摂取の使用経験がある」と答えたのは2022年では20%。覚せい剤などを含めても、薬物関連疾患で治療をうける5人に1人が市販薬によるオーバードーズが原因になっているのです。
このように、市販薬のオーバードーズは社会的にも非常に大きな問題になってきています。
(参照:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査 2022年)
(参照:薬物使用と生活に関する全国高校生調査 2021年)
市販薬によるオーバードーズの種類は?
では、どのような薬がオーバードーズとして使われやすいのでしょうか。
2022年の全国の精神科医療施設による調査では「1年以内に使用あり」症例にしぼると、使われやすい市販薬の成分は以下があげられています。
- コデイン含有の市販薬:7割で使用されている。主に咳止め薬として使用。脳の延髄(えんずい)にある咳中枢のはたらきを抑えて、咳を止める作用がある。他、痛みや下痢を止める作用も。
- ブロムワレリル尿素が主に含まれている市販薬:不眠の改善や気分を落ち着かせる作用がある市販薬。連用により薬物依存を生じることがある。
- デキストロメトルファンが含まれている市販薬:「メジコン®」や「コンタック®」シリーズなどの咳止め薬として有名。2021年8月に市販薬として使われて以来、オーバードーズとして使用される例が多くなってきた。
- アリルイソプロピルアセチル尿素が含まれている市販薬:、緊張やイライラ感などを抑え、気持ちを落ち着かせる作用があります。一般用医薬品では、痛みを抑える目的で、頭痛・歯痛・生理痛などの解熱鎮痛薬に配合されていることが多いです。
- ジフェンヒドラミンが主に含まれている市販薬:睡眠改善薬の「ドリエル®」や抗アレルギー薬の「レスタミン®」などに使用される。本来は鼻炎や皮膚の症状を抑える効果があるものの、副作用として眠気を誘発する作用がある。
また、カフェイン含有によるケースもあげられます。このように、風邪薬や鎮痛薬、睡眠を誘発する薬を中心に、さまざまな薬でのオーバードーズにより救急搬送される事態が問題になってきています。
逆に、家族の中でこれらの薬を不自然に大量に持っていることがわかった場合、オーバードーズも考えて慎重に対応しなければならないでしょう。
(参照:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査 2022年)
オーバードーズによる主な症状は?
オーバードーズを行うとどのような症状が出てくるのでしょうか?もちろんオーバードーズを行う薬の種類によって変わってきますが、例えば睡眠薬系の場合なら、以下の症状がでてきます。
- 酩酊したような状態になり正しい判断ができない
- 著しい錯乱状態になる
- 会話がおぼつかなくなってくる
- 昏睡状態になる
- けいれん発作
- 呼吸が遅く、苦しい、または呼吸停止になる
脳の中枢をシャットダウンするので、自分で呼吸できない場合もあります。その場合、呼吸しないと脳に酸素がいきわたらないので、正しい処置をしないと死に至ります。
また、よく使われるコデイン系のオーバードーズの場合は以下の通りです。
- 立ちくらみ、めまい
- 眠気
- 吐き気、嘔吐
- 意識消失、昏睡
- 便秘
- けいれん発作
- 呼吸が遅く、苦しい、または呼吸停止になる
やはり脳の中枢に働きかける薬なので、脳による症状が中心となっています。
また、オーバードーズとして増加している咳止め薬である「メジコン®」(デキストロメトルファン)です。
適切な使用量で使用すれば非常に安全性の高い薬であり、副作用もあまりありませんが、もともとはNMDA受容体という咳を誘発する受容体の働きを抑え、脳の中枢から咳を抑える薬です。
そのため、メジコン®を多量に使用すると幻覚を誘発したり、興奮・錯乱状態になることが言われています。また、セロトニンという神経伝達物質にも過剰に作用して「セロトニン症候群」と呼ばれる命にもかかわる状態になることもあるのです。
もちろん肝臓や腎臓などに多大な負担が生じるので、本人が自覚症状がなくても深刻な臓器障害になっているケースもあります。
また、当然ですがオーバードーズによる個人差は非常に多く、もちろん不正使用なので命が保障できる投与量、安全域などはありません。
(参照:American Addiction Centers「Overdose Symptoms, Risks, and Treatment」)
咳止め薬で死亡する可能性もある
実際、咳止めの乱用による死亡が相次いで報告されています。
海外でも咳止め薬の大量摂取による多幸感と幻覚効果から、致死的な相乗効果があるにもかかわらず、娯楽目的でアルコール、アヘン剤、カンナビノイド、その他の乱用薬物と混合されることがよくあるのです。
例えば、パキスタンでは地元の製薬会社2社が製造したデキストロメトルファンを含む咳止めシロップの摂取により、50人以上の死亡が初めて報告されています。
前述でも日本でも市販薬のオーバードーズが増えてきている中、咳止め薬による死亡が相次ぐ可能性が十分にあります。
今、日本では咳止め薬が不足しています。咳で苦しんでいる人に咳止め薬を処方できないことも多いです。その中で、何回も繰り返しますが
- 咳止め薬は安易にレクリエーション目的に使うものではない
- 咳止め薬は適切な用法容量を守って、正しい時にのみ使用する
ことを忘れないでほしいですね。
(参照:Deaths due to abuse of dextromethorphan sold over-the-counter in Pakistan)
まとめ ~オーバードーズをなくすために~
なぜオーバードーズをするのか。そこには若年者を中心とした心の闇があげられます。「National Institute on Drug Abuse」によると薬物中毒の原因として以下の5つをあげています。
- 気分が少しでも晴れるようにするため
- 気分をもっとよりよくするため
- パフォーマンスをあげるため
- みんな使っているから
- 社会的なプレッシャーが強いから
しかし、実際はオーバードーズはこれらの目的を達成する手段として適切な方法では決してありません。
命にも関わりますし、大切な人も悲しむ結果になります。また、現に今咳止め不足が問題になっている中、このような使われ方をするのは医療者としても悲しいです。みんなが不幸になります。
市販薬のオーバードーズがやめられない方は、一人で抱え込まず、身近な人や適切な医療機関、相談センターなどにご相談ください。東京都でもさまざまな医療機関での医療相談を実施しています。
私も内科医ですが、来院していただいた方には「心の闇」も含めて、なるべく時間の許す限り相談に乗るようにしています。(精神的な専門医ではないので限界はありますが・・・)どうぞ気軽に相談してくれると嬉しいです。
繰り返しになりますが、安易なオーバードーズに手を染めず、ぜひ色々な人に相談してみてくださいね。
【この記事を書いた人】
一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介と申します。プロフィールはこちらを参照してください。
はじめまして、オーバードーズについてかなり深刻に私なりに考えさせられる記事でした。私は、安定剤を服用する中二度飲みにならないようにと心配しています。
また、不安が強く頓服を一日三回までを四回にしたりまた、眠くなりたいために風邪薬を一日の範囲内にてかぜが治っても飲んだりしました。
今思うとその延長線が怖いんだな。と感じています。安全な薬にても副作用がありますしまた、体を元気にするためにあるものを過剰摂取することにより幸福感が得られるとはとても思いません。先生がおしゃるとおり大切なひとが悲しみますよね。自分には、いないと感じてしまいますが、やはりすれ違いや亡くなってしまったなどたくさんある中やはり人は、それなりの努力にて立ち直ります。
すれ違いや自己中心的なものの考え方により子供に良かれと思い放つ言葉は、子供を深く傷つけます。自尊心が芽生える時期にこそ認めることも大切でありまた、支配的に親の言うことが、正しいと洗脳的なしつけもよくありません。また、家族の距離感や離れてしまう気持ちなど、子供にしかわからないこともあります。しかし薬の知識がないからこそ疎かなことをしてまた、ネットワークを通じてゆくうちに必要性があると間違えてしまいます。薬に対しての知識がないばかりか活きるということには、必ず衰えや老化により若さを失うことも知りません。副作用にて若いのに体の機能が、老化してしまう。寿命がじゃなくなり、赤ちゃんが産めなくなる。また、生きることは、体の本能ですから呼吸困難になり苦しみ亡くなるなんて馬鹿らしいです。私は、やはりこの命無限でわなくいつも死と紙一重である。という認識を忘れないでほしいです。薬の安易に考えないような若者を社会全体にて築かないとならないです。わたしも今は、辛いことが積み重なりますが、自然に頓服の量が減りまた、眠くなりたい。などということもなく自然にねれてくれています。
どんな困難があっても救ってくださる病院に恥でわなく病だとちゃんと認識して、周りの大人が連れてゆくそんなこともたいせつですね。
先日娘の友達がオーバードーズで亡くなりました。本来ならば大学受験に臨んでいた筈です。
小学校から親友でした。うちによく遊びに来ていました。
お母さんとはたまに学校の連絡をするぐらいの間柄で親しくはしていませんでした。
中学校からリスカを始め、娘には見せてきて、私も何か彼女に起きていると心配になり、お母さんに話そうかとも思いましたが本人は絶対に話さないでとの事で伝えませんでした。
うちは発達障がいの子が複数いて彼女も少し入っているなとは思いましたが何も言わず娘との交流を見守ってきました。
毎日の様に遊びにくる様になり、家では居場所がないように感じました。今思えば東横キッズと同じ状況だったと思います。
娘はいじめを受けて内向的になっていったため、区の相談窓口に通う様にしていましたが、彼女もどうやら行っているらしいというのは聞いていたため、
相談員に彼女がリスカをしている事、母親の愛情を欲しがっているためお母さんとの関係の改善が必要だと思うと伝えましたが伝わったかどうかわかりません。
彼女の高校受験の三者面談では大学受験の兄の話ばかりで自分の相談ではなかったと聞きました。
今考えると更に妹さんは勉強など色々できる子との事、比べてしまったり、どうやら私はお母さんの足を引っ張っている、いても意味がないという考えに彼女自身が凝り固まってしまっていった気がします。
数ヶ月前、自殺をはかり、奇跡的に助かった事を受けて入院が決まったようで、暫く入院し、退院したよ〜!と連絡してきて昨年暮れに久々に遊びにきました。
でも治ったわけじゃないんだけどさぁ、と言っていたので、仮退院だったのかもしれません。
そしてある日、娘から、今日彼女が遊びにきたんだけど、リスカでかなり血が出て救急搬送されたこと、薬を調べて買ってみた事を話してきたと話がありました。
娘はどう対応したらいいかわからず、やっと言えたのは自分の身体を大事にしなきゃだめだよ、だったと。
15分ほどしか滞在しなかったとの事ですが、その話を聞いた時に私も忙しくしていてよくきけてなかったのですが、薬を買ったと言っていたと聞いてこれはまずいのでは、と娘に誰かに相談できないかと話をし、彼女はカウンセラーに話をしました。
その後娘から彼女に電話もしましたが、繋がらなかったそう。
その数日後、彼女は帰らぬ人になってしまいました。
私はどちらかと言うと本人の意思を尊重します。本人はただただ今の現状から逃げたかった。本人が決めた事です。悲しいです。ハグハグしたり、上に乗っかってきて甘えたりもしていました。本来ならお母さんにされたかった、したかったはずです。
一回、遊びにきた時内緒で外に連れ出して、夜遅くまでかかり、彼女が電話をかけた際に代わってもらいお母さんに詫びの話はしましたが、本人のお母さんには迷惑かけたくないとの意向で詳細は話さなかったのと、それがあり私も彼女のお母さんには連絡しづらくなってしまいました。
今思えばお母さんとの彼女の関係が良くならない限り状況は変わらない事をはっきり認識しておけば、回避ができたのではと悲しくて、残念でなりません。
親御さんに問います。私も3人の母で気をつけているのですが、果たして自分の子供は相談をしてくれているか、相談できない様な状況に自分がしていないか、家庭内でお子さんが困った状況であるなら考えて欲しい。
子供が必要としているのは愛情です。満たされていればそのままでも育ちます。
お願いだから、振り返って、考えて欲しい。
できない様であれば自分も精神的に余裕がない状況ではないか考えて、愛情を与えられるように自分を解放して欲しい。
切に、切に願います。