みなさんは、こんなお悩みはありませんか?
- 頬や鼻の赤みがずっと引かず、化粧をしても隠しきれない
- お風呂上がりやお酒を飲んだあとに、顔がカッと熱くなって赤くなる
- 赤みに加えて、ニキビのようなブツブツやヒリヒリ感が出てくる
こうした症状は、「酒さ(しゅさ)」という皮膚の病気かもしれません。「赤ら顔」として悩まれる方も多く、ニキビや敏感肌とまちがえられやすい病気です。
今回は、酒さの症状・原因から治療法までを、「保険診療」と「自費診療」に分け、自費診療については費用の目安も含めて解説していきます。
酒さ(しゅさ)とは?

酒さとは、顔の中心(頬・鼻・額・あご)に、赤みやほてり、ニキビのようなブツブツ、細い血管の浮き出し(毛細血管拡張)などが続く、慢性の炎症性の皮膚の病気です。「赤ら顔」と呼ばれることもあります。
世界の複数の研究をまとめた解析では、酒さは一般成人のおよそ5.46%にみられ(95%信頼区間 4.91〜6.04)、皮膚科を受診する患者さんでは2.39%と報告されています。
あまり知られていませんが、意外と多い疾患なんですね。北緯 40 度より北の国では、酒さの割合は 3.50%であり、それより南の国での酒さの割合は1.86% になっているので、北の国々に多い疾患になります。
女性にやや多く、45〜60歳での発症が目立ちます。日本人では比較的少なく、0.2%程度との報告もありますが、軽症で受診していない方も多いと考えられます。
すぐに命に関わる病気ではありませんが、見た目の悩みから気持ちが落ち込んだり、人前に出るのがつらくなったりと、生活の質に影響しやすい病気です。
酒さの症状とタイプ

酒さの症状は、大きく次のタイプに分けられます。複数のタイプが重なることもあります。
- 紅斑・毛細血管拡張型:顔の中心が赤い、ほてる、細い血管が透けて見える
- 丘疹・膿疱型:赤みに加えて、ニキビのようなブツブツや膿をもったできものが出る
- 腫瘤(しゅりゅう)型:鼻などの皮膚が厚くごつごつする(鼻瘤)。男性に多い
- 眼型:目の充血・ゴロゴロする異物感・乾きなど、目の症状が出る
「赤み」が主体の方もいれば、「ブツブツ」が目立つ方もいて、人によって現れ方はさまざまです。ほてり・ヒリヒリ感・かゆみを伴うこともあります。
酒さの原因・悪化させるもの

酒さのはっきりした原因はまだ完全には解明されていませんが、皮膚の免疫の反応の異常、血管や神経の調節の乱れ、皮膚にすむ「毛包虫(デモデックス)」というダニの関与などが考えられています。
また、次のような刺激は症状を悪化させる「引き金(トリガー)」になりやすいことがわかっています(頻度の高い順)。
- 紫外線
- 精神的なストレス
- 熱い湯・入浴などの高温
- 風にあたること
- 激しい運動
- アルコール
- 寒さ
- 香辛料の効いた食べ物
- 刺激の強いスキンケア
- 熱い飲み物
ご自身の悪化のきっかけを知っておくと、症状をコントロールしやすくなります。
酒さとまちがえやすい病気

酒さは、ほかの皮膚の病気とまちがえられやすい点に注意が必要です。
- ニキビ:酒さにはニキビ特有の「面皰(コメド:毛穴のつまり)」が基本的にできません。
- 脂漏性皮膚炎:赤みやかさつきが似ますが、出る場所や性質が異なります。
- 酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ):顔にステロイドの塗り薬を長く使い続けると、いったん赤みが引いても、やめたときに強くぶり返し、赤みや毛細血管拡張・ほてりを悪化させることがあります。
「赤みに効くから」と自己判断で顔にステロイドをずっと塗り続けるのは避け、皮膚科で正しい診断を受けることが大切ですね。
酒さの治療① 保険診療(外用薬・内服薬)

酒さの治療は、まず保険診療のお薬から始めるのが基本です。
酒さの外用薬(塗り薬)
さまざまな治療薬があるのが、中心となるのが、メトロニダゾール0.75%ゲル(商品名:ロゼックスゲル)です。日本では2022年5月に「酒さ」に対して保険適用となりました。炎症をやわらげ、毛包虫(デモデックス)の増えすぎを抑えることで、赤みやブツブツを改善します。
その効果は、日本人を対象とした臨床試験(第III相、130名)で具体的に示されています。1日2回・12週間の使用で、主要評価(炎症性皮疹が50%以上減り、かつ赤みも改善する)を達成した人の割合は、ロゼックスゲル群72.3%に対し、基剤(成分を含まない土台)群は36.9%(差35.4%、p<0.0001)でした。
内訳をみると、炎症性皮疹が50%以上減った人は80.0%(基剤44.6%)、赤みが1段階以上改善した人は78.5%(基剤56.9%、p=0.0086)と、いずれも基剤を大きく上回っていますね。
1日2回塗り、紫外線に当たると効果が落ちるため、日中は日焼け止めなどの遮光をあわせて行います。また、ロゼックスゲルはしばしば刺激を伴うので、クリンダマイシンゲルを使用する場合もありますし、あまりに炎症が強いようなら一時的にステロイド外用薬を使用することもありますね。多彩な症状にあわせて処方するようにしています。
なお、海外で標準的な外用薬であるアゼライン酸も、日本では酒さに保険適用がないため、当院では自費でお出ししています。
(参照:ATTRACT study subanalysis, 2016 / Efficacy of Widely Used Topical Drugs for Rosacea: A Systematic Review and Meta-Analysis, 2025)
酒さの内服薬(飲み薬)
ブツブツ(丘疹・膿疱)が強い場合には、抗炎症作用を目的としたテトラサイクリン系の飲み薬(ドキシサイクリンなど)やロキシスロマイシン、ドキシサイクリンなどの抗生剤の内服を使うことがあります。抗炎症量の抗生剤を用いた臨床試験では、16週間で炎症性のできものの数が大きく減ったことが報告されています。お薬の選択や量は、症状に合わせて医師が判断します。
酒さの治療② 自費診療(IPL・レーザー)と費用の目安

保険のお薬で十分でない場合や、赤み・毛細血管拡張が残る場合には、自費診療の選択肢があります。当院では、外用薬の「アゼライン酸」と、光治療「IPL(フォトフェイシャル)」をご用意しています。
アゼライン酸(自費の外用薬)
アゼライン酸は、炎症をしずめる作用や、毛包虫・皮膚の角化(ターンオーバー)を整える作用をもつ外用薬で、海外では酒さの標準的な治療の一つです。
その効果は、質の高い臨床試験で具体的に示されています。第III相のランダム化比較試験(2試験、合計664名)では、アゼライン酸15%ゲルを1日2回外用することで、炎症性の皮疹(ブツブツ)の数が、試験1で約58%減少(基剤〈成分を含まない土台〉は40%、p=0.0001)、試験2で約51%減少(基剤39%、p=0.02)と、いずれも基剤より有意に高く減りました。医師による全体評価(IGA)でも、アゼライン酸が基剤を上回りました。
日本では酒さに対する保険適用がないため、当院では自費でアゼライン酸(AZAクリア)を取り扱っています。費用の目安は1本2,200円(税込)です。ロゼックスゲル(保険)で効果が不十分な方や、選択肢を広げたい方に適しています。
IPL(フォトフェイシャル)・色素レーザー
「赤み」や「浮き出た細い血管(毛細血管拡張)」は、塗り薬だけでは残りやすい部分です。この赤みには、光やレーザーが有効です。代表的なのがIPL(光治療/フォトフェイシャル)と色素レーザー(PDL)で、赤みのもとである血管に光を作用させて目立たなくします。
施術の回数とペースの目安は、3〜4週間隔で3〜4回(平均すると2〜3回前後)です。効果は1回でも実感されることがありますが、最後の施術からおよそ3か月後にもっとも強くあらわれるとされていますね。
ある研究では、IPLを受けた方の約69.5%で赤みが75%以上改善し、残りの方も51〜75%改善したと報告されています。色素レーザーでもおおむね68.9〜82.5%の有効性が示されており、IPLと色素レーザーは同程度に有効で安全とされています。酒さは体質的な要素もあるため、よくなった状態を保つには数か月〜半年ごとのメンテナンスを行うことがあります。
当院では、赤ら顔の光治療をIPL(フォトフェイシャル)で行っています。費用の目安は次のとおりです(税込)。
- IPL(フォトフェイシャル)全顔:16,500円
- IPL 全顔3回セット:41,800円
- IPL 全顔5回セット:61,600円
赤みに加えて色ムラ・くすみが気になる場合には、ピコトーニング(22,000円、3回 56,100円、5回 82,500円)をご提案することもあります。料金は変更されることがありますので、最新の情報は当院公式サイトの料金ページでご確認ください。
(参照:Efficacy and safety of azelaic acid 15% gel for papulopustular rosacea: two vehicle-controlled, randomized phase III studies, Journal of the American Academy of Dermatology, 2003 / Efficacy of Widely Used Topical Drugs for Rosacea: A Systematic Review and Meta-Analysis, Actas Dermo-Sifiliográficas, 2025 / Meta-analysis of the efficacy of intense pulsed light and pulsed-dye laser therapy in the management of rosacea, Journal of Cosmetic Dermatology, 2024 / Effective Treatment of Rosacea and Other Vascular Lesions Using Intense Pulsed Light, 2024 / 当院料金:公式サイト)
酒さの日常でできるセルフケア

酒さは、毎日のスキンケアと生活の工夫で、悪化をかなり防ぐことができます。お薬や施術とあわせて取り入れましょう。
① 紫外線対策
紫外線は酒さの最大の悪化要因です。一年を通して、SPF30以上の日焼け止めを使い、帽子・日傘も活用します。肌がしみる方は、刺激の少ない「ノンケミカル(紫外線散乱剤=酸化亜鉛・酸化チタン)」タイプを選ぶとよいでしょう。
② やさしい洗顔と保湿
洗顔は、熱すぎないぬるま湯で、こすらず泡でやさしく行います。アルコール・メントール・スクラブなど刺激の強い製品は避けましょう。酒さの肌はバリア機能が低下しやすいので、洗顔後は低刺激の保湿剤でしっかりうるおいを補うことが、赤みやヒリヒリの軽減につながります。
③ 自分のトリガー(悪化要因)を知って避ける
紫外線・精神的ストレス・熱い湯や長湯・激しい運動・アルコール・香辛料・熱い飲み物・急な温度変化などが代表的なトリガーです。「症状が強く出た日に何をしたか・何を食べたか」を簡単に記録すると、自分の悪化要因が見つけやすくなります。運動は一度に激しく行わず、こまめに休んで体を冷やしながら行いましょう。
④ メイク・スキンケア製品の選び方
刺激の少ない製品を選び、赤みが気になるときは、緑色の下地やミネラルファンデーションを使うと自然にカバーできます。新しい化粧品は、いきなり顔全体に使わず、少量で試してから使い始めると安心です。
⑤ 睡眠・ストレスケア
睡眠不足やストレスも悪化要因になります。十分な休養と気分転換を心がけましょう。
⑥ 顔にステロイドを自己判断で塗り続けないこと
市販薬や以前に処方されたステロイドの塗り薬を、「赤みに効くから」と顔に使い続けるのは避けてください。ステロイドは血管を一時的に収縮させて赤みを抑えますが、顔の皮膚は薬の吸収が高く、長く使ううちに、皮膚が薄くなる・毛細血管が広がる・毛包虫(デモデックス)が増える、といった変化が起こります。
そして使用をやめたときに、強い赤み・ほてり・ブツブツがいっきにぶり返す「酒さ様皮膚炎(ステロイド酒さ)」を引き起こします。これは元に戻るまでに時間がかかり、治療も難しくなります。
炎症が強いときはステロイドを使わないといけないこともありますが、なるべく早めにやめたいところですね。ぜひステロイドを長期使用する際(特にかおの場合)は皮膚科で相談しながら行うようにしましょう。



















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